聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

標準化・MRP・BOM『複雑な製品を寸分の狂いもなく生産するための仕組み』

運営管理 第38回

運営管理・生産計画 00215分59秒2026年2月24日公開

「あなたが今お使いのスマートフォンやノートパソコンは、たくさんの部品から、どうやって寸分の狂いもなく組み立てられて手元に届いたのか。考えたことはありますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、部品を共通にする標準化、何をいつ・いくつ手配するかを逆算するMRP、その土台になる部品表(BOM)の3つを、計算例の検算もまじえてまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

部品の山を、寸分の狂いなく組み立てる三本柱

動画は、スマートフォンやノートパソコンのように部品点数の多い製品が、なぜ狂いなく組み立てられて手元に届くのか、という問いから始まります。答えは、生産管理の心臓部ともいえる3つの連携プレイです。

  • 標準化:部品をできるだけ共通にして、種類をしぼる。
  • MRP(資材所要量計画):何を・いつ・いくつ手配するかを、生産計画から逆算して計画する。
  • BOM(部品表):製品を作るのに何がいくつ要るかを書いた、正確無比な設計図。
基準生産計画(MPS)最終製品を いつ・いくつ つくるか部品表(BOM)1台に何をいくつ使うか在庫情報手持在庫・発注残MRP(資材所要量計画)部品展開 → 在庫を引く → ロット → 時期計画オーダ(発注・製造の計画)何を・いつ・いくつ手配するか
MRPは、3つの情報を受け取って発注の計画を出す「計算エンジン」です。

BOMがレシピ、MRPがそのレシピで買い物リストを作る計算役、標準化が材料の種類を減らす工夫、と考えるとつかみやすいでしょう。順番に見ていきます。

標準化:部品を共通にして、種類をしぼる

動画の「資材の標準化」は、使う部品をできるだけ共通のものにする考え方です。たとえば自動車メーカーが大衆車と高級車の両方を作るとします。エンジンや内装は違っても、ユーザーの目に触れないネジや配線基板のチップは、徹底的に共通化します。

標準化の前標準化のあと大衆車用ネジ年50万本高級車用ネジ年50万本共通のネジ年100万本まとめて発注(単価が下がる)合計の本数は同じでも、品目は2つ → 1つ
同じネジを共通化すると、まとめ買いで単価が下がり、在庫の品目も減ります。

動画はメリットを4つの面で整理します。

面効果
費用同じネジを年100万本まとめて発注すれば、50万本ずつ別々に発注するより規模の経済で単価が下がる。在庫の品目が減り、倉庫と管理の手間も減る
品質部品の種類をしぼると品質管理に集中でき、ばらつきが減って製品全体の信頼性が上がる
納期標準部品なら一定量を常に在庫できる。特定の車種の注文が急に増えても、部品切れで作れない事態を避けやすい
管理発注業務や在庫管理そのものがシンプルになる

いいことずくめですね。でも、全部同じ部品を使ったら、個性のない製品ばかりになりませんか。

鋭い指摘です。それがまさに標準化のデメリット、つまりトレードオフです。

  • 経営面:標準に固執しすぎると組織が保守的になり、新しい技術や素材を取り入れる動きが重くなる(「標準部品リストにないから採用できません」)。
  • 業務面:使える資材が限られるので、設計者の自由度が下がる。決まった種類のブロックだけで革新的な乗り物を作れと言われるようなもの。

効率を求める標準化と、イノベーションを生む多様性。このバランスをどこでとるかが、企業の腕の見せどころです。

補足:JISでの「標準化」と3S

動画の標準化は「部品の共通化」の話ですが、JIS Z 8141(生産管理用語。確認したのは2001年版で、現行の2022年版の本文は未確認。以下、JISの定義は2001年版で確認したものです)では、標準化は3Sの一つです。3Sは標準化・単純化・専門化の総称で、標準化は「繰り返し共通に用いるために標準を設定し、標準に基づいて管理すること」、単純化は「設計・品種構成・構造などの複雑さを減らすこと」、専門化は「特定の機能に特化すること」と定義されます。部品の種類をしぼる点は、「品種構成の複雑さを減らす」単純化とも重なります(筆者の整理)。JIS Z 8002(2006年版)は、標準化の目標の一つに多様性の制御(種類を最適化すること。通常は種類の削減に関係する)を挙げています。

MRP:何を・いつ・いくつ手配するかを逆算する

部品の種類をしぼっても、次の難問が残ります。そのネジを、いつ発注するのか。早すぎれば倉庫がパンクし、遅ければ生産が止まります。この悪夢のようなパズルをコンピューターで解くのがMRP(Material Requirements Planning)、日本語では資材所要量計画です。

MRPがなかった時代は、ベテランの資材管理担当者が台帳とそろばん、電卓、そして勘で計算していました。ミスも多く、欠品や過剰在庫は日常茶飯事だったといいます。JIS Z 8141(2001年版)は、MRPを「生産計画情報、部品構成表情報、在庫情報にもとづいて、資材の必要量と時期を求める生産管理体系」と定義しています。図の3つの入力がこれです。

MRPは、品目を2種類に分けて考えます。

独立需要品目従属需要品目
必要量の決まり方受注や予測で、必要時期・量を決める親部品の需要から、部品展開で計算して求める
例最終製品、サービスパーツタイヤ、ネジ、スポーク
管理の手法発注点法・定期発注法などMRP

(補足:動画にない話です。JISは上の2つの品目の定義を載せており、東京海洋大学の講義資料も、独立需要の手法に二棚法・発注点法・補充点法・定期発注法を、従属需要の手法にMRPを並べています。最終製品の独立需要は、MRPが計算するのではなく、基準生産計画として人間が与えます。)

発注点方式と何が違うのですか。在庫が減ったら補充する、というのは同じに見えます。

発注点方式は、在庫の減り具合を見て補充する方式です。MRPは、生産計画から部品の必要量と必要な時期を先に計算して、そこから逆算します。部品の需要は親の生産計画で決まるので、先読みができるのです。

MRPの計算:5つのステップ

動画はMRPの計算を、5つのステップで説明します。

ステップ中身動画の例
1 MPSを受取る出発点のマスタープラン車500台を来月末まで
2 総所要量部品表から全部品の量を出すタイヤ2,000本エンジン500基ドアハンドル2,000個
3 正味所要量在庫と発注済みの分を引く手配が要る量だけ残る
4 ロットまとめ取引単位に数量をまとめる197本→200本単位で200本
5 先行計算リードタイムの分さかのぼる1週間なら必要日の1週間前に発注

ステップ3が「真骨頂」です。式にすると、正味所要量=総所要量-手持在庫-入荷予定(発注残)。無駄な発注をしないための引き算です。

(補足:資料による用語の違いです。東京大学の講義ノート(藤本隆宏)は、MRPの計算を「総所要量計算(部品展開)→正味所要量計算(在庫量と発注残を差し引く)→ロット編成計算→先行計算」の4つに分け、基準生産計画は計算の入力として扱います。動画の5ステップは、この入力を1番目に数えた形です。JISでは、総所要量を「基準生産計画をもとに部品構成表の情報を展開したときの下位品目の所要量」、正味所要量を「総所要量から有効在庫量(手持在庫と発注残)を差し引いた量」と定義し、ロットまとめにはロットサイジングという名前があります。東京海洋大学の資料では、総所要量を「グロス必要量」、正味所要量を「正味必要量」と呼んでいます。)

数字で確かめる:MRPの計算例

動画の数字を検算します。車500台でタイヤ2,000本は、1台4本として500×4。ドアハンドルも1台4個として2,000個、エンジンは1台1基で500基です。ネジの197本は、200本単位でしか買えないなら200本になり、余る3本は次回以降の在庫になります。自転車10台は、10×2×36=720本のスポークが必要です。

次は動画にない作例です(補足)。自転車10台を第5週に組み立てるとき、車輪ユニットとスポークをいつ・いくつ発注するかを、Pythonで検算しました。

項目車輪ユニットスポーク
総所要量10台×2=20個(第5週)10個×36=360本(第4週)
手持在庫6個100本
入荷予定第3週に4個なし
正味所要量20-6-4=10個360-100=260本
ロット5個単位→10個100本単位→300本(余り40本)
リードタイム1週→第4週に発注2週→第2週に発注
第1週第2週第3週第4週第5週第6週自転車組立車輪ユニット(LT 1週)スポーク(LT 2週)着手10台発注10入荷10発注300入荷300
必要な週から、リードタイムの分だけさかのぼって発注します。

車輪ユニットの発注(第4週・10個)が、スポークの総所要量を生んでいる点に注目してください。上位から下位へ、親部品の発注計画が子部品の必要量になる形で、順に展開していきます。JISは、この親から子へ展開する方法をエクスプロージョン法と呼び、逆の方向(子から親)をインプロージョン法と呼んでいます。

動画が触れていない2つの要素も足しておきます(補足)。

  • 安全在庫:需要の変動や補充期間の不確実性を吸収するための在庫(JIS)。スポークに50本の安全在庫を持つなら、正味は360+50-100=310本で、ロット単位にして400本。扱い方は資料により、所要量に上乗せする書き方と、予定手持在庫の下限とする書き方があります。結果は同じです。
  • 在庫引当:注文や出庫の要求に対して、在庫台帳の残高からその量を割り当てる行為(JIS)。他の指図に引当済みの在庫は使えないので、使える在庫は有効在庫=手持在庫-引当量+発注残で見ます。車輪ユニットの手持6個のうち2個が引当済みなら、有効在庫は6-2+4=8個、正味は12個、ロットで15個になります。

なぜ在庫は多すぎても少なすぎてもダメなのか

MRPの精度が大切なのは、在庫が企業の健康状態を映すからです。動画は、多すぎる場合と少なすぎる場合を対比します。

論点多すぎる少なすぎる
お金売れるまではただの物。現金が倉庫で眠る(資金の固定化)売るものがなく、販売機会を失う
価値・信用モデルチェンジの早い製品は旧型が価値を失う(デッドストック)「いつも品切れの店」という評判が立ち、信用が落ちる
コスト賃料・光熱費・人件費などの保管コスト緊急手配で割高に買い、特別な輸送便も使い、コストが増える
対応力古い在庫を抱え、新製品への切り替えが遅れる現場が混乱し、ラインが止まる

(補足:JISは在庫を「将来の使用・需要に備えて意図的に保有する原材料、仕掛品、半製品及び製品」と定義し、必要な理由に応じてロットサイズ在庫・安全在庫・見越在庫などの呼び名があるとします。)

BOM:製品のレシピ

MRPの計算精度を左右するのが、BOM(Bill of Materials、部品表)です。JISでは「部品構成表」といい、各部品を生産するのに必要な子部品の種類と数量を示すリストです。レシピが間違っていれば、どんなに優秀なシェフ(MRP)でも、おいしい料理は作れません。動画は、BOMを大きく2つに分けます。

種類作る場面カレーでいうと
設計部品表
(E-BOM)
製品開発の段階で設計者が作るじゃがいも・にんじん・玉ねぎ・肉。全部品のフラットな材料リスト(動画はサマリー型と呼ぶ)
製造部品表
(M-BOM)
製造現場で使う切って炒める→煮込む→ルーを加える。工程と部品の階層構造(動画はストラクチャー型と呼ぶ)

(補足:ここは整理が資料で分かれます。JISは部品構成表を、親子関係の連鎖を木構造で表したストラクチャ型と、表形式で示したサマリー型に分けています。これは表し方の区別で、設計用か製造用かという使い道の区別とは別の軸です。JIS Z 8141の2001年版には、設計部品表・製造部品表の語は見当たりません。動画の対応づけは「設計用はリスト寄り、製造用は組立順の階層寄りになりやすい」という傾向の説明と受け取るのが安全で、試験では2つの軸を分けて覚えてください。教材によっては、直下の子だけを並べる「単層」、最下位まで階層をたどる「多層」という呼び方も使われます。ただし今回、単層の定義を原文では確認できず、多層(マルチレベル)も解説サイトでの確認にとどまります。)

自転車(1台)×2×4車輪ユニットネジ×36×1×2スポークリムネジLv0Lv1Lv2ネジは Lv1 にも Lv2 にも登場します→ ローレベルコードは いちばん深い Lv2
同じ部品が複数の階層に出てくるときは、いちばん深い階層で計算します。

階層構造があるから、数量の計算ができます。自転車10台なら、10台×車輪ユニット2つ×スポーク36本=720本。もしBOMのスポークが35本と誤登録されていれば、10×2×35=700本で、20本足りません。

(補足:同じ部品が複数の階層に出てくる場合、MRPはローレベルコード(最も深い階層のレベル)を割り当て、上位のすべての所要量を集めてから正味所要量を計算する、と解説されています。上の図のネジはLv1とLv2に登場するので、コードはLv2です。これで同じ部品を、違うタイミングで何度も計算せずにすみます。出典は二次の解説で、診断士試験での扱いは確認できていません。)

たった1行の入力ミスが、億単位の損害に

動画は、BOMのミスの怖さを、ある家具メーカーの話で伝えます。ベストセラーの本棚キットで、本来8本のネジが7本とBOMに登録されたまま、誰も気づかず1年以上出荷が続きました。ネジ不足のクレームが全国から殺到し、個別発送の費用とブランドイメージの低下で、損害は億単位に上ったというのです。

たった1つの数字の間違いで、そんなに大きな損害になるのですか。

BOMは、すべての計算の土台です。土台が1行ずれれば、その製品を作るたびにずれが積み重なります。ですから、BOMの正確さと、設計変更をすぐ反映する管理が欠かせないのです。

(補足:この話は、メーカー名・年・金額が動画では示されず、裏づけとなる資料も確認できませんでした。実話かどうかより、教訓として受け取ってください。)

補足:MRPからMRP II、ERPへ

動画で扱う基本のMRPは、部品の手配を計算する仕組みです。これを人員や設備まで広げたものがMRP IIです。JISは「資材所要量計画だけでなく、要員、設備といった資源も管理対象として、製造・購買などの製造企業の活動を計画し管理する総合的生産管理の概念と技法」とし、従来のMRPと区別するためにMRPIIと呼ぶこともある、と書いています。名称はManufacturing Resource Planning(製造資源計画)と紹介する解説が多く、さらに全社の業務へ広げたものがERPです。

なお、基本のMRPは、設備や人員の能力を考えずに計算します。能力が足りるかを確かめるのが能力所要量計画(CRP)で、東京大学の講義ノートはCRPとMRP IIを同じ節で扱っています。登場の年代は、1960年代〜70年代にアメリカでMRP、1980年代にMRP II、1990年代にERPと書く資料が多いのですが、年の書き方には資料ごとに幅があります。

動画は最後に、基準生産計画をAIがリアルタイムで最適化し、SNSの拡散を見て需要予測を修正したり、海外工場の天候悪化でリードタイムの延びを察知して発注を前倒ししたりする未来を、思考実験として語ります。MRPやBOMは、基準生産計画という入力に論理的に正しい答えを返す仕組みです。その基礎を知っておくことが、未来のシステムを理解する出発点になる、という締めくくりでした。

まとめ

  • 標準化:部品を共通化して種類をしぼる。費用・品質・納期・管理に効く一方、保守化と設計の自由度低下のトレードオフがある。JISでは標準化・単純化・専門化が3S。
  • MRP:基準生産計画・部品表・在庫情報から、資材の必要量と時期を逆算する。従属需要品目が対象。
  • 計算の順序:総所要量→正味所要量(-手持在庫-発注残)→ロットまとめ→リードタイムでさかのぼって発注時期。
  • 在庫:多すぎれば資金の固定化・陳腐化・保管コスト、少なすぎれば機会損失・信用低下・緊急手配のコスト増。
  • BOM:製品のレシピ。JISの型はストラクチャ型とサマリー型。誤りはMRPの計算全体に響く。

試験で注意したいところ

  • 正味所要量は、総所要量から手持在庫と発注残を引く。引当済みの在庫は使えない(有効在庫=手持在庫-引当量+発注残)。
  • リードタイムは発注の時期をさかのぼるために使う。ロットまとめは、先に正味所要量、あとで切り上げ。
  • サマリー型・ストラクチャ型は表し方、設計用・製造用は使い道。軸が違う。
  • MRPは独立需要の最終製品を計算しない。基準生産計画として与え、従属需要の部品を計算する。
LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む