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中小企業診断士 1次試験

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トヨタ生産方式(TPS)の2大柱と「ムダ」の排除『ジャスト・イン・タイムと自働化、および排除すべき7つのムダ』

運営管理 第47回

運営管理・生産方式・現場改善 00210分20秒2026年2月23日公開

「世界の製造業に革命をもたらした、ある生産方式の核心に迫っていきます」。動画はこんな入りで、診断士試験の運営管理でも重要なトヨタ生産方式を取り上げます。このページでは動画の流れにそって、ジャスト・イン・タイム(JIT)と自働化の2本柱、後工程引き取りとかんばん、アンドン、そして排除すべき7つのムダをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

世界の製造業を変えた「考え方」

動画は、世界の製造業に革命をもたらした生産方式の核心に迫る、という入りで始まります。取り上げるのは、診断士試験の運営管理でも重要なトヨタ生産方式(TPS)です。基本思想は2本の柱で説明されます。

  • ジャスト・イン・タイム(JIT):必要なものを、必要な時に、必要なだけつくる。
  • 自働化:機械に人間の知恵を持たせ、異常があれば止めて不良をつくらない。

この2つの柱がめざすのは、無駄の徹底的な排除です。トヨタ自動車の公式サイトも、トヨタ生産方式の基本思想はこの2本の柱で成り立つとしたうえで、徹底的にムダを無くしてリードタイムを短くすることが目的だと説明しています。なお、この回では「かんばん」には必要な範囲で触れ、平準化などの周辺の論点は、後の回で学びます。

めざすもの:ムダの徹底的な排除良い品質・安く・タイムリーに柱1ジャスト・イン・タイム必要なものを必要な時に必要なだけ柱2自働化(にんべんの自働化)異常があれば止める不良をつくらない排除する対象:7つのムダ
トヨタ生産方式は、2本の柱でムダをなくしにいく考え方です。

ジャスト・イン・タイム:必要なものを必要な時に必要なだけ

JITの基本概念は、「必要なものを、必要な時に、必要なだけつくる」ことです。言葉だけを聞くと当たり前に聞こえますが、それまでのプッシュシステムとは発想が大きく違います。プッシュとは、前の工程が作った分を、どんどん後ろの工程へ押し出していく方式です。すると、途中に仕掛かり品がたまったり、逆に手待ちが出たりして、無駄が生まれていました。

JITはその課題を解くために生まれた、と動画は説明します。わかりやすいたとえがスーパーマーケットです。お客さんが棚から商品を取ると、その分だけバックヤード(前工程)から補充されます。これが後工程引き取り方式で、プルシステムとも呼ばれます。お客さん、つまり後工程が引っぱるから物が動く。店の都合で商品を押しつけたりはしません。

プッシュ(押し出し)前工程後工程お客さん作った分を、どんどん後ろへ押し出す→ 仕掛かり品がたまる・手待ちが出るプル(後工程引き取り)前工程後工程お客さん使った分だけ、前工程へ取りに行く→ スーパーの棚の補充と同じ発想
矢印の向きが逆です。お客さん側から引っぱられて、はじめて物が動きます。

(補足:動画の説明どおり、トヨタ公式サイトも、前工程でつくったものを後工程へ届けるのではなく、後工程が使ったものを前工程へ取りに行く方式だと説明しています。戦後、売れたものだけを補充するスーパーマーケットをヒントに確立されたとされ、JITの考え方そのものは、創業者の豊田喜一郎が提唱したと紹介されています。)

プルシステムは、言うのは簡単ですけど、実現するのは相当難しい気がします。

そうなんです。JITは精神論ではなくて、それを支える緻密な前提条件があるんですよ。

JITを支える3つの前提条件(動画の整理)

動画は、JITを機能させる土台として3つを挙げます。どれが何を指すのか、表で整理しておきましょう。

前提条件中身(動画の説明)
同期化
(オーケストラ)
各工程の生産スピード・稼働時間・材料の供給タイミングを、ぴったり合わせる
整流化
(川の流れ)
物や情報が淀みなくスムーズに流れる状態をつくる。滞留をなくす
小ロット化
(少しずつ)
在庫を極限まで減らすため、生産の単位をできるだけ小さくする。理想は1個流し

特に重要なのが小ロット化で、「たくさんまとめて作ったほうが効率的」という常識とは逆の発想です。動画は、この厳しい土台があってはじめてJITは機能すると述べます。

(補足:「3つの前提条件」という整理は、動画(や教材)の覚え方としては通用しますが、資料によって整理の仕方は違います。トヨタ公式サイトは、JITを「生産工程の同期化」をコンセプトとし、次の3つの原則で実践するとしています。①お客様が必要なものを必要な時に必要なだけ、②物や情報を途中で停滞させずに、③売れたペースでつくる。また、学会の推薦資料は、工程に「流れ化」がなければ後工程引き取りは回らないこと、後工程引き取りを機能させるには段取り替え時間を短くしてロットを小さくする必要があることを述べています。「整流化」という呼び方そのものは、今回確認した資料では見つかりませんでした。試験では、同期化・流れ化・小ロット化という方向性をつかんでおけば十分です。なお、JIS Z 8141:2001(生産管理用語)では、「同期化」が「各工程の生産速度や稼働時間、材料の供給時刻などをすべて一致させ、仕掛品の滞留や工程の遊休などが生じないようにする行為」とされ、「ジャストインタイムと同義語として用いることがある」と備考にあります。また、ジャストインタイムのねらいは「生産工程の流れ化と生産リードタイムの短縮」にあるとされています。動画の「同期化・整流化・小ロット化」は、こうしたJITの条件を3つに分けて覚えやすくした整理、と読むのがよさそうです。この整理そのものはJISには書かれていません。現行の2022年版の本文は今回確認できていません。)

かんばん:どの工程に何を伝えるか

では、後工程は前工程に、今これが必要になったとどう伝えるのでしょうか。大声で叫ぶわけにはいきません。そこで登場するのが、トヨタ生産方式の発明といえるかんばんです。かんばんは、何がどれだけ必要かを示す、製造と運搬の指示書です。動画は2種類を紹介します。

種類(動画のたとえ)役割
仕掛けかんばん
(製造許可書)
この部品を作ってください、という指示
引き取りかんばん
(買い物リスト)
この部品を引き取りに行きます、という指示

この2種類のかんばんが工場の中をめぐることで、JITのシステム全体が働きます。動画は、これを生産現場の神経系にたとえています。かんばんがあるから、後工程が必要な分だけを前工程が、作りすぎることなく生産できるのです。

後工程使う側前工程つくる側引き取りかんばん「取りに行きます」部品がわたる仕掛けかんばん「これをつくって」買い物リスト=引き取りかんばん仕掛けかんばんは製造許可書、のイメージ
2種類のかんばんが、物の流れに合わせて動きます。

(補足:資料によって呼び方が違います。学会の推薦資料では、仕掛けかんばんは「生産指示かんばん」とも呼ばれるとされ、動画の「仕掛けかんばん」と実質的に同じものとして読めます。JIS Z 8141:2001(生産管理用語)も、かんばん方式を「生産指示、運搬指示をする仕組み」とし、生産指示のための生産指示かんばんと、運搬指示のための引取りかんばんの2種類に大別するとしています(「仕掛けかんばん」という呼び方はJISでは確認できていません。現行の2022年版の本文も未確認です)。かんばんをさらに細かく分ける話は、後の回で扱います。また、動画の「製造許可書」「買い物リスト」は覚えやすいたとえで、トヨタ公式や学会資料の説明ではありません。)

自働化:ニンベンのついた「じどうか」

JITは、物の流れを最適化します。でも、流れが完璧でも、流れてくる部品そのものが不良品だったら意味がありません。完璧な流れで不良品の山を築くだけになってしまいます。そこで、トヨタ生産方式のもう1つの柱である自働化の登場です。物の流れをつかさどるのがJITだとすれば、物の質を保証するのが自働化です。

漢字に注目してください。普通の「自動化」ではなく、にんべんのついた「働く」の字を使います。ここには、機械に人間の知恵を持たせるという意味が込められています。具体的には、生産ラインで異常が起きたとき、機械が自らそれを検知してラインを停止させる仕組みです。

ラインを止めるなんて、生産性が落ちませんか。

短期的にはその通りです。でも、止めれば不良品を作り続けずにすみます。もっと大事なのは、止まることで、異常の根本原因を全員で解決しようというきっかけが生まれることです。

その場しのぎにせず、二度と起きないようにするチャンスなんですね。

そうです。結果的に、長期的な品質と生産性の向上につながっていきます。

異常が起きる機械が検知/作業者が気づくラインが止まる不良をつくり続けないアンドンが光るどこで何が起きたか全員で共有原因を全員で解決二度と起きないようにする緑:運転中黄:助けを呼ぶ赤:停止が必要
止めることで、再発を防ぐきっかけが生まれます。

異常を知らせるツールがアンドンです。工場の天井からぶら下がっている信号機のような電光表示板で、設備の稼働状況や作業状態が一目でわかります。動画では、緑が正常で、異常があると赤や黄色に光る、と説明されます。どこで何が起きているかを、全員がすぐに共有できます。

(補足:トヨタ公式サイトによると、自働化とは、機械に異常が生じたら自動で止まる(止める)ようにして不良品の発生を防ぎ、人が機械の見張りをする必要をなくすことです。ここでの「人間の知恵」には、機械が自ら異常を検知して止まるだけでなく、作業者自身が停止スイッチを押してラインを止められるようにすることも含まれます。つまり、機械だけでなく人が止める場合も自働化の一部です。また、アンドンの色の意味は、学会の推薦資料では、緑が運転中、黄が助けを呼ぶとき、赤が異常を直すためにラインを停止させる必要があるとき、とされます。動画の「異常で赤か黄色」より少し細かい使い分けで、色の運用は現場によって違うことがあります。起源は豊田佐吉の自動織機で、糸が切れると自動で止まる仕組みでした。)

7つのムダ:改善のターゲットを見えるようにする

JITも自働化も、突き詰めると、共通のゴールを目指しています。それが無駄の徹底的な排除です。トヨタ生産方式では、無駄を感覚ではなく、改善のターゲットとして誰の目にも見えるように、7つのムダとして定義しています。動画の紹介順に見ていきましょう。

ムダ中身(動画の説明)
加工のムダ本来必要のない加工や、過剰に精密な仕上げをすること
在庫のムダ原材料から仕掛かり品、完成品まで、すべての不要な在庫
不良(手直し)のムダ不良品をつくること自体も、それを修理する作業も価値を生まない
手待ちのムダ部品が来ない、機械が直らないなどで、作業者がぼーっと待っている時間
つくりすぎのムダ必要以上につくってしまうこと。7つの中でも最も悪いとされる
動作のムダ部品を探し回る、工具をやたらと持ち替えるなど、価値につながらない動き
運搬のムダ部品を不必要に遠くまで運ぶ、何度も仮置きする

なぜつくりすぎが最も悪いのでしょうか。動画によれば、必要以上につくると、それを置くための在庫のムダや、運ぶための運搬のムダなど、ほかのあらゆるムダの元になるからです。諸悪の根源、というわけです。

加工、在庫、不良、手待ち、つくりすぎ、動作、運搬。こうして並べると、身の回りにもたくさんありそうですね。

試験対策で覚えるための語呂合わせもあります。頭文字を取って、カザフ鉄道です。

カザフ鉄道。

「カ」が加工、「ザ」が在庫、「フ」が不良。残りの、手待ち・つくりすぎ・動作・運搬をまとめて「テツドウ」です。

語呂:カザフ鉄道(動画で紹介)カ加工ザ在庫フ不良+テ手待ちツつくりすぎド動作ウ運搬「つくりすぎ」は動画で『最も悪い』と紹介(動画の説明:他のムダの元になるため)
動画の順(加工・在庫・不良・手待ち・つくりすぎ・動作・運搬)で、頭文字を並べた語呂です。

(補足:「7つのムダ」の名前は、資料によって少しずつ違います。つくりすぎ・手待ち・運搬・加工(そのもの)・在庫・動作・不良をつくる、の7つという点は共通ですが、「加工のムダ」を「加工そのもののムダ」、「不良のムダ」を「不良をつくるムダ」「不良・手直しのムダ」と書く資料もあります。意味は同じです。また、7つの個別名を列挙しているのは、今回確認した範囲では解説サイトなどの二次資料が中心で、トヨタ公式サイトでは見つかりませんでした。「カザフ鉄道」の語呂も、動画(教材)の覚え方であり、公式の用語ではありません。さらに、つくりすぎの位置づけは、学会の推薦資料が、かんばんを「生産現場で一番のロスであるつくり過ぎを未然に防ぐ道具」としています。一方で、「つくりすぎは手待ちが生じたときに作ってしまうことで起き、在庫のムダにつながる」と因果の向きを説明する資料もあり、「ほかのムダの元」という言い方は、資料によって説明が異なります。)

試験の注目点

  • トヨタ生産方式の2本の柱はJITと自働化。自働化はにんべんのつく字。
  • JITは後工程が前工程へ引き取りに行くプル型(後工程引き取り)。逆のプッシュ型と区別する。
  • かんばんは2種類。仕掛けかんばん(製造の指示)と引き取りかんばん(引き取りの指示)。
  • 自働化は、異常で止める仕組み。見える化の道具がアンドン。
  • 7つのムダ:加工・在庫・不良・手待ち・つくりすぎ・動作・運搬。語呂は「カザフ鉄道」。つくりすぎが最も悪いとされる。

ムダの考え方は、勉強にも使える

動画は最後に、ムダをなくすという考え方は製造現場だけの話ではない、と締めます。たとえば試験勉強で、完璧を目指して必要以上にノートを作ってしまうのは、つくりすぎのムダかもしれません。集中が切れてスマホを見てしまう時間は、手待ちのムダと言えるかもしれません。JITの考え方を借りて、必要な学習を、必要な時に、必要なだけ集中して行う。そんなふうに自分の学び方を見直してみるのも、面白い試みです。

まとめ

  • トヨタ生産方式はジャスト・イン・タイムと自働化の2本柱で、無駄の徹底的な排除をめざす。
  • JITは必要なものを必要な時に必要なだけつくる。後工程引き取り(プル型)で、動画は同期化・整流化・小ロット化を土台に挙げる。
  • 後工程から前工程へ伝える道具がかんばんで、仕掛けかんばんと引き取りかんばんの2種類がある。
  • 自働化は、機械に人間の知恵を持たせ、異常で止めて不良をつくらない仕組み。アンドンで異常を共有する。
  • 7つのムダは、加工・在庫・不良・手待ち・つくりすぎ・動作・運搬。語呂は「カザフ鉄道」。

かんばんの細かい仕組みや平準化などは、後の回でくわしく扱います。この回では、2本の柱と7つのムダの全体像をつかんでおきましょう。

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