新QC七つ道具『言語データを武器にする強力な思考ツール群』
運営管理 第27回
「顧客満足度がなんとなく下がっている」「チームの新しい企画がどうもまとまらない」。数字だけではなかなか捉えきれない、こんな混沌とした状況に、どう筋道を通すか。動画はこの問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、新QC七つ道具の7つの手法と、言語データ・数値データの違い、旧QC七つ道具との関係を、資料による違いの補足つきでまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
数字だけでは捉えきれない問題に、筋道をつける
動画は、品質管理の中でも少し特殊な話題から始まります。言葉やアイデアなど、数字だけではなかなか捉えきれない複雑な問題を整理する、強力な思考ツール群です。例に挙がるのは「顧客満足度がなんとなく下がっている」「チームの新しい企画がどうもまとまらない」といった混沌とした状況。そこに1本の筋道を通すための道具が、新QC七つ道具です。
従来のQC七つ道具(旧QC七つ道具)が、主に製造現場の数値データを扱うのに対し、新QC七つ道具は、企画や開発の部門で飛び交う言語データを武器に変えるための道具立てだと説明されます。言語データとは、意見・アイデア・要望・課題のように、言葉で表された情報のことです。
動画は7つの手法を1つずつ見ていきます。混沌とした情報から構造を見つけ出し、具体的なアクションにつなげる流れを体感してほしい、というのがねらいです。
覚え方は「新連携アロマでP」
7つもあると覚えにくい。そこで動画が紹介するのが、頭文字の語呂合わせ「新連携アロマでP」です。
- シ=親和図法
- レ=連関図法
- ケ=系統図法
- アロ=アローダイアグラム法
- マ=マトリックス図法
- デ=マトリックス・データ解析法
- P=PDPC法
この順番で見ていくと、各手法がどんな目的で使われるのか、流れがつかみやすいと動画は言います。
(補足:資料による違いです。7手法の順番と名前は資料で違います。JIS Q 9024:2003の参考注記は「マトリックス・データ解析、連関図、系統図、マトリックス図、親和図、アローダイアグラム、PDPC」の順(規格の項目順)です。英語文献が引く水野滋の列挙は「連関図、親和図、系統図、マトリックス図、マトリックス・データ解析、PDPC、アロー」、解説サイトや検定テキストは「親和図法、連関図法、系統図法、マトリックス図法、アロー、PDPC法、マトリックス・データ解析法」と並べます。順番に決まりはなく、語呂合わせは動画の並びに合わせたものです。「連関図法」を「関係図法」、「アローダイアグラム」を「アロー・ダイヤグラム」と書く解説もありますが、同じ手法です。なお、マトリックス・データ解析を含めて7つとする点は、JISの注記も動画も同じです。)
親和図法:ごちゃごちゃの意見を、似たもの同士でまとめる
最初は親和図法。動画の説明では、散らばった言語データを、言葉の持つ意味の親和性、つまり似たもの同士でグループ分けしていく手法です。ブレインストーミングで出た大量の意見を整理・分類して体系化し、構造として見えるようにするときに役立ちます。
ただ分類するだけなら、ふつうの仕分けと同じではありませんか。
ねらいは、混沌とした情報の中から構造を見つけ出すことです。似たものを集めて、グループごとに共通の題をつけていくと、バラバラだった意見が少数のまとまりに整理されて、全体の姿が見えてきます。
(補足:動画にない話です。JIS Q 9024では、親和図は「混沌とした問題について、事実・意見・発想を言語データでとらえ、相互の親和性によって統合して、解決すべき問題を明確に表した図」とされます。作り方は、課題を設定し、原始情報を集めて言語データにし、類似した2つを新しい言語データに作りかえ、類似性のないものはそのままにして、これを繰り返す流れです。解説サイトには「KJ法とも呼ばれる」という説明があり、KJ法は文化人類学者の川喜田二郎の考案とされます。)
連関図法:絡み合った原因と結果を、矢印でほどく
次は連関図法。名前のとおり「関係の図」で、原因と結果、あるいは目的と手段などが複雑に絡み合った問題について、関係性を論理的につないでいく手法です。因果関係を整理することで問題の構造そのものが明らかになり、解決の糸口を見つけられる、と動画は説明します。
(補足:JIS Q 9024の手順では、問題を用紙の中央に書き、1次原因を周りに置き、2次原因、3次原因と掘り下げて因果関係を矢印で結びます。そのあと因果関係を確認して原因を足したり直したりし、主要原因を絞り込んで色づけします。動画は「目的と手段」にも触れていますが、目的から手段を枝分かれさせる役目は、次の系統図法のほうです。)
連関図と系統図、どちらも矢印や枝でつなぎますよね。見分け方はありますか。
連関図は、原因と結果が複雑に絡み合っている問題で、因果のつながりをつかむ図です。次に出てくる系統図は、1つの目的から手段を枝分かれさせて展開する図。絡み合いを読み解くのが連関図、分解して具体化するのが系統図、と覚えると区別しやすいです。
系統図法:目的を、実行できる手段まで分解する
系統図法は、目的を達成するための具体的な手段を、どんどん掘り下げていく手法です。目的と手段を多段階に展開して系統立てることで、対策を整理します。大きな目標を、だんだん小さなタスクに分解していくイメージです。目的と手段の連鎖をツリー状に描いていくと、最適な解決策が具体的に見つかる、と動画は言います。
(補足:JIS Q 9024の手順は、問題を用紙の左端中央に書き、第1次手段をその右に列挙し、その1次手段を第2次の目的として第2次手段を右に出す、という繰り返しです。具体的に実行できる手段が得られるまで多段階に展開し、最後に上位の目的と手段の関係や、抜け落ちがないかを確認します。マトリックス図と組み合わせて、手段のウェート付けに使うこともあるとされます。)
マトリックス図法:2つの要素を行と列に置いて、関係を見る
マトリックス図法は、行列の形を使う手法です。主に2つの要素を行と列に置き、その交点に、対応関係があるかないか、その度合いを示して、問題点を整理します。複数の視点から物事を評価して、着目点を明確にできるのが利点だと動画は説明します。
| 対策案 | 効果 | 手間 |
|---|---|---|
| 案A | ◎ | △ |
| 案B | ○ | ◎ |
| 案C | △ | ○ |
(上の表は説明用の例です。行に対策案、列に評価の観点を置き、交点に◎○△を書き込むと、どの案がどの観点に強いかが一目で分かります。)
(補足:JIS Q 9024では「行に属する要素と列に属する要素によって二元的配置にした図」とされ、作り方は、課題を決め、行と列の要素を決め、マトリックスの型を選び、交点に関連の有無・度合いを書いて、着眼点から結論を得る流れです。テーマ選びや、対策案の絞り込みを支える技法としても挙げられています。)
アローダイアグラム法:作業を矢印でつないで日程を管理する
アローダイアグラム法は矢印を使う図で、複雑なプロジェクトで、各作業の関連性や日程をネットワーク図で示し、効果的な工程管理を行うための方法です。聞き手が「プロジェクトの工程管理で出てくるPERT図と似ていますか」と尋ね、講師は「全く同じものと考えていただいて大丈夫」と答えます。以前、生産計画のテーマで触れたPERTで使われる手法が、まさにこれに当たる、という説明です。
(補足:「全く同じ」は少し単純化した言い方です。JIS Q 9024は、アローダイアグラムを「日程計画を表すために矢線を用いた図」とし、PERTと呼ばれる日程計画・管理の技法で使われる、と書いています。つまりPERTは技法、アローダイアグラムはそこで使う図です。JIS Z 8141は、各作業を矢線で表し、作業間の先行関係に従って結合し、開始と完了のノードを加えたネットワーク図と定義します。最早・最遅の日程や余裕時間、クリティカルパスの計算は別の講義ページ(PERT・CPM)で扱っているので、ここでは「作業の順序と日程を矢線で表す図」と押さえれば十分です。)
マトリックス・データ解析法:唯一、数値データを扱う
動画が「ここがポイント」と強調するのが、この手法です。マップ上に2つ以上のデータを配置(マッピング)して、違いや傾向を分析します。新QC七つ道具は主に言語データを扱うものがほとんどですが、この手法だけは数値データを扱う。多変量解析の一種と考えるとよい、と動画は言います。
言語データで整理したものを、今度は数値で裏付ける、という使い方もできそうですね。
そのとおりです。名前にマトリックスとつく手法でも、マトリックス図法は言語データの関係を整理する図、マトリックス・データ解析法は数値データを解析する手法で、中身はまったく別物です。
(補足:JIS Q 9024では、行列に配置した数値データを解析する多変量解析の一手法で、主成分分析とも呼ばれることがある、とされます。大量の数値データから項目を集約し、評価項目間の差を明確に表すために使います。手順は、平均値と標準偏差、相関係数、固有値、固有ベクトルと因子負荷量、主成分得点を計算し、得点の散らばりをグラフにする流れです。資料による違いとして、JISは「新QC七つ道具」の注記に含めつつ、解説の置き場所は言語データ編ではなく数値データ編です。「新QC七つ道具=言語データ」は大づかみの整理で、この1つだけが例外、と覚えておくと整合します。)
PDPC法:計画の途中の「もしも」を先に決めておく
最後はPDPC法。動画では「プロセス・デシジョン・プログラム・チャート」の略で、計画の段階で、不測の事態に備えるための手法とされます。事前に考えられるさまざまな結果を予測して、万が一問題が起きたときの対応をあらかじめ決めておく。そうすれば、計画の途中で不測の事態が起きても、それに従って対策を実行でき、プロジェクトを円滑に進められます。
動画のたとえ:転ばぬ先の杖
聞き手が「いわば転ばぬ先の杖を体系的にやるようなもの」とまとめ、講師も「まさにそういうことです」と応じます。計画どおりに進む道だけでなく、うまくいかない場合の分かれ道と対策まで、先に描いておく手法です。
(補足:資料による違いです。訳語は、JIS Q 9024が「プロセス決定計画図」、OR事典が「過程決定計画図」です。JISは「目標達成のための実施計画が、想定されるリスクを回避して目標に至るまでのプロセスをフロー化した図」とし、手順は、出発点とゴールを決め、大まかな手段を並べ、各段階で予想される状態を想定して対策を書く流れです。OR事典は「現在の状況から最終結末に至る過程で生じ得る状況と対策、その推移を有向グラフに描いたもの」とし、最良の結末から先に決める点や、戻れないときは次善の結末へ誘導する点も述べます。考案は東京大学の近藤次郎とされますが、年は「1970年代後半」とする事典や「40年以上前」とする記事など資料で幅があり、一次資料では確認できませんでした。)
7つを「改善の流れ」に並べてみる(補足)
動画は手法を1つずつ目的で紹介しますが、並べ方の整理はありません。補足として、「問題の発見・整理、原因の追究、対策の立案、計画・日程管理、リスク対応」の5つの場面に当てはめると、次のようになります。
(補足:資料による違いです。この5つの区分そのものは、今回確認できたJISや公的資料には見つからず、図は各手法の定義からの整理です。JIS Q 9024は改善の手順の中で、テーマ選定にマトリックス図、原因の仮説設定に特性要因図と連関図、対策案の列挙に系統図と親和図、採用時のリスクの検討にPDPC、実施計画の策定にアローダイアグラムを挙げています。親和図は、取り組み方に迷う混沌とした問題の整理にも、対策案のアイデア出しにも使われ、1つの場面に固定されません。JIS Q 9024は2026年に改正版が出たとされますが、本文は確認できておらず、ここでの引用は2003年版です。)
旧QC七つ道具との境目と、新QC七つ道具の誕生(補足)
(補足:動画にない話です。旧QC七つ道具の顔ぶれも資料で少し違います。JIS Q 9024の注記は「パレート図、グラフ、チェックシート、ヒストグラム、散布図、管理図、特性要因図」で、層別は別項目です。さらに特性要因図は、JISでは言語データに対する技法の側に載っています。「旧=数値、新=言語」は試験向けの大づかみの整理と考え、迷ったら手法の名前と用途で判断しましょう。)
(補足:誕生の時期も資料でずれます。民間の解説は「1977年に日本科学技術連盟(日科技連)が開発」とします。英語文献は、水野滋(1988)によれば世界的な調査のあと1976年に提案され、開発委員会は1978年に解散して研究会に再編、第1回シンポジウムは1979年だと引きます。国立国会図書館の典拠データには『管理者スタッフの新QC七つ道具』(1979年5月)が出てきます。「QC手法開発部会」という日本語名と発足年、1976年と1977年の差は、日科技連などの一次資料では確認できませんでした。)
まとめ
| 手法 | 目的・使いどころ | 鍵 |
|---|---|---|
| 親和図法 | 混沌とした言語データを、似たもの同士で整理・体系化 | 整理 |
| 連関図法 | 絡み合う原因と結果の関係を明らかにする | 因果 |
| 系統図法 | 目的から手段を多段階に展開して対策を整理 | 分解 |
| マトリックス | 2つの要素を行と列に置き、関係の有無・度合いで着目点を明確化 | 交点 |
| アロー | 作業の関連と日程をネットワーク図で示す。PERTで使う | 日程 |
| マトリックス・ | 数値データを多変量解析で分析。新QCで唯一の数値データ | 数値 |
| PDPC法 | 不測の事態を予測し、対応を先に決めておく | 備え |
試験の注目点
新QC七つ道具は「言語データ」、旧QC七つ道具は「数値データ」という対比と、7手法の名前と目的の組み合わせが基本です。マトリックス・データ解析法だけが数値データ、アローダイアグラムはPERTで使う図、PDPCは不測の事態への事前対策、と区別しておきましょう。(参考:令和元年の運営管理 第11問は旧QC七つ道具の問題で、特性要因図が正解でした。新QC七つ道具そのものを問う問題は、今回は見つけられていません。)
動画の最後は、聞き手への問いかけで終わります。今回の7つのうち、あなたが明日、仕事や生活の中で直面している、数字では表せない複雑な問題に、どれをどう使ってみたいか。知っているだけではもったいない道具なので、その思考実験が、知識を自分のものにする第一歩になる、というのが動画の結びです。
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