個別生産
事例Ⅲ 第46回
「与件文の会社が個別生産だと分かった瞬間に、じゃあ何を書くのかというところで手が止まるんです」。動画は、聞き手のこんな悩みから始まります。このページでは、個別生産を与件文でどう見抜いて、どう答案に変換するかを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
与件文の会社が個別生産だと分かった瞬間、手が止まる
今日のテーマは「個別生産」です。個々の注文に応じて、その都度一回限りで、一個または少量ずつ作る。講師は、この分類自体は迷わず言えますよね、と切り出します。
分類はできます。でも、与件文の会社が個別生産だと分かった瞬間に、じゃあ何を書くのかというところで手が止まるんです。
そこなんですよ。しかもこの論点、書き方を間違えると会社の強みを潰す提案になってしまう。今日は、個別生産を与件文でどう見抜いて、どう答案に変換するかだけをやります。
お願いします。まさに本番で手が止まったところなので、埋めていきたいです。
二次でどう出るか:弱点を直す問題と、強みを伸ばす問題
まず、二次でどう出るか。中心は生産・技術の事例です。与件文から「個別受注品を都度作っているタイプの会社だ」と読み取らせたうえで、出題は大きく二つに分かれます。
二つというと、どういう違いですか。
一つ目は、個別生産に特有の課題を与件文から特定させて、改善策を助言させるパターン。特有の課題とは、納期遅延、生産性の低さ、標準化の遅れの三つです。
弱点を見つけて潰しにいく形ですね。二つ目は何ですか。
個別生産のままでも活かせる強み、つまり顧客要望への高い対応力と多品種少量への柔軟性を、他の生産方式の要素と組み合わせて伸ばさせるパターンです。
他の生産方式の要素というと、何が候補になるんですか。
段取り改善、セル生産方式の導入、標準化・共通化。この三つが定番の引き出しです。
同じ個別生産でも、弱点を直させる問題と、強みを伸ばさせる問題がある。答案の向きが正反対ですね。
読み違えるとまるごと外します。だから先に押さえるのは、「この会社はなぜ個別生産を選んでいるのか」。多品種少量だから、顧客ごとに仕様が違うから。その理由を踏まえた提案かどうかが分かれ目になります。
理由を無視して流れ作業に変えましょうと書くと、強みを潰す提案になるわけですね。
与件文の着眼点:5つのサイン
最初は、これは個別生産だと気づくサイン。「顧客ごとの仕様に応じて」「一品ものを製作」「その都度設計・製造」「繰り返し生産する見込みが少ない」。この辺りの記述です。
一品もの、その都度。いかにも書かれていそうな言い回しです。
次は課題のサインです。「毎回段取り替えが発生する」「熟練工でないと対応できない」「標準化が進んでいない」。これが出たら、生産性と納期の課題を疑います。
あ、私、そこを「職人の技術力が高い会社だ」って、強みの側にだけメモしていました。
惜しいんですよね。熟練依存は対応力という強みの裏返しであると同時に、生産性の課題でもある。両面ある前提で線を引いてください。段取り替えの記述も軽く見ないこと。
そこ、正直あまり重く見ていませんでした。どう捉えればいいんですか。
たとえ:毎回違うリクエストの料理
家で、家族それぞれから毎回違うリクエストの料理を頼まれる場面です。火にかけている時間より、材料を出す、鍋を洗う、道具を持ち替える時間の方が長くなりませんか。
あー、なります。作っている時間より、切り替えの時間の方が長い。
個別生産で起きているのもそれです。段取り替えは、生産期間を押し上げている犯人として拾い、短縮の対象に載せる。
なるほど。三つ目のサインは何ですか。
「多品種少量」「顧客要望への対応力が強み」。これが出たら、強みを活かす方向の提案を求められている合図です。
さっきの二つ目のパターン、強みを伸ばさせる出題のヒントになるわけですね。
そうです。四つ目は「工程ごとに機械が配置されている」「同じ種類の機械をまとめて配置している」。これは機能別レイアウトで、個別生産と相性のいい配置です。
読み飛ばしがちでしたけど、個別生産だという裏づけなんですね。
そうです。五つ目は「基準日程の設定があいまい」「納期遅れが常態化している」。管理面の課題を名指ししているサインです。
五つとも役割が違うんですね。方式の特定、課題、強み、裏づけ、管理面。
その整理でいいです。
拾った記述を、五つの管理ポイントに仕分ける
では拾った記述をどう仕分けるか。講師の手順は、まず与件文の製品・工程が、個々の注文に応じてその都度作る個別生産に該当するかを確認すること。該当したら、典型的な管理ポイントに沿って記述を並べ替えます。
その管理ポイントが仕分けの箱になるわけですね。いくつあるんですか。
五つです。一つ目、基準日程の設定方法を確立して納期設定を適正化できているか。二つ目、生産計画と生産実績の差異を減らして納期を確保できているか。
一つ目が納期を決めるところ、二つ目が決めたあと守るところ、という違いですか。
そのとおり。三つ目、生産期間や段取り替えの時間を短縮して短納期化できているか。四つ目、受注変動に対応できるフレキシブルな体制、つまり多能工化ができているか。五つ目、工程の余力を常に把握して手待ちや遅れを防げているか。
この五つを、与件文に「できていない」と書いてある方から拾えばいいんですね。
そこが肝です。五つ全部ではなく、「できていない」と読める記述があるものだけが課題の所在になります。いくつもの頼まれごとを、期限も範囲も決めずに引き受けた状態を思い出してください。
あー、身に覚えがあります。手が空いているのか詰まっているのかも分からなくなる。
その「手が空いているか分からない」が五つ目の余力の把握です。あわせて、個別生産は多品種少量生産や受注生産と組み合わされることが多く、レイアウトは同じ種類の機械・設備をまとめて配置する機能別レイアウトが基本になります。
さっきの四つ目の着眼点と、ここでつながるんですね。
つながります。
改善策の候補:セル生産方式
講師はもう一つ、改善策の候補としてセル生産方式を持っておいてください、と言います。一人の作業者が多くの工程を担当する方式で、個別生産や多品種少量生産に非常に向いています。
大きな工場のイメージですけど、中小企業の事例でも使えるんですか。
使えます。多品種少量生産の改善方策として、中小企業でも活用できる可能性が大きい方式です。メリットは、多品種少量への柔軟な対応、生産量の調整のしやすさ、問題が起きてもライン全体を止めずに済むこと、進捗の把握しやすさ、多能工の育てやすさ、モチベーション向上。
いいことばかりに聞こえますけど、デメリットもありますよね。
あります。全員が優秀な多能工である前提なので育成に時間がかかる。それと大量生産には向きません。提案するなら育成の負担にも一言触れると、丸投げの助言に見えません。
導入して終わり、と書かないようにします。
解答への落とし込み:前半は特定、後半は対応策と効果
解答への落とし込み方です。講師は、まず与件文の生産方式が個別生産であることを明示し、五つの管理ポイントのうち欠けている点を課題として特定する、と言います。これが前半です。後半は二段になります。
- ①生産管理面の対応:基準日程の設定と進度管理の徹底、多能工化による受注変動への対応、段取り時間の短縮
- ②期待される効果:納期遵守と生産性向上
この順なら崩れません、と講師は言います。
字数の配分は、どう考えればいいですか。
生産方式の特定は一言で足ります。そこに字数を使わず、対応策と効果に厚みを置く。方式の説明が長い答案ほど、助言が薄くなります。
分かります。分類が書けると、つい長く書いてしまうんですよね。
点になるのは後半です。もう一つの型、強みを活かしたまま改善する提案なら、個別生産を維持したうえで、共通する部品・工程を洗い出して標準化・共通化を進め、セル生産方式で多能工化と生産性向上を両立させる。
一品ものなのに、共通する部分なんてあるんですか。
たとえ:料理の下ごしらえ
リクエストは毎回違っても、だしを取る、下ごしらえをする部分は共通ですよね。先にまとめてやっておける。
あー、全部が一品ものというわけじゃないんですね。共通の下ごしらえに当たる部品や工程だけ標準化する。
そのとおりです。顧客ごとの仕様差は残したまま、共通部分だけ効率を上げる。だから対応力を失わずに生産性が上がる。この理屈を一行入れられると説得力が変わります。
効果まで書き切る、ということですね。
混同と誤答のポイント4つ
最後に、混同と誤答のポイントを四つ。一つ目は、個別生産を受注生産と同じものとして扱ってしまう誤りです。
私、正直ここが曖昧です。ほとんど同じ場面で出てきますよね。
出てきますが、軸が違います。個別生産は物の流し方の分類、受注生産は受注タイミングの分類。個別受注品は両者の組み合わせになりやすいですが、常に一致はしません。
寄りやすいだけで、別の軸なんですね。
| 分類 | 何の分類か |
|---|---|
| 個別生産 | 物の流し方 |
| 受注生産 | 受注タイミング |
二つ目は、納期遅延や生産性の低さに対して、標準化や共通化を検討せずに、いきなりロット生産や連続生産への全面転換を提案してしまう誤りです。
冒頭の、強みを潰すパターンですね。
多品種少量への対応力を求められている与件文で、それを捨てる提案は選べません。三つ目は、個別生産は非効率だと決めつけて「見込生産に変える」とだけ書いてしまう誤り。
段取り短縮も多能工化も標準化も、検討しないまま結論に飛ぶわけですね。
そのとおりです。改善余地が三つもあるのに、そこを検討せず方式ごと変える助言は、材料を使い切っていない答案に見えます。四つ目は、セル生産方式を連続生産やライン生産の一種だと誤解すること。
え、私、ラインの仲間だと思っていました。
実際は一人または少人数が多工程を担当する方式で、むしろ個別生産や多品種少量生産に向いています。誤解していると、改善策として提案する手前で止まってしまう。
| 誤答 | 実際は |
|---|---|
| 個別生産と | 物の流し方と |
| 標準化せず | 対応力を |
| 「見込生産に | 段取り短縮・ |
| セル生産方式を | 一人または |
本番のチェックポイント
聞き手は「全部、自分がやりそうでした」と言い、最後に本番のチェックポイントの整理を頼みます。講師が挙げたのは四つです。
本番のチェックポイント4つ
- 一品もの・その都度設計という記述で個別生産だと特定し、なぜその方式を選んでいるかまで押さえる
- 基準日程、計画と実績の差異、段取り時間、多能工化、余力の把握という五つの箱で「できていない」記述を探す
- 方式の特定は短く、生産管理面の対応と期待される効果に字数を配分する
- 強みを伸ばす出題なら、標準化・共通化とセル生産方式で、対応力を残したまま生産性を上げる
分類して終わりにしない。欠けている管理ポイントを探して、対応策と効果まで書き切る。そこを持ち帰ります。
その手順で向かえば、個別生産は取りこぼしにくい論点になります。次に生産の事例を解くとき、必ずこの五つの箱を意識してみてください。
まとめ
動画の整理
- 出題は二つ:個別生産に特有の課題(納期遅延・生産性の低さ・標準化の遅れ)を特定して改善策を助言させる問題と、強みを他の生産方式の要素と組み合わせて伸ばさせる問題
- 先に押さえるのは「この会社はなぜ個別生産を選んでいるのか」。理由を踏まえた提案かどうかが分かれ目
- 着眼点は五つ:方式の特定、課題、強み、裏づけ、管理面
- 管理ポイントは五つ:基準日程の設定、計画と実績の差異、生産期間・段取り替えの時間の短縮、多能工化、工程の余力の把握。「できていない」記述があるものだけが課題の所在
- 答案は、前半で方式の特定と課題、後半で生産管理面の対応と期待される効果。方式の特定は一言で足りる
- 誤答は四つ:個別生産と受注生産の混同、いきなりの全面転換、「見込生産に変える」だけ、セル生産方式をライン生産の一種とする誤解
聞き手の言葉でいえば、分類して終わりにしない、欠けている管理ポイントを探して、対応策と効果まで書き切る、ということです。
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