差額原価収益分析で埋没原価の罠を見抜く
事例Ⅳ 第8回
「今日は事例Ⅳの意思決定会計の中でも『差額原価収益分析』を、二次の現場でどう使うかという視点で整理していきましょう」。動画はこの一言から始まります。このページでは、設問の問われ方、与件文の2種類の記述、差額法と総額法、答案の型、埋没原価と項目の拾い忘れという2つの注意点を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
本番でどこで使えばいいのか分からなくなる
今日は事例Ⅳの意思決定会計の中でも「差額原価収益分析」を、二次の現場で
それ、まさに知識としては知ってるのに、本番でどこで
わかります。差額収益とか差額原価とか、式自体は覚えて
はい、そこまでは大丈夫です。でも与件文や設問を読んでいて、「あ、ここは差額で考える問題だ」って気づけるかというと、正直自信がないです。
「案Aと案Bのどちらが有利か」と問われたら
実はこの論点、出てくる場面がかなり絞られています。設問で「案Aと案Bのどちらが有利か」「代替案を比較して判断せよ」という問われ方が出たら、まずこの論点を疑ってください。
あ、それって投資するかしないか、じゃなくて、複数の案のどっちが得か、っていう聞かれ方ですよね。
そうです。「投資すべきかどうか」を判断する論点とは似ているようで違って、こちらは複数の代替案が並んでいて、その優劣を比べる場面で使うんです。「内製するか外注するか」「今の設備を使い続け
なるほど、選択肢が2つ以上あって、そのどちらが有利かを判断させる問題、ということですね。
そのとおりです。だから設問文に「どちらが有利か」「比較して判断せよ」という言葉が出た瞬間、頭の中でこの
与件文のどんな記述が出たら、この論点だと確信していいか
じゃあ、与件文のどんな記述が出たら、この論点だって確信していいですか。
大きく2種類あります。1つ目は、一方の案だけで発生する費用や収益が、具体的な金額つきで示されているパターン。たとえば「新設備を導入すると
片方の案にしか出てこない数字、ということですね。
そうです。2つ目は逆に、両方の案で金額が
え、関係ない情報なのに、わざわざ書いてあるんですか。
はい、そこが出題者の仕掛けです。変化しない費用を見つけて、それを「関係ない」と判断できるかどうかも、この論点の理解度を
たとえば、どんな一文が「関係ない費用」の合図になるんですか。
たとえば、「工場の家賃は、どちらの案を
金額が書いてあると、逆に「使わなきゃいけない」気がしてしまいます。
そこが罠なんです。「金額が書いてあるから使う」ではなく、「その金額が案によって変わるかどうか」を基準に、使う・使わないを判断してください。
差額収益・差額原価・差額利益
数字が出てきたときは、どう整理すればいいんですか。
まず押さえてほしいのが、差額収益は、ある代替案を選んだときの収益と、もう一方の代替案を
差額利益は、その差額収益から差額原価を引いたもの、ということですよね。
そうです。式で言うと、差額利益イコール差
差額利益の式
差額利益 = 差額収益 − 差額原価
=(代替案Aの収益 − 代替案Bの収益)−(代替案Aの原価 − 代替案Bの原価)
差額法(増分法)と総額法の2通り
整理するときのやり方は1つだけですか。
いえ、2通りあります。1つは「差額法」、増分法とも呼ばれる方法で、金額に変化があった項目だけに注目して、直接差額を計算するやり方です。もう1つは「総額法」で、収益・原価それぞれ
どちらを使うかは、どう決めればいいんですか。
結果はどちらでも同じになります。設問の与えられ方を見て、計算しやすい方を選べばいいんです。変化する項目だけが
| 方法 | やり方 | 組みやすい場面 |
|---|---|---|
| 差額法 | 変化した項目だけで直接差額を計算 | 変化する項目だけが数字で示されている |
| 総額法 | 総額どうしを比べてから差額を求める | 両方の案の費用・収益がまとまって示されている |
具体的な数字で見る
具体的な数字で
たとえば、こんな数字だったとして聞いてください。案Aは収益1000・原価600、案Bは収益900・
総額法だと、案Aの利益400と
そうです。400マイナス350で、やっぱり差額利益は50になります。どちらのやり方で
たとえるなら、2つの引っ越し業者
いい例えです。しかも、共通してかかる基本料金の部分は、どちらの業者を選んでも変わらないので、比較には関係ないですよね。それが両方の
全部の金額を並べて比べても、一部分だけ抜き出して比べても、答えは同じになるはずってことですね。
そのとおりです。
実際の答案では、どういう型で書けばいいか
実際の答案では、どういう型で書けばいいですか。
記述問題では、「代替案Aは代替案B
プラスかマイナスかで、採用すべき案が決まるということですね。
はい。差額利益がプラスであれば、比較対象より有利な代替案、多くの場合は
計算過程を示す設問のときは、何を書けば伝わりますか。
どの費用・収益が代替案間で変化していて、どの項目が変化しないかを明示すると、採点者に伝わりやすくなります。「この項目は両案で変わらないので除外する」という一言があるだけで、理解している証拠になります。
結論の数字だけじゃなくて、除外した理由も書く、ということですね。
そうです。数字が合っていても、その数字がどの
気をつけたほうがいい失敗:埋没原価
ここまでの話で、逆に気をつけたほう
一番典型的なのが、両案で変化しない費用を、差額計算に誤って含めてしまう誤りです。これは、すでに発生していて、どちらの案を選んでも回収できない費用、いわゆる埋没原価を
埋没原価って、もう払ってしまって
そうです。どちらを選んでも変わらない以上、意思決定には関係ない。なのに、金額として大きいと、つい計算に入れたくなってしまうんです。
私、まさにそこでやりがちな気がします。大きい金額を見ると、無視していいと
その気持ち、よく分かります。でも判断基準はシンプルで、「この案を選んで
もう1つの注意:対応する項目を拾い忘れない
もう1つ、気をつけるポイントはありますか。
あります。差額法と総額法、どちらを使って
片っぽの案の数字しか見てなくて、対になる数字を見落とす、ということですね。
そうです。だから計算するときは、必ず両方の案の同じ項目を並べて、対応関係を確認しな
たとえば、案Aの人件費だけ拾って、案Bの対応する人件費を拾い忘れる、みたいなことですか。
まさにそれです。片方の案の変化する項目を書き出したら、もう片方の案にも対応する項目が無いか、必ずペアで確認する。この一手間を惜しむと、計算の途中式は合っているのに、最後の差額だけがズレてしまいます。
今日の話を整理すると
今日の話を整理すると、まず「どちらが有利か」という問われ方に反応して、片方だけの費用・収益と、変化しない費用を見分けて、差額法か総額法で整理して、プラスなら採用、という流れですね。
そのとおりです。答案は差額利益の
正味現在価値法などほかの意思決定会計の論点との関係
この論点、正味現在価値法と
あります。正味現在価値法など
知識はあったのに、使いどころが
こちらこそ、お疲れさまでした。
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