正味現在価値法と投資判断の見抜き方
事例Ⅳ 第14回
「正味現在価値法って、1次のときにさんざん計算しましたよね」。動画はこんな問いかけから始まります。公式は覚えているのに、二次の与件文でどこに出てきたらこれを使うのか、本番だと一瞬固まる。このページでは動画の流れにそって、出方、与件文の着眼点、整理の手順、判断のルール、混同・誤答しやすいポイント、本番のチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識はあるのに、使うタイミングで手が止まる
正味現在価値法って、1次のときにさんざん計算しましたよね。
はい、公式は覚えてます。でも、二次の与件文でどこに出てきたらこれを使うのか、本番だと一瞬固まるんです。
そうなんですよ。知識はあるのに、使うタイミングで手が止まる。これ、事例Ⅳで一番多い相談です。
私、まさにそこで時間を溶かしました。計算自体はできるのに、この設問がNPVの話だって気づくまでに数分かかって。
今日はその「気づき方」と「使い方」に絞って、一緒に整理していきましょう。
単独判断なのか、比較なのか
まず前提として、正味現在価値法は事例Ⅳの投資判断でほぼ毎年のように顔を出す論点です。
ほぼ毎年ですか。それだけ出るなら、避けて通れないですね。
しかも出方が一つじゃないんです。ある投資案をやるべきか単独で判断させる問題もあれば、複数の投資案やシナリオを比較して、どちらが有利かを選ばせる問題もある。
あ、それ大事ですね。単発の可否判断だと思って解いてたら、実は複数案の比較だった、ということもあり得るということですよね。
そのとおりです。だから設問文を読んだ瞬間に「これは単独判断なのか、比較なのか」をまず見極める癖をつけておくといいです。
見極めを間違えると、判断の書き方そのものが変わってしまいますもんね。
そうです。単独判断のつもりで解いていたら、実は複数案から一つ選ばせる問題だった、というズレは致命的です。設問の指示文をもう一度読み返す習慣をつけましょう。
与件文のどこを見たらこの論点だと気づけるか
では、与件文のどこを見たらこの論点だと気づけるか。反応すべき記述はだいたい決まっています。
知りたいです。本番で反射的に反応できるようにしておきたいので。
一つ目は「新たな設備投資を検討している」「新規事業の開始を検討している」という記述です。
それはもう、そのまま投資判断の話ですよ、と言っているようなものですね。
二つ目は、投資額や耐用年数、各期の売上・変動費・固定費の見込みが、具体的な数値で示されているかどうかです。
数値がずらっと並んでいたら、あ、計算させる気だな、と身構える感じですね。
三つ目は、資本コストや割引率、それに複利現価係数・年金現価係数の数表が与えられているかどうか。
数表が出てきた時点で、割り引く計算をしてくださいという合図みたいなものですよね。
まさにそうです。そして四つ目が、設備を耐用年数の経過後に売却する予定や、売却価額についての記述です。
これ、地味に見落としがちなやつですよね。売却の一文だけさらっと書かれていたりして。
これら四つ、全部そろわないと反応してはいけない、というわけではありません。一つでも出てきたら「投資判断の話かもしれない」と疑い、そろう数が増えるほど確信を強めていく感覚でいいです。
全部そろうのを待たなくていいなら、もっと早い段階で身構えられますね。
見つけた情報は決まった手順で整理していく
見つけた情報は、決まった手順で整理していくと計算ミスを防げます。順番を一緒に確認しましょう。
お願いします。私、この整理の順番があやふやなまま計算に入って、途中で迷子になることが多いんです。
まず①投資額と、その投資がいつ行われるのかという投資時期を把握します。ここが土台になります。
投資は必ずしも今この瞬間とは限らない、ということですよね。
そこがポイントで、投資が複数回に分かれていたり、将来のある時点で行われる場合は、投資額そのものも現在価値に割り引く必要があります。
え、投資額まで割り引くんですか。キャッシュフローだけ割り引けばいいと思い込んでました。
そこを見落とすと計算が丸ごとズレるので、要注意ポイントです。次に②各期の営業キャッシュフローを、税引前利益かける1マイナス税率、プラス非現金支出費用という式で算出します。
この式自体は1次で覚えているので、あとはどの数値を当てはめるかですね。
そして③各期のキャッシュフローを資本コストで割り引いて、現在価値の合計を求める。最後に④その合計から投資額を差し引いて、正味現在価値を算出します。
今もらえるお金と1年後にもらえるお金は同じ額でも価値が違う、という感覚と同じですね。将来のお金は今の価値に目減りさせて考える、と。
いい感覚です。まさにその考え方を、各期のキャッシュフローに対して機械的にやっているだけなんです。
なるほど、そう考えると割引計算が急に身近に感じます。
もう一つ忘れやすいのが、設備を耐用年数経過後に売却する場合です。その売却価額は、最終期のキャッシュインとして加える必要があります。
さっきの「売却予定の記述」って、ここで効いてくるんですね。着眼点と整理の仕方がつながりました。
この①から④までの順番を毎回同じ形でメモに残しておくと、途中で何を計算しているか見失いにくくなります。
頭の中だけで進めず、投資額の把握、営業キャッシュフロー、割引、差し引き、という順番を答案用紙にも書き出す、ということですね。
解答への落とし込み
整理ができたら、いよいよ解答への落とし込みです。判断のルール自体はシンプルです。
正味現在価値がプラスかマイナスか、ですよね。
そうです。正であれば投資を実行すべき、負であれば実行すべきでない、と判断します。
複数の投資案を比較する問題のときはどうなりますか。
その場合は、まず正味現在価値が正であることを前提にしたうえで、その値が最大になる案を選択します。
さっきの「単独か比較か」の見極めが、ここで解答の書き方に直結するわけですね。
| 場面 | 判断 |
|---|---|
| 単独の | 正なら 負なら |
| 複数の | 正を前提に |
記述問題では、「正味現在価値が正、または負であるため、投資を実行する、または実行しないべきである」という型に、実際に算出した具体的な数値を添えて解答を組み立てます。
型だけ覚えても点にならないので、自分で出した数値をきちんと乗せることが大事ですね。
そして計算過程を書かせる問題では、損益計算・キャッシュフロー計算・現在価値計算を、表形式で段階的に整理して書くと、途中の過程でも部分点を取りやすくなります。
頭の中だけで計算せず、答案用紙にも同じ手順を可視化する、ということですね。
特に部分点狙いのときほど、結論だけをぽんと書くのではなく、この段階的な整理を答案に残しておくことが効いてきます。
最終的な正解の数値が多少ズレても、途中の考え方が正しく書かれていれば拾ってもらえる可能性が上がる、ということですね。
混同・誤答しやすいポイント
ここまでの流れを踏まえて、混同・誤答しやすいポイントも押さえておきましょう。
私、ここでよくやらかすので、ぜひ聞きたいです。
一つ目は、非現金支出費用、つまり減価償却費や売却損益を、計算に含め忘れることです。
現金の出入りがないから、つい無視してしまいそうです。
逆に、現金支出を伴う費用まで足し戻してしまう、という反対方向の誤りも起きます。どちらの方向にもズレうる、という点に注意してください。
非現金支出費用かどうかを、一つひとつ確認しながら処理する必要があるんですね。
もう一つは、複数の投資案を比較する場面です。耐用年数や投資額が異なる案同士を、そのまま単純に比較してしまう誤りです。
それ、私やりそうです。数字だけ見て、大きい方がお得だと判断してしまいそうで。耐用年数が長い案の方が単純に有利に見えてしまう気がします。
そこで必要になるのが、プロジェクト期間終了時点における設備の残存価値を、売却したものとみなして投資額に戻し入れる、という調整です。
期間がそろっていない案同士を、同じ土俵で比較できるようにするための一手間、ということですね。
そうです。この調整を忘れると、条件の違う案を不公平に比較して、誤った結論を出してしまいます。
補足(動画の言い方の整理):動画は、最終期の処理を「売却価額は最終期のキャッシュインとして加える」と言い、複数案の比較では「残存価値を売却したものとみなして投資額に戻し入れる」と言っています。この2つは計算結果が同じです。最終期のキャッシュインとして加えて割り引くのは、割り引いた残存価値を投資額から差し引くのと同額だからです(自作の数値例で検算:投資額1,000、毎期のキャッシュフロー300を4期、残存価値100、割引率5%のとき、どちらの計算でも正味現在価値は約146です)。なお残存価額は、耐用年数が過ぎた後に売却して得られると見込まれる額を指します(日本語版ウィキペディア「減価償却」で確認。二次資料です)。
本番でこの論点を使うときのチェックポイント
では最後に、本番でこの論点を使うときのチェックポイントをまとめておきましょう。
お願いします。
一つ、設備投資や新規事業の記述、具体的な数値、資本コストの数表、売却の記述を見たら、正味現在価値法を疑うこと。
二つ、投資が複数回や将来時点に分かれる場合は、投資額自体も割り引くのを忘れないこと。
三つ、非現金支出費用の計上漏れと足し戻しの誤り、両方向のミスに気をつけること。
四つ、複数案を比較するときは、耐用年数や投資額の違いを残存価値の戻し入れで調整してから比較すること。
これができれば、知識はあるのに使えない、という状態からは確実に抜け出せます。
事例Ⅳには他の投資判断の指標も出てきますけど、混ざってしまいそうで少し不安です。
着眼点や
計算式は知っていても、与件文のどこで反応するかが分かっていなかったんだな、と今日ですごく腑に落ちました。
その気づき方と整理の手順を、ぜひ過去問演習で実際に手を動かして確認してみてください。
過去問を解くときは、今日出てきた四つの着眼点に実際に線を引きながら読んでみます。
それがいちばんの近道です。着眼点、整理の手順、判断のルール、この三つがセットで出てくるようになれば、本番で迷う時間がぐっと減ります。
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