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中小企業診断士 1次試験

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3つの生産形態『個別・ロット・連続生産と段取り替えの極意』

運営管理 第52回

運営管理・生産方式・現場改善 00715分55秒2026年2月22日公開

「あなたが今まさに、ものづくりの仕組みを深掘りしようとしているなら、今日のテーマはぴったりです。ズバリ、仕事の流し方による生産方式の分類についてです」。動画はこんな呼びかけから始まります。このページでは、個別生産・ロット生産・連続生産の3つの方式と、ロットサイズのジレンマ、それを支える段取り替えの改善(内段取りの外段取り化、シングル段取り)をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

「なぜその方式を選ぶのか」から考える

動画は、仕事の流し方による生産方式の分類を扱います。生産管理は日本の製造業の競争力の源泉にあたる部分で、試験でも本質的な理解が問われます。単語だけ知っていても応用問題でつまずくので、それぞれの方式が「なぜ選ばれるのか」というビジネス上のねらいまで一緒に整理していきます。

  • 個別生産:お客さんの注文に合わせて、その都度つくる。
  • ロット生産:ある程度まとまった数を、品種を替えながら交互につくる。
  • 連続生産:同じものを、一定期間ひたすらつくり続ける。
品種が多い・量が少ない ←→ 品種が少ない・量が多い個別生産例船注文ごとにゼロから段取り替え毎回、大規模ロット生産例機械部品・家電まとめて交互に段取り替えロットごと連続生産例鉄鋼・石油化学同じものを延々と段取り替え切替のときだけ個別とロットは「中間」の関係、ロットと連続も「中間」の関係
仕事の流し方で、個別→ロット→連続と並べて考えます。

どの方式を選ぶかは、効率やコストに直結する経営の課題です。3つをつなぐキーワードが段取り替え、つまり次の作業の準備や機械の切り替えです。

(補足:JIS Z 8141:2001「生産管理用語」(2001年版の本文で確認。現行の2022年版は未確認)は、この3つを生産形態の区分のひとつ「生産方式」として並べています。診断士の教材では、3つをまとめて「生産形態」と呼ぶことも多く、呼び方は資料により少し違います。)

個別生産:究極のオーダーメイド

個別生産は、お客さんの個別の注文に合わせて、その都度1から設計してつくる方式です。いちばん典型的な例は船の製造です。海運会社が「とりあえず標準型の船を100隻つくって港に在庫として置いておこう」とは、まずなりません。資金繰りが続かないからです。

しかも、通る海域の波の性質、運ぶ荷物の種類、求められる燃費基準は、お客さんごとに違います。船体の大きさもエンジンも毎回ゼロから設計して、一品物をつくるしかありません。顧客の細かい要求に完璧に応えられることが、個別生産の最大の強みです。

その代わり、弱点も構造的です。個別生産では、原則として段取り替えが注文ごとに毎回、しかも大規模に発生します。同じものを続けてつくらないので、部品の手配ルートも、工場のレイアウトも、作業員の手順も、その船のために新しく準備し直します。立ち上げに途方もない時間と労力がかかり、結果として製品1つあたりの単価が非常に高くなります。

毎回ゼロからつくるって、相当なリソースが必要ですよね。付加価値は高そうですが、コストを削るのは難しそうです。

そこが試験でよく狙われるウィークポイントです。単価が跳ね上がる理由は、段取り替えの負担が毎回大きいという構造にあります。

個別生産の覚え方

船のように注文ごとにゼロから準備する方式で、強みは顧客の要求に完全に応えられること、弱みは段取り替えのコストが大きく単価が高いことです。

(補足:JISは個別生産を「個々の注文に応じて、その都度1回限りの生産を行う形態」とし、連続生産の反義語としています。注文のタイミングで分ける受注生産・見込生産と、流し方で分ける個別・ロット・連続は別の軸です(後ろの「軸の違い」で整理します)。個別生産や小さなロット生産の管理には、製造番号で指示書をまとめる製番管理方式がよく使われる、ともJISは書いています。)

ロット生産:まとまった数を交互につくるバランス型

2つ目のロット生産は、個別生産と連続生産のちょうど真ん中に当たるバランス型で、現代の多くの企業が採用しています。機械部品や家電をイメージしてください。全く同じものを1個だけ特注でつくるわけでもなく、1年中同じ部品だけをつくり続けるわけでもありません。ある程度まとまった数をつくって、別の製品に切り替える。これを同じラインで交互にくり返します。

このまとまった生産量をロット、1度に同じ条件でつくる量をロットサイズ、その大きさを決めることをロットサイジングと呼びます。セットで押さえましょう。

ロットサイズは、適当に「今日は100個」と決めるわけではありません。動画は、決め方の例として、仕入れ単位に合わせる、設備の能力に合わせる、100個単位や1日分の生産量で区切る、といった複合的な理由を挙げます。

(補足:JIS Z 8141:2001では、ロットは「何らかの目的のもとに、ひとまとまりにされた有形物のグループ」と広く定義され、目的によって製造ロット・発注ロット・運搬ロット・検査ロットなどと呼び分けます。動画のロットは、このうち製造ロットの意味です。またJISは、部品手配でのロットサイジングを「段取時間、発注コスト、保管コスト、納期などを考慮して、手配する部品の数量をまとめる活動」と定義しています。ロット生産は断続生産とも呼ばれます。)

ロットには番号をつける:トレーサビリティ

ロット生産には、品質保証の面で大きなメリットがあります。各ロットに識別番号をつけておけば、市場に出た製品に不良が見つかったとき、そのロット番号を見るだけで、いつつくられたか、誰が作業したか、どの材料を使ったかがすぐに分かります。これをロットトレースと呼びます。

これができないと、問題のない製品まで全部回収することになり、企業には致命傷になりかねません。被害と回収コストを最小限に抑えるための命綱です。

(補足:トレーサビリティは、JIS Q 9000で「対象の履歴、適用又は所在を追跡できること」と定義されています。なお、ロットを小さくするほど追跡や回収の範囲は絞れる一方、分別管理や記録の手間は増える、というのは一般的な整理で、公的資料での出所は確認できていません。)

ロットサイズ問題:大きくするか、小さくするか

ここがロット生産の最大のジレンマで、現場が毎日頭を抱えているトレードオフです。まず大きくした場合。1万個、10万個とまとめてつくれば、段取り替えの回数を大きく減らせ、製造コストを抑えるという意味では大正解です。

ただし落とし穴があります。1つの製品をつくり終えるまでに時間がかかるので、次の別の製品をつくり始めるまでのサイクルが長くなります。お客さんが別の製品を欲しがっていても、待ってもらうことになり、販売機会を逃しかねません。まとめてつくった大量の製品は、売れるまで倉庫で在庫として眠り、キャッシュフローを悪化させる大敵になります。

逆に小さくすると、いろいろな種類の製品を短いサイクルでつくれて、顧客のニーズが変わりやすい市場に柔軟に応えられます。在庫も少なく、ロットトレースの精度も上がります。いいことずくめに見えますが、ここでトレードオフが牙をむきます。ロットを小さくするほど、製品の切り替え、つまり段取り替えの回数が跳ね上がるのです。つくっている時間より切り替えの時間のほうが長くなる危険があり、本末転倒です。

ロットを小さくロットを大きく◎ 在庫が少ない◎ 切替が早く柔軟◎ 追跡の精度が高い× 段取り替えが増える(稼働率が落ちる)◎ 段取り替えが減る◎ 製造コストが下がる× 次の品種まで待たせる× 在庫が増える(資金が寝る)根本の解決は、段取り替えの時間そのものを短くすること
ロットの大小は、どちらにも長所と短所があります。
見るところロットを大きくロットを小さく
段取り替えの回数減る増える
製造コスト・稼働率よくなる落ちる危険
次の品種までの待ち長い(機会損失)短い(柔軟)
在庫・資金増える少ない
ロットトレース範囲が広いピンポイント

ロットを小さくして柔軟性を保ちつつ、効率も落とさない。理屈で考えたら、ネックになっている段取り替えそのものを、めちゃくちゃ早くするしかないですよね。

まさにその通りです。適度な在庫は持ちつつも、根本的には段取り替え時間の短縮に行きつきます。

段取り替えを速くする4つの方策

ここからが今日の3つ目のトピック、ロット生産を支える段取り替えの改善策です。動画は4つの方策を紹介します。

  • 段取り替え作業の標準化:職人技に頼らず、誰がやっても一番早い手順をマニュアル化する。
  • 作業員の教育:その一番よい手順を、全員がスムーズに実行できるよう訓練する。
  • 内段取りの外段取り化:機械を止めてやっていた作業を、機械が動いているうちに済ませる。
  • 内段取りの停止時間の短縮:どうしても止めてやる作業を、さらに速くする。

前の2つはマネジメントの基本として納得しやすく、本丸は後ろの2つです。内段取りは「機械を止めて、機械の内側でやらなければならない作業」、外段取りは「機械が動いている外側で、並行してできる準備」です。内段取りは、生産ラインを完全に止めて行う切り替えのことで、金型の交換やセンサーの調整が例です。この間は製品が1個もできず、利益を生まない時間なので、停止時間をいかにゼロに近づけるかが勝負です。外段取りは、使いやすい道具を手元に並べておく、材料をあらかじめ温めておく、といった準備です。

料理にたとえると

お湯を沸かしている間に野菜を切っておく。機械が動いている間に準備を済ませておく外段取り化は、手際のよい料理人のやり方と同じです。コンロの前で立ち止まって材料を探していると、その分だけ火が遊んでしまいます。

ふつう(準備も機械を止めて行う)内段取り 30分加工(機械が稼働)外段取り化(前の加工中に準備を済ませる)内段取り加工(機械が稼働)次の準備(外段取り)シングル段取り(内段取りが10分未満)9分加工(機械が稼働)赤い部分(機械が止まっている時間)を縮めるのが目標です
機械が止まっている時間(赤)をどこまで縮められるかが勝負です。

4つ目の方策は、外段取りを完璧にやった上で、それでも止めないとできない内段取りのスピードをさらに上げることです。ネジを減らしてワンタッチで固定できるようにする、複数人で一気に作業する、といった工夫が挙げられています。

(補足:中小機構のJ-Net21の解説は、段取り作業を外段取り・内段取り・ムダな作業に分け、まずお金のかからない改善から始めるよう勧めます。外段取りは加工が終わる前に金型・治具・材料を近くに準備しておく、内段取りは1人作業を複数名の共同作業にする、といった具合です。そのうえで、内段取りの外段取り化(金型の昇温など)や、治具の標準化による内段取りの短縮に進みます。外段取り化を先に、内段取りの短縮はそのあとという順序で、動画の流れと合っています。)

シングル段取り:10分未満の壁

ここで試験直結のキーワードが出てきます。機械を止めて行う段取りの時間を、10分以内、つまり1桁の分数で完了させることをシングル段取りと呼びます。1桁だからシングル、9分59秒以内でやり切る、という覚え方です。わずかな短縮に見えても、1日に何度も切り替える現場では、稼働時間を大きく生み出せます。

(補足:JIS Z 8141:2001は、段取を「機械又はラインを停止しないで行う外段取と、停止して行う内段取に大別される」とし、「10分未満の内段取をシングル段取という」と定義しています。10分「未満」なので599秒以内ですが、短縮の対象は準備の全部ではなく、機械を止める内段取りの時間です。英語ではSMED(Single Minute Exchange of Die)で、提唱者は新郷重夫氏とされます。段取りに内と外の2つの性格があると気づいた時期や経緯は、資料により書き方が異なります。例えばJMACの寄稿は、1950年に東洋工業で稼働分析をしたときの気づきとして紹介しています。)

動画には数値例がないので、筆者が簡単な例をつくって、効果を計算してみます。1日480分、1個の加工に0.5分かかり、段取りは1回30分(すべて内段取り)として、1日の段取り回数を3回と6回に分けます。さらに、内段取りを9分に縮めたらどうなるかを比べます。

条件段取り計/加工時間1日の生産量・稼働率
30分×3回
(大ロット)
90分/390分780個・81.2%
30分×6回
(小ロット)
180分/300分600個・62.5%
9分×3回
(大ロット)
27分/453分906個・94.4%
9分×6回
(小ロット)
54分/426分852個・88.8%

(稼働率は、加工している時間を480分で割った値です。)段取りが30分のままでは、ロットを小さくすると生産量が780個から600個に落ちます。ところが内段取りを9分にすれば、ロットを半分(段取り6回)にしても852個で、短縮前の大ロット(780個)を上回ります。これが「段取り替え時間を縮めれば、小さいロットで柔軟性と効率を両立できる」の中身です。

(補足:動画は「年間で数千時間の稼働時間が生み出せる」と言いますが、例示と考えてください。上の例で30分を9分にすると1回21分の短縮で、1日6回・年250日なら21×6×250=31,500分、約525時間。1設備では数百時間の規模で、複数のラインが重なれば数千時間もありえます。)

連続生産:止めないことが最大の武器

3つ目の連続生産は、同一の製品を一定期間、延々とつくり続ける方式です。規模の経済(スケールメリット)が最も働きやすく、動画の例は鉄鋼や石油化学プラントです。巨大な溶鉱炉で24時間365日、ドロドロの鉄をつくり続ける世界を思い浮かべてください。

そんな炉を、今日はAの製品、明日はBの製品と頻繁に止めたらどうなるでしょうか。温度を下げるだけで膨大なエネルギーの無駄になり、炉そのものも傷みます。この物理的な制約が、連続生産を選ぶ最大の理由です。一度火を入れたら止められないので、段取り替えは基本的に製品を切り替えるときだけ。ロット生産のようにちょこちょこ止めることがないので、準備の無駄が極めて少なく、稼働率はほぼ100%になります。

多額の設備投資をして、単価の低い製品を大量につくるのに最適、ということですね。個別生産とは完全に対極です。

そうです。3つの方式の中で、連続生産がいちばん生産効率が高く、製品1つあたりのコストを最も低く抑えられます。

補足:「軸の違い」を整理しておく

(補足:試験でまぎらわしいのは、受注生産・見込生産との関係です。JIS Z 8141:2001は、生産形態を複数の見方で区分できるとしています。)

見る軸区分JISでの位置づけ
注文のタイミング見込生産・受注生産生産時期
仕事の流し方個別・ロット・連続生産方式
品種と量多種少量〜少種多量・変種変量生産品種・生産量

(補足:JISの定義では、受注生産は「顧客が定めた仕様の製品を生産者が生産する形態」、見込生産は「市場の需要を見越して企画・設計した製品を、不特定な顧客に出荷する形態」です。診断士の予備校資料は、受注生産では個別生産に、見込生産では連続生産になりやすいと整理しています。ただし「なりやすい」であって、必ずそうなるわけではありません。多種少量生産では個別生産かロット生産が採られる、ロット生産は見込生産で行うことが多い、とする解説もあり、組み合わせは一通りではありません。)

3つの方式を並べて整理する

動画の締めくくりは、船、機械部品、鉄鋼という3つのビジュアルとセットで覚える方法です。

方式イメージと例段取り替えとコスト
個別生産注文ごとにゼロから。究極のカスタマイズ(船)毎回大規模。単価が高い
ロット生産まとめて交互に(機械部品・家電)ロットごと。ロットサイズの大小がジレンマ。外段取り化とシングル段取りが鍵
連続生産同じものを延々と(鉄鋼・石油化学)切替のときだけ。効率最高、単位コスト最低

まとめ:外段取り化は勉強にも使える

  • 個別生産は、段取り替えのコストが大きく単価が高い。
  • ロット生産は、ロットトレースで品質を管理でき、ロットサイズの大小はトレードオフ。鍵は内段取りの外段取り化と、シングル段取り(内段取り10分未満)。
  • 連続生産は、準備の無駄が少なく、効率が最高でコストが最も低い。

動画は最後に、段取り替えの考え方を勉強に当てはめます。机に座ってからテキストやペンを探す時間は、利益を生まない内段取りです。前日の夜にテキストを開いて机に置いておけば、行動を外段取り化できて、座った瞬間にシングル段取りで勉強を始められます。

そして動画は、思考の種を残して終わります。AIが需要を予測し、生産計画からライン制御まで自動で行う未来が来て、切り替え時間が文字どおりゼロ秒になったとき、段取りという概念は消えるのか。それともAIには予測できない、人間だけが担う新しい形の内段取りが生まれるのか。試験の答えはありませんが、段取り替えの意味を自分の言葉で考えるきっかけになります。

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