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中小企業診断士 1次試験

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設備総合効率(OEE)『負荷時間に対して、実際に納品できる製品を作れた時間の割合』

運営管理 第26回

運営管理・設備・品質管理 00314分30秒2026年3月1日公開

「あなたがとある工場のマネージャーになったと想像してみてください。現場は毎日忙しく稼働していて売上も悪くない。でもなぜか利益が伸びないし、従業員の残業も減らない。一体どこに問題が隠れているのか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、設備総合効率(OEE)を、時間稼働率・性能稼働率・良品率の3つに分けて、負荷時間から価値稼働時間までの流れとあわせてまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

「ちゃんと動いている」は、実は曲者

現場は忙しく、売上も悪くない。それなのに利益は伸びず、残業も減らない。動画は、そんな工場の「目に見えない非効率」を暴く探偵道具として設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)を紹介します。単にスイッチが入っているだけでは、生産性は見えてきません。見るべきなのは次の3点です。

  • 計画した時間に、きちんと動いていたか(時間稼働率)
  • 機械が本来持つ最高のスピードで動いていたか(性能稼働率)
  • 作った製品は、すべて良品だったか(良品率)

この3つを掛け合わせたものが設備総合効率です。設備総合効率=時間稼働率×性能稼働率×良品率。JIS Z 8141(生産管理用語。2001年版の本文で確認し、現行の2022年版は未確認)も、これを「設備の使用効率の度合を表す指標」とし、停止ロスを時間稼働率、性能ロスを性能稼働率、不良ロスを良品率で表すと書いています。日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が提唱したTPM(全員参加の生産保全)の中で、ロスを見つける物差しとして使われてきた指標です。

時間稼働率停止ロス故障・段取り替え稼働時間÷負荷時間性能稼働率性能ロスチョコ停・速度低下基準サイクルタイム×加工数量÷稼働時間良品率不良ロス不良・手直し良品数÷加工数量××設備総合効率(OEE)= 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率
3つの要素は、それぞれ別のロスを見ています。掛け合わせて初めて実力がわかります。

第1の要素:時間稼働率と「停止ロス」

出発点は負荷時間、つまり「今日は8時間動かすぞ」と工場が計画した時間です。これが100%にあたります。ところが現実には、8時間まるまる動き続けることはまずありません。故障で止まる、製品をAからBに切り替えるために機械を止めて設定を変える(段取り替え)。こうして止まっていた時間が停止時間(停止ロス)です。

負荷時間から停止時間を引いた、実際に機械が製品を作り続けていた時間が稼働時間で、時間稼働率=稼働時間÷負荷時間です。

段取り替えは必要な作業なのに、それを「ロス(損失)」と呼ぶのは、現場で頑張っている人に酷ではありませんか。

ここでのロスは、誰かを責める言葉ではありません。改善の「伸びしろ」を見えるようにするための呼び方です。たとえば1時間かかっていた段取り替えを、工具の置き場所や手順の見直しで30分にできたら、30分の停止ロスを減らせたことになります。その30分は、新しく価値を生み出せる時間です。

以降の数字は、動画にはない作例です(3つの要素を通しで追うため、Pythonで検算しました)。負荷時間480分、故障で36分、段取り替えで24分止まったとします。停止は合計60分、稼働時間は420分で、時間稼働率は420÷480=87.5%です。

補足:負荷時間の範囲は資料で違う

負荷時間に何を含めるかは、資料で書き方が揺れます。休憩や計画保全は除くのが一般的ですが、動画のように「計画した稼働時間」とだけ言う資料もあります。段取り替えは、JIPMの標準運用では負荷時間に含めて時間稼働率に反映する、と説明する解説があります(本文では動画に合わせ、段取り替えを停止ロスに入れています)。たとえば停止60分でも、分母が480分なら87.5%、休憩40分を除いた440分なら86.4%です。試験では、問題文が示す負荷時間をそのまま分母に使います。

第2の要素:性能稼働率と「性能ロス」

動いていても、速く動いているとは限りません。時速300kmで走れるスポーツカーが、ずっと時速30kmでのろのろ走っていたら、効率的とは言えないのと同じです。機械が本来のスピードで動けていない時間を性能ロスといい、代表がチョコ停と速度低下です。

チョコ停って、バレンタインみたいな名前ですね。

「ちょこっと停止する」の略です。ラベルを貼る機械で、ロールが少しずれてセンサーが反応し、一瞬止まる。作業員がすぐ直して再開する。1回は2、3秒です。ところがこれが1日に何百回も起きると、合計は無視できません。しかも記録に残りにくいので、時間稼働率には響かず、目立たないまま生産性をむしばみます。機械の調子が悪くて少し速度を落として運転する「速度低下」も、性能ロスです。

隠れたロスを数字にするのが基準サイクルタイムです。製品1個を作るのにかかる理想的な時間で、設計上の理論値や過去の最高記録などをもとに決めます。これに実際に作った数(加工数量)を掛けると、「ロスなく100%の性能で動いていたら、これだけの時間で済んだはず」という時間が出ます。これが正味稼働時間です。

性能稼働率=正味稼働時間÷稼働時間=(基準サイクルタイム×加工数量)÷稼働時間。ロスがあれば稼働時間のほうが長くなるので、100%を下回ります。

作例で確かめます。基準サイクルタイムは30秒(0.5分)、稼働420分で756個を加工したとします。正味稼働時間は0.5×756=378分、性能稼働率は378÷420=90.0%です。(補足:動画にない見方です。実際サイクルタイム=稼働時間÷加工数量=420÷756=約33.3秒と考えると、基準30秒÷実際33.3秒=0.9で、同じ値になります。)

第3の要素:良品率と「不良ロス」

どれだけ速くても、不良品ばかりではゴミを高速で作っているだけです。良品率は、加工数量のうち検査に合格した良品数の割合で、良品率=良品数÷加工数量です。

これも時間で考えられます。不良品を作るのに使った時間もロスなので不良ロスと呼び、正味稼働時間からこの分を引きます。最後に残るのが、お客様に届けられる製品を作っていた価値稼働時間です。作例では、756個のうち不良が21個、良品は735個。良品率は735÷756=97.2%、価値稼働時間は0.5×735=367.5分です。

段階時間(分)消えたもの
負荷時間480―
稼働時間420停止ロス60分
正味稼働時間378性能ロス42分
価値稼働時間367.5不良ロス10.5分

設備総合効率は、367.5÷480=76.6%。3つの積の0.875×0.900×0.972=0.766とも一致します。

日本の工場は品質管理が優れていて、良品率は99%以上も珍しくありません。それなら、この指標はあまり気にしなくていいのでは?

それが落とし穴です。良品率99%と聞くと安心しますが、中を見ると時間稼働率80%、性能稼働率60%ということが、ざらにあります。0.8×0.6×0.99=0.4752、設備総合効率は47.5%。半分以下です。高品質な製品を、ものすごく非効率に作っていたことになります。

良品率の高さというプライドが、ほかの問題から目をそらさせます。3つを掛け算で評価する理由はここにあります。どれか1つだけ良くても実力は見えません。

水が減るバケツ:負荷時間から価値稼働時間へ

動画は全体を、水が減っていくバケツにたとえます。満杯の水が負荷時間。そこから停止ロスで水が漏れて稼働時間が残り、性能ロスで漏れて正味稼働時間が残り、不良ロスで漏れて、本当に価値を生んだ価値稼働時間が残る。設備総合効率は、最初の満杯に対して最後に残った水の割合です。

負荷時間(計画した稼働時間)100%稼働時間 80% ←停止ロス20%が消える正味稼働時間 48% ←性能ロス32%が消える価値稼働時間 47.5% ←不良ロス0.5%が消える分子=価値稼働時間、分母=負荷時間 → 47.5%
100から出発して、3つのロスで水が漏れ、最後に残った割合がOEEです。

3つの積は、1本の式にまとまります。設備総合効率=基準サイクルタイム×良品数÷負荷時間。分子が価値稼働時間、分母が負荷時間です。作例なら0.5×735÷480=0.766で、先ほどの76.6%と同じです。

試験に向けて:式と「時間の流れ」をセットで覚える

3つの要素の式を覚えるだけでなく、「負荷時間→稼働時間→正味稼働時間→価値稼働時間」の流れと、各段階でどのロスが引かれるかを映像として結びつけます。内訳を見ると、時間稼働率が低ければ故障や段取り替えの対策、性能稼働率が低ければチョコ停の原因やメンテナンス体制、良品率が低ければ品質管理のプロセスが課題だと一目でわかります。総合点よりも、内訳のバランスが改善のヒントです。

補足:6大ロスと3つの要素

動画にない話です。TPMでは設備の効率を下げる要因を「ロス」として整理し、よく6大ロスで語られます。3つの要素との対応は次のとおりです。

停止ロス故障段取り替え・調整時間稼働率性能ロスチョコ停・空転速度低下性能稼働率不良ロス不良・手直し立上がり良品率出発点は、設備がまわっていない・遅い・不良という3つの現象
6つのロスは、3つの要素のどれかに振り分けて考えます(数え方は資料で違います)。

ただし、ロスの数え方と名前は資料で違います。MONOistの連載には、故障・段取り・調整・刃具交換・立上がり・速度低下・チョコ停・不良手直しの7大ロス(これにシャットダウンロスを加えて8大ロス)とする回があり、別の回は突発事故・段取り調整・立ち上がり歩留まり・工程不良・速度低下・空転チョコ停を6大ロスとしています。JIS Z 8141(2001年版)は停止・性能・不良の3つのロスの名前までで、内訳は書いていません。立上がりロスも、時間と品質の両面で語る資料があります。試験では、「停止系は時間稼働率、速度系は性能稼働率、不良系は良品率」という大きな対応を押さえておけば足ります。

試験での出方:令和2年度 運営管理 第20問

実際の出題は、3つの要素のどれが動くかを問う形でした(予備校の解説で確認。問題文は要旨です)。

選択肢の内容動く要素正誤
段取時間を短縮すると性能稼働率が向上時間稼働率が向上×
立ち上げ時間を短縮すると時間稼働率が低下時間稼働率が向上×
チョコ停の総時間を削減すると性能稼働率が向上性能稼働率が向上○
不適合率を改善すると性能稼働率が低下良品率が向上×

停止時間が減るもの(段取り替え・立ち上げ)は時間稼働率、チョコ停や速度は性能稼働率、不良は良品率、と振り分けるだけで解けます。計算問題では、①負荷時間 ②停止時間を引いて稼働時間 ③基準サイクルタイム×加工数量で正味稼働時間 ④良品数、の順に出していけば迷いません。

補足:用語と式が資料で違うところ

  • 設備総合効率と総合設備効率:JISもJIPMの資料も「設備総合効率」です。「総合設備効率」と書く解説(ISO 22400の紹介など)もありますが、同じ指標の表記の揺れと考えられます。JIPM公式による使い分けは確認できていません。JISの「総合能率」(標準工数×出来高÷負荷工数)は工数ベースの能率の指標で、別物です。
  • 稼働率・可動率・時間稼働率:JISの「稼働率」は稼働分析では実際稼働時間÷総時間、「可用率」は「可動率ともいう」とされます。OEEの時間稼働率(稼働時間÷負荷時間)とは別の概念で、英語資料のAvailabilityを可動率と訳すこともあります。他社の「稼働率90%」は、定義を確かめてから比べます。JIPMの文書は「稼動」と書きます。
  • 性能稼働率の式:基準サイクルタイムは「理論サイクルタイム」とも書かれます(英語資料ではIdeal cycle time)。過去の平均を基準にすると速度低下が見えなくなる、という指摘もあります。JISの「サイクル時間」は生産ラインに資材を投入する時間間隔で、基準サイクルタイムとは意味が違います。ISO 22400の解説には、設備有効性×工程効率×良品率と書く版もあります。
  • TEEP:OEEが負荷時間を基準にするのに対し、暦の時間(24時間×365日)を基準にした指標です。TEEP=負荷時間÷暦時間×OEE。作例でも、1日24時間(1,440分)に対しては480÷1,440×76.6%=25.5%です。
  • 「85%」の目安:世界水準の目標として引かれることが多い数字です。出所は、TPM関連の著作やJIPMのTPM優秀賞の資料とする解説がありますが、一次資料では確認できていません。「85%は世界水準」とは限らず、目標値は設備や工程で異なるとする見解もあります。

最後の問い:ライン全体の効率は?

動画は、ここまでが1台の設備の話だったと振り返り、問いを残して終わります。実際の工場は複数の機械がベルトコンベアでつながったラインで動いています。ラインの真ん中の1台のチョコ停が、ボトルネックになったら、全体の効率はどうなるでしょうか。答えは動画では出ません。1台の指標とラインの指標は別の話なので、ライン編成の効率やボトルネックは、サイクルタイムやライン効率の回で扱います。

まとめ

  • 設備総合効率=時間稼働率×性能稼働率×良品率。負荷時間から価値稼働時間へ、水が減るバケツのイメージで覚える。
  • 停止ロス(故障・段取り替え)は時間稼働率、性能ロス(チョコ停・速度低下)は性能稼働率、不良ロス(不良・手直し)は良品率に響く。
  • 性能稼働率は(基準サイクルタイム×加工数量)÷稼働時間。正味稼働時間は「ロスなく動いたときの時間」。
  • 良品率が99%でも、時間稼働率80%・性能稼働率60%なら設備総合効率は47.5%。3つを掛けて見る。
  • 1つの式にもまとまる:基準サイクルタイム×良品数÷負荷時間。分子が価値稼働時間、分母が負荷時間。
  • 「ロス」は責める言葉ではなく伸びしろ。点数よりも内訳を見て、どこに手を打つかを決める。
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