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中小企業診断士 1次試験

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需要予測

運営管理 第12回

運営管理・流通・小売 01221分25秒2026年3月5日公開

「自社の主力商品の仕入れ計画や、あらかじめ在庫を持っておくための見込み生産の計画を練っていると想像してみてください」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、単純移動平均、加重移動平均、指数平滑法、月別平均法(季節指数)の4つの需要予測の手法と、その使い分けをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

需要予測は「数字遊び」ではなく経営の生命線

自社の主力商品の仕入れ計画や、あらかじめ在庫を持っておくための見込み生産の計画を練っているところを想像してみてください。目の前には過去数年分の売上データがずらり。担当者がいちばん恐れるのは、これからどれくらい売れるのか、つまり未来の需要を見誤る瞬間です。

予測が少なすぎれば欠品を起こし、売るチャンスもお客さんの信頼も失います。多すぎれば倉庫が在庫の山になり、保管コストが膨らんで資金繰りを圧迫します。動画は、需要予測はExcelの上の数字遊びではなく、限られた経営資源をどこにどう配分するかを決める「ビジネスの生命線」だと言います。

今回学ぶのは、過去のデータを使った需要量の予測方法で、次の4つです。

  • 単純移動平均:決めた期間の平均をそのまま予測にする。
  • 加重移動平均:新しいデータほど重く見て平均する。
  • 指数平滑法:予測の外れ具合(予測誤差)で次の予測を自己修正する。
  • 月別平均法:季節指数で年間の波を読み、予算を月に割り振る。

動画が強調するのは、式の丸暗記ではなく、数式の裏にある現場のストーリーを読むことです。「なぜこの場面でこの予測ツールを選ぶのか」という判断基準を持つことが、試験でも実務でも求められます。

数式が並ぶと、それだけで身構えてしまいます。

4つの違いは、「過去のどのデータを」「どれくらい重く見て」未来に当てはめるか、だけです。この目で順番に見ていきましょう。

単純移動平均:直近の平均をそのまま予測にする

いちばん基本の手法です。あらかじめ決めた一定期間の平均値を、そのまま未来の予測にします。たとえば当月の需要量を3ヶ月の移動平均で予測するなら、当月を含まない直近の過去3ヶ月分の売上を足して3で割り、その平均を今月の予測値にします。

時点売上計算
1ヶ月前100個合計330個
÷3=110個
(今月の予測)
2ヶ月前120個
3ヶ月前110個

一時的な極端なブレをならして、ベースライン(基調)を見極めるのに有効です。学校のテストで、直近3回の平均点から「次もこれくらい」と予想するようなものです。

弱点は、3ヶ月前のデータも先月のデータも、まったく同じ重みで扱うことです。競合が新製品を出したかもしれず、SNSで自社商品が急に話題になったかもしれません。3ヶ月前と今の市場環境が同じ保証はなく、最近のトレンドのほうが現在を正確に映すことが多い。この「直近の動きへの感度の鈍さ」が、単純移動平均の最大の弱点です。

(補足:動画にない話です。①期の数え方は資料により書き方が違い、「t期までの3期の平均をt+1期の予測とする」と書くものもあります。計算は同じです。②売上が右肩上がりのとき、直近3か月が140・120・100個なら単純移動平均は120個で、最新の140個より低めに出ます。③「移動平均法」は会計の棚卸資産の払出原価計算法(受け入れのつど平均単価を出す方法)の名前でもあり、別の話です。)

加重移動平均:新しいデータほど重く見る

単純移動平均の弱点を補うのが加重移動平均です。同じく一定期間の平均ですが、直近のデータにより大きな重みを付けます。市場が急に変わったとき、古いデータより新しいデータを重視すべきだという考え方です。

3ヶ月の加重移動平均なら、1ヶ月前の売上に3、2ヶ月前に2、3ヶ月前に1をかけて足し合わせます。そして動画が「よく間違えるポイント」と言うのが割り算です。3ヶ月だから3で割る、のではなく、重みの合計(3+2+1=6)で割ります。

単純移動平均どの月も同じ重み加重移動平均新しい月ほど重い1/31ヶ月前1/32ヶ月前1/33ヶ月前3/61ヶ月前2/62ヶ月前1/63ヶ月前重み 1:1:1 → 合計3で割る重み 3:2:1 → 合計6で割る
加重移動平均は、重みの合計(ここでは6)で割ります。3ヶ月だから3、ではありません。
時点売上×重み結果
1ヶ月前100×3=300合計650
÷6=約108.3個
(単純なら110個)
2ヶ月前120×2=240
3ヶ月前110×1=110

(補足:動画に数値例はありません。表は上の単純移動平均の数字を借りた作例です。直近が低い並びなので、加重のほうが予測は下がります。逆に直近の伸びが大きく、1ヶ月前140・2ヶ月前120・3ヶ月前100個なら、単純は120個、加重は(420+240+100)÷6=約126.7個で、上昇を早く反映します。)

直近1ヶ月で急に売上が跳ね上がったら、どうなりますか。

単純移動平均だと、過去の低い数字に足を引っ張られて、予測がなかなか上がりません。加重移動平均なら、上昇をいち早く予測に反映できます。

それなら、いつも加重のほうがよいのでしょうか。

そこが一筋縄ではいきません。その売上アップが1日限りの特需によるノイズだと、予測が過敏に反応して、来月を過大に見積もるリスクがあります。

直近をどれだけ信じるかで、予測の鋭さと安定性のバランスが変わります。商品の性質と市場の変動性を見て、単純移動平均でどっしり構えるか、加重移動平均で機敏に動くかを選びます。

(補足:重みは3対2対1とは限りません。重みを合計が1になる割合(0.5、約0.33、約0.17)にそろえておけば、割り算は不要で結果は同じです。)

指数平滑法:予測の外れ具合で自己修正する

ここまでの2つは過去の実績を平均する手法でした。指数平滑法は、過去の予測値と実績のずれ、つまり予測誤差を使って、次の予測を自己修正します。

指数平滑法の式

来月(n+1月)の予測=今月(n月)の予測+α×(今月の実績-今月の予測)

カッコの中が予測誤差です。予測より多く売れたら誤差はプラスで来月の予測を引き上げ、売れなかったらマイナスで引き下げます。αは平滑化定数といい、誤差のどれくらいを次の予測に反映するかを決めます。

たとえ話

「昨日は厚着しすぎて暑かったから、今日は少し薄着に修正しよう」。人間の反省のプロセスとよく似ています。

αは0から1の間の値です(端の0と1は特殊な場合で、補足③を参照)。動画はこれを感度のダイヤルと呼びます。需要が安定しているなら、αを小さく(たとえば0.1)します。多少予測が外れても、ちょっとしたノイズにいちいち反応せず、過去の傾向を保ちます。需要が不安定なとき、急なトレンド変化のとき、前月の実績を大きく反映させたいときは、αを大きく(たとえば0.8)します。直近の誤差を重く受け止め、来月の予測をドラスティックに修正します。

α来月の予測計算(予測110・実績130)
0.1112個110+0.1×20
0.5120個110+0.5×20
0.8126個110+0.8×20

(補足:動画に数値例はありません。表は作例で、誤差は130-110=+20です。)

車のハンドルの遊びにたとえると

まっすぐな高速道路ではハンドルに遊びを持たせ、石に乗り上げても車はどっしり進みます。これがαが小さい状態。曲がりくねった山道では、ハンドルの動きがダイレクトにタイヤへ伝わる機敏さがほしい。これがαが大きい状態です。

α=0.1(どっしり)過去を広くならして平均α=0.8(機敏)直近の実績に大きく反応0.101期前0.092期前0.083期前0.074期前0.801期前0.162期前0.033期前0.014期前どの実績が予測にどれだけ効くか(重みの目安)
αが大きいほど直近の実績に重みが集まり、小さいほど過去を広くならします。

ある月に売上がドカンと落ちたら、αを大きくして素早く対応すべきではありませんか。

そこが経営者の陥りがちな罠です。現場がパニックになってαを極端に大きくすると、来月の予測が一気に下がり、生産ラインを止め、人員まで削減しかねません。

その落ち込みが、悪天候のような一時的な要因だったら……。

翌月には需要が戻っているのに在庫がなく、大きな販売機会ロスを生みます。需要が安定しているベース商品でαを大きくしすぎるのは、サプライチェーン全体を混乱させる危険な行為です。αは経営者の冷静さのバロメーターです。

(補足:動画にない話です。①式は来月の予測=α×今月の実績+(1-α)×今月の予測とも書け、上の式と同じ値になります(たとえばα=0.8で0.8×130+0.2×110=126)。実績にαがかかる向きで書くのが一般的ですが、資料により式の形が違うので、αが実績側と予測側のどちらにかかっているかを必ず確認してください。②この式を展開すると、1期前の実績の重みはα、2期前はα(1-α)、3期前はα(1-α)の2乗……と指数的に小さくなる実績の加重平均になります(重みの合計は1)。図のとおり、α=0.8は1期前が0.8、2期前が0.16、α=0.1は0.10、0.09、0.08と続きます。「実績の平均」と「誤差による自己修正」は、同じ計算を別の角度から見たものです。③αは0から1の間をとり、1なら直前の実績そのまま、0なら予測は変わりません。OR事典(Weblio)には、0.5より若干小さい値をとる場合が比較的多いとあります。④動画は「絶対的なルール」と言いますが、αの目安であり、最適値を決めるのは難しい問題です。⑤最初の予測値(初期値)は、手元のデータから簡単な近似で決めれば足ります。)

月別平均法:季節の波を「季節指数」で読む

移動平均と指数平滑法は、年間を通じて需要がある程度連続する基調(ベースライン)があることが前提でした。しかし夏のビールや冬のストーブは、季節で売上が激しく変わります。冬のストーブの売上を見て夏の生産計画を立てたら、会社が傾く大惨事です。こうした商品に使うのが月別平均法で、鍵になるのが季節指数です。

季節指数は、年間の売上の波を数値にしたもので、1か月あたりの平均的な売上を100として表します。よく売れる繁忙期は100を大きく超え、閑散期は100を下回ります。動画の例で計算してみましょう。

手順計算結果
①月平均年間2,400万円÷12ヶ月200万円(=100)
②8月300÷200×100150
③2月160÷200×10080

平均の1.5倍売れた8月は150、平均の0.8倍の2月は80です。1月から12月まで全部の月で出しておきます。

このあと予算に使います。公式は次のとおりです。

各月の売上高予算

各月の売上高予算=年間売上高予算×その月の季節指数÷季節指数の合計

年間の目標を、過去の季節の波のとおりに月ごとに重み付けして割り振るイメージです。

(補足:動画に数値例はありません。年間予算3,000万円なら、8月は3,000×150÷1,200=375万円、2月は3,000×80÷1,200=200万円です。月平均250万円の1.5倍と0.8倍に一致します。)

試験の注目点:季節指数の合計は必ず1,200

平均が100で12か月分だから、合計は必ず1,200になります。知っているだけで選択肢を素早く絞れますし、実務でもExcelで合計が1,210や1,195になっていれば、計算ミスかデータの抽出ミスだとすぐ分かる強力なチェックになります。

平均100851月802月903月954月1055月1156月1357月1508月1209月10010月5511月7012月12か月の合計=100×12=1,200(作例)
平均100より上の月があれば、必ず下の月があります。合計はいつも1,200になります。

なぜ合計が必ず1,200になるのですか。

季節指数は、基準の100からどれくらい出っ張っているか、凹んでいるかを表しているだけだからです。1年分をならせば当然100×12に戻ります。ある月が150に増えたなら、必ず他の月が減ってバランスをとる、ゼロサムゲームのようなものです。

(補足:動画の例は1年分の累計から月平均を出していますが、季節指数は複数年のデータから出すのが一般的です。たとえば大阪労働局が公表する職業安定業務統計の季節調整値では、季節指数を過去データから計算し、1年たってデータがそろった段階で、過去にさかのぼって計算し直します。また季節指数は、原数値÷季節指数×100で季節の影響を取り除いた値(季節調整値)を出すのにも使われます。この100基準の考え方も、本文と同じです。)

4つの手法の使い分け

動画の結論は、実務でいちばん大切なのは「うちのこの商品はどの手法で予測すべきか」を見極める力だ、ということです。データが安定しているのか、不安定なのか、明確な季節性があるのかで最適な手法が変わり、それが予測精度を高めて過剰在庫や欠品を防ぎます。

手法向く場面弱み
単純移動平均需要が安定。ブレをならして基調を見る直近の動きに鈍い
加重移動平均環境変化に追従したい。上昇・下降を早く反映ノイズに過敏
指数平滑法誤差で自己修正。αで反応の速さを調整αの決め方が難しい
月別平均法季節性が強い。年間目標を月に割り振る過去の波が続く前提
季節で売上が大きく波打つ?はいいいえ月別平均法(季節指数)直近の動きを重視したい?いいえはい単純移動平均どっしり構える加重移動平均指数平滑法機敏に動く
データの性質に合わせて、レンズを付け替えるように手法を選びます。

動画のたとえ:色の違うレンズ

未来という濃い霧の中を安全に運転するために、晴れた日用、霧の日用、雪の日用のレンズを状況に合わせて付け替える。4つの式は、それぞれ違う色のレンズです。

過去のデータに頼る手法の限界

動画は最後に、思考実験を投げかけます。4つの手法はどれも優れていますが、避けられない共通の前提があります。それは、すべて過去のデータに基づいていること、つまり過去の延長線上に未来があるという前提です。

世界的なパンデミックでサプライチェーンが断絶したり、業界の構造を覆す破壊的イノベーションが現れたら、どう予測しますか。

過去のデータが役に立たなくなったときこそ、データを超えた人間ならではの洞察力や、リスクを許容して前進する決断力が試されるのかもしれません。手元のデータと、直感や現場の生の声をどう天秤にかけるか。そこに経営の真髄があります。

式は強力な武器ですが、万能ではありません。試験では式を正確に使い、現場ではその前提を疑う。この両方の目を持っておくと理解が深まります。

まとめ

  • 単純移動平均:直近の過去n期(当月を含まない)の平均。3期なら合計を3で割る。すべて同じ重みで、直近の動きに鈍い。
  • 加重移動平均:直近ほど大きな重み(例:3・2・1)を付ける。割るのは重みの合計(例:6)。ノイズに過敏になる面もある。
  • 指数平滑法:来月の予測=今月の予測+α×(実績-予測)。αは感度のダイヤルで、安定なら小さく、不安定なら大きく。
  • 月別平均法:月平均を100とした季節指数で、季節性の強い商品の予算を月に割り振る。12か月の合計は必ず1,200。
  • 手法選びは、データの安定性と季節性で決める。4つとも過去のデータが前提なので、前例のない事態では人間の判断が要る。
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