管理サイクルという全論点を貫く土台の視点
事例Ⅲ 第48回
「今日は、事例Ⅲでほぼ全部の論点の土台になっている考え方を扱います」。動画はこんな言葉から始まります。このページでは動画の流れにそって、計画・実行・確認・対策の4段階の視点を、与件文のサイン、4つの箱への仕分け、答案の書き方、間違えやすいポイントとあわせてまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
全部の論点の下に流れている視点
え、土台ですか?特定の論点というより、もっと根っこの話ってことですか。
そうなんです。生産計画とか品質管理とか、個別の論点を勉強していると忘れがちなんですが、実はその全部の下に共通して流れている視点があるんですよ。
うーん、知識としては色々覚えたつもりなんですけど、そう言われると、それぞれがバラバラに頭に入ってる気がします。本番で急に「これ、どの論点だっけ」って迷子になるパターン、まさに私です。
それ、実はその論点そのものが分かっていないんじゃなくて、その手前にある「計画を立てて、実行して、確認して、対策する」というサイクルの視点が抜けているせいかもしれません。
あ、それって聞いたことあります。計画・実行・確認・対策……ということは、いわゆるあのサイクルですよね。名前は出さなくても分かります。
そうです、その4段階です。今日はこの視点を、実際の答案でどう使うかに絞って見ていきましょう。
設問のどこで使うのか
これ、設問でズバリ「その4段階について答えよ」みたいな聞かれ方はしないですよね。
しませんね。生産計画の課題とか、生産統制の問題点とか、品質管理の改善策とか、個別の管理対象を切り出して聞かれることがほとんどです。
じゃあ、この視点はどこで使うんですか。
どの設問を解くときも、まず「この事例企業に計画はあるのか、統制はあるのか」を疑う姿勢で与件文を読む。この姿勢そのものが、事例Ⅲを解くときの基本動作になるんです。
なるほど、聞かれ方は個別でも、読み方の土台はいつも同じってことですね。
しかも、最後の設問、今後の方向性を問うような場面でも使えます。「このサイクルを定着させる体制をつくる」という締め方は、割と汎用的に効きます。
え、最後の設問の着地にまで使えるんですか。それは知りませんでした。
事例企業の課題は、大体「計画がない」「計画はあるけど確認していない」「トラブルが起きても場当たりで終わっている」というふうに、このサイクルのどこかが欠けた形で書かれることが多いです。
与件文のサイン
じゃあ、与件文のどんな一文が出たら、このサイクルの話だって気づけばいいんですか。
いくつかサインがあります。まず、「担当者本人に計画を任せている」とか「受注者から作業者に直接指示している」のような、属人的な運営を示す記述です。
あー、それ見たことあります。「ベテランの勘で」みたいな表現ですよね。
そうです。「勘や経験に頼っている」「そのときの状況に応じて対応している」という書き方も同じ仲間で、あらかじめ決めた計画に基づかずに動いている合図になります。
私、そういう記述を読むと、現場が優秀そうに見えて強みのほうに拾っていました。
そこは分けて考えたいところです。人が優秀なことと、計画があることは別ですから。あとは「情報が更新されていない」「昔のデータのまま使っている」という記述も要注意です。
それって、計画そのものが古い前提のまま作られてるってことですよね。
その通りです。もう一つ、記録や確認の仕組みが弱いことを示す記述も見逃せません。口頭でのやり取りが中心とか、記録がメモ書き程度、というような書き方です。
それと、クレームが起きているのにその後の対応の記述が薄い、みたいなパターンもありますよね。以前、模試でそこを読み飛ばして、後の設問で対応策が思いつかなかったことがあります。
まさにそれです。クレームの後に何も対策していない、という書き方は、確認と対策の部分が機能していないサインなんです。
なるほど、キーワードを一語一句探すというより、この4つの箱のどこが欠けてるかを疑いながら読む感じですね。
そうです。個別の論点を検討する前に、まずこの補助線を引いておくと、設問への反応がぶれにくくなります。
4つの箱に仕分ける
じゃあ、実際に読みながらどう整理すればいいんですか。
与件文の記述を、計画・実行・確認・対策の4つの箱に仕分けるイメージです。
4つの箱、ですか。
| 箱 | 見ること |
|---|---|
| 計画 | 事前に何を・いつまでに・どれだけやるか決めているかどうか |
| 実行 | 計画どおりに動いているか、それとも現場の判断任せか |
| 確認 | 結果を計画と突き合わせる仕組みがあるか |
| 対策 | 問題が見つかったときに直して次に反映する仕組みがあるか |
計画の箱は、生産計画だけを見ればいいんですか。
いえ、作業計画や要員計画のように、事前に何をどれだけやるかを決めているものは全部その箱に入ります。加えて、誰が立てているのか、どのくらいの頻度で見直しているのかも見ておくと、その計画が形だけかどうかが分かります。
生産の実態を分かっている部門が立てているか、ということですか。
そこは大事な着眼点です。実態を知らないところで立てた計画や、一度作ったきり更新されない計画は、あっても機能しません。
それ、自分の学習計画にも当てはまりますね。模試を受けて、結果を計画と比べないまま、次の模試までなんとなく勉強してた時期があって、全然点数が伸びませんでした。
いい例えですね。まさにそれです。確認の箱が空だと、いくら計画を立てても改善につながらない。
事例企業も同じで、4つのうちどこかが空欄になっているのを見つければいいってことですね。
そうです。多くの場合、計画か確認のどちらかが弱いという形で出てきます。どちらが弱いかを特定できれば、使うべき打ち手も自然と絞り込めます。
答案の型は3ステップ
実際の答案では、どう書けばいいんですか。
型はシンプルです。どの段階が欠けているかを与件文から特定して、その段階を補う具体策を書いて、最後にサイクル全体が回ることで得られる効果を添える。この3ステップです。
具体策の言い回しって、決まったパターンがあるんですか。
あります。
| 弱い段階 | 書く言い回し |
|---|---|
| 計画段階 | 「(対象の工程や業務)について計画を策定し」 |
| 実行・確認段階 | 「実績を記録し、計画と対比・確認する仕組みを導入し」 |
| 対策段階 | 「差異が生じた場合は原因を分析し、是正措置を講じて次の計画に反映する」 |
それ、そのまま使えそうな言い回しですね。全部盛り込む必要はあるんですか。
いえ、字数が限られているので、与件文で一番欠けている段階に絞って厚く書くのが基本です。
最後は「このサイクルを定着させて生産性を向上させる」みたいな効果でまとめる感じですか。
そうです。効果は生産性の向上のほかに、品質の安定や納期の遵守も使えます。その会社が困っている方向に合わせて選ぶと、答案の一貫性が保ちやすくなります。
間違えやすいポイント
逆に、ここは間違えやすいというポイントってありますか。
いくつかあります。まず、この4段階の考え方と、生産管理そのものを同じものとして扱ってしまうミス。
それって、違うものなんですか?似ている気がします。
生産管理は、品質・コスト・納期を達成するための活動全般の呼び方です。一方でこの4段階は、その活動を含めた多くのことを回すための「型」であって、生産管理という活動そのものの説明ではありません。
なるほど、範囲がそもそも違うんですね。
もう一つ、実行段階の現場レベルの管理、つまり進み具合を管理したり、仕掛かりの数量を管理したり、作業の負荷を管理したりする活動と、計画から対策までの一巡サイクル全体を混同するミスもあります。
それも近いようで違う話ってことですよね。
そうです。現場レベルの管理は、このサイクルで言う実行・確認の部分をより具体化したものなので、サイクル全体の説明として持ち出すと論点がずれてしまいます。
計画が無いのか、確認や是正が甘いのか
先回りして聞きたいんですけど、与件文に「計画がない」ってそのまま書いてないことも多いですよね。
鋭いですね。まさにそこがつまずきやすいポイントです。属人的な指示や口頭でのやり取り、記録の欠如といった間接的な表現で示されることが多いので、キーワード探しに頼らず、4段階のどこが欠けているかという視点で読み取る必要があります。
あと、そもそも計画が無いのか、計画はあるけど確認や是正が甘いのか、そこを取り違えると解答の的が外れそうです。
その通りです。あらかじめ基準や手順を決める段階と、問題が起きたあとに確認して是正する段階では、そもそも役割が違います。記録の仕組みが欲しい会社に計画を立てましょうと書いても、打ち手は立派なのに宛先が違う答案になってしまいます。
打ち手が合っていても、当てる場所を間違えると点にならないんですね。
そうなんです。だから読む段階で、4つの箱のどこが空欄かを先に決めておく。それが宛先を決める作業になります。
品質管理の中にも出てくる
品質管理の場面でも、この4段階の視点は同じように使えるんですか。
使えます。品質を経営レベルで捉えて改善する考え方の中でも、この4段階を回して品質管理活動を進めるという位置づけが出てきます。つまり、この視点は生産計画や生産統制だけでなく、品質管理の中にも形を変えて何度も登場するんです。
じゃあ、事例Ⅲのどの論点を勉強していても、結局この4つの箱に戻ってくるってことですね。
そうなんです。だから、これは覚える論点の一つというより、他の論点を理解するための土台として最初に押さえておくべきものなんです。
確かに、そう考えると事例Ⅲの勉強全体が一本の線でつながって見えてきますね。
まとめ
今日のまとめです。事例企業を見るときは、まず計画・実行・確認・対策の4つの箱のどこが欠けているかを疑う。
与件文の属人的な指示や、更新されていない情報、記録の薄さといったサインから、欠けている段階を見つける。
そして答案では、欠けている段階を補う具体策を書いて、最後に効果でまとめる。
この視点を持っておくと、色んな設問に共通して使えそうです。今日のところ、すごく腑に落ちました。
この後の個別の論点も、実はこの土台の上に乗っているものばかりなので、迷ったら今日の4つの箱に戻ってきてください。
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