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中小企業診断士 1次試験

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商圏分析と小売引力の法則

運営管理 第21回

運営管理・店舗管理・立地 00612分4秒2026年3月1日公開

「今回の深掘りは、店舗立地についてです。単なる暗記項目として済ませるのは、もったいない。お店がお客さんを引き寄せる、目に見えない引力のルールのようなものです」。動画はこんな語りかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、一次・二次・三次商圏、ハフモデルと修正ハフモデル、ライリーの法則、コンバースの法則をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

店舗立地は「見えない引力」のルールで決まる

動画は、店舗立地を単なる暗記項目として済ませてしまうのはもったいない、という話から始まります。お店が客を引き寄せる「目に見えない引力のルール」だと考えると、公式の背景が見えてきます。お客さんはどこから来て、どうやってお店に引き寄せられるのか。今回は、その引力を4つの段階で整理します。

  • 商圏:お客さんがどこから来るか。売上の割合で3つのエリアに分ける。
  • ハフモデル:店を選ぶ確率。規模に比例し、距離に反比例する。
  • 修正ハフモデル:距離のペナルティを2乗にして、より現実に近づけた版。
  • ライリーの法則(小売引力の法則)とコンバースの法則:舞台を都市に広げ、商圏の境界線を引く。

公式を丸暗記するのではなく、「消費者は移動の面倒を嫌う」という一つの前提から全部がつながる、と理解するのが動画の狙いです。見慣れない問題が出ても、迷わず答えを導けるようになります。

商圏は3つのエリアに分かれる

商圏とは、お客さんがどこから来るのかを示す、ターゲットとなる地理的な範囲のことです。売上の割合によって、内側から一次商圏・二次商圏・三次商圏の3つに分けます。動画で示された割合は、一次商圏が売上の約70%、二次商圏が約20%、残りの約10%が三次商圏です。

店二次商圏三次商圏一次商圏三次商圏売上の約10%遠くのお客さん二次商圏売上の約20%少し離れた層一次商圏売上の約70%近所の常連さん
内側ほど近く、売上の土台になります。試験では 70・20・10 と覚えます。

一次商圏だけで7割は偏りすぎではないか、と思うかもしれません。でも、これがビジネスの基本中の基本です。人は本質的に、移動を面倒に感じる生き物だからです。

家の近くで小さなパン屋さんを開いたとしますよね。遠くから車で来てくれる人もいるでしょうけれど。

毎日、毎週買ってくれるのは、歩いてすぐのご近所さんです。だからまず一番近い一次商圏で、70%の売上基盤を作らないと、商売そのものが成り立ちません。

遠くのファンより、まずは近所の常連さん、ということですね。

そうです。試験対策としても、一次商圏が約70%という圧倒的な割合は、必ず押さえてください。

(補足:「70・20・10」は試験で覚える目安です。実際の商圏の区分は、資料や業種によって違います。たとえば長野県の商圏調査は、売上の割合ではなく吸引率で区分しています。地域の消費需要の30%以上を吸引していれば一次商圏、10%以上30%未満が二次商圏、5%以上10%未満が三次商圏です。指標が違えば数字も変わる、という点だけ頭の片隅に置いておきましょう。)

ハフモデル:近くて大きい店が選ばれる

お客さんがどこから来るかが分かったら、次は「数あるお店の中から、どの店を選ぶのか」という確率の話です。ここからが引力の法則の本番で、その代表がハフモデルです。消費者がある店舗に買い物に行く確率を示すモデルで、確率は店舗の規模に比例し、距離に反比例します。

客大きい店魅力は大きいでも遠い小さい店魅力は小さいでも近い距離の抵抗が大選ばれやすさ = 規模(魅力) ÷ 距離の抵抗
規模という魅力と、距離という移動の負担の綱引きです。

これは、私たちが普段買い物をするときの感覚をそのままモデルにしたものです。日用品を買うだけなら、歩いてすぐの小さいスーパーで十分です。でも週末に服も買いたい、食事もしたいとなれば、車で遠出してでも大きなショッピングモールに行きます。つまり、規模という「魅力」と、距離という「移動のコスト」の綱引きです。大きければ引力は強くなり、遠ければ引力は弱まります。

(補足:ハフモデルは、アメリカのデイヴィッド・ハフが1963年の論文で示したモデルです。魅力度には売場面積を使うのが基本ですが、駐車場の面積や営業時間などを加える場合もあります。日本では、当時の通商産業省が大規模小売店舗法の運用に使ったことで、商圏分析の手法として広まりました。)

修正ハフモデル:距離のペナルティは2乗

ところが、現実の消費者は、最初のハフモデルが想定していたよりもシビアでした。移動がもっと面倒だったのです。そこで出てくるのが修正ハフモデルです。店舗を選ぶ確率が規模に比例するところは同じです。違うのは距離の扱いで、単なる反比例ではなく、距離の2乗に反比例とします。

距離が2乗になると、何が変わるのですか。

ちょっと遠くなるだけで、行く気がガクンと下がります。距離が離れるマイナス効果が2乗で、より厳しく評価されるのです。

車で10分と20分ならまだしも、40分と言われたら、今日はやめておこうとなりますね。

渋滞や信号待ちといった現実の摩擦を考えると、2乗くらい重いペナルティがかかる、というのがより現実的な消費者心理なんです。

試験で迷ったら、「人間は遠くへ行くのが嫌いだから、ペナルティは2乗になる」と思い出してください。ここは引っかけ問題でよく狙われます。

試験の注目点

ハフモデルは「規模に比例、距離に反比例」。修正ハフモデルは「規模に比例、距離の2乗に反比例」。変わったのは距離の部分だけです。「規模の2乗」にすり替えた選択肢には注意しましょう。

(補足:ここで「2乗」は試験での整理です。ハフの原典では、距離の効き方(距離抵抗)は固定の数ではなく、実際のデータから推定する係数として扱われます。食料品のように近場で済ませる買い物ほど大きく、家具のように遠出をいとわない買い物ほど小さくなります。2乗に固定した形が「修正ハフモデル」と言われる、という整理は、資料により異なる点があります。)

ライリーの法則:舞台は都市へ

ここまで店舗の単位で見てきた引力を、一気に都市のスケールに広げたのがライリーの法則です。小売引力の法則ともいいます。動画では、都市Aと都市Bで買い物される金額の比率が、2つの都市の人口に比例し、距離の2乗に反比例すると説明されます。

都市A人口大都市B人口小町中間の町DaDb町の買い物客を A と B が引っぱり合う人口に比例して、町までの距離の2乗に反比例
中間の町の買い物客を、2つの都市が引っぱり合います。

気づいたでしょうか。修正ハフモデルとまったく同じ構造です。店舗の「規模」だった部分が、都市の「人口」に変わっただけです。人口の多い大きな都市は、商業施設も多くて魅力的なので、強い引力を持ちます。でもそこにも、距離の2乗という厳しい制約が立ちはだかります。どんな大都市でも、遠すぎれば引力は弱まるのです。

店舗でも都市でも、大きさに比例して、距離の2乗に反比例する。この共通パターンに気づくと、暗記ではなく理解として頭に入りますね。

そこが分かれば、もうしめたものです。根本のルールは、店舗だろうが都市だろうが変わらないんです。

(補足:正確には、ライリーの法則は「2つの都市に挟まれた中間の町の買い物客を、2つの都市がどう分け合うか」という式です。人口は2つの都市のもので、距離の2乗は、中間の町から各都市までの距離です。動画の「2つの都市の間で」という言い方は、この中間の町を省いた簡略な説明です。提唱者はアメリカのウィリアム・J・ライリーで、1929年の研究報告をもとに、1931年に著書『The Law of Retail Gravitation』にまとめました。)

コンバースの法則:引力が引き分ける地点に境界線を引く

最後の法則はコンバースの法則で、ライリーの法則の応用編です。都市Aに吸収される販売額と、都市Bに吸収される販売額の比率が1になる点を探します。比率が1対1ということは、都市Aの引力と都市Bの引力が互角になって、引き分けている状態です。この、引力の綱引きがちょうど引き分けになる地点が、2つの都市の商圏を分ける商圏分岐点です。

AB商圏分岐点Aの商圏Bの商圏分岐点まで(Aから) d = D ÷ (1+√(Pb÷Pa))D=2都市の距離、P=人口。ここで引力が 1:1例:人口40万と10万、30km → Aから20km
引力が1対1でつり合う点が、商圏の境界線です。

地図の上で、2つの都市の間に、目に見えない境界線を引くイメージを持つと分かりやすくなります。「ここから先は、うちの都市の引力は届かない」と見極めるのです。コンサルタントとして戦略を立てるなら、どこまで広告を打つべきか、どこから先は無駄になるかを決める判断基準になります。公式の丸暗記ではなく、生きた戦略ツールとして使えるわけです。

(補足:動画にない話です。コンバースが1949年の論文「New Laws of Retail Gravitation」で示した形では、都市Aから分岐点までの距離は、2都市間の距離を「1+√(Bの人口÷Aの人口)」で割って求めます。同じ規模の都市なら分岐点はちょうど真ん中です。Aが大きいほど分岐点はBに近づき、Aの商圏が広くなります。図の例は、本文のために作った数字です。試験では、分岐点までの距離を式で求める形で問われることもあるので、「引力が1対1になる点=商圏分岐点」という意味とあわせて、式も押さえておくと安心です。)

4つの法則をまとめて整理する

動画の最後に、全体の流れが整理されます。どの法則も、消費者は移動の摩擦を嫌うという前提から出発し、物理的な規模と距離を基準にしている点が共通しています。

法則・モデル対象引力の中身
ハフモデル店舗の選択確率規模に比例、距離に反比例
修正ハフモデル店舗の選択確率規模に比例、距離の2乗に反比例
ライリーの法則
(小売引力の法則)
都市の引力人口に比例、距離の2乗に反比例
コンバースの法則商圏の境界引力が1対1になる点=商圏分岐点

動画は、法則がどう進化してきたのかを、ストーリーでつなげて頭に入れるのがコツだと言います。商圏の基本として、一次商圏70%・二次商圏20%・三次商圏10%。次に近くて大きい店を選ぶハフモデル。距離のペナルティを2乗に強めた修正ハフモデル。スケールを都市に広げて、人口に比例し距離の2乗に反比例するライリーの法則。最後に、引力が1になる引き分けの地点を見つけて境界線を引くコンバースの法則です。

考えてみよう:オンラインでは「距離」は何になる?

動画は最後に、思考を深める問いを投げかけます。今日の法則は、すべて物理的な規模や距離を基準にしていました。では、オンラインのビジネスで物理的な距離が0になったとき、消費者を引きつける新たな引力や規模、そして商圏の境界線の正体は何になるのでしょうか。

物理的な移動の摩擦がないなら、検索結果の順位や、画面をスクロールする手間が、現代の新しい「距離」のペナルティになるのかもしれませんね。

まさにそうです。試験勉強の息抜きに、ぜひ自分のビジネスの視点で、現代の引力の正体を考えてみてください。

(補足:これは試験の範囲というより、考え方の練習です。ただ、「魅力と、移動の負担の綱引き」という見方は、ネットの世界にもそのまま当てはまります。)

まとめ

この講義の整理

  • 商圏は、売上の割合で一次(約70%)・二次(約20%)・三次(約10%)に分ける。割合は試験での目安で、資料により異なる。
  • ハフモデルは、店の選ばれる確率が規模に比例し、距離に反比例する。
  • 修正ハフモデルは、距離の2乗に反比例にする。ここが引っかけの定番。
  • ライリーの法則(小売引力の法則)は、都市の人口に比例し、距離の2乗に反比例する。店舗のモデルの都市版。
  • コンバースの法則は、2つの都市の引力が1対1になる地点(商圏分岐点)を求めて、商圏の境界線を引く。

どの法則も、「大きいほど引き寄せ、遠いほど弱まる」という同じ構造です。この共通パターンを軸に、4つを一本のストーリーとして覚えておきましょう。

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