段取改善の手順と内段取りの外段取り化
事例Ⅲ 第19回
「知識としては知ってるのに、二次の本番だと『あれ、これどこで使うんだっけ』ってなりやすい論点を扱いますね」。動画は、講師のこの一言から始まります。このページでは動画の流れにそって、段取改善が問われる場面、与件文のサイン、内段取りと外段取り、整理の手順、答案の書き方、混同しやすいポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識はあるのに、本番で「どこで使うんだっけ」となる
動画が扱うのは、知識としては知っているのに、二次の本番だと「あれ、これどこで使うんだっけ」となりやすい論点です。テーマは段取改善。段取改善をどう見抜いて、どう使うかを、講師は現場目線で話していきます。
あー、まさに私です。段取り替えの話ですよね。1次で習った内容だから、意味は分かってるつもりなんですけど。
そうなんです。知識はある。問題は、事例Ⅲの与件文を読んだときに、これが使える場面だってどこで気づけるか、なんですよね。
そこなんです。生産の話がずらっと並んでて、どの記述に反応すればいいのか本番だと分からなくなっちゃって。
段取改善が問われる場面
典型的なのは、段取り替えに時間がかかって、ラインの稼働率が落ちている場面です。もう一つは、多品種で小ロットの生産をしていて、段取り替えの回数自体が多く、納期やコストに響いているパターンです。
あ、それ聞いたことあります。多能工による多工程持ちとか、ラインバランシングと一緒に出てくるやつですよね。
そうそう、まさにその3つがセットで、納期改善の柱として扱われることが多いんです。段取改善は、その中の一つっていう位置づけです。
じゃあ、あの3つのうちどれを使うかは、与件文のどこで見分けるんですか?
そこは着眼点の話で詳しくやりますけど、段取改善のポイントは、思いつきで効率化するんじゃなくて、決まった手順に沿って進められるかどうかが問われる、ってことなんです。
手順があるんですね。じゃあその手順通りに拾えば、部分点が積み上がる感じですか?
そうです。逆に言うと、手順を飛ばして「工夫して短くしましょう」だけで終わると、点が伸びにくいんですよ。
与件文のサイン
段取改善のサインには、直接的な書き方もあれば、もう少し遠回しな書き方もあります。講師が挙げた記述は次のとおりです。
- 多品種少量生産で、段取り替えの回数が多い
- 段取り替えのたびに設備が長時間停止し、稼働率が下がっている
- 段取り替え作業が特定の熟練者に依存している、あるいは標準化されていない
- 大ロットでの生産に偏っていて、小ロット化を検討したい
稼働率の低下については、原因の書かれ方で行き先が変わります。
あー、稼働率が下がってるってだけ見ると、私、設備の老朽化とか、そっちに引っ張られちゃいそうです。
そこが分かれ目です。稼働率低下の原因が段取り替えだと明記されてたら、迷わずこっちに寄せていい。逆に、稼働率低下の原因が作業者の技術や熟練度のばらつきにあるなら、それはIEの話になります。
あとは、段取り替え作業が特定の熟練者に依存している、あるいは標準化されていない、という記述も反応ポイントです。
それって、属人化の話ですよね。
そうです。
もう一つ、大ロットでの生産に偏っていて、小ロット化を検討したい、という記述も、実は段取改善のサインです。
え、それはどうしてですか?小ロット化したいなら、また別の話じゃないんですか?
段取りが短縮できれば、切り替えにかかるコストが下がるので、小ロット化がしやすくなるんです。だから、小ロット化を目指したいという記述の裏側に、段取り短縮の必要性が隠れてることがあるんですよ。
なるほど、小ロット化の話が出てきたら、段取りの話とセットで考える発想、持ってなかったです。
内段取りと外段取り:夕食づくりのたとえ
与件文から拾った情報の整理に入る前に、講師はたとえ話をします。
夕食づくり
家で夕食を作るとき、鍋を火にかけている間はコンロが埋まっていて、他のことができません。逆に、野菜を切る、調味料を計るといった作業は、火をつける前でもできます。
あー、下ごしらえですね。
そうです。この、火を止めないとできない作業が内段取り、火をつける前や後でもできる作業が外段取りに近いイメージです。機械を止めないとできない作業が内段取り、止めなくてもできる作業が外段取りです。
なるほど、下ごしらえを先に全部済ませておけば、コンロを使う時間そのものは短くなりますもんね。
本番で見分けるコツは、与件文に「機械を止めて」「設備を停止して」と書かれている作業なのか、止めずにできる準備の作業なのかを意識して読むことです。
読むときの目のつけどころが分かった気がします。
整理の手順
整理は、次の順番で進めます。
1つ目は現状分析です。各工程の所要時間データを取って、段取りにどれだけ時間がかかっているかを調べます。ここが出発点です。
データを取らずにいきなり改善策、はダメなんですね。
ダメですね。
2つ目は、内段取りと外段取りの切り分けです。機械を止めなければできない作業と、止めなくてもできる作業を、まず分けます。
さっきの下ごしらえの話ですね。
そうです。
3つ目は、内段取りの外段取り化です。内段取りの作業を見直して、事前に準備できる部分は、機械を止めずに済む外段取りへ移します。手段としては、作業の簡素化や標準化、治工具の改造、調整作業を減らすこと、並行作業をすること、作業訓練を徹底することがあります。
治工具の改造とか、結構具体的な手段まで押さえておくべきなんですね。
そうなんです。ここが、後で解答の型のところで効いてきます。
4つ目は、内段取りと外段取り、それぞれの時間そのものを短くしていくことです。これをシングル段取り化といい、10分を切るくらいまで短縮することを目指します。
| 手順 | 手段 |
|---|---|
| ③ 内段取りの | 作業の簡素化や |
| ④ シングル | 段取替えの |
10分以内かどうかで、シングルって呼ぶんですね。
そうです、桁が一桁の分数に収まる、という意味でシングルなんです。
最後の5つ目が、効果の評価と、他の工程への展開です。改善できたかどうかを確認して、同じやり方を他の工程にも広げるところまでがワンセットです。
この順番自体が、そのまま解答の骨組みになりそうですね。
まさにそうです。この順番を崩さずに整理するのが、一番のポイントです。
答案の書き方
答案ではまず、与件文にある段取り替えの問題点を指摘します。回数が多い、時間が長い、特定の人に頼っている、といった問題です。
問題点の指摘から入るんですね。
そうです。次に、内段取りと外段取りを分けて、内段取りの外段取り化を検討する方向性を示す。ここが一番の核心です。
さっきの、下ごしらえを先に済ませる発想ですね。
その通りです。
そして最後に、具体策として、治工具の改良や標準化、作業のマニュアル化や訓練、それからシングル段取り化(10分以内を目指す)を挙げます。そのうえで、リードタイムの短縮や、仕掛品在庫の削減、小ロット化への対応につなげる、という流れで書きます。
効果まで書くんですね。
そうです。実はここ、すごく差がつくところなんです。「段取りを短くする」でとめてしまう答案が多いんですけど、内段取りの外段取り化っていう具体的な考え方まで踏み込めると、評価される解答になります。
あー、私、まさに「段取りを短くしましょう」でしか書けなかったタイプです。それだと何が足りないんですか?
「短くする」だけだと、結局何をすればいいのかが伝わらないんです。内段取りを外段取りに移すっていう視点があって初めて、治工具の改造とか標準化とか、具体的な打ち手につながるんですよ。
私、本番でそこを書き切れなくて点が伸びなかった気がします。
混同しやすいポイント
1つ目は、内段取りと外段取りの違い、つまり機械を止めるか止めないかという区別をあいまいにしたまま、「段取り時間全体を短くする」としか書けないパターンです。
それ、さっきの下ごしらえの区別ができてないってことですよね。
そうです。
2つ目は、シングル段取り化を「短時間で終わらせる」という結果だけで捉えて、治工具の改善や標準化、並行作業といった具体的な手段まで書けないパターンです。
手段が抜けてる答案、さっきの話とつながってますね。
つながってます。
3つ目は、段取改善の効果、つまりリードタイムの短縮や仕掛品在庫の削減に触れずに、時間短縮そのものが目的であるかのように書いてしまうパターンです。
効果を書かないと、何のためにやってるのか伝わらないですもんね。
そうなんです。段取りを短くするのは手段であって、目的はリードタイムを縮めたり在庫を減らしたり、小ロット化や受注機会の確保、コスト削減につなげることなんです。ここを見失わないでほしいです。
| 混同のパターン | 書けないこと |
|---|---|
| 内段取りと | 「段取り時間全体を |
| シングル | 治工具の改善・ |
| 効果に | リードタイム短縮・ |
まとめ:本番で使うときのチェックポイント
本番でのチェックポイント
- 段取り替えの回数や時間、属人化の記述を見たら反応する
- 内段取りと外段取りを分けて、内段取りを外段取りに移す方向で考える
- シングル段取り化の具体策まで挙げる
- リードタイム短縮や在庫削減、小ロット化への対応といった効果まで書く
講師は、この流れを崩さなければ、大きく外すことはない、と言います。
「短くする」で終わらせずに、外段取り化っていう発想まで書く。今日それが一番のポイントでした。
そうですね。知識はあるのに使えない、じゃなくて、この手順を思い出せれば、本番でも迷わず書けるはずです。
動画で聞く
続けて読む
- 第14回 トヨタ生産方式の改善の手段事例Ⅲ 手段と効果まで書き切る、トヨタ生産方式の改善の手段
- 第15回 OEMのメリット事例Ⅲ OEMが出たときの気づき方と答案の型
- 第16回 IE(Industrial Engineering)事例Ⅲ IEに気づく与件文のサインと解答の型
- 第17回 設備管理事例Ⅲ 設備管理 保全レベルを引き上げる視点
- 第18回 職務設計事例Ⅲ 職務設計で「ヒト」の側面から答える
- 第20回 総合的品質管理(TQM)事例Ⅲ クレームを全社改善のテーマに変える視点
- 第21回 品質管理事例Ⅲ 品質管理を、与件文のサインから答案につなぐ
- 第22回 検査事例Ⅲ 検査を答案でどう書くか。全数と抜取の使い分け
- 第23回 新QC7つ道具事例Ⅲ 「言葉を整理する道具」で終わらせない新QC7つ道具
- 第24回 定量発注方式の着眼点と解答への落とし込み方事例Ⅲ 定量発注方式を与件文でどう見抜いて答案に使うか
- 事例ⅢのWebテキスト一覧同じ科目の49本を一覧・検索
- 中小企業診断士 2次の講座トップ科目別プレイリスト・人気の講義・ファイナルペーパー

