トヨタ生産方式の概要
事例Ⅲ 第12回
「事例Ⅲの与件文に、仕掛品が工場の隅に山積みになっている、という一文が出てきたら、あなたはそこにどう反応しますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは、事例Ⅲでの出方、与件文のサイン四つ、二つの柱と七つのムダ、答案の三つのステップ、よく間違える三つのポイントを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「仕掛品が山積み」の一文を見たとき
動画は、講師から聞き手への問いかけで始まります。事例Ⅲの与件文に「仕掛品が工場の隅に山積みになっている」という一文が出てきたら、あなたはそこにどう反応しますか、という問いです。
聞き手の反応は、多くの受験生に近いものです。「在庫が多いんだな」とは思う。でも、そこから先が正直あやふやで、「在庫を減らしましょう」と書いて終わってしまう気がする、と言います。講師も、トヨタ生産方式は知識としてはちゃんと知っているのに、与件文の一文を見た瞬間に「あの考え方を使うんだ」と気づけるかどうかは別の話だ、と応じます。
過去問の解説を見ると、在庫の話だけじゃなくて、手待ちとか不良とか、いろんな問題が同じ考え方でまとめて処理されていて、なんでそこまで広げられるんだろうって思ってました。
では、そこを今日は詰めていきましょう。
このページでは動画の流れにそって、事例Ⅲでの出方、与件文のサイン、二つの柱、七つのムダ、答案の型、間違えやすい点の順にまとめます。バラバラに見える問題を、一つの枠組みで貫いて処理できるか。そこが動画の主題です。
事例Ⅲでの出方:土台になる考え方
講師はまず、この論点が事例Ⅲでどう出るかから説明します。在庫の滞留、不良の発生、作業の手待ち、必要以上に作ってしまう過剰生産。こういう問題への対策を提案する場面で、土台の考え方として使われます。
土台、というのはどういう意味ですか。
個別の改善策を、バラバラに思いつきで並べないということです。在庫を減らす、不良を減らす、と別々に書くのではなく、「徹底的にムダを排除する」という一貫した思想のもとに、複数の改善策を体系立てて提案できるかがポイントになります。
バラバラに並べるのと、一つの考え方でまとめるのとでは、答案の見え方がだいぶ違いそうですね。
違います。採点する側からすると、後者のほうが「この受験生は生産の全体像を理解している」と伝わるんです。
つまり、改善策の中身そのものより先に、「ムダを排除する」という一本の筋のもとに並べられているかが問われます。では、与件文のどんな記述が出たらこの視点に切り替えるのか。講師は四つ挙げます。
与件文のサイン四つ
一つ目は、仕掛品や完成品の在庫が多く滞留している、必要以上に作ってしまっているという記述。二つ目は、作業者が手待ちの時間を抱えている、工程間の運搬に時間がかかっているという記述です。
この二つには、講師から注意が添えられています。いずれも、原因が作業者ごとの技術・熟練度のばらつきにあると読み取れる場合は、IEの話になる、というものです。在庫や手待ちの記述があっても、原因が何かを読み取って論点を切り分ける必要がある、ということです。
手待ちとか運搬って、一見ただの「効率が悪い」って話に見えませんか。
見えます。でも、そこで反応できるかが差になるんです。
三つ目は、不良品や異常が発生しても、その場で気づかず後工程まで流れてしまうという記述。四つ目は、各工程がバラバラのペースで生産していて、工程間で仕掛品が偏っているという記述です。
| 記述 | 与件文の内容 | 聞き手の見立て |
|---|---|---|
| 一つ目 | 在庫の滞留、作り過ぎ | 在庫の話 |
| 二つ目 | 手待ち、運搬の時間 | 時間の話 |
| 三つ目 | 不良・異常の流出 | 品質の話 |
| 四つ目 | ペースの不ぞろい | ペースの話 |
四つとも、パッと見はぜんぶ別の問題に見えます。在庫の話、時間の話、品質の話、ペースの話って。
そこが今日いちばん伝えたいところです。この四つ、実は全部「同じ枠組み」で整理できるんですよ。
二つの柱と「ムダの排除」
その「同じ枠組み」が何か。講師は、トヨタ生産方式を、大きく二つの柱と、それが目指す「ムダの排除」という考え方で整理します。
| 柱 | 中身 |
|---|---|
| ジャスト | 必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産・供給する |
| 自働化 | 良し悪しの判断を機械にも組み込み、異常が出たら自らラインを止める |
一つ目の柱がジャストインタイムです。必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産・供給するという考え方です。二つ目の柱が自働化で、生産の良し悪しの判断を人間だけでなく機械にも組み込んで、不良品や異常が発生したら、作業者や機械が自らラインを止める仕組みだと説明されます。
必要な分だけ、というのは、作りすぎない、ということですよね。
そうです。もう一つの柱が自働化です。
止める、というのがポイントなんですね。
自働化のたとえ話:洗濯機が止まる理由
自働化はイメージしにくいので、講師はたとえ話を出します。
たとえ:家の炊飯器や洗濯機
異常な負荷や水漏れを感知すると、機械が自分の判断で運転を止めます。人が横についてずっと見張っていなくても、おかしいと気づいたら自分で止まる。これが自働化のイメージです。
あ、それ分かります。洗濯機が「エラー」って表示して止まること、ありますよね。あれは、止まらずに動き続けたら、もっとまずいことになるからですよね。
そのとおりです。工場のラインも同じで、異常なまま流し続けると、不良品がどんどん後工程に運ばれてしまう。だから、良し悪しを判断する力を機械や作業者に持たせて、その場で止める。これが自働化です。
私、自働化って聞くと、機械化とか自動化と同じイメージを持ってしまってました。でも今の話だと、止まる理由が全然違いますね。
そこは本当によく混同されるので、後でもう一度触れます。
二つの柱は、セットで効く
講師は続けて、この二つの柱は別々の話ではなく、セットで効いてくるものだと強調します。必要な量だけを流すジャストインタイムは、異常があってもそのまま流れてしまうと、少ない在庫の中で不良がすぐに全体に響いてしまいます。だからこそ、異常が出たら自ら止める自働化が、土台として要るのです。
在庫を絞れば絞るほど、止める仕組みのほうが大事になる、ということですか。
そういうことです。二つの柱がそろって初めて、少ない在庫でもムダなく回る仕組みになる。片方だけを与件文の解答に書いて終わらせず、両方の視点を持っておくと、提案に厚みが出ます。
答案を書くときは、ジャストインタイムか自働化のどちらか片方で終わらせない。この点は、あとの「答案の型」でもう一度出てきます。
七つのムダに当てはめる
柱が二つ分かったところで、もう一つ押さえるのが七つのムダです。講師が挙げたのは次の七つです。
- 作り過ぎのムダ
- 手待ちのムダ
- 運搬のムダ
- 加工そのもののムダ
- 在庫のムダ
- 動作のムダ
- 不良を作るムダ
さっきの四つの与件文の記述、この七つに当てはめて考えるということですか。
そのとおりです。
講師の当てはめはこうです。仕掛品や完成品が滞留している、必要以上に作ってしまっている記述は、作り過ぎのムダと在庫のムダ。手待ちの時間や運搬に時間がかかっている記述は、手待ちのムダと運搬のムダ。不良品が後工程まで流れてしまう記述は、不良を作るムダ。工程間で仕掛品が偏っている記述は、作り過ぎと在庫のムダにつながります。
| 与件文の記述 | 当てはまるムダ |
|---|---|
| 在庫の滞留、作り過ぎ | 作り過ぎ・在庫 |
| 手待ち、運搬の時間 | 手待ち・運搬 |
| 不良が後工程へ流れる | 不良を作る |
| 工程間で仕掛品が偏る | 作り過ぎ・在庫につながる |
なるほど、七つのどれに当たるかを分類すると、原因の特定と改善策の方向性が立てやすくなるんですね。
そうです。ここまでが、与件文の情報を整理するための枠組みです。
答案の型:三つのステップ
枠組みができたので、これを解答へどう落とし込むか。講師が示す型は三つのステップです。
- 一つ目:与件文の問題、たとえば在庫の滞留、手待ち、不良の流出などを指摘する。
- 二つ目:その問題が七つのムダのどれに該当するかを明示する。
- 三つ目:具体策として、必要な量だけを必要なときに生産する体制、つまりジャストインタイムの考え方や、異常が発生したらすぐに止めて対処する仕組み、つまり自働化の考え方を提案する。
問題指摘、ムダの分類、それから改善の方向性、という順番ですね。
そうです。ここで大事なのは、個々の改善策を「ムダの排除」という一貫した考え方に紐づけて説明することです。それができると、事例Ⅲ全体を貫く視点として評価されやすくなります。
答案の一文に落とすと
聞き手が「実際に答案の一文として書くと、どんな形になるんですか」と尋ねます。講師が示した例が次の一文です。
答案の一文の例(動画より)
「仕掛品の滞留は作り過ぎ・在庫のムダに該当するため、必要な量を必要なときに生産する体制を整え、あわせて異常発生時には工程を止めて是正する仕組みを設けることで、ムダを排除し原価低減と生産性向上につなげる」
講師は、問題指摘、ムダの分類、改善の方向性、この三つが順番どおりに一文へ入っている、と言います。三つのステップを一文に並べたものです。
| 一文の部分 | ステップ |
|---|---|
| 仕掛品の滞留は | 問題の指摘 |
| 作り過ぎ・在庫のムダに該当するため | ムダの分類 |
| 必要な量を必要なときに生産する体制を整え、異常発生時には止めて是正する仕組みを設ける | 改善の方向性 |
| ムダを排除し原価低減と生産性向上につなげる | 一貫した考え方に紐づける |
私、いつも改善策を一個ずつ思いついた順に書いていたので、最初にムダの分類を挟むだけで、答案の筋が一本通る感じがします。
その通りです。具体的な改善の手段そのもの、たとえば現場でどう仕組みを回すかという話は、また別の切り口として押さえるべきものなので、今日はまず、この思想の骨格をしっかり持ち帰ってください。
骨格を先に固めてから、手段の話に進む、ということですね。
動画の範囲は、あくまで思想の骨格までです。現場でどう仕組みを回すかという具体的な手段は、別の切り口の論点として扱う、と講師は区切っています。
よく間違える三つのポイント
ここで講師は、よく間違えるポイントを三つ挙げます。
一つ目は、トヨタ生産方式を「在庫を減らすこと」だけの手法と単純化することです。そうすると、七つのムダのうち在庫のムダ以外、つまり作り過ぎ、手待ち、運搬、動作、不良などを見落としてしまいます。
さっきの与件文の四つの記述、私、最初は在庫の話にしか見えなかったので、まさにそのパターンにはまりそうでした。
二つ目は、自働化を、機械化によって人手を減らすという意味の自動化と混同することです。自働化は、機械や作業者が異常を検知して自らラインを止める仕組みという、品質や異常対応の考え方である点が違います。
さっきの洗濯機のたとえで言うと、止まる理由が「省人化」じゃなくて「おかしいと気づいたから」なんですよね。
そのとおりです。
三つ目は、ジャストインタイムを「とにかく在庫をゼロにすること」と捉えることです。需要変動への対応や、欠品リスクとのバランスを欠いた提案をしてしまいます。
在庫をゼロにしましょう、だけで書いてしまうと、逆に欠品リスクを無視した提案になってしまうんですね。
なります。必要な量を必要なときに、というのが本来の考え方であって、在庫をなくすこと自体が目的ではないんです。この三つ、どれも「トヨタ生産方式イコール在庫を減らす手法」という思い込みから生まれる誤りなので、根っこは一つだと思っておくといいです。
| 誤り | 本来の考え方 |
|---|---|
| 在庫を減らすだけの手法とみる | 在庫以外のムダも見る |
| 自働化=人手を減らす自動化 | 異常を検知して自ら止める |
| ジャスト | 必要な量を必要なときに |
試験ではここに注目
- 与件文に在庫の滞留、手待ち、運搬の時間、不良の流出、工程間のペースのばらつきの記述があるか
- その問題が七つのムダのどれに当たるかを分類できているか
- 改善の方向性に、ジャストインタイムと自働化の両方の視点が入っているか
- 「在庫を減らす」だけで終わらず、一貫した思想として書けているか
まとめ
動画の最後に、聞き手は「二つの柱と七つのムダ、それに三つの誤答パターン、一通り繋がりました」と話し、本番で使うときのポイントのまとめを講師に頼みます。講師の答えは、次の三段階を一貫した思想として答案に落とし込む、という流れでした。
動画の整理
- 事例Ⅲでは、在庫・不良・手待ち・過剰生産への対策を提案する場面で、トヨタ生産方式が土台の考え方になる。改善策をバラバラに並べず、「徹底的にムダを排除する」という一貫した思想のもとに体系立てて提案する
- 与件文のサインは四つ:在庫の滞留・作り過ぎ、手待ち・運搬の時間、不良の流出、工程間のペースのばらつき。一つ目と二つ目は、原因が熟練度のばらつきならIEの話になる
- 二つの柱はジャストインタイム(必要なものを、必要なときに、必要な量だけ)と自働化(異常が出たら自らラインを止める)。セットで効くので、両方の視点を持つ
- 七つのムダは、作り過ぎ・手待ち・運搬・加工そのもの・在庫・動作・不良を作る。与件文の記述をこれに分類する
- 答案の型は、問題の指摘、ムダの分類、改善の方向性の三つのステップ
- 間違えやすいのは、在庫を減らすだけの手法とみること、自働化と自動化の混同、ジャストインタイムを在庫ゼロと捉えること
次に与件文で在庫や手待ちの記述を見つけたら、まず七つのムダのどれに当たるか、そこから考えてみます。
在庫の一文を見て「減らしましょう」で止まるのではなく、まず七つのムダのどれに当たるかを分類する。そこから、ジャストインタイムと自働化の考え方で改善の方向性を示す。この順番を持っておけば、バラバラに見えた記述が、一本の筋で書けるようになります。
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