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中小企業診断士 1次試験

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PERTとCPM(クリティカルパス)『複数の作業が複雑に絡み合うプロジェクトのスケジュールを管理する強力な手法』

運営管理 第41回

運営管理・生産計画 00512分28秒2026年2月24日公開

「例えば新しいカフェを開くとか、アプリを開発するとか、考えるだけでもうわ大変そうだなって思いませんか?」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、アローダイアグラムの描き方とダミー、最早・最遅の計算、余裕とクリティカルパス、そしてCPMによる費用最小の日程短縮までを、計算の例とあわせてまとめました。PERTの3点見積りや、資料による用語の違いも補足しています。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

「カフェを開く」だけで、もう大変そう

「新しいカフェを開く」「アプリを開発する」。考えただけで大変そうなプロジェクトには、作業が複雑に絡み合っています。内装工事が終わらないと厨房機器が入れず、スタッフを雇わないと研修も始まらない。ひとつ遅れると、ドミノ倒しのように全部が遅れていきます。動画は、この混沌を「プロジェクトの全体像を地図のように描き、成功への最短ルートを見つける」手法として、PERTとCPMを紹介します。

  • PERT:作業の順番をアローダイアグラム(矢印と丸の図)にし、最早・最遅の日程を計算して、絶対に遅らせられない道(クリティカルパス)を見つける。動画はこれを「健康診断」にたとえます。
  • CPM:クリティカルパスが長すぎて納期に間に合わないとき、最小の追加費用で期間を縮める方法を考える。動画は「治療法」にたとえます。

この回は計算が中心です。動画に出てくる数字は少ないので、このページでは同じカフェの題材で設例を作り、前進計算・後退計算・余裕・短縮の費用をプログラムで検算した結果を載せます。設例の数字は動画のものではありません(動画の数字は、内装工事20日、業者選定5日、短縮1日あたり5万円と10万円、合流する30日目と35日目だけです)。

アローダイアグラム:矢印は作業、丸は区切り

図の部品はふたつだけです。矢印は1つ1つの作業(アクティビティ)で、作業名とかかる日数を添えます。丸は作業の始まりと終わりの区切りで、分岐点や合流点になります(動画は「ノード」、資料によっては結合点・イベントとも呼びます)。作るときは、全作業を洗い出し、「どの作業が終わったら次のどれが始められるか」という先行関係を整理してから、矢印と丸でつなぎます。

設例は次の9作業です。動画の依存関係(物件契約が終わらないと業者選定も備品発注も始まらない、業者選定の後に内装工事)をそのまま使い、厨房機器とスタッフ研修を足しました。

作業日数先行作業
A 物件契約1なし
B 内装業者選定5A
C 備品発注3A
D 内装工事20B
E 厨房機器搬入6C、D
F 採用募集5A
G 面接・採用10F
H スタッフ研修7D、G
I 開店準備3E、H

ここで動画が「落とし穴」として挙げる重要なルールがあります。同じ始まりの丸から同じ終わりの丸へ、矢印を2本以上直接引いてはいけません。たとえば内装工事と厨房機器搬入が、どちらも業者選定の後に始まり、同じ丸で終わるように描くと、2本の矢印がどちらも「③→④」になって区別できなくなります。そこで使うのがダミー(ダミー作業)です。

NG:同じ2つの丸の間に矢印が2本③④内装工事 20日厨房機器搬入 4日どちらも「③→④」と読めて区別がつかないOK:ダミー(0日・点線)を足して区別する③④⑤内装工事 20日厨房機器搬入 4日ダミー(0日)ダミー=「両方終わるまで進めない」を表す線
同じ丸から同じ丸へ2本引くのは禁止。片方をダミーで迂回させます。

ダミーは所要日数0の点線の矢印で、時間は数えません。「この作業とこの作業の両方が終わらないと次へ進めない」という関係だけを正しく表すための、見えない線です。設例のEは「CとDの両方」、Hは「DとGの両方」が終わらないと始められないので、このあとの図でもダミーが2本出てきます。

同じ丸の間に2本引けないなら、並行して進む作業はどう描くんですか?

片方の終わりを別の丸にして、その丸から元の丸へ点線のダミーを引きます。日数は0なので、工期には影響しません。

わざわざ0日の矢印を足すんですね。

これで、どんなに複雑なプロジェクトでも矛盾なく図に落とし込めます。ちなみにダミーは、同じ丸の間の区別だけでなく、設例のように先行関係を正しく表すためにも使います(補足)。

前進計算と後退計算:最早と最遅の日程

図ができたら分析に入ります。動画は、ここを「最速着手日」と「最遅着手日」の計算と呼びます。資料では、丸に着く時刻として最早結合点時刻・最遅結合点時刻と呼ぶのが一般的です(呼び方の違いは後半で並べます)。

  • 前進計算(最早):スタートを0日として、前の丸の日数に作業日数を足しながら進みます。複数の矢印が合流する丸では、大きい方を採用します。動画の例では、内装工事の完了が30日目、スタッフ採用の完了が35日目なら、両方がそろわないと研修は始められないので、研修を最も早く始められるのは35日目です。
  • 後退計算(最遅):ゴールの最遅時刻を工期(最早のゴール時刻)に置き、逆向きに「この日までに終えないと全体が遅れる」ぎりぎりの日を引き算で求めます。複数の矢印が出ていく丸では、小さい方を採用します。
A 1B 5C 3F 5D 20G 10E 6H 7I 3ダミーダミー①②③④⑤⑥⑦⑧⑨0/01/16/66/1626/2626/2726/2633/3336/36丸の横の数字=最早/最遅(日) 太い赤線=クリティカルパス
最早と最遅が一致する結合点を通る赤い道が、クリティカルパスです。

設例で確かめます。丸⑧には、E経由(26+6=32日)とH経由(26+7=33日)が合流するので、大きい方の33日。ゴール⑨は33+3で36日、これが工期です。後退側は、⑧の最遅を33日として、⑥は33−6=27日、⑦は26日、⑤は小さい方の26日(⑥から27−0、⑦から26−0のうち小さい方)、④は26−10=16日と求まります。最早と最遅が食い違うのは④と⑥だけで、ここに余裕があることが分かります。

余裕とクリティカルパス

動画は「最速と最遅が同じになるのでは」という疑問に、こう答えます。ほとんどの作業では両者に差が生まれ、その差が余裕(フロート、スラック)です。ある作業の最速着手が10日目、最遅着手が15日目なら、5日までなら遅れてもプロジェクト全体に影響しません。この差が0の作業だけをつないだルートがクリティカルパスで、始まりから終わりまでを結ぶ最長のルートです。ここが1日遅れると、納期が直接1日遅れます。

設例の作業ごとの余裕は次のとおりです(ダミーは省略)。余裕には種類があり、動画が言う「最早開始と最遅開始の差」は全余裕にあたります。もうひとつ、自由余裕は「次の作業の最早開始を遅らせない範囲」で測ります(補足)。

作業最早開始/最遅開始全余裕/自由余裕
A・B・D・H・I差なし0/0
E 厨房機器搬入26/271/1
F 採用募集1/1110/0
G 面接・採用6/1610/10
C 備品発注1/2423/22

余裕の式

  • 全余裕=最遅開始−最早開始=(後の丸の最遅時刻)−(前の丸の最早時刻)−作業日数
  • 自由余裕=(後の丸の最早時刻)−(前の丸の最早時刻)−作業日数(全余裕以下になります)
051015202530経過日数(日)F 採用募集F 5日全余裕 10日自由余裕=0G 面接・採用G 10日余裕 10日H開始26日FとGで余裕10日を共有しています
全余裕は「全体の工期を守れる範囲」、自由余裕は「次の作業を遅らせない範囲」です。

F採用募集は全余裕が10日もあるのに、自由余裕は0なんですか?

FのあとにGが最早開始で始めたいからです。Fが1日遅れると、Gの開始も1日遅れます。それでも、FとGを合わせて10日までなら工期は守れます。10日は、2つの作業で共有しているんです。

設例の経路を長い順に並べると、A-B-D-H-I が36日、A-B-D-E-I が35日、A-F-G-H-I が26日、A-C-E-I が13日です。クリティカルパスは36日の経路で、35日の経路が1日差で追いかけています。このように、クリティカルパスは1本とは限りません。また、余裕を使い切った作業は新たにクリティカルになるので、余裕の小さい経路も重点管理が必要です。動画が言うとおり、プロジェクトマネージャーは、このクリティカルパス上の作業に全神経を集中して管理します。

計算問題の確認ポイント

  • 合流する丸(入る矢印が複数)は最早は大きい方、分岐する丸(出る矢印が複数)は最遅は小さい方。
  • クリティカルパス上の作業は全余裕が0。1日遅れると、全体の工期が1日遅れる。
  • ダミー(0日)の分も、前進計算・後退計算に含めて計算する。

PERTの3点見積り(補足:動画にない話)

動画はPERTを「図を描いて最長ルートを見つける手法」として説明し、作業日数は決まった数として扱っています。ただ、PERT本来の特徴は、作業時間の不確実性を扱うことです。作業ごとに3つの時間を見積もります。

  • 楽観値 a:順調に進んだ場合の時間
  • 最頻値(最可能値)m:通常の場合の時間
  • 悲観値 b:調子悪く進んだ場合の時間

期待時間は (a+4m+b)÷6、分散は ((b−a)÷6)² で求めます。たとえば内装工事が a=16日、m=19日、b=28日なら、期待時間は(16+76+28)÷6=20日、分散は(12÷6)²=4です。設例のクリティカルパス上の作業で計算すると、次のとおりです。

作業a/m/b期待/分散
A1/1/11/0
B3/5/75/0.44
D16/19/2820/4
H5/7/97/0.44
I2/3/43/0.11

経路全体の期待時間は合計の36日、分散も足し算で 0.44+4+0.44+0.11=5(分数なら 4/9+4+4/9+1/9)、標準偏差は√5≒2.24日です(標準偏差は足し算せず、分散を足してから平方根にします)。作業時間が正規分布に従うと近似すると、36日以内に終わる確率は50%、38日以内なら約81%、40日以内なら約96%です。ただし、これはクリティカルパスだけで考えた近似で、35日の経路が実際には長引いて逆転する可能性は無視しています。

CPM:時間と費用のトレードオフ

クリティカルパスが長すぎて納期に間に合わないとき、「どうする」に答えるのがCPMです。動画によると、目的は最小の追加費用でプロジェクト期間を短縮すること。手順は次のとおりです。

  • クリティカルパスを特定する。
  • クリティカルパス上の作業のうち、1日短縮するのにかかる追加費用が最も安い作業を探す。
  • その作業を1日縮める。全体の期間も1日縮む。
  • 目標の期間に達するか、予算が尽きるまで繰り返す。

動画の例は、内装工事20日を1日縮めるのに残業代5万円、業者選定5日を1日縮めるのにコンサル費10万円。より安い内装工事を選びます。この「1日あたりの追加費用」を費用勾配といい、(特急費用−正常費用)÷(正常日数−特急日数)で求めます。設例で、内装工事が通常20日・200万円、最短16日・220万円なら、20万円÷4日=5万円/日です。作業を無理に急がせることを突貫(クラッシング)、縮められる限度を特急(クラッシュ)といいます。

設例では、縮められる作業は次の5つです。ほかの作業は縮められないものとします。

作業縮められる日数費用勾配
D 内装工事4日5万円/日
H スタッフ研修2日8万円/日
B 内装業者選定2日10万円/日
I 開店準備1日12万円/日
E 厨房機器搬入1日7万円/日

36日の工期を短縮していくと、次のようになります(全部の組合せを調べて、最安であることも確認しました)。

目標工期縮める作業追加費用の累計
35日D(5万)5万円
34〜32日D(残り3日)10、15、20万円
31日H(8万)28万円
30日B(10万)38万円
29日B(残り1日)48万円
28日I(12万)60万円
36343230280204060工期(日)追加費用(万円)D:5万円/日H:8B:10I:1260万円31日で28万円
短縮は、安い作業から使い切っていくので、先へ進むほど1日あたりの費用が上がります。

ここで動画の注意点が効いてきます。ある作業を短縮した結果、別のルートが新たにクリティカルパスになることがあるので、1回縮めるごとに全体を見直します。設例も、Dを4日縮めて32日になった後、Hを1日縮めた31日の時点で、H経由(31日)とE経由(31日)の2本が同時にクリティカルになります。ここでEだけ縮めても(7万円)、H経由が31日のままなので工期は縮みません。縮めるなら、両方の経路に共通するB(10万円)やI(12万円)を使います。EとHを両方縮めると15万円になるからです。

Eは7万円で安いから、先に縮めたくなりますね。

それが罠です。Eはクリティカルパスの上にない間は、縮めても工期は変わりません。安さではなく、クリティカルパス上で安い作業を選ぶのが順番です。

2本がクリティカルになったら?

両方の経路を同時に縮める必要があります。共通の作業を縮めるか、それぞれを1日ずつ縮めて合計の費用を比べます。

資料によって違うところ(補足)

PERT/CPMは、資料によって用語や整理の仕方が違います。ここでは確認できた範囲を並べます。

項目動画・このページ/ほかの資料
PERTとCPMの区別動画:PERT=図と最早・最遅でクリティカルパスを見つける、CPM=費用で短縮。
ほかの資料:PERT=3点見積りで期間の確率を扱う、CPM=時間と費用のトレードオフ。PERTの語がクリティカルパス日程法全般を指すこともある。
余裕動画:フロートもスラックも同じ「余裕」。
兵庫県の資料:丸の最遅−最早をスラック、作業の余裕をフロートと呼び分け、フロートは全余裕・自由余裕・干渉余裕・独立余裕の4種(よく使うのは前2つ)。
時刻の呼び方動画:最速着手日・最遅着手日。
兵庫県・大学の資料:最早・最遅結合点時刻、最早・最遅開始時刻。
図の表記動画:矢印が作業、丸が区切り(アロー型)。
ほかに、工程をボックスで表すフロー型(ノード型)もあり、見方が変わる。
JISでの語JIS Z 8141:アローダイアグラムは作業を矢線、開始と完了をノードで表すネットワーク図。クリティカルパスは所要日数を決める作業の列。JISの「余裕」は標準時間の余裕で別概念。
成立年PERTは米海軍のPolaris計画で1950年代後半(1958年公表)、CPMはデュポン社で同時期。資料により1957年・1958年と揺れる。

なお、診断士試験の過去問(令和以降の計算問題)、日本能率協会・中小機構の解説、JIS Z 8141の現行版(2022年版)は、今回確認できていません。出題の整理は、お手持ちの教材でも確かめてください。

動画の問い:本当の価値は、図を作る過程にある

動画は最後に、こう問いかけます。これらの手法のゴールはクリティカルパスを見つけたり期間を縮めたりすることですが、本当の価値はもっと前、PERT図を作る行為そのものにあるのかもしれない、と。メンバー全員が集まって作業を洗い出し、「これが終わらないとあれは始められない」「こっちは並行でできる」と議論する。依存関係を1つ1つ定義する過程でチームの認識のずれが消え、後工程の手戻りやトラブルが未然に防がれる。分析の結果以上に、計画を立てる過程そのものがプロジェクトの質を決めているのではないか、という見方です。

まとめ

  • アローダイアグラムは矢印=作業、丸=区切り。同じ丸の間に2本引けないときはダミー(0日・点線)を使う。
  • 前進計算は合流で大きい方(最早)、後退計算は分岐で小さい方(最遅)。最遅−最早が余裕。
  • 余裕が0の作業をつないだ最長の道がクリティカルパス。1日遅れると全体が1日遅れる。1本とは限らない。
  • PERT(補足)は3点見積り。期待時間=(a+4m+b)÷6、分散=((b−a)÷6)²で、経路の分散は足し算。
  • CPMはクリティカルパス上で費用勾配が小さい作業から縮める。縮めるたびに、別の経路が新たにクリティカルにならないか見直す。
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