IE(Industrial Engineering)
事例Ⅲ 第16回
「事例Ⅲの過去問を解いていて、『標準化』とか『マニュアル化』って、自分でも一度は書いたことありますよね」。動画はこんな問いかけから始まります。知識としては知っているのに、与件文を読んで「ここはIEの出番だ」と気づけるかというと手が止まる。このページでは動画の流れにそって、IEに気づく与件文のサイン4パターン、方法研究と作業測定の2本柱、解答の3段の型、やってしまいがちなミス、手法の粒度の違いをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「標準化」と書けても、与件文で気づけない
事例Ⅲの過去問を解いていて、「標準化」や「マニュアル化」と、自分でも一度は書いたことがありますよね。動画は、講師のこの問いかけから始まります。聞き手の答えは「あります」。ただ正直なところ、「効きそうだから書いておこう」くらいの感覚で書いていたそうです。
知識としては知っているのに、いざ与件文を読んで「あ、ここはIEの出番だ」と気づけるかというと、そこで手が止まる人が多い、と講師は言います。聞き手も「まさに私です」と応じます。作業のばらつきや品質不安定と書いてあっても、それがIEにつながるとは、本番ではなかなか結びつかない。
そこで動画は、IE(Industrial Engineering)の「気づき方」と「使い方」に絞って整理していきます。このページも、次の順に動画の流れをたどります。
- IEが事例Ⅲで出てくる場面
- 与件文でIEに気づくサイン4パターンと、別の論点との見分け方
- IEを整理する2本柱:方法研究と作業測定
- 解答の型:問題指摘、標準の設定、マニュアル化と教育
- やってしまいがちなミス3つ
- 工程分析・作業分析・動作分析、時間研究・稼働分析の粒度の違い
事例ⅢでIEが出てくる場面
聞き手の最初の質問は、IEは事例Ⅲだとどういう場面で出てくることが多いのか、でした。講師が「一番多い」と挙げたのは、作業者ごとの技術や熟練度にばらつきがあって、品質や生産性が不安定になっている場面です。聞き手は「ベテランと若手で仕上がりが違う、みたいな書き方ですよね」と、すごくよく見る記述だと応じます。
もうひとつは、リードタイムが長い、コストが高いといった問題への対策を提案する場面です。ここでもIEが使われます。
- 作業者ごとの技術・熟練度のばらつきで、品質や生産性が不安定になっている場面(一番多い)
- リードタイムが長い、コストが高いといった問題への対策を提案する場面
聞き手が「IEそのものの意味を細かく問われるわけじゃないんですね」と確かめると、講師は「そうなんです」と答えます。むしろ大事なのは、その提案が低コスト化とリードタイム短縮のどちらに効く話なのかを、自分の中で整理しながら書けるかどうかです。
そこ、区別せずに「標準化すればいいです」だけ書いて終わってました。
それだと得点が伸びにくいんです。目的を意識するだけで、答案の説得力がぐっと変わります。
与件文のサイン4パターン
「与件文のどんな記述が出てきたら、IEだと気づけばいいんですか」。聞き手のこの質問に、講師は代表的な4パターンを挙げます。
- 作業者ごとの技術・熟練度のばらつき:そのせいで品質や生産性が不安定、という記述。最初に話した場面と同じものです。
- 作業手順が標準化・マニュアル化されておらず、属人的に行われている:聞き手は、「特定のベテラン作業者に頼っている」のような書き方で出てくる定番の記述だと言います。
- 特定の工程で仕掛品や在庫が滞留している、工程間の運搬に時間がかかっている:聞き手が「作業や工程のやり方そのものを見直す話につながりそうですね」と受けると、講師は「まさにそこにつながっていきます」と答えます。
- 設備や作業者の稼働率が低い、または把握できていない:この4つ目には、あとで見るように絞り込みの条件があります。
この4つを頭に入れておけば、与件文を読んでいる途中で「あ、これIEだ」って線を引けそうです。
しかも、この4パターンはバラバラの話ではなくて、根っこでつながっています。
別の論点との見分け方
講師は、4パターンのうち2つ目から4つ目に「ただし」と条件を付けています。同じような記述でも、セットで出てくる情報によっては、IEではなく別の論点の話になる、という注意です。
| サイン | こう出たら | 別の論点 |
|---|---|---|
| 属人化・標準化未実施 | 段取り替え作業そのものの記述 | 段取改善 |
| 属人化・標準化未実施 | 品質保証の体制全体の記述とセット | TQM |
| 属人化・標準化未実施 | 複数のトヨタ | 生産方式改善 |
| 仕掛品・在庫の滞留 | JITや自働化など生産方式全体とセット | トヨタ |
| 稼働率の低下 | 原因が老朽化や故障 | 設備管理 |
| 稼働率の低下 | 原因が段取り替えの時間 | 段取改善 |
少し補います。2つ目のサインで、品質保証の体制全体の記述というのは、検査部門への偏りやクレーム放置などを指します。3つ目のサインは、ジャストインタイムや自働化といった生産方式全体の枠組みに関連づけて、他の複数の問題とセットで出てくる場合にトヨタ生産方式の話になります。
4つ目のサインは特に絞り込みが必要です。講師は、稼働率低下の原因が作業者の技術・熟練度のばらつきや作業のやり方にあると読み取れる場合に絞ってください、と言います。老朽化や故障など設備そのものの問題が原因なら設備管理の話、段取り替えにかかる時間が原因なら段取改善の話です。
4つは根っこでつながっている
講師は、4パターンはバラバラの話ではなく、根っこでつながっていると言います。作業のばらつきや属人化があるから、仕掛品が滞留したり、稼働率が把握できなかったりする。そういう関係です。
つまり、与件文の中でこの4つの記述を見つけたら、別々の問題じゃなくて、ひとつの原因から出ている症状として読んだ方がいいんですか。
そうです。そう読めると、解答でも「ばらつきという根っこの問題に、IEで手を打つ」という筋の通った書き方になります。
個別の記述をバラバラに拾うんじゃなくて、原因と症状の関係で読む、ということですね。
整理の2本柱:方法研究と作業測定
気づいたあとに大事なのが、拾った情報をどう整理するかです。講師は、IEは大きく2つの柱で考えるとすっきり整理できると言います。
- 方法研究:工程全体の問題を工程分析で把握して、作業のやり方そのものを作業分析・動作分析で見直す側です。
- 作業測定:時間研究で作業にかかる時間を測って、稼働分析で設備や人がどれだけ稼働しているかを把握する側です。
つまり、「やり方を見直す」のと「時間・稼働を測る」のと、2つの角度があるってことですか。
そうです。たとえば、初めてのアルバイト先で、ドリンクの作り方が人によってバラバラで、新人がなかなか一人前になれないカフェがあったとします。
動画のたとえ:カフェのドリンク
- 作る手順そのものを見直して「この順番で作ればムダがない」というやり方を決めるのが方法研究側です。
- そのうえで、その手順でどのくらい時間がかかるかを測って「これが標準の時間です」と決めるのが作業測定側です。
手順を決めるのと、時間を測って基準にするのと、両方セットなんですね。だから答案にも「標準作業」と「標準時間」の両方が出てくるんですか。
その通りです。
講師の整理はこうです。この2本柱で分析した結果を標準作業・標準時間の設定に落とし込み、標準化・マニュアル化を通じて低コスト化とリードタイム短縮につなげる。この流れで整理すると、与件文の情報も答案もすっきりまとまります。
解答の型は3段階
整理ができたとして、実際の解答はどういう型で書けばいいのか。聞き手の問いに、講師は3段階の型を示します。
- 1段目:与件文の問題、たとえば品質のばらつきやリードタイムの長さ、稼働率の把握不足を、ちゃんと指摘する。
- 2段目:IEの手法、たとえば工程分析や動作分析、時間分析などを使って作業や工程を分析して、標準時間・標準手順を設定する方向性を示す。
- 3段目:標準化した内容を文書化・マニュアル化して、教育・訓練を通じて、誰でも早期に習熟できる仕組みを作るところまで書き切る。
ここで「分析して終わり」じゃなくて、標準を作るところまで書くんですね。
そうです。最後に、標準化した内容を文書化・マニュアル化して、教育・訓練を通じて誰でも早期に習熟できる仕組みを作る、というところまで書き切ります。
問題指摘、分析して標準を作る、マニュアル化して教育、という3段ロケットなんですね。
いいまとめ方です。
モチベーションとのトレードオフ
講師はもう一つ、標準化・マニュアル化を提案するときは、作業者の自由な工夫やモチベーションとのトレードオフにも触れられると、より実践的な解答になると言います。
モチベーションの話まで書くと、印象が変わるということですか。
そうなんです。標準化するとばらつきは抑えられる一方で、作業者が自分の裁量で工夫する余地は減ります。そこへの目配りがある答案は、一歩踏み込んだ答案として評価されやすいんです。
やってしまいがちなミス3つ
聞き手がやってしまいがちなミスを尋ねると、講師は3つのパターンを挙げます。
| ミス | 抜け落ちること |
|---|---|
| IEを「作業を細かく分析すること」とだけ理解する | 低コスト化・リード |
| 標準化・マニュアル化の利点だけを書く | モチベーション維持、提案制度やジョブ |
| 手法名を覚えることに気を取られる | 与件文の具体的な問題との結びつき |
1つ目は、一番多いパターンです。IEを「作業を細かく分析すること」とだけ理解してしまい、最終的に何のために分析するのか、低コスト化やリードタイム短縮という目的が答案に反映されません。聞き手は「あ、それ私です。分析手法を並べるだけで満足しちゃってました」と言います。
2つ目は、標準化・マニュアル化を提案するときに、属人的な作業のばらつきを抑えられる利点だけを書いてしまうパターンです。作業員のモチベーション維持、提案制度やジョブローテーションとの組み合わせという視点が抜け落ちます。聞き手は、さっきの3段目の話だと受け止め、トレードオフに触れないとそこで減点されるかもしれないと確認しました。
3つ目は、動作分析・時間分析といった手法名を覚えることに気を取られて、与件文の具体的な問題、何が・なぜ問題かとの結びつけが弱くなるパターンです。手法名だけ丸暗記した状態とは、似ているようで違う、と聞き手は言います。
手法の粒度の違い
手法名を使うときは、それぞれが何を見ているのかを区別しておく必要があります。まず方法研究です。講師によると、方法研究の中で一番粒度が大きいのが工程分析で、工程や作業手順の全体を見て「どこに問題がありそうか」をまず把握する役割です。
全体をまず俯瞰する感じですか。
そうです。そこで当たりをつけた工程を、作業分析でやり方の流れとして系統的に見て、さらに動作分析でもっと細かく人の動きそのものを見て最適化する、という順番でズームインしていくイメージです。
作業の流れ全体を見るのと、一つひとつの動きを見るのとで、粒度が違うんですね。
作業測定も同じです。時間研究は所要時間を測る話で、稼働分析は稼働率を把握する話です。この違いを漠然としたまま使うと、与件文のどの記述にどの手法が対応するのか結びつかなくなる、と講師は言います。
| 手法 | 柱 | 見ているもの |
|---|---|---|
| 工程分析 | 方法研究 | 工程や作業手順の全体 |
| 作業分析 | 方法研究 | やり方の流れ |
| 動作分析 | 方法研究 | 人の動きそのもの |
| 時間研究 | 作業測定 | 所要時間 |
| 稼働分析 | 作業測定 | 稼働率 |
手法ごとに「何を見ているか」を意識しておくと、与件文の記述と対応させやすいってことですね。
そうです。
まとめ
動画の整理:本番でIEを使うとき
- まず与件文の記述に反応する:ばらつき・属人化・滞留・稼働率不明を見つけたらIEを疑う
- 次に、方法研究と作業測定の2本柱で情報を整理する
- 問題指摘、分析して標準作業・標準時間を作る、マニュアル化して教育、という3段の型で書く
- 最後に、モチベーションとのトレードオフへの目配りを忘れない
講師は「この流れさえ押さえておけば、IEが出てきたときにもう手が止まることはないはずです」と言います。聞き手は最後に、知識はあったのに使えなかった部分が、今日でつながった気がします、と話しています。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
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