聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

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診断士 聞き流しラボ

基本統計量の要点

運営管理 第14回

運営管理・データ分析・統計 00217分26秒2026年3月5日公開

「あなたが中小企業診断士として、クライアントの会議室に入り、経営者から過去5年間の全顧客データや売上データをどさっと渡された場面を想像してみてください」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、平均値、最頻値、中央値、分散、標準偏差の5つの基本統計量と、それぞれの弱点、最後のシンプソンのパラドックスまでをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

数字の山を「情報」に変える

中小企業診断士として、クライアントの会議室に入ったところを想像してください。経営者から、過去5年分の全顧客データや売上データをどさっと渡されます。最初に目に入るのは、無数の数字の羅列です。生のデータは、そのままでは何も語ってくれません。

この動画のテーマは、その混沌としたデータを意味のある情報に変えて、分布や傾向をつかむための土台になる基本統計量です。基本統計量とは、データの分布や傾向を把握するために計算される基本的な数値のこと。主役は次の5つです。

  • 平均値:全部足して個数で割った値。
  • 最頻値:いちばん多く出てくる値。
  • 中央値:小さい順に並べたときの真ん中の値。
  • 分散:データの散らばり具合を表す指標。
  • 標準偏差:分散の平方根をとったもの。
生のデータ(数字の山)データの中心はどこ?(代表値)平均値最頻値中央値どれだけ散らばるか?分散標準偏差
基本統計量は、中心を見る3つと、散らばりを見る2つの組み合わせです。

動画は、この5つを「膨大なデータを意味のある情報に変えるレンズ」とか「企業の健康状態を測る5つのバイタルサイン」とたとえます。どれか1つでも見誤ると、間違った経営戦略を提案してしまうリスクがあります。現場では、高度な分析手法に飛びつく前に、基本統計量が示す真のメッセージを見落としてしまう、というのが陥りやすい罠だそうです。

なお、データの中心を表す値をまとめて代表値といいます。一般には平均値がよく使われますが、分布の形によっては最頻値や中央値のほうが代表値にふさわしいこともあります(総務省統計局の説明)。この「使い分け」が、この講義の中心です。

平均値:全部足して個数で割る。でも外れ値に弱い

平均値は、すべてのデータを足し合わせて、データの個数で割った値です。計算は日常的に使っているとおり。大事なのは、その限界です。全データを計算に入れるということは、全データの影響を等しく受けるということ。そのため、極端に大きい値や極端に小さい値、いわゆる外れ値が混ざると、データの中心を正確に示さないことがあります。

たとえ話:スーパーの顧客1人あたり購買単価

ある地方のスーパーで、顧客1人あたりの購買単価を調べているとします。ふつうのお客さんは、毎日1,000円から2,000円くらいの買い物です。そこへ近所に新しいレストランができ、シェフが毎日、仕入れのために1回20万円も買い物をし始めました。

この20万円が全体の計算に足し込まれるので、店の平均購買単価は一気に跳ね上がります。経営陣は「高単価路線のマーケティングが大成功だ」と勘違いするかもしれません。でも実際は、ふつうのお客さんの単価は1円も上がっていないのです。

動画では平均が「5,000円くらい」に跳ね上がると仮定していました。ここでは検算しやすいように、お客さん100人が1,500円ずつ、そこにシェフ1人が20万円という数字にして、3つの指標がどう動くか見てみます。

シェフなし
(100人)
シェフあり
(101人)
平均値1,500円約3,465円
中央値1,500円1,500円
最頻値1,500円1,500円
1日の購買額の並び(模式図・目盛りは正確ではありません)シェフ20万円中央値1,500円のまま平均値外れ値に引っぱられる引っぱられて右へ
外れ値が1つ混ざると、平均値だけが引っぱられます。

平均値だけを見ていると、中心を正確に示していない事実に気づけず、誤った成功体験をもとに、間違ったプロモーションに多額の予算を投じてしまう危険があります。だから診断士試験でも、平均値は外れ値に弱いという特性が繰り返し狙われる、と動画は強調します。

最頻値:いちばん多く出てくる値

では、中心を探る方法は平均値だけなのでしょうか。そこで出てくるのが最頻値です。データの中で最も頻繁に出現する値を指します。平均値のように計算で新しい数値を作るのではなく、実際に出てきたデータの中から、いちばん多いものをそのまま拾い上げます。

これが生きるのは、サイズやカテゴリーのように、足して割ってもあまり意味のないデータです。たとえばアパレル企業が、過去の顧客の平均サイズを計算して、MサイズとLサイズの中間という、存在しないサイズが出てきたとします。そんなシャツは作れません。

靴の例もありましたよね。平均が26.3cmだったら、26.3cmを大量に作ればいいのでは?

それは大赤字のもとです。企業が知りたいのは、いちばん売れるサイズはどれか、ということ。26.0cmが最も多く出現しているなら、最頻値は26.0cmで、これが生産計画の基準になります。

ただし最頻値にも扱いにくい面があります。ミリ単位の精密な売上データのように、データが連続した数値だと、全く同じ数値がほとんど出てこないので、最頻値がうまく定まりません。また、最頻値が複数存在してしまうこともあります。

(補足:動画にない話です。ヒストグラム(度数分布のグラフ)から最頻値を読むときは、最も度数の多い階級の階級値をとります。外れ値の影響は、まず受けません。)

ここまでをまとめると、平均値は外れ値に弱く、最頻値は状況を選びます。そこで3つ目の主役が登場します。

中央値:小さい順に並べた真ん中

中央値は、データを小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する値です。スーパーの例で、ある日の顧客が101人だったとしましょう。購買額を小さい順に1番目から101番目まで並べ、真ん中の51番目の人の購買額を代表値にします。

中央値の最大の強みは、外れ値の影響を受けにくいことです。シェフが20万円買おうが100万円買おうが、順番に並べれば、いちばん端の、いちばん大きい値の位置に来るだけ。真ん中の51番目の一般顧客の購買額、たとえば1,500円は、端の異常値によってピクリとも動きません。

平均が跳ね上がって喜んでいる経営陣には、どう伝えればいいですか。

「平均は上がりましたが、中央値は1,500円のまま動いていません。大多数のお客さんの購買単価は上がっていないという事実を、直視しましょう」と指摘できます。

これが、外れ値が存在する場合には、中央値が代表値として適している場合があると試験で問われる本当の理由です。実務での意思決定を左右する大事なポイントです。

データを小さい順に並べる(模式図)101人(奇数)1番目51番目101番目ちょうど真ん中=中央値100人(偶数)1番目100番目50番目51番目真ん中が2つ → 2つを足して2で割る
データ数が偶数のときは、真ん中の2つの平均をとります。

そして、中央値には試験対策として落とせない厳密なルールがあります。データ数が奇数なら、上のように真ん中の1つがそのまま中央値です。ところがデータ数が偶数、たとえば顧客が100人だと、ちょうど真ん中に当たる1つの値が存在しません。50番目と51番目のどちらを採るか迷ってしまいます。

試験の注目点:偶数のときは真ん中2つの平均

データ数が偶数の場合は、中央の2つの値の平均値が中央値です。50番目が1,480円、51番目が1,520円なら、(1,480+1,520)÷2=1,500円。足して2で割る処理は、計算問題でミスを誘いやすいところです。概念だけでなく、この手順もセットで押さえておきましょう(数値は説明用の例)。

(補足:動画にない話です。中央値より大きい値の個数と小さい値の個数は、同数になります(同じ値が重なっていなければ)。)

分散:データの散らばり具合

ここまでの3つは、データの中心を見つける道具でした。でも、中心がどこにあるかだけでは、データの全貌をつかんだとは言えません。動画は、代表値だけで意思決定をするのは、片目を閉じて運転するようなものだと表現します。データが中心の周りに密集しているのか、バラバラに散らばっているのかという視点が、抜け落ちているからです。

そこで必要になるのが散らばりの指標です。まず分散は、データの散らばり具合を表す指標で、大きいほどばらつきが大きいことを意味します。

たとえ話:2台の機械が作る部品

規格の長さが100mmの精密部品を作る機械Aと機械Bがあります。過去1か月のデータを取ると、どちらの平均も100mmで、平均だけ見れば両方とも完璧に見えます。でも分散を計算すると、機械Aは非常に小さく、機械Bは非常に大きかったのです。

平均 100mm(どちらも同じ)95105機械A分散が小さい機械B分散が大きい
平均が同じでも、散らばり方がまったく違うことがあります。
機械A機械B
平均100mm100mm
分散小さい大きい
部品の長さ99.9〜100.1mmで安定95mmや105mmも出る

機械Aは、ほぼ全部の部品を99.9mmから100.1mmの間で安定して作っています。一方、機械Bはばらつきが大きく、ある時は95mm、ある時は105mmの部品を作っていて、不良品を大量に生み出しています。極端に短い部品と極端に長い部品を足して割ると、結果的に平均が100mmになってしまうだけなのです。

経営陣が平均値のレポートしか見ていなければ、機械Bが不良品の山を築いていることに気づけません。分散という指標を確認して初めて、現場で起きている異常なばらつきというリスクが、可視化できます。

ただ、分散には少し扱いづらい面があります。計算の過程で、データと平均値との差(ずれ)を2乗して足し合わせます。そのため数値が元のデータと単位が変わり、数字自体もたいてい大きくなります。部品の例なら、元の単位はmmですが、分散の単位は平方ミリ(mm²)になります。元の単位でばらつきを直感的につかむのが難しい、というわけです。

(補足:動画にない話です。分散は正確には、各データと平均との差を2乗して、その平均をとったものです。差をそのまま平均すると必ず0になってしまうので、2乗します。なお、母集団の分散を標本から推定するときは、個数ではなく個数マイナス1で割る「不偏分散」を使う方がよいとされます。)

標準偏差:分散の平方根で単位を戻す

そこで登場する5つ目の主役が標準偏差です。標準偏差は、シンプルに言えば分散の平方根をとったもの。2乗したものを元に戻すことで、元のデータと同じ単位で、ばらつきの程度を表せるようになります。

  • 標準偏差が小さいほど、データは平均値の近くに集まっている(機械Aのように100mm付近に密集)。
  • 標準偏差が大きいほど、データは広く分布している(機械Bのように不良品も含めて広範囲に散らばる)。

今期の売上の平均は目標を達成しました、と報告を受けたら、何を確認すればいいですか。

その売上の標準偏差はどうなっていますか、と聞くことです。標準偏差が異常に大きければ、安定したビジネスモデルの成果ではなく、一部の大口客に依存して、ばらついているだけかもしれません。平均値と標準偏差は、セットで見る癖をつけましょう。

データのばらつきは、ビジネスの世界ではしばしばリスクやボラティリティという言葉に置き換えられます。ばらつきが大きい、つまり標準偏差が大きいということは、結果が予測しづらく、不確実性が高いということだからです。リスクの評価は、財務や投資の世界でよく出てくる考え方です。

試験でのガイドライン(動画の説明)

動画によれば、一次試験の対策では、企業経営理論などの科目で標準偏差の具体的な計算を求められることは基本的にありません。ルートの計算や2乗の足し合わせに頭を悩ませる必要はなく、「小さいほど平均値の近くに集まる、大きいほど広く分布する」という概念と特徴を頭に入れておくのが、今回のミッションです。計算のテクニックは、証券投資論の学習にとっておきましょう、とのこと(動画の言い方です。診断士試験の科目名ではなく、投資・リスクを扱う分野の意味と思われます。令和8年度の1次試験は7科目で、中小企業庁の科目一覧に「証券投資論」はありません)。出題の実際は、過去問や試験案内で確認してください。

計算の前に「データの切り方」を疑う

動画の最後に、少し視点を変えた問いかけがありました。企業全体のデータで計算した平均値や中央値は、右肩上がりの素晴らしい傾向を示していた。ところが同じデータを地域別や年代別に分けて計算し直したら、全部のグループで右肩下がりだった、としたら。集計の単位を変えただけで、結論が完全に逆転してしまうこの現象は、シンプソンのパラドックスと呼ばれます。

グループ別に見ると、どれも右肩下がりグループAグループBグループC全体で見ると右肩上がり
全体の傾向と、グループ別の傾向が逆になることがあります。

統計量は、計算する前のデータの切り分け方によって、まったく違う顔を見せます。5つの指標がどれだけ優れた道具でも、どのデータを対象に計算するのかという最初のセットアップを間違えれば、真実から遠ざかってしまいます。データを受け取ったら、平均や標準偏差を計算する前に、「このデータの切り方は本当に適切か」と一度立ち止まる。その批判的な視点こそ、優秀な診断士への第一歩だ、と動画は結びます。

(補足:動画にない例です。ある施策の購入率を比べるとします。購買意欲の高い層では、施策ありが20人中16人(80%)、施策なしが80人中60人(75%)。意欲の低い層では、施策ありが80人中16人(20%)、施策なしが20人中3人(15%)。どちらの層でも施策ありのほうが高いのに、全体では施策ありが100人中32人(32%)、施策なしが100人中63人(63%)となり、逆転します。施策ありの人が意欲の低い層に偏っているためです。この現象の名は、統計学者シンプソンが1951年に発表した論文にちなみます。)

まとめ:5つのツールを一覧で

指標意味注意点
平均値全部足して個数で割る外れ値が含まれると、中心を正確に示さないことがある
最頻値最も多く出現する値連続した数値では定まりにくい。複数あることも
中央値小さい順に並べた真ん中の値偶数個なら中央の2つの平均。外れ値に強い
分散散らばり具合。大きいほどばらつきが大きい2乗するので単位が変わる
標準偏差分散の平方根。小さいほど平均の近くに集まる大きいほど広く分布。リスクの目安

ここだけ覚えておこう

平均値は外れ値に弱く、外れ値があるときは中央値のほうが代表値にふさわしいことがある。中央値は、偶数個なら真ん中2つの平均。最頻値は、サイズなどに強いが定まらないこともある。分散と標準偏差は、大きいほどばらつきが大きく、標準偏差は元と同じ単位。そして、計算する前に、データの切り方そのものを疑うこと。

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