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中小企業診断士 1次試験

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企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

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設備保全・バスタブ曲線

運営管理 第24回

運営管理・設備・品質管理 00114分20秒2026年3月1日公開

「設備保全は、一見すると地味なテーマに聞こえるかもしれません。でも実は、利益を大きく左右する非常に重要な領域なんです」。動画はこんな語り出しから始まります。このページでは動画の流れにそって、事後保全・予防保全(定期保全と予知保全)・改良保全・保全予防・生産保全の整理と、バスタブ曲線による使い分けをまとめました。補足として、ワイブル分布の形状パラメータ、MTBF・MTTR・稼働率にもふれています。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

設備保全は「地味」ではなく、利益を左右する

動画は「設備保全は一見すると地味なテーマに聞こえるかもしれませんが、実は利益を大きく左右する、非常に重要な領域です」という話から始まります。単に機械のメンテナンスを暗記するのではなく、「自分がコンサルタントなら、この工場をどう診断するか」という視点で知識を武器に変えていこう、というのが動画の姿勢です。

まず全体像です。設備保全の活動は、大きく2つに分けられます。

  • 維持活動(守り):故障を防いだり、起きてしまった故障から回復させたりする。
  • 改善活動(攻め):メンテナンスの手間やコストを、根本から減らしていく。
設備保全維持活動(守り)改善活動(攻め)事後保全壊れたら直す予防保全故障の前に手を打つ改良保全今ある設備をよくする保全予防新設備の設計に反映定期保全(TBM)時間が基準予知保全(CBM)状態が基準覚え方今=改良保全これから=保全予防生産保全(PM)全部を統合し、費用と生産性を最適にする
設備保全の全体像。守りの維持活動と、攻めの改善活動があります。

維持活動は、故障が起きた「後」に対応するか「前」に対応するかで、事後保全と予防保全に分かれます。改善活動は改良保全と保全予防です。この4つを束ねる大きな考え方が生産保全です。順に見ていきましょう。

事後保全:壊れたら直す。シンプルだけど怖い

事後保全は、機械が壊れたら修理する方法です。JIS Z 8141でも「設備に故障が発見された段階で、その故障を取り除く方式の保全」とされています。分かりやすい反面、最大の弱点は、修理が終わるまで生産が完全に止まることです。

生産ラインの心臓部にあたる機械が止まったら、と考えると、ちょっと怖いですね。想像しただけで冷や汗が出ます。

それが事後保全の最大の弱点です。もしボトルネック工程の設備だったら、工場全体の生産が止まって、納期遅れや顧客の信頼の喪失など、莫大な損害につながりかねません。

それは避けたいですね。

だからこそ、起きる前の対策である予防保全が重要になってくるわけです。

予防保全:定期保全(TBM)と予知保全(CBM)

予防保全は、故障する前に手を打つ保全です。ただ、闇雲に定期点検をするだけでは、まだ使える部品まで交換してコストがかさみます。そこで予防保全は、2つのやり方に分かれます。

項目定期保全(TBM)予知保全(CBM)
基準あらかじめ決めた時間・周期設備の状態
動画の例5,000時間稼働したら部品を交換する(車の定期点検のよう)振動・温度センサーで常時監視し、いつもと違う振動や発熱という兆候で、ピンポイントに部品を交換する
長所シンプルで管理しやすい無駄がない(IoTやAIが生きる)
短所まだ使える部品も換えて、もったいないセンサーや監視システムの初期投資がかかる

時期が来たら問答無用で交換、だと、まだ使えるのにもったいない気がします。もっと賢いやり方はないんですか。

そこで登場するのが予知保全です。ただし初期投資がかかるので、止まると生産全体が止まってしまう、本当にクリティカルな設備に絞って導入するのがセオリーです。

動画が強調するのは、予防保全には異常を見つける点検・診断と、兆候を見つけたら、本格的な故障の前の初期段階で調整・修復するという2つの側面があることです。見つけるだけでなく、手を打つところまで含めて予防保全、と覚えると整理しやすくなります(JIS Z 8141の備考と同じ内容です)。

(補足:動画の「5,000時間稼働したら交換」は、使った時間を基準にする例です。JIS Z 8141は、周期を決めて行う定期保全と、使用時間を基準にする経時保全を合わせて「時間基準保全」としています。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」も、一定の時間間隔で行う定期保全と、運転時間が一定値になるごとに行う経時保全を分けています。)

改善活動:改良保全は「今」、保全予防は「これから」

改善活動の2つは名前が似ていて混同しやすく、試験でも問われやすいポイントです。覚え方は、今ある設備が対象なら改良保全、これから導入する設備が対象なら保全予防です。

項目改良保全保全予防
対象今、稼働している設備これから導入する設備
いつ日々の保全で気づいたとき企画・設計の段階から
動画の例点検のたびに外すカバーに蝶番をつけ、ワンタッチで開くようにする。すぐ摩耗する部品を耐久性の高い素材に替える次のモデルで部品をメンテナンスフリーにする。自己診断機能をつけ、異常を自動で知らせる
ねらい現場の気づきを形にし、点検しやすく壊れにくくするそもそも保全が不要、または最小限で済む設備にする

今あるものをよくするのが改良保全で、未来の面倒の種を設計段階で摘んでおくのが保全予防。違いがはっきりしました。

ええ。蝶番の例は、「点検のたびに何本もボルトを外すのが面倒」という、現場の気づきを形にする改良保全です。

(補足:JISの定義は、改良保全が「故障が起こりにくい設備への改善、又は性能向上を目的とした保全活動」、保全予防が「計画・設計段階から過去の保全実績や情報を用いて、不良や故障に関する事項を予知・予測し、排除する対策を織り込む活動」です。)

生産保全(PM)とTPM

動画は、事後保全・予防保全・改良保全・保全予防の4つをバラバラに行うのではなく、統合的にマネジメントして、保全にとどまらず管理コストの低減や生産性の向上までめざす総合的な活動を生産保全(PM)と呼ぶ、と整理します。JIS Z 8141も、生産保全を「生産目的に合致した保全を経営的視点から実施する、設備の性能を最大に発揮させるための最も経済的な保全方式」とし、計画から廃棄・再利用までのライフサイクルコストを最小にして経営に貢献することを目的としています。

(補足:動画にない話です。TPMは「全員参加の生産保全」で、日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が普及を進めています。JIS Z 8141にも、トップから第一線の従業員まで全員が参加し、小集団活動でロス・ゼロをめざす生産保全活動という趣旨の定義があります。運転部門の人が自分の設備を保全する自主保全は、TPMの活動の1つです。)

バスタブ曲線:保全の使い分けの「地図」

4つの道具を、どう使い分けるか。その地図がバスタブ曲線です。縦軸に故障率、横軸に稼働時間をとると、お風呂のバスタブのような形になるので、こう呼ばれます。設備の一生を3つの時期に分け、年齢によって故障の原因や性質が全く違うことを示しています。

故障率稼働時間初期故障期改良保全保全予防偶発故障期事後保全が基本(コストの釣り合い)摩耗故障期予防保全(定期保全)
バスタブ曲線(模式図)。3つの時期で、効く保全が変わります。
時期故障の性質動画が挙げる対策
初期故障期設計ミス・製造時の不具合・設置の悪さなど、本質的な弱点が原因改良保全・保全予防(対症療法でなく根本治療)
偶発故障期故障率が低く安定。いつ起こるか分からない突発的な故障事後保全(コストとの釣り合い)
摩耗故障期部品の摩耗・劣化・寿命で、故障率が再び上がる。予測がつきやすい予防保全(定期保全で、寿命前に計画交換)

動画は家電でたとえます。買ったばかりのテレビに変な線が入るのが初期故障。その後何年も問題なく映り、8年目くらいから急に電源が落ち始めるのが摩耗期の故障です。初期故障期は、不具合を1つずつ潰して部品を強くしたり、「次の設計ではこの構造はやめよう」と知見をためたりします。ここで弱点を叩いておかないと、後々まで同じトラブルに悩まされます。

働き盛りの偶発故障期は、いつ壊れてもいいように、万全の予防保全を敷くべきなのでは?

意外かもしれませんが、この時期に最も合理的とされるのは事後保全なんです。

一番リスクがありそうですが……。故障はゼロが理想ではないんですか?

理想はゼロです。でも、いつ起こるか分からないランダムな故障を完全に防ごうとすると、過剰な点検や早すぎる部品交換で、コストが莫大に膨れ上がります。予防にかけるコストと、故障した時の損失を天秤にかけると、壊れたら迅速に直す体制のほうが、全体のコストを低くできる。これは経営判断です。

技術論ではなく、経営戦略の話なんですね。ある程度の故障は許容して、その代わり復旧は素早く、と。

摩耗故障期になると、故障が頻発し、その原因も部品の摩耗や劣化といった予測できるものになります。こうなると壊れてから直しては追いつかず、予防保全が主役です。たとえばベアリングの寿命が5年と分かっているなら、4年半で計画的に交換すると決めておく。それでラインが突然止まる最悪の事態を防げます。

赤ちゃん、働き盛りの大人、高齢者で健康診断のメニューが違うのと同じ発想です。大事なのは、なぜその保全が有効なのかという理由まで結びつけて覚えることです。

補足:ワイブル分布のmで、バスタブ曲線を読む

(動画にない話です。)故障率の形は、ワイブル分布の形状パラメータ m で整理できます。故障率関数は h(t)=(m/η)×(t/η)^(m−1)(η は尺度パラメータ)で、m が1より小さいと減り、1だと一定、1より大きいと増えます。

m<1初期故障型故障率が減るm=1偶発故障型故障率が一定m>1摩耗故障型故障率が増える
ワイブル分布の形状パラメータ m と、故障率の形。
m故障率の形と時期η=1,000時間の例
(100→1,000→2,000時間、×10−3/時間)
0.5減少。初期故障型1.58 → 0.50 → 0.35
1一定。偶発故障型(指数分布)1.00 → 1.00 → 1.00
3増加。摩耗故障型0.03 → 3.00 → 12.0

m=1は指数分布で、このときMTBF(平均故障間隔)は故障率の逆数になります(JIS Z 8141・Z 8115)。なお、m が1でないワイブル分布の故障率は、増えるだけ、減るだけの単調な形です。バスタブの形を1本で描くことはできず、3種類の故障率を足し合わせて作ります(先の図は、そうして計算した模式図です)。

「偶発故障期は事後保全、摩耗故障期は定期保全」も、計算で確かめられます。作例として、故障後の取替え費10、予防取替え費1、η=1,000時間と仮定します。m=1では、定期取替えの周期をどう決めても、故障まで使うより安くなりません(1時間あたり0.0100に対し、周期300時間で0.0129)。m=3では、375時間ごとに取り替えると0.0040で、故障まで使う場合の0.0112より約65%安くなります。m=0.5の初期故障型も取替えは割高で、原因を直す必要があります。

補足:MTBF・MTTR・稼働率

(動画にない話ですが、保全の効果を数字で測る基本です。)MTBFは、故障から次の故障までの動作時間の平均。MTTRは、故障した設備を直す時間の平均。稼働率(アベイラビリティ)は、MTBF÷(MTBF+MTTR)です。

動いている時間 150時間(MTBF)直す時間 5時間(MTTR)稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR)= 150 ÷(150 + 5)= 約96.8%(作例。長さはほぼ実寸比)
動く時間と直す時間の比が、稼働率になります。

900時間動いて6回故障し、修理に合計30時間かかった設備なら、MTBFは150時間、MTTRは5時間、稼働率は約96.8%です。MTTRを半分にしても、MTBFを倍にしても、稼働率は同じ98.4%になります。改良保全や保全予防で故障しにくくするのも、保全性を高めて早く直せるようにするのも、稼働率には同じように効く、ということです。

設備総合効率(時間稼働率×性能稼働率×良品率)との関係も1つだけ。前の回の作例(負荷時間440分、停止55分、性能稼働率92%、良品率97%で78.1%)で、故障停止を30分減らすと、時間稼働率は87.5%から94.3%、設備総合効率は84.2%に上がります。

資料によって違う点

JISの用語と、業界誌・大学資料の説明には、少し違いがあります。動画はJIS Z 8141に近い整理です。

論点資料ごとの違い
予防保全と予知保全JIS Z 8141と動画:予知保全(状態基準保全・CBM)は予防保全の一つの方法。業界誌(MONOist):事後・予防・予知・改良・保全予防の5方式を並べ、予知保全を別に立てる。JIS Z 8115:2019には「予知保全」の見出し語がなく、予防保全を時間計画保全と状態基準保全(状態監視保全)に分ける。
時間基準の保全JIS Z 8141:定期保全と経時保全を合わせて時間基準保全。JIS Z 8115:時間計画保全(定期保全は「予定の時間間隔で行う予防保全」)。
事後保全の定義JIS Z 8141:故障が発見された段階でその故障を取り除く。JIS Z 8115:フォールト検出後に要求どおりの状態へ修復する。「見つけてから直す」点は同じ。
生産保全JIS Z 8141:経営的視点で行う最も経済的な保全方式。MONOist:広義の生産保全は改良保全・保全予防・(狭義の)生産保全の3つ。TPM(全員参加の生産保全)は別の言葉。
故障期の呼び名JIS Z 8115は「初期故障期間・偶発故障期間・摩耗故障期間」で、偶発故障期間は一定故障率期間とも呼ぶ。動画は「〜故障期」。「磨耗」と書く資料もある。
バスタブ曲線の当てはまり厚生労働省:当てはまりやすいのは半導体や電子機器。多くの機械類・電動機は初期・偶発の故障が少なく、摩耗期に指数的に上がる。初期故障期は「一般に約1年」。
偶発故障期の対策動画:事後保全。予備校の解説(令和2年第19問):安定すれば状態監視保全で事前に処置でき、事後保全費が下がる。東京大学の卒業論文:交換や定期検査では下がりにくく、荷重条件の緩和や並列化など設計面の改善が要る。

(JISは、Z 8141は2001年版、Z 8115は2019年版の本文で確認しました。現行のZ 8141:2022の本文は確認できていません。)

試験での出方(令和2年度の例)

  • 第19問(保全体制と保全費):時間計画保全・状態監視保全・事後保全費・保全費の範囲を組み合わせた問題。保全費には、修理費、点検・検査の保守費用、保全用予備品の在庫費用などが含まれます。
  • 第20問(設備総合効率):どの改善がどの指標に効くかを見分ける問題。段取りや立ち上げ時間の短縮は停止が減るので時間稼働率、チョコ停(一時的な停止)の削減は性能稼働率、不適合率の改善は良品率です。
  • ※公式PDFではなく、予備校(スタディング)の解説で確認した内容です。

動画の最後の問い:バスタブ曲線を「人」に当てはめると

動画は最後に、バスタブ曲線の考え方を、人の仕事のミス率やチームの生産性に応用したらどうなるか、と問いかけます。新人時代が初期故障期、中堅時代が偶発故障期、ベテラン時代が摩耗故障期。それぞれで、どんな教育・マネジメント・ケアが有効でしょうか。

(補足:動画は答えを示していません。対応表を当てはめた一例は、新人期=弱点を根本から直す教育・手順書づくり、中堅期=ミスの損失と予防コストを見比べ復旧を早める体制づくり、ベテラン期=計画的なスキル更新やケア、です。)

まとめ

  • 設備保全は、守りの維持活動(事後保全・予防保全)と、攻めの改善活動(改良保全・保全予防)。全体を束ねるのが生産保全。
  • 予防保全は、時間が基準の定期保全(TBM)と、状態が基準の予知保全(CBM)。予知保全は重要設備に絞る。予防保全は「点検・診断」と「初期段階の調整・修復」の2側面。
  • 改良保全は今ある設備、保全予防はこれから作る設備が対象。
  • バスタブ曲線:初期故障期は改良保全・保全予防、偶発故障期は事後保全、摩耗故障期は予防保全(定期保全)。
  • 分類や用語は資料で違う。予知保全の位置づけ、時間基準保全の呼び名、偶発故障期の対策は、特に注意。
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