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中小企業診断士 1次試験

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EOQ(経済的発注量)とABC分析『発注費用と在庫維持費用の関係』

運営管理 第35回

運営管理・作業・在庫管理 00715分41秒2026年2月27日公開

「在庫が多すぎても少なすぎても困る。この絶妙なバランスを取るのは、なんだか綱渡りみたいですよね」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、発注費用と在庫費用の綱引き、EOQ(経済的発注量)の考え方と公式、ABC分析によるA・B・Cの分け方と管理の違い、2つの手法の組み合わせ方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

在庫は多すぎても少なすぎても困る

「在庫が多すぎても少なすぎても困る。この絶妙なバランスを取るのは、まるで綱渡りのようですよね」。動画は、企業の悩みの種である在庫管理のこんな話から始まります。この綱渡りを科学的に、そしてもっと賢く行うために、動画は2つの強力な手法を取り上げます。

  • EOQ(経済的発注量):コストを最小にする「魔法の注文量」を数学的に見つけ出す考え方。
  • ABC分析:無数にある在庫品の山から、本当に大事なものを見極めて、管理の手間を劇的に減らす「選択と集中」の知恵。

どちらも試験知識であると同時に、実務に直結する考え方です。使いこなせれば、会社の利益構造を根っこから変える力があります。まずは、EOQの出発点である「何をもってお得と判断するのか」から見ていきましょう。

発注費用と在庫費用の綱引き

EOQは経済的発注量(Economic Order Quantity)の略で、「一番お得な発注量」のことです。では「お得」とは何か。動画は、在庫管理には逆方向に引っ張り合う2つの力があるといいます。

  • 発注費用:注文1回ごとにかかる、固定費のような費用。発注書をつくる担当者の人件費、通信費、仕入先からの輸送費など。毎日少しずつ発注すれば毎日かかるので、年間ではとんでもない額になります。
  • 在庫費用:在庫を持っているだけでかかる費用。倉庫の賃料、光熱費、在庫を管理する人のコスト、火災保険料、そして資本コスト。

それなら1年分をまとめて1回で発注すれば、発注費用は年1回で済みます。ところが今度は、1年分を置く巨大な倉庫の賃料や光熱費、管理の人件費、保険料が膨らみます。片方を抑えようとするともう片方が膨らむ、まさにシーソーのような関係です。

(補足:動画にない話です。動画は輸送費を発注費用の例に挙げていますが、どこまでを発注費用に含めるかは資料や問題の設定によって違います。試験では、問題文が与えた費用の分け方にそのまま従いましょう。)

たとえ:在庫は「凍結された現金」

倉庫に1,000万円分の在庫が眠っているとします。その1,000万円は、本来なら新しい設備への投資や広告、あるいは銀行に預けて利息を得ることもできたはずのお金です。この得られたはずの利益を失っている状態が資本コストです。

年間の資本コストをたった5%と見積もるだけで、1,000万円の在庫は年間50万円の利益を静かに食いつぶします。多くの経営者が見落としがちな「沈黙の利益キラー」です。

(補足:動画にない話です。在庫を持つ費用は、一般に、①資本コスト、②倉庫や荷役の費用、③保険料・税、④陳腐化・劣化などのリスク費用に分けて考えます。このうち資本コストは、見落とされやすい大きな費用とされます(資料による)。)

倉庫代くらいにしか考えていませんでした。頻繁に発注すれば発注費用がかさむし、まとめて発注すれば倉庫代や資本コストがかさむ。まさに八方塞がりですね。

そのどうしようもない綱引きが、最もバランスする点が存在します。年間の発注費用と在庫費用の合計が最も小さくなる点です。その1回あたりの発注量が、経済的発注量、つまりEOQです。

EOQの考え方:合計が最小の点では、2つの費用が等しい

動画が「試験でも実務でも非常に重要」と強調するのが、次のポイントです。年間の発注費用と年間の在庫費用の合計が最小になる点は、2つの金額がちょうど等しくなる点です。グラフに描くと、発注費用は発注量が増えるほど回数が減るので右肩下がりの曲線、在庫費用は発注量が増えるほど在庫が増えるので右肩上がりの直線になります。この2本が交差する点で、合計のコスト曲線はU字の底になります。

費用1回の発注量EOQ:発注費用=在庫費用発注費用(右肩下がり)在庫費用(右肩上がりの直線)合計(U字)合計が最小
発注費用の曲線と在庫費用の直線が交わる点で、合計が最小になります。

(補足:動画にない話です。動画は式の形を紹介しますが、数字を入れた計算は出てきません。確認のために、年間発注費用と年間在庫費用を式にしておきます。年間発注費用=S×R÷Q、年間在庫費用=Q÷2×P×I。在庫は使いながら減っていくので、平均在庫はQ÷2として扱います。)

たとえば S=2,500円、R=2,000個、P=5,000円、I=0.2(20%)とします。発注量Qを変えて計算すると、次のとおりです。

1回の発注量発注費用/在庫費用合計
50個100,000円/25,000円125,000円
100個50,000円/50,000円100,000円(最小)
200個25,000円/100,000円125,000円

公式に入れても EOQ=√(2×2,500×2,000÷(5,000×0.2))=√10,000=100個で、表の最小の点と一致します。ここでは発注費用と在庫費用がどちらも50,000円で等しくなっています。

(補足:EOQの考え方は、1913年にフォード・W・ハリスが示したとされ、のちに1934年にR・H・ウィルソンが広めたため、ウィルソンの公式とも呼ばれます。計算式が成り立つ前提は、需要が年間を通じて安定していることと、発注した分が一括で届くことです。)

公式を分解してみよう

動画は、計算式 EOQ=√(2SR÷PI) を「丸暗記はつらい。でも各要素が何を意味して、綱引きにどう影響するかを考えると腑に落ちる」と分解します。式の構造がわかれば、暗記ではなくなります。

EOQ = √( 2 × S × R ÷(P × I))分子:S と RS:1回の発注費用R:年間の需要量大きいほどEOQは大きくなる分母:P と IP:在庫品の単価I:在庫費用率大きいほどEOQは小さくなるP × I = 商品1個を1年間保管する費用
分子は「まとめて発注したい理由」、分母は「在庫を持ちたくない理由」です。
記号意味大きいと…
S1回あたりの発注費用EOQは大きい
(1回ごとが大変なら、まとめて発注)
R年間の需要量EOQは大きい
(人気商品はたくさん必要)
P在庫品の単価EOQは小さい
(宝石のような高価な品は持ちたくない)
I在庫費用率EOQは小さい
(厳格な冷凍保存が必要な薬品など)

分母のP×Iは、何を表しているんですか?

単価Pに在庫費用率Iをかけると、商品1個を1年間保管するのにかかる費用が出ます。これが高い商品ほど、できるだけ在庫を持ちたくないので、EOQは小さくなります。

どの向きに動くかを理屈で覚えておけば、応用問題でも迷いにくそうですね。

(補足:動画にない話です。EOQは平方根の中にあるので、SやRが4倍になってもEOQは2倍にしかなりません。逆にPやIが4倍になるとEOQは半分になります。計算問題で答えがおかしくないかを確かめるときの目安になります。)

EOQを全商品に使うの? ABC分析の登場

ここで聞き手が素朴な疑問を挟みます。この完璧な数値を、高価な機械から1本数円のネジまで、全部の商品に適用するのか。全商品の需要を予測してこの式で計算していたら、それだけで1つの部署ができてしまいそうです。

動画はこれを「次のテーマへの最高の橋渡し」と受け止めます。EOQは強力な武器ですが、どの敵に使うべきかを見極める知恵がなければ、宝の持ち腐れです。その戦場を見極める知恵がABC分析です。

ABC分析のベースは、パレートの法則(80対20の法則)です。「売上の80%は、全商品のうちの20%が生み出している」という経験則で、全商品を平等に扱うという幻想から私たちを解放してくれます。限られたリソース、つまり管理の手間や時間をどこに集中させるかを教えてくれる手法です。

  • 全商品の年間売上高を計算し、大きい順に並べる。
  • 売上高の累計比率を求める。
  • 累計比率を目安に、A・B・Cの3グループに分ける。
70%90%100%売上高の累計比率(折れ線)ABC品目(売上高の大きい順) ※図はイメージ
品目を売上高の大きい順に並べ、累計比率で A・B・C に分けます。
ランク品目数売上への貢献
A
最重要
全体の10〜20%程度のごく少数売上全体の70〜80%を稼ぐ
(会社の大黒柱)
BAに次ぐ累計で70〜90%あたりを占める
C最も多く、半分以上のことも最後の数%
(ネジ、事務用クリップなど)

(補足:動画にない話です。累計比率の区切りは資料によって違います。累計70%までをA、70〜90%をB、90〜100%をCとする例が多い一方で、A・B・Cの金額の割合を80%・15%・5%とする資料もあります。動画の数字はおおよその目安として受け取り、試験では問題文の基準に従ってください。)

Aは会社の屋台骨を支えるエースたちですね。これが欠品したら、会社の存続に関わるレベルだ。

そのとおりです。Cは種類は山ほどあるけれど、1つ1つの売上は微々たるもの。そしてここでのポイントは、ABCのランクごとに管理のやり方を大胆に変えることです。

ランクごとに管理を変える:A・B・C

Aは欠品が経営に致命的なダメージを与えるので、在庫状況を厳しく監視し、需要予測の精度を上げて、計画的に発注します。具体的には定期発注方式がよく使われます。毎週月曜の朝に在庫を確認する、毎月1日に棚卸しをして発注量を決める、というように、定期的に在庫を見て、その都度最適な量を発注する方式です。手間はかかりますが、在庫レベルをきめ細かく制御できる、いわば「エースへのVIP待遇」です。

Bは標準的な管理で、定量発注方式が使われます。在庫が一定量(たとえば100個)まで減ったら、自動的に決まった量(たとえば200個)を発注するという、シンプルなルールです。

ランク発注方式管理のイメージ
A定期発注方式決まった日に在庫を確認し、その都度量を決める。手間はかかるが細かく制御できる
B定量発注方式100個まで減ったら200個、のように、減ったら決まった量を発注する
Cダブルビン方式手前の箱が空になったら発注。数える必要がない(定量発注方式でもよいが、より簡単な方法)

(補足:動画にない話です。定期発注方式は発注量を毎回決めるので、需要の変動が大きい商品にも使えますが、手間がかかります。定量発注方式は、発注量が一定で運用が簡単な一方、需要の変動が大きい商品には向きません。また、定量発注方式の発注点は「調達期間中の需要+安全在庫」で決まり、EOQの計算とは別です。なお、AからCに割り当てる発注方式の組み合わせは、資料によって違うことがあります。)

問題はCです。Aと同じように毎週在庫を数えていたら、人件費のほうが商品の値段より高くつきそうです。動画の講師は、以前コンサルをした会社の実例を話します。担当者が毎週金曜の午後に2時間かけて、倉庫中のネジとワッシャーの数を数えていた。その方の時給を考えると、数えているネジの価値の何十倍ものコストがかかっていました。

うわあ。C品目に必要なのは、手間をかけることではなくて……

手間をかけない工夫なんです。その代表がダブルビン方式(ツービン法)です。

仕組みは、商品を2つの箱に入れておくだけです。普段は手前の箱から使い、手前の箱が空になった瞬間が発注の合図。担当者は奥の箱を使い始めると同時に、空になった手前の箱の分を発注するだけで、日々の在庫数を数える必要はいっさいありません。

① 平常手前の箱から使う手前奥数えなくてよい② 手前が空ここが合図空手前奥発注する!(空の分)③ 奥を使う納品を待つ空手前奥奥の箱から出庫する
手前の箱が空になった瞬間が、発注のサインです。

(補足:動画にない話です。ダブルビン方式は複棚法・2棚法とも呼ばれ、簡易的な定量発注方式です。発注した分は、もう一方の箱が空になるまでに届く必要があります。ネジ類や消耗品のように、単価が安く、消費量が安定している品目に向きます。)

ABC分析の本当の目的

聞き手がまとめます。ABC分析を導入する真の目的は、Aの管理を強めるためだけではなく、Cの管理から解放されるためでもある、と。動画はこれを「素晴らしい視点」と受け止め、ABC両方の狙いを整理します。

  • A品目:管理精度を上げることで、欠品リスクを減らしつつ過剰在庫を圧縮できる。これは在庫回転率の向上、つまりキャッシュフローの改善に直結する。
  • C品目:管理業務そのものを劇的に減らし、担当者をA品目の需要予測のような、付加価値の高い仕事に集中させられる。

全体として、人・モノ・金・時間という限られた経営資源を、最も効果的な場所に再配分するのがABC分析のゴールです。どの商品が会社にとって重要かが見える化されて、社員のコスト意識が高まるという副次的な効果も期待できます。

EOQとABC分析は連携させて使う

最後に動画は、この2つが独立したツールではなく、連携させることで真価を発揮するとまとめます。流れはこうです。まずABC分析で会社の屋台骨であるA品目を特定し、そのA品目に対してEOQを使い、科学的に最適な発注量を出す。こうすれば、最もインパクトの大きいところから、効率的に在庫管理を改善できます。

STEP 1ABC分析でA品目を特定STEP 2A品目にEOQ最適な発注量STEP 3在庫を改善大きい所から
2つの手法は別々の道具ではなく、順番に組み合わせて使います。

単に手法を知っているだけでなく、手法を組み合わせて課題解決のシナリオを描くこと。その思考力が、試験でも実際の現場でも求められる力だ、と動画は語ります。

考えてみよう:金額だけでは測れない重要性

動画は最後に、1つの問いを投げかけます。ABC分析は通常、過去の売上金額を基準に分類します。非常に合理的です。しかし、ある特殊なネジがあって、年間売上は微々たるもの。金額で見れば間違いなくC品目です。ところが、そのネジがなければ会社の主力製品であるA品目が完成しない、代替の効かない部品だったらどうでしょうか。

金額で見ればCでも、会社へのインパクトで見れば、欠品した瞬間にA品目の生産ラインが止まるわけですから、実質的にはA品目以上の重要度ですね。

そうなんです。そのネジは、Cのルールどおり手間をかけずに管理すべきか、それともAとして厳密に管理すべきか。金額だけでは測れない重要性を、企業はどう評価して管理方法に反映させるのか。教科書が教えてくれるのはここまでで、この先を考えることが、本当の意味で知識を使うということかもしれません。

動画は答えを出していません。押さえておきたいのは、ABC分析が売上金額などの数字で機械的に分ける手法なので、欠品したときの影響や代替のしにくさまでは、分類の結果に表れないということです。分類の結果に現場の事情を重ねて見る余地がある、ということを頭に置いておきましょう。

まとめ

  • EOQ(経済的発注量)は、発注費用と在庫費用の合計が最小になる、1回あたりの発注量。2つの費用はトレードオフの関係にある。
  • 合計が最小になる点は、年間の発注費用と在庫費用が等しくなる点。在庫費用には、見えにくい資本コストも含まれる。
  • 公式は EOQ=√(2SR÷PI)。SとRが大きいとEOQは大きく、PとIが大きいとEOQは小さくなる。
  • ABC分析は、売上高の大きい順に並べ、累計比率でA・B・Cに分ける手法。パレートの法則(80対20)が考え方のもと。
  • 管理はメリハリをつける。Aは定期発注方式、Bは定量発注方式、Cはダブルビン方式のような簡単な方法。
  • ABC分析の目的は、Aの強化とCの管理からの解放。EOQと組み合わせ、A品目にEOQを使うと効果が大きい。
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