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中小企業診断士 1次試験

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設備管理と外注管理

運営管理 第25回

運営管理・設備・品質管理 0028分27秒2026年3月1日公開

「中小企業診断士の試験、今回は運営管理の分野ですね。特に重要になる3つのテーマに絞って、深く掘り下げていきましょう」。動画はこんな呼びかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、設備の評価指標(MTBF・MTTR・稼働率)、信頼性設計(フェールセーフとフールプルーフ)、外注管理(内外製区分とファブレス)をまとめました。あわせて、外注先との取引に関わる下請法から取適法への改正も補足しています。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

3つの柱は、一見バラバラでも根っこでつながっている

動画は、運営管理の中でも特に重要な3つのテーマに絞って、深く掘り下げていきます。

  • 設備の評価指標:工場の設備がどれだけ頼りになるかを示す指標(MTBF・MTTR・稼働率)。
  • 信頼性設計:故障やミスが起きても安全を確保するための設計思想(フェールセーフとフールプルーフ)。
  • 外注管理:どこまでを自社で作り、どこからを外に任せるかという、経営戦略にも関わる判断(内外製区分とファブレス)。

3つに共通するのは、「壊れること」や「人が間違えること」を前提にして、しなやかで強い事業をつくるという発想です。指標や考え方の「なぜ大事なのか」まで理解すると、知識がぐっと定着しやすくなります。

MTBFとMTTR:壊れにくさと、直しやすさ

設備の信頼性をはかる指標の最初がMTBF(平均故障間隔。Mean Time Between Failures)です。設備が故障して修理されてから、次にまた故障するまでの、動いている時間の平均を表します。MTBFが長いほど、その設備は滅多に壊れない、つまり信頼性が高いといえます。

ただし、どんなに優れた機械でも、いつかは壊れます。そこで、もう一つの指標MTTR(平均修復時間。英語は Mean Time To Repair とされることが多いのですが、JIS Z 8115は mean time to restoration とし、mean time to repair は対応英語として使えないとしています)が大切になります。故障が起きてから、修理が終わって再び動かせるようになるまでの平均時間のことで、短いほど、壊れてもすぐ復旧できることになります。

稼働修理稼働修理稼働故障故障MTBF(壊れにくさ)修理後〜次の故障までの平均MTTR(直しやすさ)故障〜復旧の平均稼働率(可用率)MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
壊れにくさ(MTBF)と直しやすさ(MTTR)を、ひとつの式で合わせたものが稼働率です。

たとえば、1か月の負荷時間(動かす予定の時間)が160時間で、故障で止まった時間の合計が6時間、故障が4回だったとします。MTBFは(160-6)÷4=38.5時間、MTTRは6÷4=1.5時間です。

(補足:定義の細かい違いです。以下のJIS Z 8141の引用は2001年版の本文で確認したもので、現行の2022年版は確認できていません。JIS Z 8141は、MTBFを「故障設備が修理されてから、次に故障するまでの動作時間の平均値」、MTTRに当たる平均修復時間を「故障した設備を運用可能状態へ修理するために必要な時間の平均値」と定めています。上の例の計算式は解説記事の一般的な式です。)

稼働率:MTBFとMTTRを一つにまとめる

動画は、ここでクイズを出します。ものすごく壊れにくいが、一度壊れると直すのに時間がかかる設備と、そこそこ壊れるが、すぐ直せる設備。どちらが良い設備でしょう。一概には言えません。そこで、2つを統合した指標が出てきます。それが稼働率です(別名は可用性・可用率・アベイラビリティ。後ろの補足を参照)。

式は、稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)です。「動いていた時間と止まっていた時間を全部足したうち、実際に動いていた時間の割合」を表しています。試しに、2つの設備を比べてみます。

設備MTBF/MTTR稼働率
A(壊れにくい)1,000時間/20時間約98.04%
B(直しやすい)100時間/2時間約98.04%

数字をそろえたので、AとBの稼働率は同じになります。式の中身は、MTTRがMTBFの何分の一かという比で決まるからです。壊れにくさだけを追いかけるのではなく、修理の体制を整えてMTTRを短くすることも、稼働率を高める有力な手段だと、動画は強調します。

基準MTBF/MTTR稼働率
いまの設備100時間/10時間約90.91%
MTBFを2倍にする200時間/10時間約95.24%
MTTRを半分にする100時間/5時間約95.24%

壊れにくい設備を買うより、修理の段取りを整えるほうが安くすむ場合もありそうですね。

そのとおりです。予備部品を置いておく、修理の手順をそろえる、といった工夫でMTTRは縮められます。現場のコンサルタントなら、稼働率の低さを、生産計画の遅れに直結する危険信号として見るはずです。

補足:「稼働率」という言葉に注意

JIS Z 8115(信頼性の用語)は、アベイラビリティ(要求どおりに遂行できる状態にある能力)の言い換えとして、可用性・可動率・稼働率も使われると注記しています。JIS Z 8141(2001年版)には、同じ意味の可用率(必要とされるときに設備が使用中または運転可能である確率。可動率ともいう)の定義があります。一方、JIS Z 8141(2001年版)は、能率管理や稼働分析の「稼働率」を、実際の稼働時間÷総時間(または負荷工数)の意味でも使います。同じ「稼働率」でも、問題文によって指すものが違うので、式が与えられているか、MTBFとMTTRが出ているかを確かめてから計算しましょう。

信頼性設計:フェールセーフとフールプルーフ

設備の信頼性は、評価するだけでなく、最初から安全に設計することもできます。ここで重要になるのが、フェールセーフとフールプルーフという2つの考え方です。

フェールセーフフールプルーフ想定する失敗想定する失敗機械の故障・不具合人のうっかり・誤操作壊れても必ず安全な側へ動く間違えても危険な状態にならない例:停電で下りる遮断機例:蓋が開くと回らない洗濯機
故障への備えがフェールセーフ、うっかりへの備えがフールプルーフです。
項目フェールセーフフールプルーフ
失敗機械の故障人のうっかり
発想壊れても重大事故にしない間違えても危険にしない
動画の例倒れると消えるストーブ、停電で下りる遮断機蓋が開くと脱水しない洗濯機、ブレーキを踏まないとかからない車

フェールセーフはシステムの異常を前提とした安全設計で、フールプルーフは利用者のミスをシステム側が想定して未然に防ぐ設計です。優れた製品は、この両方の視点から安全が考えられています。診断のときも、対象企業の製品やサービスが2つの観点を満たしているかを見ると、分析が深まります。

ストーブが倒れたら火が消えるのは、故障ではなくて、人が倒したときの話ではないでしょうか。

鋭いですね。倒れるという「異常」が起きたときに、安全な側に動く、と考えればフェールセーフです。「人が倒さないように」という発想なら、フールプルーフ側の話に近くなります。同じ例でも、どちらを守る設計かで分け方が変わる場合があるので、動画の整理は目安として押さえましょう。

(補足:動画にない話です。JIS Z 8115では「フェールセーフ」と表記し、「故障時に、安全を保つことができるシステムの性質」と定義しています。動画や多くの教材の「フェイルセーフ」と同じ意味です。フールプルーフは、同じJISで「人為的に不適切な行為、過失などが起こっても、システムの信頼性及び安全性を保持する性質」とされています。ほかに、故障が差し迫ったとき、重要でない機能から順に縮めて基本の機能を保つフェールソフトという考え方もあります。厚生労働省の職場のあんぜんサイトにも、両者の解説があります。)

外注管理:内外製区分の判断

最後のテーマは、視点を上げた経営戦略の話です。どこまでを自社でつくり、どこからを外部に任せるか。これを決めるのが内外製区分(内外作区分ともいう)で、企業の根幹に関わる意思決定です。JIS Z 8141(2001年版)は、これを「内作にするか、外注にするかを決める活動」と定義しています。

用語を整理しておきます。内製(内作)は自社内での部品の加工・組立、外注(外作・外製ともいう)は、自社が指定する設計・仕様・納期にもとづき、外部の企業に部品加工や組立を委託することです。外注を管理する外注管理は、内外製の最適な分担のもとで、原材料や部品を安定的に外部から調達するための手段の体系とされます。

判断の軸見るポイント
品質面内製と外注のどちらが高品質か。その技術を自社に蓄積したいか
価格面単純に、どちらが安く作れるか
数量・納期面求められる量と納期に、自社の能力で対応できるか
その他自社設備の稼働率、専門技術が必要かどうか

動画は、この3つ(品質・価格・数量と納期)が基本の軸だと言います。さらに、コストだけで決めず、自社の強みや事業戦略と照らして総合的に判断することが求められます。JISも、外注の要件を「自社の技術・生産能力の不足分を補い、要求品質を満たし、コスト効率がよいこと」としています。

価格面の判断は、数字で見るとわかりやすくなります。次の例は、動画にない自作の例です。ある部品を自社でつくると、設備の費用などの固定費が月60万円、材料や加工の変動費が1個300円かかります。外注なら1個500円です。

個数費用3,000個0外注:1個500円自製:固定60万円+1個300円損益分岐点3,000個より少ない → 外注が安い3,000個より多い → 自製が安い
固定費がかかる自製は、数が増えるほど有利になります。

損益分岐点は、60万円÷(500円-300円)=3,000個です。月4,000個なら自製が180万円・外注が200万円で、自製が20万円有利。月2,000個なら自製が120万円・外注が100万円で、外注が20万円有利になります。数量が少ない、一時的な需要のときは外注、数量が多く続くときは自製が基本です。

安いほうに任せればいい、という話ではないのですね。

ええ。たとえば、自社しか持たない特殊な技術がある部品を外に出すと、その技術をまねされるおそれがあります。コストが安くても、強みを手放すことになりかねません。

(補足:JIS Z 8141(2001年版)は、外注の形も整理しています。製造委託は、自社の仕様で資材や製品の製造・加工を依頼すること。一貫外注は部品の全工程の加工を外注する方式、完成品外注は自社が販売する製品の仕様などで外注する方式です。発注者が外注先へ資材を渡す材料支給方式には、代金を取らない無償支給と、価格を決めて売り渡す有償支給があります。外注への依存度は外注依存度(生産金額に対する購入金額の割合)で測ります。)

試験でのねらわれ方

診断士の過去問にも、内外製区分はそのまま出ています。平成28年度の問題は、内外作区分の記述の誤りを選ぶもので、「一過性の需要には、設備を増強して内作で対応する」が不適切とされました。一時的な需要のための設備投資は、あとで稼働率の低下を招くからです。逆に、競争優位な技術がある部品は内作を続け、他社が優れた特許技術を持つ場合は外作が適します。令和元年度は、標準作業時間・適合品率・稼働率・人数から1日の生産可能数を計算し、足りない分を外注化する、という計算問題でした(6時間×0.9×0.9×5人÷0.3時間=81個/日、10日で810個。900個に90個足りない)。

ファブレス:外注を突き詰めた経営

外注の考え方を突き詰めたビジネスモデルがファブレス、つまり自社では工場や製造設備を持たない製造業です(fabは製造施設の意味)。企画・設計・開発は自社で行い、製造は他社に任せます。

見方内容
メリット設備投資が要らず、固定費を減らせる。経営の柔軟性が高まる
デメリット製造ノウハウが自社に蓄積されない。製造を外部に依存する
注意点契約によっては、製造委託先から最低発注量を求められ、固定費の削減につながらないことがある

最後の注意点は意外な落とし穴です。たとえば、月に最低2,000個の発注を約束する契約で、実際の需要が1,500個だったとします。1個500円なら、支払いは100万円です。通常なら75万円ですむはずなので、25万円が実質的に固定費のように働いてしまいます(動画の主張にもとづく自作の例です)。

ここで問われるのがコア・コンピタンス、つまり自社の中核となる強みは何か、です(プラハラードとハメルが1990年に提唱した概念)。設計・企画・マーケティングに強みがある企業は、製造を外部に任せるファブレス経営を選ぶことがあります。ただし、それは製造という重要な機能を外部に頼ることでもあります。パートナー企業との関係が、事業の安定性を左右する鍵になります。

工場を持たないと身軽ですが、取引先が止まったら、自社も止まってしまいますね。

そうなんです。だから、強みを自社に残しつつ、外に任せる部分の管理(外注管理)をきちんとすることが大切です。

補足:外注先との取引と、下請法から取適法への改正

(動画にない話です。外注管理に直結するので、現在の法律の内容を補足します。)外注先に製造などを委託する取引には、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が関わります。この法律は令和8年(2026年)1月1日に改正・施行され、名称が中小受託取引適正化法(通称:取適法)になりました(令和7年法律第41号の改正。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)。令和8年4月1日時点では、取適法が現行です。古い教材や動画が旧名称で説明していても、試験では現行の内容で考えましょう。

旧(下請法)新(取適法)
親事業者委託事業者
下請事業者中小受託事業者
下請代金製造委託等代金
製造委託などの取引(例:部品の加工を頼む)委託事業者(発注する側)中小受託事業者(受注する側)次の①か②のどちらかを満たせば対象① 資本金3億円超 → 3億円以下/1,000万円超 → 1,000万円以下② 従業員(新設)常時使用する従業員が 300人超 → 300人以下
資本金だけでなく、従業員数でも対象かどうかが決まるようになりました(製造委託の場合)。

改正のおもな点は、①資本金に加えて従業員数の基準(製造委託などは300人、情報成果物作成・役務提供は100人)を追加、②対象取引に特定運送委託を追加、③手形払い等の禁止と、④協議に応じない一方的な代金決定の禁止の新設、です。製造委託の対象物にも、金型に加えて木型などの成形用の型や特殊な工具が明記されました。

委託事業者には4つの義務があります。①発注内容などの明示(書面または電磁的方法)、②取引記録の作成・保存(2年間)、③支払期日の設定(物品などを受け取った日から60日以内で、できる限り短い期間)、④遅延利息の支払い(年率14.6%)です。60日の規定は、旧法から変わっていません。

禁止行為は11項目で、受領拒否・代金の支払遅延・減額・返品・買いたたき・購入や利用の強制・報復措置・有償支給原材料等の対価の早期決済・不当な経済上の利益の提供要請・不当な給付内容の変更ややり直し・協議に応じない一方的な代金決定です。有償支給は、先ほどの材料支給方式の話とつながります。外注先に原材料を有償で渡したとき、その製品の代金の支払日より早く、原材料の代金を支払わせてはいけません。

まとめ

  • MTBFは壊れにくさ(長いほど良い)、MTTRは直しやすさ(短いほど良い)。
  • 稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)。修理体制を整えてMTTRを縮めても高まる。問題文の「稼働率」が何を指すかは、式で確認する。
  • フェールセーフは機械の故障への備え(壊れても安全側へ)、フールプルーフは人のミスへの備え(間違えても危険にならない)。
  • 内外製区分は、品質・価格・数量と納期を基本に、設備の稼働率や専門技術、自社の強みや戦略を合わせて総合的に判断する。数量が少ない時や一時的な需要は外注が向く。
  • ファブレスは固定費を減らせる一方、ノウハウが蓄積されず、最低発注量などで固定費が残ることもある。コア・コンピタンスの見きわめが鍵になる。
  • 外注先との取引は、令和8年1月1日から取適法(旧下請法)の対象になりうる。用語は委託事業者・中小受託事業者・製造委託等代金。支払期日は受領から60日以内。

動画は最後に、考えを広げる問いを投げかけます。MTBFや内外製区分は、製造業だけの話ではありません。あなたの仕事で、トラブルが起きる間隔(MTBF)や、立て直しにかかる時間(MTTR)はどれくらいか。あなたのコア業務は何か。学んだ枠組みを、いろいろな場面に当てはめて考えてみると、理解がより深まります。

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