連結財務諸表の出資比率とのれんの見極め順
事例Ⅳ 第16回
「事例Ⅳの問題を開いて、親会社と子会社の貸借対照表が二つ並んでいた瞬間に、手が止まった経験ってありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、連結の二次での出方、与件文のキーワード、出資比率とのれんの確認、連結貸借対照表と連結損益計算書の型、間違えやすいところ、本番の手順をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
表が二つ並ぶと、手が止まる
事例Ⅳの問題を開いて、親会社と子会社の貸借対照表が二つ並んでいた瞬間に、手が止まった経験ってありませんか。
あります。しかも、知らない論点じゃないんですよ。連結財務諸表、意味は分かってるつもりなんです。なのに、目の前に表が二つ並ぶと、何から手をつければいいのか分からなくなって。
そこなんですよね。ふだん事例Ⅳで扱うのは、一社だけを見る個別の財務諸表です。連結は、親会社と子会社と関連会社をまとめて一つの会社として見る、頭の切り替えが要る。だから、知識よりも「どの順番で情報を並べるか」を持っているかで差がつくんです。
お願いします。私、模試でここを落として、あとで解説を読んで「これ知ってたのに」って悔しい思いをしたところなんです。
二次でどんな顔をして出てくるか
では、この論点が二次でどんな顔をして出てくるかから。大きく二つあります。一つは、連結そのものを聞いてくる計算や知識の問題。もう一つは、与件文がグループ経営を扱っていて、その背景知識として必要になる場合です。
二つ目は、設問に「連結」と書いていないパターンということですか。
そうです。設問に言葉が出ていなくても、親会社と子会社の関係が前提になっていることがある。まず正面から問われるほうですが、出方は主に三つです。一つ目は、親会社が子会社を買収したり合併したりしたときに、連結の貸借対照表と損益計算書をどう作るか。どの項目をどう合算するのか、という作成ルールを問うタイプ。
いちばんストレートなかたちですね。
二つ目は、子会社の株式を100%取っていない場合。このときに出てくる非支配株主持分と非支配株主損益の取り扱いを聞いてきます。三つ目が、買収額と、子会社の時価評価純資産額との差額として出てくる、のれんと負ののれん。のれんを償却するのか、一括で利益に計上するのか、という会計処理を問うタイプですね。
なるほど。じゃあ二つ目の、与件文の背景として出てくるほうは、どんな場面ですか。
グループ経営や、親子会社間の取引、海外子会社の設立といった話が与件文に出てくる場合です。計算そのものを聞かれなくても、連結の考え方がないと設問の前提が読み取れないんですよ。
与件文で反応するキーワード五つ
その「前提が読み取れない」を防ぐために、与件文のどこを見ればいいんですか。
反応すべきキーワードを、五つのかたまりで持っておくといいです。一つ目は、親会社、子会社、関連会社、グループ会社、連結子会社。企業グループがあることを示す言葉ですね。二つ目が、出資比率に関する具体的な記述。株式の何パーセントを取得、完全子会社化、持分法適用会社、といった書き方です。
二つ目は、わざわざ数字が書いてあるということは、使ってくださいという合図ですよね。
そのとおりです。三つ目は、合併、買収、M&A、経営統合。企業が一つになる動きを示す言葉です。
組織の話に見えて、財務でも反応しないといけないんですね。私、そこは読み飛ばしてました。
いいところに気づきましたね。四つ目は、のれん、のれんの償却という言葉そのもの。これが出たら、買収額と時価評価純資産額の差の話が必ず絡みます。五つ目が、海外子会社の設立や、グループ内での取引。親子会社間の売買や貸付ですね。
最後のは計算問題になりにくそうですけど、それでも反応するんですか。
反応します。企業グループを一つの会社として見る目線が求められる場面ですから。では、キーワードを見つけたあと、情報をどう並べるか。確認するのは二つだけ。一つ目は、問われている会社が親会社なのか子会社なのか、そして子会社への出資比率が100%なのか、100%未満なのか。
確認するのは二つだけ
比率って、そんなに最初に確認するほど大事なんですか。
大事です。100%なら、その子会社には親会社以外の株主がいません。つまり非支配株主が存在しないので、非支配株主持分も非支配株主損益もゼロになります。逆に、たとえば80%なら、残りの20%分の株主がいる。
100株のうち80株を親会社が持っていて、残りの20株は別の人が持っている、ということですね。
そのイメージで大丈夫です。その20株分の取り分を、あとで切り分ける作業が必要になる。だから最初に比率を確認するんです。二つ目の確認は、子会社株式をいくらで買ったかという買収額と、買収した時点での子会社の時価評価純資産額を比べることです。
時価評価純資産額というのは、比べるときにどう見ればいいんですか。
資産と負債の時価から見た、正味の値ですね。買収額のほうが大きければ、その差額はのれんとして資産に計上して、毎期少しずつ償却していきます。逆に買収額のほうが小さければ、その差額は負ののれんとして、その期に一括で特別利益に計上します。
| 買収額と比べた結果 | 呼び名 | 処理 |
|---|---|---|
| 時価評価純資産額より大きい | のれん | 資産に計上し、毎期償却 |
| 時価評価純資産額より小さい | 負ののれん | その期に一括で特別利益 |
中古の自転車を買うときに、部品の値打ちの合計より高く払うのか、それより安く買えるのか、みたいな話ですか。
考え方の感覚としてはそのとおりです。値打ちの合計より高く払ったなら、その上乗せ分には何か理由があるはずで、それを資産として持っておいて少しずつ減らしていく。逆に安く買えたなら、その分はその場で得をした扱いになる。
じゃあ本番では、買った値段と正味の値打ち、この二つの数字を拾えばいいんですね。
計算問題の型は二つ
そうです。そこまで整理できたら、あとは解答に落とすだけ。計算問題なら型は二つです。連結の貸借対照表は、親会社の貸借対照表と子会社の貸借対照表を合算する。ただし、親会社が持っている子会社株式は消します。
消す、というのはどういうことですか。
グループを一つの会社として見るので、自分のグループの中の株式を自分で持っている状態は残さないんです。そのうえで、差額をのれん、または非支配株主持分として計上します。
合算して、子会社株式を消して、差額を置く。三手ですね。
はい。もう一つが連結の損益計算書です。こちらは取得比率にかかわらず、親会社の損益計算書と子会社の損益計算書を全部合算します。
え、80%しか持っていなくても、売上も費用も全部足してしまうんですか。
足します。そのうえで、合算して出した当期純利益から、非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いて、親会社株主に帰属する当期純利益を表示する。いったん全部足してから、他の株主の取り分を切り分ける。この順番が大事なところです。
先に全部足して、あとから他の株主の分を引く。逆じゃないんですね。
そこを取り違える人が多いです。記述で問われた場合の型も持っておきましょう。「親会社と子会社がこういう関係にあるため、連結財務諸表では合算のルールに従い、のれんや非支配株主持分といった項目を計上する」という組み立てです。
関係、ルール、計上する項目。三つの箱を埋めるイメージですね。
負ののれんが出ているとき
そのとおりです。そして、もう一歩踏み込みたいのが、負ののれんが出ているときです。買収額より時価評価純資産額のほうが大きいということは、正味の値打ちより安く買えたということ。これは裏を返すと、業績不振や、帳簿に載っていない負債、損害賠償請求のリスクといった問題が隠れている可能性を示すサインでもあります。
安く買えてよかったですね、では終わらないんですね。
終わらないです。だから買収を検討する場面では、統合によるシナジー効果が本当に見込めるのか、買収前の調査、デューデリジェンスをきちんと行ったのか、という観点も要ります。ここまで書けると、計算だけで終わらない答案になります。
書いたのに点が伸びなかった理由が、少し分かった気がします。
間違えやすいところを四つ
そこが差のつくところなんです。では最後に、間違えやすいところを四つ。一つ目は、のれんと負ののれんの向きを逆にしてしまうことです。
私、まさにそこで迷います。どっちがどっちだったかな、って。
買収額が時価評価純資産額を上回ったらのれんで、資産に計上して償却する。下回ったら負ののれんで、一括で特別利益に計上する。上回るか下回るかと、償却か一括かを、必ずセットで覚えてください。
高く買ったほうが資産に残る、と紐づけておきます。
二つ目は、非支配株主持分と非支配株主損益の混同です。名前は似ていますが、出てくる表が違います。非支配株主持分は貸借対照表の項目で、子会社の純資産のうち親会社に帰属しない部分。非支配株主損益は損益計算書の項目で、子会社の当期純利益のうち非支配株主に帰属する部分です。実際の連結損益計算書では、非支配株主に帰属する当期純利益、という名前で並びます。
| 項目 | 出てくる表 | 内容 |
|---|---|---|
| 非支配株主 | 貸借対照表 | 子会社の純資産のうち |
| 非支配株主 | 損益計算書 | 子会社の当期純利益のうち |
置き場所が違うんですね。今どちらの表の話をしているのかを先に決めてから書けばいいのか。
それが一番の対策です。三つ目は、出資比率が100%のときの見落とし。完全子会社なら非支配株主はいませんから、非支配株主持分も非支配株主損益もゼロになります。
前提を確認しないまま、条件反射で非支配株主の計算を始めてしまうやつですね。
そうです。だから最初に比率を確認する手順が効いてくる。四つ目は、関連会社と子会社を同じものとして扱ってしまうことです。関連会社は、貸借対照表も損益計算書も全部連結はされません。投資額を持分法によって評価替えするだけで、資産や負債、収益や費用を丸ごと合算するわけではないんです。
え、じゃあ与件文に関連会社と書いてあるのに、子会社と同じつもりで全部足したら、答えが全然変わってしまいますね。
変わります。グループ会社という言葉が出たら、子会社なのか関連会社なのかを必ず確認してください。全部合算していいのは子会社だけです。
| 会社 | 連結での扱い |
|---|---|
| 子会社 | 貸借対照表も損益計算書も全部合算 |
| 関連会社 | 全部は連結せず、投資額を持分法で評価替え |
本番の手順、最後にもう一度
そこは線を引いて覚えます。本番の手順、最後にもう一度いいですか。
まず、グループを示す言葉と出資比率の数字を拾う。次に、親か子か、比率は100%か未満かを確認して、非支配株主がいるかどうかを決める。そのうえで、買収額と時価評価純資産額を比べて、のれんか負ののれんかを決める。
そこまでが下ごしらえですね。
あとは、貸借対照表は合算して子会社株式を消し差額を置く、損益計算書は全部合算してから非支配株主の分を控除する。表ごとに手順が違うので混ぜないこと。そして子会社と関連会社を分けること。この順番で手を動かせば、表が二つ並んでいても止まりません。
表ごとの手順
- 貸借対照表:合算して、子会社株式を消し、差額を置く
- 損益計算書:全部合算してから、非支配株主の分を控除する
- 子会社と関連会社を分ける
はい。次に事例Ⅳで連結が出てきたら、今日の順番どおりに手を動かしてみます。
動画で聞く
続けて読む
- 第11回 加重平均資本コスト、節税効果の掛け方を見抜く事例Ⅳ 加重平均資本コストの使いどころと節税効果
- 第12回 減価償却の方法の見分け方とキャッシュフローへの足し戻し方事例Ⅳ 償却方式の見分け方とキャッシュフローへの足し戻し方
- 第13回 回収期間法を答案でどう使うか事例Ⅳ 計算はできるのに手が止まる。回収期間法の使いどころ
- 第14回 正味現在価値法と投資判断の見抜き方事例Ⅳ 「知ってるのに使えない」を突破する投資判断の見抜き方
- 第15回 損益分岐点関連公式の使い方事例Ⅳ 損益分岐点関連公式。単価か数量かで変わる計算の使い方
- 事例ⅣのWebテキスト一覧同じ科目の16本を一覧・検索
- 中小企業診断士 2次の講座トップ科目別プレイリスト・人気の講義・ファイナルペーパー

