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中小企業診断士 1次試験

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稼働分析と余裕率『生産性が上がらない本当の理由』

運営管理 第32回

運営管理・作業・在庫管理 00413分41秒2026年2月27日公開

「もしあなたがコンサルタントとして、工場の生産性を上げてくださいと依頼されたら、どうしますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、稼働分析の2つの観察方法、作業と余裕の分類、管理的余裕と人的余裕の違い、語呂合わせでの覚え方、余裕率と標準時間の関係をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

生産性が上がらないのは、作業員が遅いから?

「もしあなたがコンサルタントとして、工場の生産性を上げてくださいと頼まれたら、どうしますか」。動画はこんな問いかけから始まります。多くの人は、まず作業員にもっと早く、効率的に動いてもらうことを考えるかもしれません。でも、本当に問題は作業員にあるのでしょうか。非効率の本当の原因は、全く別の場所に隠れていることが多い、というのが動画の出発点です。

その隠れた原因を、科学的に、客観的にあぶり出す道具が稼働分析です。誰が働いていて誰が休んでいるかを調べるだけではありません。作業者の力ではどうにもならない「待ち時間」がどれだけあるのか、会社の仕組みそのものに問題はないのか、そこまで明らかにします。

たとえ:組織の健康診断と探偵道具

稼働分析は、いわば組織の健康診断です。「あそこが悪い」と思い込みや感覚で決めつけるのではなく、データに基づいて問題の真犯人を探し出す探偵道具だと動画は説明します。

そして、この分析から得られる余裕率(作業以外の時間がどれだけあるかという割合)が、現実的な目標時間である標準時間を設定するための鍵になります。このページでは、動画の流れにそって次の順番で見ていきます。

  • どうやって観察するか(連続観測法とワークサンプリング)
  • 集めたデータを「作業」と「余裕」の2つの箱に分ける
  • 作業の箱の中身(準備段取作業・主作業・付随作業)
  • 余裕の箱の中身(管理的余裕と人的余裕)と、その覚え方

見られると、人は普段どおりに動けない

最初の疑問は、「どうやって観察するのか」です。じっと誰かに見られていたら、絶対に普段どおりには動けません。できるやつと思われたくて、いつもよりテキパキ動いてしまう。これでは正確なデータが取れないのではないか。動画では、この指摘を「素晴らしい」と受け止め、ホーソン効果とも呼ばれる現象だと説明します。

(補足:動画にない話です。ホーソン効果の名前のもとになったホーソン実験は、アメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で、1924年から1932年にかけて行われました。照明の明るさなど物理的な条件より、「自分たちが注目されている」という意識のほうが成績に影響することが見えてきた、という実験です。)

そこで、稼働分析には大きく分けて2つのアプローチが用意されています。連続観測法とワークサンプリングです。

連続観測法(ビデオ撮影のイメージ)始めから終わりまで見続ける手順や、時間がかかった理由までわかる(見られる側は緊張しやすい)ワークサンプリング(スナップ写真のイメージ)ランダムな瞬間に「いま何をしているか」だけ記録全体の何%が何の作業かがわかる(理由や手順は見えない・回数が少ないと偏る)作業余裕
ビデオ撮影のように追うか、スナップ写真を何枚も撮るか。
観点連続観測法ワークサンプリング
例えビデオ撮影スナップ写真を何百枚も
方法ストップウォッチで始めから終わりまでランダムな瞬間に、いま何をしているかだけ記録
見られる側緊張しやすい負担が少なく自然な状態
見る側1つの作業に張りつく1人で多くを見られる
わかること動作の順番、時間がかかった理由全体の何%が何の作業か

連続観測法は、1つ1つの動作の順番や、そこで時間がかかった理由といった詳しいプロセスを理解するのに有効です。動画では、オーダーメイド家具づくりのように毎回手順が変わる作業や、1回のサイクルが非常に長い作業の分析に向く、とも説明されます。一方、ワークサンプリングは、観察される側のプレッシャーを減らすために生まれた方法です。1人の観察者が同時に多くの人や機械を見られるので、広い範囲のデータを効率よく集められます。

でも、スナップ写真の集まりだと、写真と写真の間のストーリー、つまりなぜその行動をしていたのかまでは分からなくなりませんか?

そこは完璧なトレードオフなんです。自然な行動を捉える代わりに、行動の背後にある理由や手順といった質的な情報は失われます。あくまで、全体の時間のうちどの作業に何%の時間が使われているかという割合をつかむ手法です。

それに、撮る枚数が少なかったら、たまたま休憩しているところばかり撮ってしまって、データが偏りそうです。

鋭いですね。統計的な手法なので、観測回数、つまりサンプル数が少ないと誤差が大きくなり、信頼できないデータになります。何百回、ときには何千回という観測が必要です。

(補足:動画にない話です。観測回数の目安として、実務の解説では、問題の所在をつかむ程度なら100回、作業者や機械の稼働分析なら4,000回、標準時間・余裕時間・稼働率を高い精度で求めるなら1万回ほどが挙げられています。信頼度は95%あれば十分とされます。)

(補足:ワークサンプリングは、保守・運搬・事務作業のように繰り返しの少ない作業の調査にも使え、稼働率や余裕率の測定に向いています。逆に、短いサイクルタイムの繰り返し作業や、作業動作を細かく見る観測には向かないとされます(MONOistの実務解説)。動画は、ワークサンプリングをベルトコンベアでの組み立てのような短いサイクルの繰り返し作業の全体像をつかむのに向く、と説明しますが、この点は実務の解説と食い違います。動画の言い方は鵜呑みにしないでください。また、観測の瞬間に作業者がわざと態度を変えると、データがゆがむ点にも注意が要ります。起源は、1920年代末から1930年代にかけて、イギリスの統計学者ティペットが繊維工場で使った「スナップリーディング」だとされます。)

データはまず2つの箱に分ける:作業と余裕

何千枚ものスナップ写真が集まったら、次は分類です。集めたデータは、まず大きな2つの箱に分けます。1つは、生産活動に直接関連する行動を集めた作業の箱。もう1つは、それ以外のすべての行動を集めた余裕の箱です。シンプルですね。

作業の箱:準備段取作業と主体作業

まずは作業の箱から。この中はさらにいくつかの小部屋に分かれます。

  • 準備段取作業:その日の仕事を始める準備や、作る製品を変えるときの機械の設定変更など。朝一番の機械の立ち上げ、A製品からB製品へラインを切り替える時間がこれです。
  • 主体作業:実際に製品をつくっている時間。さらに2つに分かれます。
  • 主作業:製品の価値を直接生み出している中核的な活動。部品を削ったり組み立てたりする、まさにその作業そのものです。
  • 付随作業:主作業に付随して、必ず規則的に発生する作業。摩耗したドリルを交換する、加工液を補充する、といった作業です。
作業(生産に直接関係)準備段取作業始業時の準備品種切替の段取替え主体作業(製品をつくる)主作業価値を直接生む作業削る・組む付随作業主作業に付随規則的に発生ドリル交換
作業の箱は、準備段取と主体作業。主体作業はさらに2つに分かれます。

ドリル交換は価値を直接生んではいないけれど、削るという主作業を続けるには不可欠だから、付随作業になる。この分類、すごく論理的ですね。

そうなんです。この階層構造を理解すると、単に働いている時間と一括りにせず、その中身を解像度高く分析できるようになります。

(補足:動画にない話です。同じ工具の交換でも、主作業に付随して規則的に起こるなら付随作業、不規則に起こる遅れなら、次に出てくる作業余裕として扱います。分かれ目は「規則的か不規則か」です。なお付随作業は、「付帯作業」と書く資料もあります。)

本当に面白いのは余裕の箱:管理的余裕と人的余裕

作業が止まっている時間にこそ、生産性向上のヒントがたくさん隠れています。動画の講師も、コンサルタントが最も注目するのはこの余裕の内訳だと言います。余裕と聞くと、つい作業員個人の休憩やサボりを思い浮かべがちですが、稼働分析が暴き出すのは、多くの場合まったく違う事実です。

余裕の箱は、原因によってまず2つに分かれます。

  • 管理的余裕:会社の管理体制や職場の仕組みに原因がある余裕。
  • 人的余裕:作業者個人の事情、主に生理的な要因による余裕。

試験の注目点:真犯人は管理的余裕

動画は、この管理的余裕こそが、しばしば企業の生産性をむしばんでいる真犯人だと強調します。

動画の講師は、自身の経験談として、こんな例を紹介します。ある工場で、経営陣が「うちの溶接工は仕事が遅い」と不満を漏らしていました。そこでワークサンプリングを行ったところ、驚くべき事実が分かります。彼らは1日の30%もの時間を、特定の溶接棒を取りに工場の端から端まで歩くことに費やしていたのです。

30%も! それは彼らが遅いんじゃなくて、溶接棒の置き場所が悪いだけじゃないですか。

まさにこれが管理的余裕の典型例です。材料を待つ時間、指示を待つ時間、急な打ち合わせなど、作業者本人の意思ではどうにもならない、職場の管理体制から生まれるロスタイムがこれにあたります。

問題の所在が、作業員から経営陣や管理者の側に一気に移るわけですね。作業員からしたら、自分たちのせいじゃないと証明してくれる、救いのようなデータかもしれません。

その通りです。だから稼働分析は犯人探しではなく、客観的な事実に基づいて前向きに改善に取り組むための共通言語になります。誰が悪いかではなく、どこに問題があるかを示してくれるのです。

では、中身をもう少し具体的に整理しましょう。

種類中身の例グループ
職場余裕材料待ち、指示待ち、急な打ち合わせ管理的余裕
作業余裕不規則に発生する機械の掃除や注油管理的余裕
疲労余裕会社が制度として定めている休憩時間など人的余裕
用達余裕トイレに行く、水を飲むなどの生理現象人的余裕

作業余裕について、動画は「これらも本来は計画的に行うべきで、突発的に作業を中断させるのは管理の問題と捉える」と説明します。

余裕(作業以外の時間)管理的余裕仕組みが原因・なくす(悪玉)人的余裕生理的に必要・残す(善玉)作業余裕不規則な掃除注油職場余裕材料待ち指示待ち急な打合せ疲労余裕制度の休憩時間用達余裕トイレ水を飲む語呂合わせ「管作職の人的疲用」管理的・作業・職場/人的・疲労・用達
同じ「余裕」でも、なくすものと残すものがあります。

(補足:余裕の呼び方は、資料によって違います。人的余裕を「個人余裕」、用達余裕を「用途余裕」、職場余裕を「管理余裕」と書く資料もあります。試験では、問題文や選択肢の言葉に合わせて読み替えてください。)

余裕は全部削ればいいのか? 悪玉と善玉

生産性を上げるなら、あらゆる余裕時間を削ればいいと考えがちですが、それは大きな間違いだと動画は言います。人的余裕は、人間のパフォーマンスを維持するための必要経費。無理に削れば、長い目で見ると生産性が落ち、事故や離職にもつながります。一方、管理的余裕は、改善によってゼロを目指すべき純粋なムダだという整理です。

同じ余裕という名前がついていても、片方はなくすべき悪玉、もう片方は維持すべき善玉。全く性質が違うんですね。

ええ。ですからコンサルタントは、まず管理的余裕にメスを入れます。材料待ちをなくすために部品の供給方法を変える、指示待ちをなくすために情報伝達の仕組みを改善する。そうした仕組みの改善に手をつけるのが定石です。

(補足:動画の「管理的余裕はゼロを目指す」は、改善の方向を示した言い方と考えると整理しやすくなります。実務の標準時間の設定では、作業余裕と職場余裕も「どうしても避けられない遅れ」として余裕率に含めます。ただし、稼働分析の結果をそのまま余裕に入れるのではなく、まず作業方法を標準化し、ムダな要素を改善してから、それでも残る遅れだけを余裕時間として扱うのが基本です。余裕率を大きく設定すると管理があいまいになるので、小さめ(目安として10〜20%)がよいとされます。)

語呂合わせで分類をまとめて覚える

作業余裕、職場余裕、疲労余裕、用達余裕と、分類がたくさん出てきて大変そうです。でも、うまい覚え方があると動画は紹介します。それぞれの頭文字を取った語呂合わせ「管作職の人的疲用」(かんさしょくのじんてきひよう)です。

  • 管=管理的余裕、作=作業余裕、職=職場余裕:この3つがセット。
  • 人的=人的余裕、疲=疲労余裕、用=用達余裕:こちらも3つがセット。

単なる暗記ではなく、どの言葉がどのグループに属しているか、親子関係まで示してくれる点が便利だと、動画は評価します。

余裕率は標準時間につながる

冒頭で、余裕率が標準時間を設定する鍵だと出てきました。ここで、動画にはない補足として、標準時間と余裕率の関係を整理しておきます。標準時間は、正味時間+余裕時間です。余裕率の出し方には、割る数が違う2つの方法があります。

例:1日のうち 正味時間80、余裕時間20(合計100)正味時間 80余裕 20外掛け法(分母=正味時間)余裕率=20÷80=25%内掛け法(分母=正味+余裕)余裕率=20÷100=20%
同じデータでも、何で割るかで余裕率の数字は変わります。
  • 外掛け法:余裕率=余裕時間÷正味時間。標準時間=正味時間×(1+余裕率)。
  • 内掛け法:余裕率=余裕時間÷(正味時間+余裕時間)。標準時間=正味時間÷(1-余裕率)。

稼働分析の結果から余裕率を出す場合は、1日の作業時間全体に占める割合として表す内掛け法がよく使われます。先ほどの例では、どちらの方法でも標準時間は100になります(80×1.25=100、80÷0.8=100)。

まとめ

  • 稼働分析は、思い込みではなくデータで問題の真犯人を探す「組織の健康診断」。
  • 観察の方法は2つ。詳しい手順がわかる連続観測法と、自然な状態の割合がわかるワークサンプリング(回数が少ないと誤差が大きい)。
  • データはまず作業(準備段取作業・主作業・付随作業)と余裕に分ける。
  • 余裕は、会社の仕組みが原因の管理的余裕(作業余裕・職場余裕)と、生理的に必要な人的余裕(疲労余裕・用達余裕)に分かれる。
  • 管理的余裕は改善でなくす方向、人的余裕は必要経費。語呂合わせは「管作職の人的疲用」。

動画は最後に、考えてみてほしい問いを残します。もしあなたがオフィスのマネージャーとして部下の働き方を分析するなら、部下がインターネットで調べ物をしている時間は作業でしょうか、それとも余裕でしょうか。同僚とコーヒーを飲みながら仕事のアイデアを雑談している時間は? 現代の知的労働では、価値を生む行動とそうでない行動の境界線が、工場の作業ほどはっきりしていません。今回の「作業と余裕」の枠組みを、自分の仕事やチームに当てはめて、何が主作業で何が職場余裕にあたるのかを考えてみてください。

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