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中小企業診断士 1次試験

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ラスパイレス方式 vs パーシェ方式

経済学・経済政策 第4回

経済学・経済政策・マクロ経済学 00318分23秒2026年3月20日公開

「ニュースで語られるその物価って、一体何と比べて、どうやって計算されているんでしょうか?」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、物価指数のしくみ、数量を固定する理由、ラスパイレス方式とパーシェ方式の計算、代表的な指標との対応をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

ニュースの物価は、何と比べて計算している?

「物価が上がった」「物価が下がった」。毎日のニュースで耳にする話題で、スーパーの買い物や毎月の請求書を見るたびに、その変化を肌で感じている人も多いでしょう。動画は、ここで一度立ち止まります。ニュースで語られる物価は、いったい何と比べて、どうやって計算されているのでしょうか。

動画の説明では、物価とは、世の中にあるいろいろな財(もの)の価格の平均値のことです。聞き手は、個別のりんごやコーヒーの値段ではなく、全体のトレンドを見るための体温計のようなもの、とたとえていました。そして、物価が全体として上がったのか下がったのかを表す指標が物価指数です。

物価指数には、絶対的なルールがあります。計算の基準となる年を100とすることです。計算結果が100より大きければ物価上昇(たとえば105なら上がっている)、100より小さければ物価下落になります。ここまでは直感的でわかりやすい、と動画も言っています。

100より小さい物価下落基準年=100スタート地点100より大きい物価上昇例:95100例:105
動画の説明:基準の年を100にして、大きいか小さいかで上昇・下落を見ます。

(補足:動画は「前年と比較して」と話していますが、物価指数が直接くらべているのは基準年です。前年とくらべた変化を知りたいときは、前年の指数と今年の指数から別に計算します。たとえば前年が105、今年が107.1なら、前年比は107.1÷105で約2%の上昇です。この数値は自作の設例で、検算済みです。)

やっかいなのは、価格と数量が同時に動くこと

本題はここからです。聞き手が整理したように、商品の取引金額は「取引価格×取引数量」で決まります。ところが現実には、年が変われば価格が動くだけでなく、人々が買う数量も一緒に変わってしまいます。

たとえばキャベツの値段がものすごく上がったら、私はキャベツをやめて、安いもやしをたくさん買っちゃいますね。

賢い消費者なら当然の行動です。ただ、そうなると取引金額が変わっても、それが価格の変動のせいなのか、数量が変わったせいなのか、ごちゃ混ぜになってわからなくなってしまいます。

私たちが知りたいのは純粋な価格の変動だけなのに、買う量の変化がノイズになる。聞き手はこれを「走りながら動く的を狙うようなもの」とたとえていました。動画が示す解決策はとても明快です。計算式の中で取引数量を固定してしまうのです。

固定する数量は、基準年(過去の古い年)のものか、比較年(現在の新しい年)のものか、のどちらかです。数量が同じなら、金額の変化は純粋に価格の変化だけを反映します。聞き手の言葉でいえば、時間を止めてしまうような感覚です。動画によれば、このどちらに固定するかで、試験でも頻出する2つの有名な方式に分かれます。

ラスパイレス方式とパーシェ方式

方式固定する数量かごの中身
ラスパイレス基準年(古い年)昔の買い物かご
パーシェ比較年(新しい年)今の買い物かご

ラスパイレス方式は、取引数量を基準年の数量に固定します。式で表すと、分母が「基準年の価格×基準年の数量」の合計、分子が「比較年の価格×基準年の数量」の合計で、これに100をかけます。パーシェ方式は、取引数量を比較年の数量に固定します。分母が「基準年の価格×比較年の数量」の合計、分子が「比較年の価格×比較年の数量」の合計で、やはり100をかけます。

ラスパイレス方式パーシェ方式固定する数量基準年(古い)の数量固定する数量比較年(新しい)の数量分子比較年の価格×基準年の数量の合計分子比較年の価格×比較年の数量の合計分母基準年の価格×基準年の数量の合計分母基準年の価格×比較年の数量の合計分子 ÷ 分母 × 100 が物価指数
違いは、かけ合わせる数量が基準年のものか、比較年のものか、という一点だけです。

古い年の数量に固定ということは、去年買ったものと全く同じ中身の買い物かごを、今年の値段で買ったらどうなるか、を計算するイメージですか。

まさにそのイメージです。買い物かごの中身はずっと昔のまま、というルールですね。

パーシェ方式はその逆で、今の買い物かごの中身を、基準年の値段と今の値段で比べます。どちらも計算自体は、掛け算と足し算です。動画は、自分がいま何を固定して計算しているのかを見失わないことが大切だと強調していました。

覚え方:ラッパ

聞き手が、試験本番でラスパイレスが古い年か新しい年か迷いそうだ、と不安を口にしました。そこで、講師がテキストの隅で見つけたトリックとして紹介するのが、ラッパです。ラスパイレスが旧、パーシェが新の順番で、ラからパへ、古い数量から新しい数量。ラが基準年、パが比較年です。迷ったら頭の中でラッパを吹いてみてください、というのが動画の言い分です。

コーヒーとパンで計算してみる

数式を耳で聞くだけだと暗号のようなので、動画はA財・B財ではなく、コーヒーとパンだけがある世界で、実際に計算します。数字は次のとおりです。

品目基準年(価格×数量)比較年(価格×数量)
コーヒー10×100杯9×110杯
パン10×100個11×90個

安くなったコーヒーは多めに飲み、高くなったパンは買う量を減らした、という「値段が変わると買う量も変わる」現実の状況です。ここから、2つの方式で指数を出します。

ラスパイレス方式では、かごの中身をコーヒー100杯とパン100個に固定します。分母は基準年の価格での金額で、10×100+10×100=2000。分子は比較年の価格に変え、数量は100のままなので、9×100+11×100=900+1100=2000です。2000÷2000×100で100。コーヒーは値下がりし、パンは値上がりしましたが、過去の買う量のままなら、全体としてはプラスマイナス0と判定されます。

パーシェ方式では、今のかご、つまりコーヒー110杯とパン90個に固定します。分母は、この今のかごを昔の値段で買ったらいくらか、という金額で、10×110+10×90=1100+900=2000。分子は今の値段で今のかごを買った金額で、9×110+11×90=990+990=1980です。1980÷2000×100で99。物価はわずかに下がった、という結果になります。

ラスパイレス方式かごの中身は基準年コーヒー100杯+パン100個パーシェ方式かごの中身は比較年コーヒー110杯+パン90個分母(基準年の価格)10×100+10×100=2000分母(基準年の価格)10×110+10×90=2000分子(比較年の価格)9×100+11×100=2000分子(比較年の価格)9×110+11×90=19802000÷2000×100=100(変わらず)1980÷2000×100=99(わずかに下落)
同じ価格の動きでも、数量を固定する年が違うと、100と99に分かれます。

(補足:動画では、パーシェ方式の分子の計算で、パンの価格を「10」と言っている箇所があります。比較年のパンの価格は11なので、正しくは11×90=990です。校正済みの字幕では、直後の「990」と合うよう11にそろえました。)

ちょっと待ってください。全く同じ世界で、全く同じ価格の変動が起きているのに、数量を過去に固定するか現在に固定するかで、変わっていないという結果と、下がったという結果に分かれるんですか。これが物価指数のマジックなんですね。

そこが経済学の面白さであり、難しさでもあります。試験でも、固定する数量の違いで指数が変わる、という本質を理解しているかが問われるんです。

なぜ結果がずれるのか(補足)

(補足:動画にない話です。今回はラスパイレスが100、パーシェが99で、パーシェのほうが低く出ました。値下がりしたコーヒーを増やし、値上がりしたパンを減らしたので、比較年のかごは「安くなったほうに偏ったかご」になっているからです。一般に、値上がりした財の購入が減り、値下がりした財の購入が増える動きがあると、ラスパイレスはパーシェより大きくなりやすいとされています。)

自作の設例でも確かめてみましょう(検算済み)。基準年は、りんごが100円で10個、みかんが50円で20個。比較年は、りんごが130円で8個、みかんが45円で24個です。値上がりしたりんごを減らし、値下がりしたみかんを増やしています。

  • ラスパイレス:(130×10+45×20)÷(100×10+50×20)×100=2200÷2000×100=110
  • パーシェ:(130×8+45×24)÷(100×8+50×24)×100=2120÷2000×100=106

りんごが30%上がり、みかんが10%下がった同じ世界でも、110と106に分かれます。やはり、値上がりしたりんごの数量を減らした新しいかごで測るパーシェのほうが小さくなりました。

(補足:試験の範囲かどうかは別として、2つの方式の幾何平均(かけ算して平方根をとった値)を指数とするフィッシャー式もあります。コーヒーとパンの例なら、√(100×99)で約99.5です。動画には出てきません。)

代表的な指標:CPI、CGPI、GDPデフレーター

数式は、現実の指標にどうつながっているのでしょうか。動画の説明では、数量を古い年に固定するラスパイレス方式は、ニュースで最もよく耳にする消費者物価指数(CPI)に採用されています。消費者が実際に購入する段階での物価の変動を表す指標です。さらに、企業間で取引される商品の価格を反映した企業物価指数(CGPI)にも、ラスパイレス方式が用いられています。どちらも、過去の買い物かごの中身を基準にして、いまの価格がどう変わったかを測っている、という整理です。

では新しい年に固定するパーシェ方式は、どこに出てくるのか。動画によれば、GDPデフレーターなどで用いられています。名目GDPから実質GDPを算出する際に使われる、国全体の物価変動を示す重要な指標で、現在の経済の実態により近い数量を使って全体の価格変動を割り出そうとするアプローチだと説明されます。

ラッパ:ラ → パ = 古い → 新しいラスパイレス基準年(古い)の数量動画の代表例消費者物価指数(CPI)企業物価指数(CGPI)パーシェ比較年(新しい)の数量動画の代表例GDPデフレーター動画が挙げる3点セット方式の名前・古いか新しいか・代表的な指標
動画の整理:ラスパイレスは古い数量、パーシェは新しい数量。代表的な指標もセットで覚えます。

(補足:公表元です。消費者物価指数は総務省統計局、企業物価指数は日本銀行、GDPデフレーターは内閣府の国民経済計算の中で公表されています。消費者物価指数と企業物価指数は、基準年をおよそ5年ごとに改めています。)

GDPデフレーターは、名目GDPを実質GDPで割って100をかけたものです。ここで、先ほどのコーヒーとパンに戻ってみます。名目GDPにあたるのが「今の価格×今の数量」の1980、実質GDPにあたるのが「基準年の価格×今の数量」の2000です。1980÷2000×100=99。これは、パーシェ方式の式そのものです。

GDPデフレーター = 名目GDP ÷ 実質GDP × 100名目GDP今の価格×今の数量9×110+11×90=1980実質GDP基準年の価格×今の数量10×110+10×90=20001980 ÷ 2000 × 100 = 99(パーシェ方式と同じ形)
コーヒーとパンの例では、パーシェ方式の式がそのまま名目÷実質になっています。

(補足:2つの注意です。1つ目は、動画が示すのは基準年を固定した基本形の考え方だということです。内閣府が公表する現在の実質GDPには、前年の価格で評価した値をつないでいく連鎖方式が使われている、とされています。2つ目は、対象の範囲です。消費者物価指数は家計が購入する財・サービスの価格を見ますが、GDPデフレーターは国内で生産された財・サービス全体を対象とし、輸入品は含みません。)

試験の注目点(動画の整理)

動画は、「試験問題でも、消費者物価指数はどの方式かといった知識を問う問題が出題される傾向がある」と話します。そして、方式の名前、古いか新しいか、代表的な指標の組み合わせの3点セットをしっかり押さえるよう勧めています。実際の出題の傾向は、今回は確認していません。

公式の物価指数と、あなたの生活実感のズレ

動画の最後は、少し挑戦的な問いかけです。ニュースで聞く消費者物価指数は、過去の数量に固定したラスパイレス方式で計算されている。けれど現実のあなたは賢い消費者で、コーヒーが安くなればたくさん飲み、パンが高くなれば買うのを控えます。実際の買い物かごの中身は、価格の変化に合わせて常に変わっていて、過去のまま固定なんてされていません。

つまり、過去の数量に固定して計算された公式な物価指数と、安いものに乗り換えるという行動変化を反映した、いまのリアルな生活実感。その2つの間には、必ずズレが生じるはずということですか。

まさにそういうことです。

ということは、ニュースで物価がこれくらい上がりましたと言われても、安いものをうまく探して買っていれば、生活のダメージは発表された数字ほどではないかもしれない、ということですか。

その逆もしかりですね。次にスーパーに行ったとき、公式な物価指数と、ご自身の購買行動の変化を反映したパーソナルな物価指数に、どんな違いがあるか想像してみてください。

(補足:経済学では、このように価格が変わっても買い物かごの中身を固定して測ることで生じる偏りを、代替バイアスと呼ぶことがあります。先ほどのコーヒーとパンの例でも、ラスパイレスよりパーシェのほうが低く出たのは、この乗り換えの分です。)

日常の買い物がそのまま経済学の思考実験になる、というのが動画の締めくくりです。スーパーのかごに商品を入れる瞬間が、知識を定着させる最高の復習タイムになる、とも話していました。

まとめ

動画の5つのポイント

  • 物価指数は、計算の基準となる年を100とする。100より大きければ物価上昇、小さければ物価下落。
  • 価格と数量が同時に変わるとノイズになるので、物価の変動だけを測るために、計算時に取引数量を固定する。
  • 数量を基準年(古い年)に固定するのがラスパイレス方式。分母は基準年の価格×基準年の数量、分子は比較年の価格×基準年の数量。
  • 数量を比較年(新しい年)に固定するのがパーシェ方式。合言葉は、旧から新の順で「ラッパ」。
  • 動画は、ラスパイレスの代表例を消費者物価指数と企業物価指数、パーシェの代表例をGDPデフレーターとする。

コーヒーとパンの例では、同じ価格の動きでも、ラスパイレスは100、パーシェは99と結果が分かれました。この「何を固定しているか」を見失わないことが、動画の言う出発点です。

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