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中小企業診断士 1次試験

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時間研究と標準時間『標準時間とレイティングの科学』

運営管理 第31回

運営管理・作業・在庫管理 00314分55秒2026年2月28日公開

「あなたがもし工場のマネージャーだったと、ちょっと想像してみてください。AさんとBさん、2人の従業員が全く同じ作業をしている。Aさんは10分で終えるのにBさんは15分かかる。さて、Bさんが負けているのでしょうか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、標準時間の中身、5つの測定方法、個人差を補正するレイティング、余裕時間の足し方(外掛け法と内掛け法)をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

AさんとBさん、どちらが遅いのか?

同じ作業をしているのに、Aさんは10分、Bさんは15分かかります。これだけ見ると「Bさんが遅い」と言いたくなりますが、動画はその前に、そもそもこの作業には本来どれくらい時間がかかるべきか、という客観的な物差しが必要だと指摘します。感覚や精神論ではなく、公平な物差しをつくる科学的なアプローチが時間研究で、その物差しが標準時間です。

運営管理の「作業・在庫管理」の中心テーマです。このページでは、標準時間の中身、測定方法、個人差を補正するレイティング、余裕時間の足し方(外掛け法と内掛け法)の順に整理します。

Bさんが15分かかったのは、単純にBさんが遅いからじゃないんですか?

それを判断するには、「ふつうの人がふつうのペースでやったら何分か」という基準が要ります。基準がないまま比べても、遅い・速いは言えません。その基準づくりが今日の話です。

標準時間は「正味時間+余裕時間」

動画の定義では、標準時間とは習熟した作業者が、決められたやり方で、無理のない普通のペースで作業したときにかかる時間です。そして2つの要素でできています。

  • 正味時間:実際に手を動かしている、作業そのものの時間。
  • 余裕時間:作業そのものではないけれど、どうしても必要になる時間(動画では準備・片付け・ちょっとした休憩などの例で説明されますが、準備・片付けの扱いは下の補足を参照)。

標準時間=正味時間+余裕時間。これが全体の基本構造です。

標準時間正味時間作業そのものにかかる時間+余裕時間避けられない遅れ主体作業・準備段取作業余裕時間の4種類作業余裕職場余裕個人余裕(人的余裕)疲労余裕
標準時間は「正味時間」と「余裕時間」の足し算でできています。

(補足:動画にない話です。動画は準備・片付けを余裕時間の例に挙げますが、JIS Z 8141:2001(生産管理用語)では違います。準備段取作業は「主体作業を行うために必要な準備,段取,作業終了後の後始末,運搬などの作業」で、正味時間は「主体作業,準備段取作業を遂行するために直接必要な時間」です。つまり準備も後始末(片付け)も正味時間の側で、品種の切り替えの準備や試し加工もここに入ります。余裕時間は「作業を遂行するために必要と認められる遅れの時間」で、不規則・偶発的に起こる避けられない遅れのことです(2001年版の原文で確認。現行の2022年版は未確認)。余裕時間は、MONOistの連載では作業余裕・職場余裕・個人余裕(人的余裕)・疲労余裕の4種類に分けています。呼び方や分け方は資料により違う場合があり、JIS Z 8141:2001の用語欄ではこの4種類の名称までは確認できていないので、問題文の用語に注意してください。たとえば、作業の特殊性から不規則に生じる遅れが作業余裕、手待ちや打ち合わせなど職場の管理に起因する遅れが職場余裕、生理的な理由による遅れが個人余裕、疲労の回復に必要な時間が疲労余裕です。)

試験の注目点

  • 標準時間は正味時間+余裕時間。余裕時間は「無駄な時間」ではなく、避けられない遅れ。
  • 準備・段取り・後始末(片付け)は正味時間の側(JIS Z 8141:2001)。動画の「準備・片付けは余裕時間」とは違う。
  • 余裕時間の4種類(作業余裕・職場余裕・個人余裕・疲労余裕)は名前を言えるようにしておく。

標準時間の測り方は5つ

聞き手が「普通のペースとか必要な余裕なんて、どうやって正確に測るんですか」と突っ込みます。答えは、手間はかかるが精度が高い方法と、手軽だが精度はそこそこの方法に分かれる、というものです。精度と手間のトレードオフです。

精度は高いが手間がかかるストップウォッチ法実測するPTS法基本動作を積み上げる標準時間資料法資料を再利用手軽だが精度はそこそこ実績資料法過去の記録から求める経験見積法経験者の見積もり
測定方法は5つ。「精度」と「手間」はトレードオフです。

精度が高いグループ

ストップウォッチ法は、実際の作業をストップウォッチで測る方法で、同じことを何度も繰り返す作業の分析に向いています。ただし測る相手によって時間が変わるので、個人差を補正する仕組み(レイティング)が組み込まれています。これは次の節で詳しく見ます。

PTS法(既定時間標準法)は、発想が逆です。作業を測るのではなく、人間の動作をこれ以上は分解できない基本動作(手を伸ばす、つかむ、移動させる、位置を合わせる、など)までバラバラにします。それぞれの基本動作には、あらかじめ科学的に定められた時間値があり、それをレゴブロックのように組み上げて作業全体の標準時間を出します。

それって、実際に作業する人がいなくても、理論上は標準時間が計算できてしまうということですか?

そうなんです。だから工場を動かす前や、新しい製品の生産ラインを設計する段階でも使えます。ストップウォッチの出番がないぶん、レイティングも要りません。

PTS法の代表的な方式にWF法とMTM法があります。(補足:動画は「MTM法のほうがWF法より動作の分解が細かい」と説明しますが、MONOistの解説(福田祐二の連載)では逆で、MTM法の動作の分析単位はWF法より少し大まかとされています。WF法は身体部位ごとの分類を基本にし、MTM法は動作の性質ごとに分類する、とも書かれています。JISなど別の資料では確認できていません。試験では、方式の細かい違いより「基本動作に分解して時間値を積み上げる」というPTS法の考え方が押さえどころです。)

標準時間資料法は、過去にストップウォッチ法やPTS法で測った作業要素ごとの標準時間を社内にデータとして蓄積しておき、新しい作業が出てきたときに、似た要素のデータを引っ張って組み合わせる方法です。一度データベースをつくれば応用がききます。

手軽なグループ

毎回作業内容が違う一品生産や、そこまで厳密さを求めない場面では、次の2つが使われます。

方法やり方弱点
実績資料法過去の作業日報などの記録から求める過去の非効率がそのまま入る
経験見積法ベテランが経験から見積もる担当者の主観に左右される

手軽でスピーディなのが利点ですが、担当者の主観や過去の非効率が反映されるリスクがあります。だから、5つの方法を状況と目的に応じて使い分けることが重要だ、と動画は結びます。

試験の注目点

  • 精度が高い:ストップウォッチ法・PTS法・標準時間資料法。手軽:実績資料法・経験見積法。
  • 新規で繰り返さない作業には経験見積法、設計段階の作業にはPTS法、のように「場面と手法」を結びつける。
  • PTS法はストップウォッチを使わないので、レイティングが不要。

レイティング:個人差を補正する「魔法」

冒頭の問題に戻ります。ストップウォッチ法で測っただけの時間(たとえばAさんの10分)は、あくまで観測時間です。これを、客観的で公平な正味時間に変換するプロセスがレイティングです。

やり方は、基準となる「ごく普通の無理のないペース」を100%として、いま目の前にいる作業者のペースがどれくらいかを評価し、レイティング係数をつけます。式はこうです。

レイティングの式

正味時間=観測時間×レイティング係数(120%なら1.2、90%なら0.9をかける)

基準(レイティング100%)ふつうのペースAさん:速い(120%)観測 10分×1.2正味 12分Bさん:ゆっくり(90%)観測 15分×0.9正味 13.5分速い人は長く、遅い人は短く補正する
観測時間を、ふつうのペースで作業したときの時間に直します。

Aさんがすごく速くて、基準の100%より速い120%と評価されたとします。観測時間10分に1.2をかけると、正味時間は12分。逆に少しゆっくり目のBさんが90%なら、観測15分に0.9をかけて13.5分です。

ちょっと待ってください。Aさんは速いのに、時間が長くなるんですか? 直感と逆です。

そこがレイティング最大のポイントです。Aさんは普通より20%速いペースでやっている。だから普通のペースでやっていたら、本当はもっと時間がかかったはず。基準のペースに引き戻して補正しているんです。

なるほど。誰が作業しても同じ正味時間という土俵に上がれるようにするわけですね。

その通りです。速い人は長く、遅い人は短く。逆説的なアプローチですが、これがレイティングの目的です。

(補足:例の数字では、Aさんが12分、Bさんが13.5分と一致していません。ここは「補正の向き」を見せる例だからです。同じ作業を測って、レイティングが正確にできていれば、観測時間が違っても正味時間はそろう、というのが本来の考え方です。たとえば観測2.4分で100%、2.0分で120%、3.0分で80%なら、どれも正味2.4分になります。)

評価は主観にならないのか

聞き手の疑問は、「その係数は結局、評価する人の主観では?」というものです。動画の答えは、評価者に専門的な訓練が求められるということ。いろいろなペースの作業映像を繰り返し見て客観的に評価するトレーニングを積み、個人の主観を限りなく排除していきます。完全にゼロにはできないが、科学的なアプローチに近づける努力がなされています。

(補足:動画にない話です。レイティングの方法にはいくつかあります。観測者が頭の中の正常なペースと比べて評価する速度評価法が、最近では最も多く使われています。ほかに、速度評価に作業の難しさの補正を加える客観的レイティング法、PTS法の基準時間を使う合成(シンセティック)レイティング法、平準化法(ウェスチングハウス法)などがあります。主観が入りやすく再現性に乏しい、という限界が残る点は、動画の指摘と同じです。)

余裕時間の足し方:外掛け法と内掛け法

算出した正味時間に余裕時間を足すと、ようやく標準時間が完成します。ただしこの足し算には2つの流儀があり、どちらもゴールは標準時間=正味時間+余裕時間ですが、余裕率の分母が根本的に違います。

外掛け法:正味時間に「おまけ」をつける

作業そのものにおまけ(余裕)をつける考え方です。余裕率は余裕時間÷正味時間。たとえば正味時間が100分で余裕率が25%なら、25分の余裕時間がつき、合計125分です。計算式は、

外掛け法

標準時間=正味時間×(1+余裕率) 例:100×1.25=125分

内掛け法:全体の中の割合で考える

こちらは、完成までの全時間(標準時間)のうち何%が余裕時間であるべきかという視点です。余裕率が20%なら、標準時間全体の20%が余裕で、残りの80%が正味時間です。正味時間が100分なら、その100分が全体の80%にあたるので、全体を求めるには0.8で割り戻します。100÷0.8=125分で、結果は外掛け法と同じになります。

内掛け法

標準時間=正味時間÷(1-余裕率) 例:100÷0.8=125分

外掛け法(余裕率25%)正味 100分余裕25余裕率=余裕時間÷正味時間 標準時間=正味×(1+余裕率)=100×1.25=125分内掛け法(余裕率20%)正味 100分(80%)余裕25全体(標準時間)125分=100%余裕率=余裕時間÷標準時間 標準時間=正味÷(1-余裕率)=100÷0.8=125分
どちらも答えは125分。違うのは「何に対する割合か」です。

同じ「余裕率」という言葉を使っているのに、外掛け法は正味時間に対する割合、内掛け法は標準時間全体に対する割合……。分母が違うんですね。

まさにそこが重要です。混乱しやすいので、試験では「分母は何か」を最初に確認してください。

動画は内掛け法の計算式を覚える語呂合わせにも触れますが、字幕から文言を正確に聞き取れないため、ここでは別の覚え方を紹介します。外掛けは「掛け算」、内掛けは「割り算」と覚えると、式の形を取り違えにくくなります。

外掛け法内掛け法
余裕率の分母正味時間標準時間
(正味+余裕)
標準時間の式正味×
(1+余裕率)
正味÷
(1-余裕率)
演算掛け算割り算

(補足:同じ余裕率の数字でも、外掛けと内掛けでは標準時間が変わります。余裕率20%を外掛けで使えば100×1.2=120分、内掛けなら100÷0.8=125分です。問題文で、どちらの考え方か必ず確認しましょう。実務では外掛け法が多く、稼働分析から余裕率を出す場合は内掛け法がよく使われる、と説明する資料があります。)

試験の注目点

  • 外掛け:余裕率=余裕時間÷正味時間、標準時間=正味×(1+余裕率)。
  • 内掛け:余裕率=余裕時間÷標準時間、標準時間=正味÷(1-余裕率)。
  • 正味100分・余裕率20%を、外掛けで120分・内掛けで125分とする計算の取り違えに注意。

まとめ:標準時間があるから、勘が科学になる

  • 標準時間は正味時間+余裕時間。公平な「物差し」。
  • 測定方法は5つ。ストップウォッチ法・PTS法・標準時間資料法は精度が高く、実績資料法・経験見積法は手軽。目的で使い分ける。
  • ストップウォッチ法ではレイティングで個人差を補正する。基準100%、正味時間=観測時間×係数。速い人は長く、遅い人は短く補正。
  • 余裕時間の足し方は外掛け法(×(1+余裕率))と内掛け法(÷(1-余裕率))。分母が違う。

標準時間があるからこそ、企業は正確な生産計画を立て、製品のコストを科学的に見積もり、従業員の評価を公平に行う基準を持てます。動画はこれを、「勘を科学に変えた、経営における静かな革命」と表現します。

最後の問いかけ:デスクワークの標準時間は?

ここまでは工場のような物理的な作業が前提でした。動画は最後に、デスクワークや企画業務のような創造性が求められる仕事の標準時間を定めるなら、どんな難しさがあるかを考えてみてほしい、と問いかけます。クリエイティブな仕事における「正常なペース」とは何か。アイデアが出ない時間も作業時間なのか。リフレッシュや情報収集の時間は、余裕時間としてどこまで含めるべきか。物理的な作業とは別の、複雑な問題が見えてきます。

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