聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

線形計画法・回帰分析

運営管理 第13回

運営管理・データ分析・統計 00116分45秒2026年3月5日公開

「限られた時間の中で、いかに効率よく、かつ本質をしっかり理解して知識を吸収していくか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、制約条件のもとで利益を最大にする線形計画法と、その選択肢を代入して解く試験での近道、そして需要量を予測する単回帰分析・重回帰分析をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

この回の2つのミッション

動画の冒頭は、仕事や家庭と両立しながら勉強を続ける受験生へのねぎらいから始まります。限られた時間の中で、効率よく、しかも本質をおさえて知識を吸収する。それがこの試験を突破する鍵だと語られます。丸暗記では、膨大な出題範囲のどこかで限界が来る。だから「実務でどう使われるか」と「試験でどう立ち回るか」の両面から攻める、という方針です。

今回のミッションは2つです。

  • 制約条件を考慮した計画の策定方法:代表格が線形計画法。
  • 要因とデータの関係を用いた需要量の予測方法:代表格が回帰分析(単回帰分析と重回帰分析)。

どちらも数学っぽくて身構えがちですが、動画は「実務で利益を最大にし、見えない未来を予測する道具」であると同時に、「試験では正面突破しなくても済む賢い抜け道が用意されている分野」だと紹介します。順番に見ていきましょう。

線形計画法:制約の中で利益を最大にするパズル

ビジネスには、いつも制約がつきまといます。使える資金の上限、工場の稼働時間、スタッフの人数、材料の在庫量。無限にリソースを使える会社はありません。「予算も人もこれだけ。さて、どの商品をどれだけ作って売れば、いちばん利益が出るか」。経営者が毎日向き合うこのパズルを解くための枠組みが線形計画法です。

線形計画法のおさえどころ

  • 複数の制約条件のもとで、利益を最大化する(あるいは費用を最小化する)計算手法。
  • 最大・最小にしたい量を表す式が目的関数。資金・時間・人数・在庫などの上限が制約条件。

(補足:動画にない話です。線形計画法という名前は、目的関数も制約の式もすべて「線形」、つまり一次式であることに由来します。変数が2つ程度なら図で解けますが、変数が多い大きな問題はコンピュータで、シンプレックス法(単体法)などを使って解きます。)

正攻法の解き方は、手間がかかる

本来の解き方は、次のような流れです。

  • 与えられた制約条件を、1つ1つ数式にする。
  • 縦軸と横軸のグラフに、制約条件の直線を何本も引く。
  • 直線が囲む、すべての条件を満たす領域の中から、利益や費用がいちばんよくなる点の座標(直線どうしの交点)を見つける。

これを具体的な数値で見てみます。次の図は、ページ用に作った例です(動画の数値ではありません)。製品Pと製品Qを作ります。機械は合計40時間まで使え、1個あたりP・Qとも1時間。作業時間は合計90時間まで使え、1個あたりPが1時間、Qが3時間かかります。利益は、Pが1個4万円、Qが1個5万円です。

①x+y≦40②x+3y≦90最適解 (15, 25)利益185万円実行可能領域Q(個)P(個)15402530①機械時間の制約 ②作業時間の制約 点線=利益が一定の線
制約の直線で囲まれた領域(実行可能領域)の頂点のどこかで、利益が最大になります。

制約は「機械:x+y≦40」「作業:x+3y≦90」の2本です。この2本の直線と、両軸で囲まれた領域が、条件をすべて満たす実行可能領域になります。利益の式「4x+5y」の値が一定の線(図の点線)を平行にずらしていき、領域に最後まで触れている点が最適解です。2本の直線の交点を、連立方程式 x+y=40、x+3y=90 を解いて求めると(15, 25)。利益は4×15+5×25=185万円です。

ところが本番では、この作業が重い負担になります。動画はこう語ります。フリーハンドで直線を何本も引くうちに「ちょっとずれたかな」と焦り、時計の音ばかり大きく聞こえてくる。狭い余白に正確なグラフを描くのは至難の業で、連立方程式を何本も解くのは、緊張状態の本番では計算ミスのリスクを跳ね上げます。タイムパフォーマンスの面でも危険です。

マークシートだからできる「代入」の解き方

ここからが動画の核心です。一次試験はマークシート形式。苦労して導こうとしている答えの候補は、すでに選択肢として目の前に並んでいます。ならば、グラフを描いて交点を探しに行くのではなく、選択肢の数字を、制約条件の式に直接代入してしまえばよい。これが動画の言う、最も合理的で確実な解法です。

ただし、数字を入れるだけではありません。動画は、これを2段階のフィルターだと説明します。

  • 第1段階:選択肢の値を制約条件の式に代入し、条件をオーバーするものを容赦なく落とす。機械の稼働時間や予算を超える選択肢は、その時点で脱落。
  • 第2段階:生き残った選択肢を、目的関数(利益の式など)に代入して計算し、最も利益が大きい(費用の問題なら最も小さい)ものを選ぶ。それが、グラフで苦労して見つけるはずだった最適解そのもの(選択肢の中に正解がある前提です)。

先ほどの例で、選択肢が(x, y)の組で5つ並んでいたとして、やってみましょう。

選択肢第1段階:制約第2段階:利益
(20, 25)機械 45 → ×—
(10, 30)作業 100 → ×—
(40, 0)機械 40・作業 40 → ○160万円
(0, 30)機械 30・作業 90 → ○150万円
(15, 25)機械 40・作業 90 → ○185万円

制約を満たすのは3つ。その中で利益が最大の(15, 25)が答えです。グラフも連立方程式も使わず、足し算とかけ算だけで決まりました。

出題者もプロですよね。複数の選択肢が制約をクリアして、どれが正解か迷う引っかけを作ってくることはないんですか。

いい視点です。だからこそ、代入は2段階のフィルターなんです。1回目で条件オーバーを落とし、2回目で残った中の最大(または最小)を選ぶ。複数が残るのは前提で、そこから目的関数で決めればいいんです。

なるほど。グラフ問題が出ても、絶望せずに「代入すれば終わるボーナス問題だ」と思えば、気持ちが違いますね。

そうなんです。精神的な余裕がまったく違ってきます。

試験でのコツ

  • グラフを描く前に、選択肢を制約条件の式に代入して、条件オーバーを消す。
  • 残った選択肢を目的関数に代入し、利益の問題なら最大、費用の問題なら最小のものを選ぶ。
  • (補足)「以下」「以上」の式は、境界ちょうどの値も条件を満たします。また、問われているのが「最適な生産量」なのか「そのときの利益額」なのかを読み違えないようにします。

動画は最後に、この解き方を実務の視点からも意味づけます。限られたリソースの中で最短ルートで結果を出す、目の前のデータ(選択肢)を使って仮説検証を素早く回す。これはコンサルタントに求められる問題解決のアプローチそのもので、試験テクニックであると同時に、実務的なマインドセットの訓練にもなる、という話でした。

回帰分析:要因とデータの関係で需要を予測する

線形計画法は、今ある資源の制約の中で今日の利益をどう最大化するか、いわば「現在の最適化」の話でした。しかし、どれだけ完璧な生産計画や販売計画を立てても、明日どれだけ売れるのかという需要の予測が外れれば、計画は根底から崩れます。そこで2つ目のミッション、見えない未来の不確実性をどうコントロールするか、に進みます。ここで登場するのが回帰分析です。

回帰分析は、因果関係があると思われる変数の間の関係を分析して、需要量を予測する手法です。「最近暑いからアイスが売れそう」という経営者の勘だけで動くのではなく、何が原因で結果がどう動くのかを、数字で客観的に把握します。

単回帰分析:原因が1つ

いちばんシンプルなのが単回帰分析です。原因になる説明変数が1つ変化したとき、求めたい結果である目的変数がどう変わるかを分析します。

用語の整理

  • 説明変数:分析のインプット。原因の側。
  • 目的変数:予測したいアウトプット。結果の側。
  • 説明変数が1つなら単回帰分析。

動画の例は、気温と売上です。過去のデータを分析して、「気温が1度上がると売上が何円上がる」という関係が導けたとします。この場合、原因の気温が説明変数、結果の売上が目的変数です。この関係式を一度つくっておけば、明日の天気予報で気温の予測値がわかった瞬間に、明日の売上をかなりの精度で見通せます。店舗の責任者なら、気温を見ただけで「仕入れを増やそう」「冷たい飲み物の陳列スペースを広げよう」と、根拠のある意思決定がすぐにできます。

売上(目的変数)気温(説明変数)実線=回帰直線点線=点と直線のずれ(残差)
最小二乗法は、点と直線のずれ(残差)の2乗の合計が最小になる直線を選びます。

(補足:動画にない話です。過去のデータに、いちばんよくあてはまる直線を引くのが回帰分析で、この直線を決める代表的な方法が最小二乗法です。実際の点と直線の縦のずれ(残差)を2乗して合計した値が、最小になるように直線を決めます。あてはまりのよさを表す指標が決定係数(R²)で、1に近いほど、回帰式がデータによくあてはまっています。)

重回帰分析:複数の要因を同時に見る

ただし現実の売上は、気温というたった1つの要因だけでは動きません。雨が降るかもしれないし、近くでイベントがあるかもしれない。そこで必要になるのが重回帰分析です。

重回帰分析のおさえどころ

  • 説明変数が2つ以上のとき、複数の説明変数の変化から目的変数の変化を分析する。
  • 動画の例:店舗面積・商圏人口・広告宣伝費という複数の要因から、売上を予測する。
説明変数が1つ → 単回帰分析気温説明変数売上目的変数説明変数が2つ以上 → 重回帰分析店舗面積商圏人口広告宣伝費売上目的変数影響をそれぞれの数値(係数)として同時に出せる
原因(説明変数)が1つなら単回帰、2つ以上なら重回帰です。

動画は、あなたが診断士として小売店の売上改善プロジェクトに入ったと想像させます。社長から「うちの売上を予測して、適切な投資プランを作ってほしい」と頼まれたとき、売上を左右する要因をどう見立てるか。店舗の広さ、商圏にどれだけ人が住んでいるか、チラシや広告にどれだけお金をかけたか。これらが同時に絡み合って、売上という1つの結果を生んでいます。重回帰分析を行えば、店舗面積の影響度、商圏人口の影響度、広告をかけた影響度を、それぞれ独立した数値として同時に算出できます。

実務でも試験でも、ここがいちばん難しいところですよね。売上が上がっても、それが本当に広告宣伝費の効果だったのか、商圏人口が増えているエリアだから自然に増えただけなのか。

そうなんです。切り分けて分析できていないと、「もっと広告費をつぎ込みましょう」といった的外れなアドバイスをしてしまうおそれがあります。そのリスクを避けるための手法が重回帰分析です。

複数の変数を同時にモデルに入れることで、1つの要因だけを見るよりはるかに精度が高く、厚みのある需要予測になるわけですね。

ええ。ビジネスの現象は多面的ですから、捉える分析手法も多面的である必要があります。

動画は、単回帰分析でシンプルな因果関係のベースラインをつかみ、重回帰分析でより現実に近い複雑な要因の絡み合いを読み解く、と整理します。診断士として現場に出たとき、経営者の勘や経験則を頭から否定するのではなく、データ分析で裏づけたり、軌道修正したりする。それが専門家の腕の見せどころだ、という締めくくりでした。

(補足:動画にない話です。重回帰式は、Y=b1×X1+b2×X2+b3×X3+b0 のように、説明変数ごとの係数(偏回帰係数)を足し合わせた形になります。使うときの注意が2つあります。)

  • 説明変数どうしの相関が非常に高いと、本来は関係のない変数が効いているように見えてしまい、影響の切り分けができなくなります。これを多重共線性といいます。たとえば「駅からの距離」と「駅からの所要時間」は、ほぼ同じ情報なので、両方を入れるのは避けます。
  • 係数の大きさは、因果関係の強さまでは示しません。相関があることと、原因であることは別です。

まとめ:動画の2つのポイントと、最後の問いかけ

この回のポイント

  • 線形計画法:一次試験はマークシート。グラフを描いて時間を浪費せず、選択肢を制約条件の式に代入→条件を満たすものの中から最も利益が大きい(費用なら最小の)ものを選ぶ。
  • 回帰分析:何が結果(売上)に影響しているかを分析する。原因となる説明変数が1つなら単回帰分析、2つ以上なら重回帰分析。

動画は最後に、1つの問いかけを残します。通勤の途中や休日に、いつもお客さんでにぎわう大繁盛のお店を見つけたとします。その驚異的な売上を生んでいるのは、立地のよさといった目に見えやすい単一の要因、つまり単回帰のモデルなのか。それとも、絶妙な店舗面積、商圏人口の質、緻密な広告宣伝費のバランスなど、誰も一目では気づかない複数の隠れた要因、つまり重回帰のモデルが複雑に絡み合った結果なのか。街全体を自分のケーススタディの舞台にしてみる。机の上の勉強が、世界の解像度を上げるトレーニングになる、という励ましで動画は終わります。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む