回収期間法を答案でどう使うか
事例Ⅳ 第13回
「計算のやり方は知っているけれど、答案でどう活かせばいいか分からない」。動画は、回収期間法をめぐるこんな悩みから始まります。投資額を何年で回収できるかは割り算で出せるのに、「正味現在価値法と比較して」と言われると手が止まる。このページでは、与件文のサイン、単純回収期間法と割引回収期間法の整理、複数案・基準回収期間・NPV法との比較での書き方、混同しやすい誤りを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
計算はできるのに、答案で手が止まる
動画は、事例Ⅳの投資判断でよく出てくる回収期間法を「二次の現場でどう使うか」という視点で整理していきます。聞き手は、これを「計算のやり方は知っているけれど、答案でどう活かせばいいか分からない」論点の代表格だと言います。投資額を何年で回収できるかという計算は、割り算するだけなので難しくありません。ところが記述問題で「正味現在価値法と比較して」と言われると、急に手が止まる。動画はこの落差から入ります。
講師によると、この論点の出方は一通りではありません。回収期間法と正味現在価値法(NPV法)は、どちらも事例Ⅳの投資判断で使われる代表的な手法で、次のような形で顔を出します。
- 回収期間を単独で計算させる問題
- NPV法と組み合わせて、投資案の回収期間を計算させる問題
- 複数の投資案をぱっと比較する場面や、NPV法の限界を論じさせる記述問題との組み合わせ
回収期間法はNPV法より計算がシンプルです。だからこそ、比較の場面で使いやすい一方で、「シンプルな方法だけでは、なぜ不十分なのか」を説明させる問題にもなります。
計算がシンプルだから、逆に「なぜシンプルな方法だけでは不十分か」を説明させる問題にもなる、ということですか。
その発想でいいです。この論点は、計算問題としても記述問題としても顔を出す、応用範囲の広い論点なんです。
このページでは、与件文のサイン、計算の整理、答案への落とし込み、注意点の順に、動画の流れにそってまとめます。
与件文のサイン3つ
聞き手が最初に聞いたのは、与件文のどんな記述が出たら、この論点を使うと気づけばいいのか、という点でした。講師が挙げたサインは3つです。
- 直接の問われ方:「投資額を何年で回収できるか」「回収期間は何年か」。論点名がそのまま書いてあるようなものです。
- 基準回収期間との比較:「基準回収期間」など、社内で定めた回収期間の目安と比べさせる記述。「うちの基準は何年以内」という社内ルールが出てくるパターンです。
- 毎年ほぼ一定のキャッシュフロー:回収期間の簡便な計算がしやすい設定になっている、というサインです。
講師は「この3つのどれかが出たら、回収期間法を疑ってください」と言います。1つ目は論点名がそのまま書いてあるので分かりやすく、2つ目は社内ルールの形で出てきます。3つ目は少し気づきにくいサインです。与件文に毎年ほぼ同じ金額のCFが並んでいたら、まず「回収期間を聞かれるかもしれない」と頭に置いて、設問文を読みにいきましょう。
数字が毎年バラバラじゃなくて、そろっている時点で、「あ、回収期間を計算させたいんだな」と察していいということですか。
察していいです。毎年の金額が変動すると累計計算の手間がかかりますが、一定額なら、投資額÷毎年のキャッシュフローの一回の割り算で済みます。
計算のしやすさそのものが、論点に気づくヒントになるんですね。
そうです。計算しやすい設定になっていること自体が、出題のサインでもあるんです。
単純回収期間法:割り算と積み上げ
気づいたあとの整理です。まず単純回収期間法。これは、貨幣の時間価値を考慮せず、将来予想されるキャッシュフロー(CF)の累計額が投資額と等しくなるまでの期間で判断する方法です。時間価値を考えない、というのがポイントになります。
毎年のCFが一定であれば、次の一回の割り算で求められます。
毎年のCFが一定のとき
回収期間 = 投資額 ÷ 毎年のキャッシュフロー
たとえば、10万円の家電に買い替えて、毎年の電気代が2万円浮くとしたら、10万円÷2万円で5年で元が取れる、というイメージですか。
いい例えです。まさにその割り算が、単純回収期間法の基本形です。
ただし、毎年の金額が変動する場合は、累計のCFを年ごとに積み上げ、投資額を上回る年を特定する必要があります。講師の設例はこうです。投資額が500万円で、1年目のCFが150万円、2年目が150万円、3年目が200万円。
| 年 | CF | 累計 |
|---|---|---|
| 1年目 | 150万円 | 150万円 |
| 2年目 | 150万円 | 300万円 |
| 3年目 | 200万円 | 500万円 |
3年目までの累計がちょうど500万円になり、投資額に到達します。この設例の回収期間は3年です。
では3年目が180万円だったらどうなるのか。聞き手の問いに、講師はこう答えます。2年目までの累計300万円に180万円を足すと480万円で、まだ500万円に届きません。4年目のCFの途中で追いつく計算になります。
端数が出る年は、その年のキャッシュフローの中でどこまで進んだかを見る、ということですね。
その感覚で大丈夫です。
(補足:動画は4年目のCFの金額を示していません。自作の数値例として、4年目が200万円だったとします。不足は500万円-480万円=20万円で、20万円÷200万円=0.1年。回収期間は3.1年です。年の途中までCFが均等に入るものとして按分する、という考え方です。実際の設問では、問題文の指示と端数の扱いに従ってください。)
割引回収期間法との違い
ここで似た論点との違いを押さえます。割引回収期間法は、CFを現在価値に割り引いた上で、同じように累計が投資額に届くまでの期間を求める方法です。時間価値を考慮する点が、単純回収期間法との違いです。
ただし、それ以外の限界は両方に共通しています。講師が挙げたのは、回収期間後のCFを考慮しない点、リスク要因を考慮しない点、基準回収期間の判断が曖昧である点の3つです。
| 見る点 | 単純 | 割引 |
|---|---|---|
| 時間価値 | 考慮しない | 考慮する |
| 回収後のCF | 考慮しない | 考慮しない |
| リスク要因 | 考慮しない | 考慮しない |
| 基準回収期間の判断 | 曖昧 | 曖昧 |
時間価値を考えるかどうかだけが違って、それ以外の弱点は両方に残るということですね。
そうです。この整理の軸が、次の答案の書き方にもつながります。
答案への落とし込み:複数案と基準回収期間
整理の軸が分かったら、解答への落とし込み方です。講師は設問の型ごとに、書くことを決めていきます。
まず、複数の投資案を比較する設問では、回収期間が最も短い案を選択する、という判断基準を明示します。次に、基準回収期間が与えられている場合は、算出した回収期間がその基準以内かどうかで採否を判断します。
「短い方を選ぶ」と、答案に一言添えるということですね。
そうです。基準回収期間が与えられている場合は、基準以内かどうかで採否を判断します。
「自分で決めた年数までに元が取れないなら買わない」という家計のルールと同じ感覚ですね。
近い感覚です。計算した数字を出すだけでなく、その基準と照らし合わせて、結論まで書くことが大事です。
講師が示した具体例は、基準回収期間が4年の場合です。
| 計算した回収期間 | 基準(4年) | 結論 |
|---|---|---|
| 3年 | 基準以内 | 採用 |
| 5年 | 基準を超える | 不採用 |
計算結果と基準を並べて、採用か不採用かをはっきり書く。数字を出して終わり、にしないのがコツです。聞き手も「計算結果と基準を並べて、採用か不採用かをはっきり書く、ということですね」と確認していました。講師の言葉でいえば、計算した数字を出すだけでなく、基準と照らし合わせて結論まで書くことが大事、ということです。
(補足:動画にない書き方の例です。「回収期間は3年で、基準回収期間の4年以内であるため、採用すべきである。」のように、数字・基準との関係・結論を一文につなげると、型として使いやすくなります。)
NPV法との比較を問われたら:3点セット
正味現在価値法との比較を問われたときは、回収期間法は計算が簡便である一方で、限界があることを説明に含めます。講師が挙げた限界は次の3つです。
記述の骨格になる3点セット
- 貨幣の時間価値が考慮されない(これは単純回収期間法の場合)
- 回収後に発生するキャッシュフローが考慮されない
- 投資案固有のリスクが考慮できない
「簡便だけど、時間価値と回収後のCFとリスクを見ていない」という3点セットで覚えておけばいいんですね。
その3点セットが、記述問題での説明の骨格になります。
1つ目に「単純回収期間法の場合」と断りが付いているのが大事なところです。割引回収期間法は時間価値を考慮するので、時間価値の限界を書くのは単純回収期間法のときです。前の章の表と合わせて確認してください。
動画の言い方は、「計算が簡便である一方で、この3点の限界がある」という順です。限界だけを並べるのではなく、簡便さとセットで説明に含める。そのうえで、この3点を記述の骨格として押さえておく、という使い方です。
「回収後のキャッシュフローを見ない」とは
聞き手が「回収後のキャッシュフローを考慮しない、というのはどういうことですか」と聞き返す場面があります。講師の答えはこうです。回収期間法は、投資額を回収するまでの期間だけを見る指標です。回収した後に、どれだけ大きなCFが続くかは、計算に反映されません。
だからこそ、記述問題ではこの点を限界として明示する必要がある、と講師は言います。
回収期間が終わった後の話は、この指標だと見えなくなってしまうんですね。
その通りです。見えないからこそ、答案では限界として書いておく必要があります。
混同しやすい2つの誤り
ここまでの話から、聞き手は混同しやすいポイントが気になってきます。講師が挙げた注意は2つです。
1つ目は、単純回収期間法と割引回収期間法の混同です。時間価値を考慮すべき設問なのに、単純な累計計算をしてしまう誤りです。
あ、それ私やりそうです。「回収期間法」と聞いた瞬間に、全部同じ計算式で解いてしまいそうで。
設問文に「現在価値に割り引いて」という指示があるかどうかを、必ず確認する癖をつけてください。
2つ目は、回収期間が短いことだけで「その投資案が優れている」と結論づけることです。回収後に得られる大きなCFを見落とす可能性があります。回収期間法自体の限界を踏まえた記述が、求められる場合があります。
「早く回収できる=一番いい投資案」と決めつけると、後半で大きく稼ぐ案を見落とすかもしれない、ということですね。
そうです。回収期間が短いというのは分かりやすい指標に見えるので飛びつきやすいんですが、それだけで結論を出し切ってはいけない、という視点を持っておいてください。
計算結果を出したら、その数字の限界にも一言触れる、という姿勢が大事なんですね。
その姿勢が、記述問題での評価につながります。
| 誤り | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 単純と割引の混同 | 時間価値を考慮すべき設問で単純累計 | 「現在価値に割り引いて」の指示を確認 |
| 短いだけで優劣を決める | 回収後の大きなCFを見落とす | 結論に限界を一言添える |
試験ではここに注目
- 設問に「現在価値に割り引いて」の指示があるか
- 複数案の比較か、基準回収期間との比較か、NPV法との比較か
- 計算結果のあとに、採否の結論と限界の一言があるか
まとめ
動画の整理
- 回収期間法は、NPV法と組み合わせて、または単独で出る論点
- 気づくサインは3つ:「回収期間は何年か」という問われ方、基準回収期間との比較、毎年ほぼ一定のCF
- 整理は、単純回収期間法の割り算・積み上げ計算と、時間価値を考慮する割引回収期間法の違いを押さえること
- 答案では、複数案は回収期間が短い方を選ぶ。基準がある場合は基準以内かで判断する。NPV法との比較では、簡便さと限界の3点セットを書く
- 注意は2つ:単純と割引の混同、回収期間の短さだけで優劣を決めつけること
動画の最後に、聞き手は「計算のやり方は知っていたはずなのに、使いどころまでちゃんとつながった気がします」と話しています。計算できることと、答案に書けることは別です。サインに気づき、基準と照らして結論まで書き、数字の限界にも一言触れる。この流れを持っておけば、本番で計算問題が来ても記述問題が来ても対応できます。
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