フィルターバブルとエコーチェンバーの違いとは?ネットの情報操作を図解
経営情報システム 第46回
「あなたと最大のライバル企業が、全く同じタイミングで業界のトレンドを検索しているとします。2人の画面には、完全に異なる現実が映し出されているとしたらどうでしょうか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、クローラー、SEO、フィルターバブル、ソーシャルメディアの拡散効果と炎上、エコーチェンバーをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
同じキーワードなのに、見える画面がちがう?
動画は、こんな想像から始まります。あなたと、最大のライバル企業が、まったく同じタイミングで、自分たちの業界のトレンドを検索したとします。2人とも同じ検索結果の画面を見て、同じように市場を分析しているはず。普通はそう思いますよね。ところが、2人の画面には完全に異なる現実が映し出されているとしたら、どうでしょうか。動画は、これは作り話ではなく、今の私たちが直面している現実だと言います。
動画の狙いは、検索エンジンとソーシャルメディアの裏側にある必須のビジネス用語を、単なる暗記で終わらせず、情報社会の構造として理解することです。中小企業診断士の一次試験対策としても重要な基礎知識だと位置づけられています。クローラー、SEO、フィルターバブル、ソーシャルメディア、エコーチェンバーの順に、動画の流れにそって見ていきましょう。
検索エンジンの裏側:クローラーが目録をつくり続ける
動画はまず、インターネットを「無限に広がる巨大な図書館」にたとえます。その中を猛スピードで駆け回り、すべての本を目録に登録し続ける働き者の司書ロボット。専門用語でいうと、これがクローラーです。
動画の説明では、クローラーとは、インターネット内の情報を収集して、自動的に検索データベースに登録するプログラムのことです。Web上を蜘蛛の巣を這うように辿っていくことからスパイダー、自動で動くことからボットと呼ばれる場合もある、と紹介されます。クローラーが世界中を巡回して情報を集めてくれないと、検索エンジンは成り立ちません。
(補足:動画にない話です。Googleの公式ドキュメントでは、Googleは完全に自動化された検索エンジンで、クローラーというプログラムを使ってウェブを絶えず探索し、見つかったページをインデックスに登録している、と説明されています。「スパイダー」「ボット」という呼び名は、一次資料で確認できませんでした。動画の説明として読んでください。)
ここで動画は、素朴な疑問を出します。クローラーがすべての情報を正確に集めているなら、いちばん良い記事や素晴らしいサイトを作れば、自然に検索結果の1番上に表示されるはずではないか、という疑問です。
それなら、企業はどうして順位を上げるために、あんなに必死になっているんでしょうか。
そこがビジネスのシビアなところです。検索結果の上位に表示されるかどうかは、企業の売上に直結しますから。
2ページ目以降はほとんど見られないので、Webコンテンツが検索結果の上位に表示されるようにする施策が必要になる、というわけです。
SEOと、ブラックハット・ホワイトハット
その施策がSEO(サーチエンジンオプティマイゼーション、検索エンジン最適化)です。動画は、企業にとってSEOは死活問題だと言います。
(補足:Googleの「SEOスターターガイド」には「Googleでのランキングがトップになるような秘訣はありません」と書かれています。近道を探すより、ユーザーにも検索エンジンにも伝わるサイトをつくる、という方向です。)
ここで聞き手が、少し意地悪な見方を出します。検索エンジンのご機嫌取りのようなところがあるなら、図書館の目録システムをハッキングして、自分の本を無理やり1番目立つ棚に置くような裏技で、手っ取り早く順位を上げられるのではないか、というのです。
目録をハッキングして、自分の本を一番目立つ棚に置いたら、すぐ順位が上がりそうですよね。
実は、検索エンジンのアルゴリズムの抜け穴を悪用して順位を上げる不正な手法も存在します。それが、ブラックハットです。
動画の説明を整理すると、次のようになります。
- ブラックハット:アルゴリズムの抜け穴を悪用して順位を上げる不正な手法。昔は流行した時期もあったが、見つかると重いペナルティを受ける。図書館でいえば、つまみ出されるようなもの。
- ホワイトハット:検索エンジンのガイドラインに沿ってウェブサイトを最適化する正当な手法。ユーザーにとって本当に価値のある情報を提供するのが、いちばんの近道。
(補足:動画は「ブラックハット対策」「ホワイトハット対策」と呼んでいますが、一般には「ブラックハットSEO」「ホワイトハットSEO」と、SEOの手法の呼び名で説明されることが多いようです。「対策」は不正を防ぐ対策ではなく、手法の種類を指しています(日本語版Wikipedia「検索エンジン最適化」・二次資料)。)
(補足:ペナルティの重さについて。動画では「検索結果から完全に消される」という確認に「その通り」と答える場面があります。Googleのスパムに関するポリシーでは、違反したサイトは「検索結果での掲載順位が下がったり、まったく表示されなかったりすることがある」とされ、場合によっては手動による対策も行われます。完全に消えるのは、あくまで起こりうる結果の1つです。)
フィルターバブル:自分専用の心地よい泡
では、企業がホワイトハットで素晴らしいコンテンツをつくったのに、冒頭のライバルと違う画面を見ているのは、なぜでしょうか。動画によれば、検索結果を左右するもう1つの大きな要因が、私たちユーザー側の、無意識のうちに陥ってしまう現象です。それがフィルターバブルです。
過去の検索履歴などに応じた情報ばかりが表示される、つまりフィルターがかかることで起こる現象で、その結果、自分が見たい情報しか見えなくなり、情報に偏りが出ます。自分専用の心地よい情報のカプセルに閉じ込められているようなもので、泡の中にいるように他の情報が遮断されるので、フィルターバブルと呼ばれます。
自分の趣味や考え方に合う情報をシステムが先回りして用意してくれるなら、優秀で便利じゃないですか。
日常のエンターテイメントとしては快適です。ただ、新しい発見や、自分とは異なる重要な意見に出会うチャンスを奪われている、という問題があります。
動画の例で考えてみましょう。ビジネスで新しいアイデアを思いついて、検索したとします。過去の履歴から、システムが「この人はこのアイデアに賛成している」と判断すると、そのアイデアを肯定する記事ばかりが表示されます。すると「やっぱり俺のアイデアは最高だ、世の中のニーズがある」と勘違いしてしまいます。泡の中にいることに気づかないまま、情報に偏りが出る。ここがフィルターバブルの恐ろしいところで、客観的に調べているつもりなのに、ビジネスの意思決定では致命的な罠になる、と動画は注意します。
(補足:動画にない話です。この語は、パリサー(Eli Pariser)が2011年のTED講演や著書『The Filter Bubble』で広めたものです。)
ソーシャルメディア:巨大な広場でメガホンを持つ
ここから視点が変わります。検索エンジンが、個人の好みに合わせた泡をつくる話だったのに対し、人々が直接つながるソーシャルメディアでは、情報の広がり方がまったく違います。
動画の説明では、ソーシャルメディアとは、ブログやSNSなどのように、オンライン上で不特定多数の人が双方向で情報を発信できる媒体です。テレビや新聞のような一方通行ではない、という点がポイントです。動画はこれを、不特定多数の人が集まる巨大な広場で、メガホンを持って話すようなものにたとえます。面白いことを言えば、一瞬で広場中のヒーローになれます。
企業にとってのメリットは拡散効果の高さです。うまく活用すれば、企業や製品・サービスの知名度向上につなげられます。お金をかけなくても、ユーザー自身が情報を広めてくれるからです。
ただし、メガホンで話すということは、一歩間違った発言をすれば、四方八方から石を投げられるリスクもあるということです。インターネット上で非難や批判が殺到する現象が炎上で、これがソーシャルメディアのいちばんの影の部分だと動画は言います。拡散効果が高い分、ネガティブな感情も広がりやすい、まさに両刃の剣です。企業にできるのは、リスク管理を徹底すること。情報の文脈がそぎ落とされて、感情だけが一人歩きしやすい媒体だ、と常に意識しておく必要があります。
(補足:ソーシャルメディアや炎上の定義は、資料によって言い回しが違います。日本語版Wikipediaでは、炎上は「ウェブ上の特定の対象に対する批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」とされています(二次資料)。自分の教材の表現とも照らして確認してください。)
エコーチェンバー:同じ意見だけが返ってくる部屋
炎上のような派手な現象の裏で、ソーシャルメディアには、静かに進行するもう1つの現象があります。動画はそれを、フィルターバブルの集団版ともいえる現象として、エコーチェンバーと紹介します。直訳すると「反響室」です。
特定の意見や価値観を持つ集団の内部でだけ、情報が共有される現象です。フィルターバブルが個人の泡なら、エコーチェンバーは、同じ意見の人だけが閉じこもった反響室。SNSで自分と似た意見の人ばかりをフォローしていると、この反響室ができやすくなります。反響室の中で誰かが何か言うと、周りの全員が「そうだそうだ」とうなずき合っているような状態です。
その結果、異なる視点が排除されて、偏った情報が強化されます。そして、自分たちの偏った意見が、世界の絶対的な真理のように思えてしまいます。比べると、次のようになります。
| 観点 | フィルターバブル | エコーチェンバー |
|---|---|---|
| 動画の説明 | 過去の履歴などに応じた情報ばかりが表示される | 特定の意見や価値観を持つ集団内でのみ情報が共有される |
| たとえ | 自分専用の情報のカプセル、泡 | 同じ意見の人だけが閉じこもった反響室 |
| 起きること | 見たい情報しか見えず、偏りが出る | 異なる視点が排除され、偏った情報が強化される |
動画は、企業のマーケティングでも危険だと指摘します。自社SNSアカウントに集まる熱狂的なファンの声、つまり反響だけを聞いて、世の中全体が新商品を支持していると勘違いしてしまう失敗です。
ファンの声ばかり聞いて、世の中全体が支持していると思い込んでしまう、ということですよね。
よくある失敗です。エコーチェンバーの中で絶賛されても、一歩外に出たら誰も見向きもしない、ということが多々あります。
たとえ(自作の設例)
自社SNSのフォロワー2,000人にアンケートをとったら、1,560人が「買いたい」と答えました。割合は78%です。一方、街で無作為に200人に聞いたら、「買いたい」は24人で、12%でした。同じ新商品でも、反響室の内側と外側では、見える景色がこれだけ違いうる、という数字の例です(数値は説明用の架空のものです)。
(補足:動画の整理についての注意です。動画は、検索エンジンではフィルターバブル、ソーシャルメディアではエコーチェンバー、という流れで説明しています。ただし日本語版Wikipediaでは、フィルターバブルは検索サイトだけでなく、YouTube、TikTok、Facebookなどのパーソナライズでも起こるとされ、エコーチェンバーも、SNSの「フォロー」や「いいね」に応じたアルゴリズムが関わると説明されています。つまり、「検索は泡、SNSは反響室」ときれいに二分できるわけではありません。動画の整理は、違いをつかむための入り口と考えるとよいでしょう。)
泡や反響室から、どうやって抜け出す?
動画の最後は、リスナーへの問いかけです。フィルターバブルやエコーチェンバーのおかげで、私たちは技術的に、自分が心地よいと感じる世界だけで生きていけるようになりました。システムが自動的に快適な泡をつくってくれるからです。では、ビジネスで本当に革新的なアイデアを生み出そうとするとき、あるいは人生で重要な決断を下そうとするとき、あなたはこの心地よい泡や反響室から、どうやって意図的に抜け出しますか。
動画のヒントは、耳の痛い意見や、まったく異なる視点を、どう手に入れるかです。システムが自動的に用意する情報をうのみにせず、自らをさらしに行く勇気を持つこと。それがこれからの時代を生き抜く本当の知性かもしれない、と動画は言います。次に検索やSNSを開くとき、今日の話を少しだけ思い出してほしい、という呼びかけで終わります。
まとめ
この動画のまとめ
- クローラーは、ネット上の情報を収集し、自動的に検索データベースに登録するプログラム。スパイダーやボットとも呼ばれる、と動画は説明。
- SEOは、検索結果の上位に表示されるようにする施策。ホワイトハットはガイドラインに沿った正当な手法、ブラックハットは抜け穴を悪用する不正な手法で、重いペナルティを受ける。
- フィルターバブルは、過去の履歴などに応じた情報ばかりが表示され、見たい情報しか見えなくなる現象。新しい発見や異なる意見に出会う機会が失われる。
- ソーシャルメディアは、不特定多数が双方向で発信できる媒体。拡散効果は知名度向上につながる一方、炎上のリスクもあり、リスク管理が必要。
- エコーチェンバーは、特定の意見や価値観の集団内でだけ情報が共有され、偏った情報が強化される現象。
動画の用語を、自分の言葉で言えるか確認
動画では、フィルターバブルは「履歴で見たい情報しか見えなくなる個人の泡」、エコーチェンバーは「同じ意見の集団内で偏りが強まる反響室」という整理でした。この違いを自分の言葉で説明できるか、試してみてください。
補足の出典は、Google検索セントラル、日本語版Wikipedia(二次資料)などです。
動画で聞く
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