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中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

差額原価収益分析で埋没原価の罠を見抜く

事例Ⅳ 第8回

事例Ⅳ 埋没原価の罠を見抜き、代替案の優劣を判断する9分30秒2026年9月11日公開

「今日は事例Ⅳの意思決定会計の中でも『差額原価収益分析』を、二次の現場でどう使うかという視点で整理していきましょう」。動画はこの一言から始まります。このページでは、設問の問われ方、与件文の2種類の記述、差額法と総額法、答案の型、埋没原価と項目の拾い忘れという2つの注意点を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

本番でどこで使えばいいのか分からなくなる

今日は事例Ⅳの意思決定会計の中でも「差額原価収益分析」を、二次の現場でどう使うかという視点で整理していきましょう。

それ、まさに知識としては知ってるのに、本番でどこで使えばいいのか分からなくなる論点です。

わかります。差額収益とか差額原価とか、式自体は覚えているという人が多いんですよね。

はい、そこまでは大丈夫です。でも与件文や設問を読んでいて、「あ、ここは差額で考える問題だ」って気づけるかというと、正直自信がないです。

「案Aと案Bのどちらが有利か」と問われたら

実はこの論点、出てくる場面がかなり絞られています。設問で「案Aと案Bのどちらが有利か」「代替案を比較して判断せよ」という問われ方が出たら、まずこの論点を疑ってください。

あ、それって投資するかしないか、じゃなくて、複数の案のどっちが得か、っていう聞かれ方ですよね。

そうです。「投資すべきかどうか」を判断する論点とは似ているようで違って、こちらは複数の代替案が並んでいて、その優劣を比べる場面で使うんです。「内製するか外注するか」「今の設備を使い続けるか新しい設備に更新するか」といった問われ方が典型ですね。

なるほど、選択肢が2つ以上あって、そのどちらが有利かを判断させる問題、ということですね。

そのとおりです。だから設問文に「どちらが有利か」「比較して判断せよ」という言葉が出た瞬間、頭の中でこの論点のスイッチを入れてほしいんです。

設問の問われ方「案Aと案Bのどちらが有利か」「代替案を比較して判断せよ」まずこの論点を疑う投資すべきかどうかを判断する論点とは別複数の代替案の優劣を比べる場面で使う典型の問われ方内製するか外注するか今の設備を使い続けるか新しい設備に更新するか
設問の問われ方

与件文のどんな記述が出たら、この論点だと確信していいか

じゃあ、与件文のどんな記述が出たら、この論点だって確信していいですか。

大きく2種類あります。1つ目は、一方の案だけで発生する費用や収益が、具体的な金額つきで示されているパターン。たとえば「新設備を導入すると保守費用が追加でかかる」とか、「外注に切り替えると原材料費が減る」といった記述です。

片方の案にしか出てこない数字、ということですね。

そうです。2つ目は逆に、両方の案で金額が変わらない費用が紛れ込んでいるパターン。これは意思決定には関係ない情報なんですが、与件文にはあえて書かれていることが多いんです。

え、関係ない情報なのに、わざわざ書いてあるんですか。

はい、そこが出題者の仕掛けです。変化しない費用を見つけて、それを「関係ない」と判断できるかどうかも、この論点の理解度を測る材料になっています。

たとえば、どんな一文が「関係ない費用」の合図になるんですか。

たとえば、「工場の家賃は、どちらの案を選んでも変わらず一定額かかる」というような一文です。金額が具体的に書いてあるとつい使いたくなりますが、両案で共通なら差額計算には要りません。

金額が書いてあると、逆に「使わなきゃいけない」気がしてしまいます。

そこが罠なんです。「金額が書いてあるから使う」ではなく、「その金額が案によって変わるかどうか」を基準に、使う・使わないを判断してください。

① 一方の案だけの費用・収益具体的な金額つきで示される「新設備を導入すると保守費用が追加でかかる」「外注に切り替えると原材料費が減る」② 両案で金額が変わらない費用意思決定には関係ない情報「工場の家賃は、どちらの案を選んでも変わらず一定額かかる」使う・使わないの基準その金額が案によって変わるかどうか
与件文の2種類の記述

差額収益・差額原価・差額利益

数字が出てきたときは、どう整理すればいいんですか。

まず押さえてほしいのが、差額収益は、ある代替案を選んだときの収益と、もう一方の代替案を選んだときの収益との差額。差額原価も同じように、代替案どうしの原価の差額です。

差額利益は、その差額収益から差額原価を引いたもの、ということですよね。

そうです。式で言うと、差額利益イコール差額収益マイナス差額原価。これは、代替案Aの収益マイナス代替案Bの収益、そこから代替案Aの原価マイナス代替案Bの原価を引いたもの、とも表せます。

差額利益の式

差額利益 = 差額収益 − 差額原価

=(代替案Aの収益 − 代替案Bの収益)−(代替案Aの原価 − 代替案Bの原価)

差額法(増分法)と総額法の2通り

整理するときのやり方は1つだけですか。

いえ、2通りあります。1つは「差額法」、増分法とも呼ばれる方法で、金額に変化があった項目だけに注目して、直接差額を計算するやり方です。もう1つは「総額法」で、収益・原価それぞれの総額どうしを比較してから、あとで差額を求めるやり方です。

どちらを使うかは、どう決めればいいんですか。

結果はどちらでも同じになります。設問の与えられ方を見て、計算しやすい方を選べばいいんです。変化する項目だけが数字で示されていれば差額法、両方の案の費用・収益がまとまって示されていれば総額法が組みやすい、というイメージです。

方法やり方組みやすい場面
差額法(増分法)変化した項目だけで直接差額を計算変化する項目だけが数字で示されている
総額法総額どうしを比べてから差額を求める両方の案の費用・収益がまとまって示されている

具体的な数字で見る

具体的な数字で見せてもらってもいいですか。

たとえば、こんな数字だったとして聞いてください。案Aは収益1000・原価600、案Bは収益900・原価550だったとします。差額法なら、収益の差100(1000引く900)から原価の差50(600引く550)を引いて、差額利益は50です。

総額法だと、案Aの利益400と案Bの利益350を先に出してから、その差を取る感じですか。

そうです。400マイナス350で、やっぱり差額利益は50になります。どちらのやり方でも同じ答えにたどり着くので、与件文で見えている数字がどちらのやり方に向いているかで選べばいいんです。

たとえるなら、2つの引っ越し業者の見積もりを比べるときに近いですか。共通のオプション料金まで全部足して総額どうしを比べてもいいし、距離が長い分の追加料金だけを見比べてもいい、みたいな。

いい例えです。しかも、共通してかかる基本料金の部分は、どちらの業者を選んでも変わらないので、比較には関係ないですよね。それが両方の案で変化しない費用にあたります。

全部の金額を並べて比べても、一部分だけ抜き出して比べても、答えは同じになるはずってことですね。

そのとおりです。

案A 収益1000・原価600案B 収益900・原価550差額法収益の差 100(1000−900)原価の差 50(600−550)差額利益100−50=50総額法案Aの利益 400案Bの利益 350差額利益400−350=50どちらも差額利益は50
差額法と総額法の計算例

実際の答案では、どういう型で書けばいいか

実際の答案では、どういう型で書けばいいですか。

記述問題では、「代替案Aは代替案Bに比べて差額利益が〇〇円プラスとなるため、代替案Aを採用すべきである」という型で、具体的な数値を添えて書きます。

プラスかマイナスかで、採用すべき案が決まるということですね。

はい。差額利益がプラスであれば、比較対象より有利な代替案、多くの場合は新しく検討している案の方を採用すべきと判断します。

計算過程を示す設問のときは、何を書けば伝わりますか。

どの費用・収益が代替案間で変化していて、どの項目が変化しないかを明示すると、採点者に伝わりやすくなります。「この項目は両案で変わらないので除外する」という一言があるだけで、理解している証拠になります。

結論の数字だけじゃなくて、除外した理由も書く、ということですね。

そうです。数字が合っていても、その数字がどの項目の差額から来ているかを説明できないと、部分点が伸びにくいんです。

記述問題の型「代替案Aは代替案Bに比べて差額利益が〇〇円プラスとなるため、代替案Aを採用すべきである」差額利益がプラスなら比較対象より有利な代替案を採用計算過程を示す設問ではどの費用・収益が代替案間で変化しているかどの項目が変化しないかを明示する「この項目は両案で変わらないので除外する」
答案の型

気をつけたほうがいい失敗:埋没原価

ここまでの話で、逆に気をつけたほうがいい失敗ってありますか。

一番典型的なのが、両案で変化しない費用を、差額計算に誤って含めてしまう誤りです。これは、すでに発生していて、どちらの案を選んでも回収できない費用、いわゆる埋没原価を含んでいるケースが多いです。

埋没原価って、もう払ってしまって取り返しがつかない費用のことですよね。

そうです。どちらを選んでも変わらない以上、意思決定には関係ない。なのに、金額として大きいと、つい計算に入れたくなってしまうんです。

私、まさにそこでやりがちな気がします。大きい金額を見ると、無視していいと分かっていても不安になります。

その気持ち、よく分かります。でも判断基準はシンプルで、「この案を選んでも選ばなくても金額が変わるかどうか」だけです。変わらないなら、どんなに大きな金額でも意思決定には無関係と言い切っていいんです。

もう1つの注意:対応する項目を拾い忘れない

もう1つ、気をつけるポイントはありますか。

あります。差額法と総額法、どちらを使っても結果は同じになるはずなんですが、計算の途中で片方の案の項目だけを拾って、もう片方の対応する項目を拾い忘れるミスが起きやすいんです。

片っぽの案の数字しか見てなくて、対になる数字を見落とす、ということですね。

そうです。だから計算するときは、必ず両方の案の同じ項目を並べて、対応関係を確認しながら差額を出す癖をつけてください。片方だけ拾って安心すると、あとで数字が合わなくなります。

たとえば、案Aの人件費だけ拾って、案Bの対応する人件費を拾い忘れる、みたいなことですか。

まさにそれです。片方の案の変化する項目を書き出したら、もう片方の案にも対応する項目が無いか、必ずペアで確認する。この一手間を惜しむと、計算の途中式は合っているのに、最後の差額だけがズレてしまいます。

失敗① 変化しない費用を含める両案で変化しない費用を差額計算に入れる(すでに発生して回収できない埋没原価のことが多い)判断基準:選んでも選ばなくても金額が変わるか失敗② 対応する項目の拾い忘れ片方の案の項目だけを拾いもう片方の対応する項目を拾い忘れる対策:両案の同じ項目をペアで確認する
気をつける2つの失敗

今日の話を整理すると

今日の話を整理すると、まず「どちらが有利か」という問われ方に反応して、片方だけの費用・収益と、変化しない費用を見分けて、差額法か総額法で整理して、プラスなら採用、という流れですね。

そのとおりです。答案は差額利益の金額とともに採用すべき案を明示する型で書き、計算過程ではどの項目を除外したかまで示す。そして埋没原価を含めない、対応する項目を拾い忘れない、という2点に注意してください。

正味現在価値法などほかの意思決定会計の論点との関係

この論点、正味現在価値法とかほかの意思決定会計の論点とも関係あるんですか。

あります。正味現在価値法などほかの意思決定会計の論点でも、結局は「この案を選んだときと選ばなかったときで、何が変わるか」という発想が土台になっています。差額で考える感覚を身につけておくと、ほかの意思決定会計の論点にもそのまま応用できます。

知識はあったのに、使いどころが見えていなかった理由がやっと分かりました。ありがとうございました。

こちらこそ、お疲れさまでした。

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