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中小企業診断士 1次試験

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VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の基本

運営管理 第18回

運営管理・店舗管理・立地 0039分48秒2026年3月2日公開

「お店に入ってからレジでお金を払うまで、あなたの行動や視線、さらには歩くスピードまでもが、すべて緻密に計算されているとしたら、どう感じますか?」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、VMDの目的、店内の通路と動線、冷蔵ケース、さまざまな陳列手法、フェイシングとネガティブスペースまでをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

VMDは「おしゃれに飾ること」ではない

動画の聞き手は、VMDと聞いて「アパレルのお店で、見栄えをよくしたり、おしゃれに飾ったりすること」というイメージを持っていました。講師はこれを、最初で最大の誤解だと指摘します。

VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の本当の目的は、きれいなディスプレイを作ることではありません。お客さまの購買意欲を高めて、売上を最大化するための、きわめて合理的な販売手法です。視覚的な演出は、そのための手段にすぎません。動画の定義をまとめると、こうなります。

動画でのVMDの定義

店舗で顧客の購買を促進するために、目的や商品に合わせた陳列を工夫する、視覚的な計画活動の全体。

(補足:動画にない話です。日本ビジュアルマーチャンダイジング協会は、VMDを「企業の独自性を視覚化し、流通の場で商品などの視覚的要素を演出・管理する活動」と定義していると紹介されています。動画の言い方と表現は違いますが、「見せ方を計画して管理する」という中身は同じです。また、VMDは、店頭で足を止めてもらうVP、店内で奥へ誘導して商品に注目させるPP、商品1つひとつの陳列を扱うIPの3つで説明されることが多いです。ただしIPなどは資料によって表記や説明が少しずつ違うので、テキストの表現に合わせてください。)

ただ綺麗に並べるのではなく、売上を作るための戦略的な仕掛けなんですね。

そのとおりです。ここから先は、お店の入口からレジまで、お客さまと同じ順番で歩きながら、仕掛けを一つずつ見ていきましょう。

入口から奥へ:ゴンドラ、主通路、ワンウェイコントロール

お店に入ると、商品がずらりと並んだ大きな棚が目に入ります。店舗を構成する基本の陳列棚をゴンドラと呼び、スーパーやコンビニでは通常、このゴンドラ陳列が行われます。ゴンドラの配置によって、お客さまが歩く通路が決まります。

  • 主通路:メインとなる広い通路。壁沿いをぐるっと回るように設けます。
  • 副通路:主通路から枝分かれする、細いサブの通路。

動画によれば、多くの場合は主通路を「コ」の字に設定して、お客さまに一方向で店内を回ってもらいます。この手法をワンウェイコントロールといいます。わざと一方向に歩かせる目的は、顧客を店内の奥へ誘導し、動線を長くすることです。

マグネット(牛乳・卵)ゴンドラゴンドラゴンドラ島出し副通路エンドレジレジ前入口黄色の帯=主通路(コの字・一方向)ゴンドラの間の細い通路=副通路
主通路をコの字に回らせ、奥にマグネットを置いて動線を長くします。

ただ遠回りをさせるだけでは、人は奥まで歩いてくれません。そこで使うのがマグネットです。魅力的な商品を磁石のように配置して、意図的に引き寄せる心理的なテクニックです。牛乳や卵のように毎日買う商品が一番奥にあるのは、偶然ではありません。歩く距離が長くなるほど、ほかの商品を目にする機会が増えて、結果的に売上が上がる、という考え方に基づいています。

奥まで歩く道中で、予定になかった新商品をついカゴに入れてしまう。見事に魔法にかかっていますね。

その「予定になかった買い物」が、あとで出てくる非計画購買です。売場づくりは、ここを狙っています。

(補足:動画にない話です。ゴンドラの陳列では、お客さまが最も商品を目につきやすく、手に取りやすい高さをゴールデンゾーンと呼び、売れ筋商品や粗利益率の高い商品を置くのが基本です。具体的な高さは資料により異なります。中小機構は「胸から肩の高さ」としていますし、試験の選択肢では男性80〜140cm・女性70〜130cm程度という表現も見られます。数字を暗記するより、「最も手に取りやすい範囲に売れ筋を置く」という考え方を押さえましょう。)

冷蔵コーナー:ウォークインケースとリーチインケース

奥のマグネットに引き寄せられていくと、飲み物の冷蔵コーナーにたどり着きます。コンビニでおなじみの、裏から店員さんが補充している冷蔵庫がウォークインケースです。動画の説明では、次のようになります。

  • メリット:店員が陳列棚の裏側から入って補充できる。古い商品が前に押し出されるので、古いものから売れる陳列が簡単にできる。
  • 欠点:人が裏に入るための大きな空間まで冷やし続けなければならず、スペース効率やエネルギー効率が悪い。

一方、前面にガラス扉がついていて、お客さまが自分で開けて取るタイプがリーチインケースです。陳列も前のガラス扉から行います。お店にとっては、どちらを導入するかが悩ましいところです。

ウォークインケース冷やす空間(店員が入る)棚売場(お客さま)動画の説明:店員が奥側から補充し、古い商品が前へリーチインケース裏は壁棚売場(お客さま)前のガラス扉から取る。補充も前から
動画の説明:裏から補充できるのがウォークイン、前面のガラス扉だけなのがリーチイン。

試験の注目点

ウォークインケースは「補充がしやすい」という長所と、「冷やす空間が広く効率が悪い」という短所が、セットで問われやすい、と動画は強調していました。長所だけでなく、短所まで言えるようにしておきましょう。

「ついで買い」を誘う陳列:フック、レジ前、エンド、島出し

冷蔵コーナーを過ぎると、小物を中心にした「ついつい買ってしまう」陳列が続きます。動画では、次の4つが紹介されました。

  • フック陳列:歯ブラシやペンなど、小物をフックにぶら下げる手法。商品が見やすく取りやすいだけでなく、店側にとっても在庫の把握がしやすい、という実務上のメリットがあります。
  • レジ前陳列:レジ前にチョコ、ガム、電池などの小物を置く手法。会計を待つ間、必ず目に入る場所なので、ついで買いを誘う効果が大きくなります。
  • エンド陳列:ゴンドラの端で行う陳列。非常に目立つので、特売品や目玉商品を置いて、ついで買いを誘ったり、マグネット的な効果を狙ったりします。
  • 島出し陳列:スーパーなどで使われる、通路に商品をはみ出して陳列する方法。陳列に変化が出て活気が生まれる反面、後ろの商品が隠れたり、通路が狭くなったりします。そのため、多用は禁物で、アクセントとして使います。

ここで、動画の言い方を1か所だけ正しておきます。動画は、レジ前陳列のことを専門用語で「非計画購買」と呼んでいるように聞こえます。けれども、非計画購買は陳列の名前ではありません。入店前には買うつもりがなかった商品を、店内で買ってしまう購買行動のことです。レジ前陳列やエンド陳列は、この非計画購買(ついで買い)を促すための陳列手法、と整理すると正確です。

(補足:「島出し陳列」の呼び方は、資料によって少し違います。中小機構の資料では、通路に平台やダンボールを臨時に置いて島のように陳列するものを「島陳列」、棚板を少し伸ばして商品の前面だけ通路側に飛び出させるものを「飛び出し陳列」と、分けて紹介しています。動画の「通路に商品をはみ出して陳列する」という説明は、この2つにまたがる内容です。)

島出し陳列って、たまにカートがぶつかりそうになって、邪魔だなと思うこともあるんですけど。

まさにそこがポイントです。商品の見え方に変化が出るというメリットと、通路が狭くなるデメリットがセットなので、多用は禁物なんです。

特売の陳列:ジャンブル陳列とカットケース陳列

特売品といえば、カゴに山盛りになっている商品を思い浮かべるでしょう。あれがジャンブル陳列(投げ込み陳列とも呼ばれます)です。手間がかからず、お得感を演出できるのが利点です。ただし、次の2つに気をつけます。

  • 安っぽく見えるので、高額の商品には向かない。
  • 商品が少なくなると、とたんに売れ残り感が出てしまう。適材適所の判断が必要。

高級ワインがワゴンに山積みになっていたら、かえって怪しく見えますよね。もう1つ、ビールの箱を切ってそのまま置くカットケース陳列も合理的です。段ボール箱のまま並べるので、陳列の手間が省けて、しかも割安感を訴えやすい方法です。

ここまでの陳列手法を、表にまとめておきます。

手法どんな陳列かポイント・注意
フック陳列小物をフックに吊るす見やすく取りやすい。在庫を把握しやすい
レジ前陳列レジ前に小物を置くついで買い(非計画購買)を誘う
エンド陳列ゴンドラの端に置く目立つ。特売品や目玉商品。マグネット効果
島出し陳列通路にはみ出して置く活気が出る。後ろが隠れ、通路が狭くなる。多用は禁物
ジャンブル陳列カゴやワゴンに山盛りにする手間が少なくお得感。高額商品に不向き。減ると売れ残り感
カットケース陳列段ボールを切ってそのまま置く手間が省け、割安感を訴えやすい

フェイスとフェイシング:増やせば売れる、わけではない

次は商品の「顔」の話です。商品の表面のことをフェイス、お客さまから見えるフェイスの数を調整することをフェイシングといいます。重点商品はフェイス数を多くして目立たせるのが基本です。

ただし、フェイス数が多ければ多いほど、それに比例して売れるわけではありません。動画のたとえが分かりやすいので紹介します。1個が2個になれば、目立ち方は大きく変わります。けれども、10個が11個になっても、お客さまはまず気づきません。つまり、陣取り合戦には限界があるということです。

フェイス数(同じ商品の列数)売上比例するなら実際は伸びが鈍る1個→2個:印象が大きく変わる10個→11個:気づきにくい
フェイスを増やすほど、売上が比例して増えるわけではありません(イメージ図)。

(補足:中小機構の資料も、売れ筋はフェイス数を増やして欠品による機会ロスを防ぐ一方、むやみに増やすと廃棄ロスが増え、在庫の負担も重くなる、と注意しています。)

逆に、アパレルでは、あえて陳列する数を減らす手法もあります。動画は2つを挙げました。

  • フェイスアウト:商品をハンガーにかけて、正面(フェイス)を見せる陳列。目立ちますが、並べられる数は少なくなります。この「目立つ代わりに数が減る」というトレードオフがポイントです。
  • ボックス陳列:箱状の陳列器具を使い、商品を分類しながら見せる方法。

(補足:ボックス陳列は、セーターなどの衣料品の陳列に使われる手法として、過去の試験の選択肢にも出てきました。)

究極の空間の使い方:ネガティブスペース

そして究極の空間の使い方がネガティブスペースです。あえて商品を置かずに、空間を残します。

スーパーのように、すき間なく商品を詰め込みたくなる売場でも、ネガティブスペースを活用すると、売場のグルーピングが分かりやすくなり、視認性が上がります。空間を空けることが、かえって逆説的に、商品の魅力を引き立てるわけです。

すき間なく詰めるどれが主役か分かりにくいあえて空けるグループが分かりやすく目に留まりやすい
空間をあけることが、かえって商品の魅力を引き立てます。

詰め込めば詰め込むほど、たくさん売れると思っていました。

ところが、フェイシングにも限界があり、空間があるほうが目に留まる場合もあります。VMDは「空間の使い方」まで含めた計画なんです。

まとめ:店の景色を思い浮かべて、体系的に理解する

今日学んだ、ウォークインケースの効率、ついで買いを誘うエンド陳列、フェイシングの限界。これらすべてが、VMDという緻密な計画のもとで機能しています。そして、すべてはお客さまの購買意欲を高めるためです。試験対策としても、単語を暗記するのではなく、実際の店舗の光景を思い浮かべながら、体系的に理解することが大切です。

この回のポイント

  • VMDの本質は、きれいに飾ることではなく、購買意欲を高めて売上を最大化する販売手法。
  • 主通路をコの字にして一方向に歩かせる(ワンウェイコントロール)。奥にマグネットを置き、動線を長くする。
  • ウォークインは補充しやすいが効率が悪い。リーチインは前面のガラス扉から取る。
  • フック・レジ前・エンド・島出しは、ついで買い(非計画購買)を誘う陳列。島出しの多用は禁物。
  • ジャンブルは高額商品に向かない。カットケースは手間が省けて割安感がある。
  • フェイスは増やすほど比例して売れるわけではない。フェイスアウトは目立つが数が減る。ネガティブスペースで視認性が上がる。

動画は最後に、こんな問いかけで結ばれます。次にスーパーやコンビニへ行ったとき、自分が何を買おうとしているかだけでなく、どのように買わされようとしているかを観察してみてください。レジ横のガムや山積みの特売品は、本当にあなたの自由意思で選んだものでしょうか。日常の景色が違って見えてくる。それが学ぶということです。

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