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中小企業診断士 1次試験

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VE(バリューエンジニアリング)『「価値(V)=機能(F)÷コスト(C)」の公式』

運営管理 第42回

運営管理・生産計画 00614分14秒2026年2月23日公開

「製品やサービスをよくしようと考えたとき、ついついもっと機能を追加しようとか、どうすればコストを下げられるかという、2択になりがちですよね」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、VE(バリューエンジニアリング)の公式V=F÷C、価値を上げる道とVEの鉄則、VEの5原則、機能の分類、3つの実践ステップ、0ルックとセカンドルックをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

「機能を足す」か「コストを削る」か、の2択を疑う

動画は、こんな話から始まります。製品やサービスをよくしようと考えたとき、ついついもっと機能を追加しようとか、どうすればコストを下げられるかという、2択になりがちです。その結果、誰も使わない機能ばかりの高価な製品ができてしまうことがある。そこで登場するのがVE(バリューエンジニアリング)です。

VEは、機能を足したりコストを削ったりするのとは違うアプローチで、価値そのものを設計し直す戦略的な手法だと説明されます。診断士試験でもよく出題されるテーマですが、動画は「ビジネスの現場で物事の本質を見抜く強力な武器になる」とも言っています。

(補足:日本バリューエンジニアリング協会は、VEを「製品やサービスの価値を、それが果たすべき機能と、そのためにかけるコストとの関係で把握し、システム化された手順で価値の向上をはかる手法」と説明しています。1947年に米国GE社のマイルズが開発し、日本には1960年頃に入りました。日本語では価値工学とも呼びます。)

V=F÷C は「ものさし」

VEの出発点は、とてもシンプルな式です。価値(V)=機能(F)÷コスト(C)。価値は、機能をコストで割ったもの、と定義します。

ここで聞き手が、もっともな疑問を出します。価値は人によって感じ方が違い、主観的なはず。それを単純な数式に当てはめるのは乱暴では? 動画の答えは、個人の感情やブランドへの愛着まで全部を式で表せるわけではない。けれど、開発の現場でチームが同じ目標を持つためのものさしとしては驚くほど強力、というものでした。

価値(V)=機能(F)÷コスト(C)全部のせケトル機能Fは高い温度は100段階コストC=3万円Vは低いかもしぼったケトル温度は3つだけデザインは洗練コストC=8,000円Vは高いかも
機能の多さがそのまま価値の高さにはなりません。

動画のたとえはこうです。ある家電メーカーの電気ケトルは、1度単位で100段階の温度設定ができ、スマホアプリとも連携する。機能Fはものすごく高いのですが、価格は3万円。一方、競合のケトルは温度設定がコーヒー用・緑茶用・白湯用の3つだけで、デザインは洗練されていて8,000円。どちらの価値Vが高いでしょうか。

100段階もあるのに、競合の3つだけのほうが価値が高いんですか?

実際に使うのは、せいぜい2、3パターンでしょう。過剰なFのためにCが上がりすぎて、結果的にVが低くなっていた、ということです。

つまり、機能の多さが価値の高さとは限らない。VEは、機能とコストのバランスを見極めるための考え方です。

(補足:検算です。価格は3万円÷8,000円で3.75倍。式のうえでは、高機能ケトルのVが上回るのは、使う人が感じる機能の大きさが3.75倍以上のときだけです。動画にはFの数値は出てきません。また、VEでいう機能は「働き、効用、効果」で、性能や信頼性、操作性、安全性、デザインなども含みます。コストも、購入価格だけでなく、使う側の運用や廃棄の費用まで含めたライフサイクルコスト(総費用)で考えるのが本来です。)

価値を上げる3つの道と、VEの鉄則

V=F÷Cなら、価値を高める道は決まってきます。動画は3つに整理しました。

動画の整理機能FコストC
コストはそのまま(むしろ下げ)て機能を上げる。最も理想的上げる維持か下げる
機能は現状維持でコストだけ下げる維持下げる
コストは少し上がってもよいので、機能を劇的に上げる大きく上げる少し上がる
機能FコストC①機能そのまま・コスト下げる→↓②機能を上げ・コストも下げる↑↓③機能を上げ・コストそのまま↑→④機能大幅増・コスト少増↑↑↑⑤機能を下げ・コスト大幅減↓↓↓⑤はVEの範囲外とする資料がある(5つに数える資料も)
動画は3つ、資料では4つ(⑤を含めて5つとする資料も)です。

ここで試験対策としても大事なのが、VEの鉄則は「機能Fを意図的に下げない」ことです。機能を少し削ってコストを大幅に下げる手もあります。「これで十分」という製品が市場にあふれ、ヒット商品も多いので、一見賢い選択です。でも動画は、それは単なるコストダウンであってVEではないと、はっきり区別します。式のうえでは機能を下げてもVは上がり得ますが、VEが目指すのは価値の向上です。機能を維持あるいは向上させながら価値を高める、という制約を自分に課すことで、本当の創造性やイノベーションが生まれると考えます。

試験の注目点

動画は、「機能を下げてコストを大きく下げる」はコストダウンであってVEではない、と説明します。VEは必要な機能を維持・向上させて価値を上げる、という整理です。

これは動画と、日刊工業新聞社の公開資料に沿った整理です。⑤を5つ目のパターンとして数える資料もあるため、数や名前に迷ったら、軸は「必要な機能は下げない」だと考えてください。公式の出題や正答は今回確認できていません。

(補足:価値向上のパターンの数は、資料によって違います。日刊工業新聞社の公開資料は、図の①〜④の4ケースを挙げ、⑤の「機能を下げ、それ以上にコストを下げる」は機能の引き下げ=別の製品の開発としてVEの範囲外としています。Wikipediaも4形態です。一方、大学の建設マネジメント資料には、⑤に当たるパターンも数えて5つとし、「安かろう悪かろう」の危険はあるが現実には存在する、と書くものがあります。動画の3つは、②と③をまとめた言い方(機能を上げ、コストは維持か下げる)に、①と④を足したものです。名前や数に迷ったら、軸は「必要な機能は下げない」だと考えてください。)

(補足:動画は後半で「ユーザーにとって不必要な機能のコストを洗い出す」とも言います。矛盾ではありません。VEでいう機能は使う人が必要とする機能です。必要としない機能(過剰機能)を避け、足りない機能(不足機能)を加えて洗練させるのがVEです。)

VEの5原則と語呂「組織価値で」

価値を設計し直すといっても、常識を疑うのは大変です。そこで動画は、VE活動を進めるチームのOSのような考え方として、VEの5原則を紹介します。

語呂原則ケトルで言うと
「そ」創造による変更の原則固定観念にとらわれず、新しい案で変える
「し」使用者優先の原則開発者は100段階を喜んでも、使用者は3つで十分
「き」機能本位の原則ネジではなく「固定する」働きを見る
「か」価値向上の原則全ての活動は価値Vを高めるために行う
「で」チームデザインの原則技術・営業・デザイン、時には顧客も

語呂合わせは「組織価値で」。頭の音を拾うと、そ・し・き・か・で、になります。機能本位では、ネジという部品ではなく「固定する」という働きを見ると、接着剤でもいいのでは、一体成形できないか、と新しい発想が生まれます。チームデザインなら、もし営業担当がいれば「お客様はそんな細かい設定は求めていません」と早い段階で言えたかもしれません。

(補足:原則の名前は、Wikipediaが挙げる「使用者優先・機能本位・創造による変更・チーム・デザイン・価値向上」と同じです。日本VE協会の公式ページも、使用者優先、機能本位、チーム・デザイン、価値向上をはかる、といった考え方を書いています。語呂の「組織価値で」は動画のもので、公式の覚え方とは限りません。)

機能を分ける:使用機能と貴重機能、基本機能と補助機能

機能本位と言っても、機能にはいろいろあります。動画はまず、機能を2つのタイプに分けます。使用機能は、ケトルがお湯を沸かすといった具体的な働き。貴重機能は、高級時計のように、持っていること自体に喜びやステータスを感じさせる機能です。実用的な働きと、心理的な満足感の違いです。

さらに、重要度で2つに分けます。基本機能は、その製品が成り立つために欠かせない核の機能(ケトルなら、安全にお湯を沸かすこと)。補助機能は、あれば便利でも、なくても製品は成り立つ機能です(保温、空焚き防止、細かな温度設定など)。VEでは、この補助機能にこそ無駄が潜みやすいと考えます。

機能使用機能使うための働き貴重機能持つ満足・ステータス基本機能核になる働き二次機能(補助機能)あれば便利最後は使用者の目で仕分け直す必要機能 / 不必要機能
基本・二次を使用機能の下に置く階層は、平成22年度の問題文の書き方に近い図です。動画は置き場所を明言しません。

ただし、これは作る側の分類です。最後の分析では、全機能を使用者の目で、必要機能と不必要機能に仕分け直します。VE活動の最大のターゲットは、使用者にとっての不必要機能にかかっているコストを洗い出し、そこにかけていた資源を、使用者が本当に求める必要機能の向上に回すことです。

じゃあ補助機能は、基本的に削る対象なんですか?

補助機能は無駄が潜みやすい、というだけです。決め手は、使う人にとって必要かどうか。必要なら残します。

(補足:機能の分類の名前や階層は、資料によって違います。動画の「補助機能」は二次機能とも呼ばれ、平成22年度の運営管理(第5問)には、VEの機能の分類を問う問題が出ています。選択肢には「使用機能は、基本機能と二次機能に分類される」「製品の形や色彩などデザイン的特徴に関わる機能を貴重機能という」「製品やサービスの使用目的に関わる機能を使用機能という」といった文があり、使用機能の中に基本機能と二次機能がある、という階層の書き方です。動画は、使用機能と貴重機能について「それらの機能はさらに重要度で2つに分類されます」と話し、基本機能と補助機能に分けます。ただし、基本・補助をどちらの下に置くかは動画では明言されません。前述の問題文は、選択肢アが不適切に見えるため、イの「使用機能は基本機能と二次機能に分類される」は適切な記述と読めますが、協会の公式正答は未確認です。両者の関係は今回の一次資料では確認できていません。試験では、使用機能=使用目的に関わる働き、貴重機能=デザインなどの魅力、基本機能と二次機能、という用語をひと通り押さえておくと安心です。なお、機能を「〜を〜する」の形で書き出すと考えやすい、という説明もありますが、書き方の決まりは確認できていません。)

実践は3ステップ:機能定義→機能評価→代替案作成

実践のロードマップは体系化されていて、基本は3段階です。

1機能定義情報を集め、機能を洗い出して分ける問い:それは何か。その働きは何か2機能評価機能ごとにコストを割り当てて見る問い:そのコストはいくらか。価値は見合うか3代替案作成価値の低い機能をどうするか案を出す問い:他に同じ働きをするものはないか
3つのステップを、質問に答えながら進めます。

第1ステップ:機能定義。対象の製品について、設計図、コスト構成、顧客のフィードバック、競合製品の分析など、あらゆる情報を集めます。そして製品が持つ機能を1つ残らず洗い出し、先ほどの分類で整理します。対象を丸裸にして、機能のレベルまで分解するわけです。

第2ステップ:機能評価。洗い出した機能1つ1つに、どれだけのコストがかかっているかを割り当てます。すると、どうでもいい機能に全体のコストの30%もかかっていた、という衝撃の事実が見えることがあります。しかし、それが改善の最大のチャンスです。

コストを割り当てるだけで、そんなに違いが見えるんですか。

機能ごとに「いくらかかっているか」が初めて見えるからです。チームにはショッキングですが、そこが改善の入口になります。

第3ステップ:代替案作成。コストばかりかかって価値の低い機能をどうするか、チームで案を出し合います。その機能をなくせないか、もっと低コストで同じ機能を実現できないか。ブレインストーミングで具体的な改善に落とし込みます。

(補足:検算です。コスト100のうち30が不必要な機能に使われていて、それを機能そのままで削れたとします。Cは70になるので、V=F÷70。元のF÷100の約1.43倍です。30%を全部削れた理想の場合の計算です。)

この進行を助けるのがVE質問です。機能定義では「それは何か、その働きは何か」、機能評価では「そのコストはいくらか、その価値は本当に見合っているか」、代替案作成では「他に同じ働きをするものはないか、それを使えばコストはどうなるか」。質問に答えるだけで、VEの思考をたどれます。

(補足:3段階は、資料ではもう少し細かく書かれます。機能定義は「情報収集・機能の定義・機能の整理」、機能評価は「機能別コスト分析・機能の評価・対象分野の選定」、代替案作成は「アイデア発想・概略評価・具体化・詳細評価」です(大分県の設計VEガイドラインやWikipediaの手順)。動画は機能評価をコストの割り当てを中心に話していますが、資料では、改善する対象を選ぶところまでが機能評価に入ります。VE質問の文言は、動画の紹介どおりで、規格や協会資料では確認できていません。)

いつ使う? 0ルックとセカンドルック

VEは、製品のライフサイクルのどこで使うと効果的か。動画は、主なタイミングを2つ挙げます。1つは商品企画の段階で、ゼロから製品を考えるときです。これを0ルックVEといい、そもそも無駄な機能を作り込まないための最も効果的な使い方です。もう1つは、すでに市場に出ている既製品の改良やコストダウンに使うセカンドルックVEで、さっきのケトルメーカーがやるならこちらです。

企画・開発設計製造・量産0ルックVE無駄な機能を作り込まない動画で説明1stルックVE製造仕様をつくる段階動画では未説明2ndルックVE既製品の改良コストダウン動画で説明
段階が早いほど、無駄の作り込みを防げます。

(補足:動画は2つだけですが、呼び名は0ルック・1stルック・2ndルックの3つです。1stルックは設計段階で、製造の仕様をつくる段階のVEです。論文では、0ルックは企画・開発段階(最近はマーケティングVEとも呼ぶ)、2ndルックは製造段階で、設計済みの製品の製造計画をもとに改善案を出すもの、と説明されています。また、公共事業の設計VEのガイドラインでは、早い段階で改善するほどライフサイクルコストを縮減できる、とされています。)

補足:VE・VA・IE・QC の違い

動画の字幕には、VEとVA(価値分析)が混ざって出てきます。VEとVAの使い分けは、資料によって違います。

  • 同じものの旧名・別名とする資料:マイルズが1947年に命名したのがVA(価値分析)、1954年に米海軍造船局が設計段階に使ってVE(価値工学)と名づけた、とする説明があります。OR事典も、価値工学はVAとも呼ばれるとします。
  • 時期で分ける資料:自動車用語の辞典(大車林)には、目的・手段は同じで、設計・開発から量産1号車の立ち上がりまでがVE、それ以降がVA、とあります。

試験では、VE=価値工学、VA=価値分析で、ほぼ同じ考え方、と押さえておけば十分です。

IEとの違いも整理しておきます。JIS Z 8141(2001年版)は、IE(インダストリアルエンジニアリング)を、人・物・金・情報を最適に設計し、運用し、統制する工学的な技術・技法の体系とし、時間研究・動作研究が出発点だと書きます。これに対してVEは、果たすべき機能を思考の原点にして、機能とコストのバランスから改善を考えるのが特徴です(大分県の設計VEガイドライン)。QC(品質管理)は品質を保ち高める活動ですが、規格上の定義までは今回確認できていません。なお、JIS Z 8141の2001年版には、VEや価値分析の見出しが見つかりませんでした。

まとめ

動画が示した、押さえておきたい3点です。

  • 公式:価値V=機能F÷コストC。価値は、機能とコストのバランスで決まる。
  • 鉄則:機能Fは意図的に下げない。VEは安易なコストカットではなく、創造性で価値向上を目指す思想。
  • 5原則:創造による変更・使用者優先・機能本位・価値向上・チームデザイン。語呂は「組織価値で」。

手順は、機能定義→機能評価→代替案作成の3段階。機能は、使用機能と貴重機能、基本機能と補助(二次)機能に分け、最後は使用者の目で必要・不必要に仕分けます。企画段階の0ルックでは無駄な機能を作り込まず、既製品にはセカンドルックを使います。動画は最後に、毎日使っている製品の基本機能は何か、お金を払っているのに全く使っていない機能はないか、と問いかけて終わります。身の回りの製品にVEの目を向けてみましょう。

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