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中小企業診断士 1次試験

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工場レイアウトの基本『機能別VS製品別』

運営管理 第51回

運営管理・生産方式・現場改善 00611分56秒2026年2月22日公開

「今回は、工場のレイアウト、つまり機械や設備の配置について掘り下げていきたいと思います」。動画はこう始まります。このページでは動画の流れにそって、機能別(工程別)レイアウトと製品別レイアウトのメリット・デメリット、仕掛品、ボトルネック、中量生産に向く両者のいいとこ取り(グループ別・セル)をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

機械の並べ方が、工場の性格を決める

動画は、工場のレイアウト、つまり機械や設備の配置の話から始まります。多種多様なオーダーメイド品を1つ1つ丁寧に作るのか、それとも同じものを早く安く大量に作るのか。この選択が工場の姿をまったく違うものにする、というのが出発点です。いいかえると柔軟性をとるか、効率性をとるかという究極のトレードオフです。

動画は、これを身近なたとえで説明します。1つは、いろいろなメニューに応えるレストランの厨房。もう1つは、決まったサンドイッチだけを猛スピードで作るファストフードの製造ラインです。この2つの厨房を思い浮かべながら、2つの基本形を見ていきます。

(補足:JIS Z 8141(生産管理用語)では、レイアウトを「合理的に運搬、処理、移動が行えるような建物、設備、装置などの配置、または配置する行為」と定めています。ここでいう「運搬のしやすさ」が、このあと何度も出てくる判断の軸です。)

機能別レイアウト:レストランの厨房

レストランの厨房にあたるのが機能別レイアウトです。動画では「工程別レイアウト」とも呼ばれると説明されます。同じ機能をもつ設備を1か所に集める方法で、たとえば次のようなエリア分けです。

  • 下ごしらえエリア:切るための調理台と包丁がまとまっている。
  • 加熱エリア:煮る・焼くためのコンロが並んでいる。
  • 仕上げエリア:盛り付けのための皿や道具が置かれている。
下ごしらえ切る・刻む加熱焼く・煮る仕上げ盛り付けステーキの道順サラダの道順
同じ機能の設備を1か所に集める。製品ごとに通るエリアと順番が変わります。

ステーキなら下ごしらえから加熱を通って仕上げへ、サラダなら加熱を飛ばして下ごしらえから仕上げへ直行します。メニューによって、材料が厨房の中を通るルートが変わるわけです。製品ごとに加工の順番がバラバラでも、必要なエリアを順に回ればよいので、多種少量生産、つまり多種多様な製品を少しずつ作るのに向いています。

機能別レイアウトのメリット

  • 柔軟性が高い:急なメニュー変更やアレルギー対応のような特注にも対応しやすい。新しいメニューを明日から始めることも簡単。
  • 設備の稼働率が高い:コンロが1つ空けば、ステーキでもパスタソースでも、すぐ次の料理に使える。設備を特定の製品に縛りつけないので、むだなく使える。
  • 専門スキルが育つ:加熱エリアの担当者は、いろいろな料理の火入れをずっと担当するので、その分野の達人になりやすい。

(補足:専門スキルについては、資料によって説明が違います。動画のように「特定の工程の専門家が育つ」と書くものがある一方で、「1人が複数の工程を担うので熟練工や多能工の育成に向く」とするものもあります。試験では、細かなスキルの話より、次の柔軟性・稼働率・運搬の複雑さを押さえておけば足ります。)

機能別レイアウトのデメリット

ここで聞き手が、フロアマネージャーの立場で頭を抱えます。どの注文が今どこまで進んだのか、把握するのがとても大変だ、という指摘です。柔軟性は、複雑な管理と引きかえに手に入れたものでした。

  • 物の動きが複雑になる:材料があちこちのエリアを行き来し、運搬の距離も時間も長くなりがち。
  • 生産リードタイムが長くなる:注文を受けてから完成するまでの時間が伸びる。下ごしらえは終わったのに、加熱エリアが全部ふさがっていて待つ、といった待ち時間が出る。
  • 仕掛品が増える:待ち状態の材料や調理途中の料理が、厨房のあちこちにたまる。

3つ目の仕掛品は、作りかけの製品のことです。JIS Z 8141 では、原材料が払い出されてから完成品として入庫(または出荷)の手続きが済むまでの、すべての段階にある品物と定義されています。見た目がごちゃごちゃするだけでなく、経営の問題でもあります。仕掛品は、お金を払って仕入れた材料と、人が時間をかけた加工のかたまりなのに、お客さんからまだ代金をもらえていないからです。

たとえ:床に置かれた現金

動画は、仕掛品を「床に置かれた現金のようなもの」とたとえます。投資した分が現金に変わらないまま、工場のあちこちで眠っている状態です。これが企業のキャッシュフロー(お金の出入り)を圧迫する大きな要因になります。

管理は複雑、時間もかかる、おまけにお金も寝てしまう。柔軟性の代償はかなり大きいですね。

そうなんです。だから機能別レイアウトの工場では、生産計画や進捗を管理する生産管理の能力が、とても大事になります。

製品別レイアウト:サンドイッチのライン

厨房の複雑さにうんざりして、「うちは世界一うまいサンドイッチを、世界一早く作る店にする」と決めたとします。これが製品別レイアウトで、動画ではフローショップ型とも呼ばれます。原材料の投入から完成まで、工程の順に機械や作業者を一直線に並べる方式です。パンを置く人、肉をのせる人、チーズをのせる人、野菜、ソース、包む人、と、まさに流れ作業になります。

原材料 → 工程の順に一直線 → 完成品パン肉チーズ野菜ソース包む1か所が止まると全体が止まる
工程の順に一直線。流れは速い反面、途中の1か所の故障で全体が止まります。

作るものがほぼ1種類に決まっている少種多量生産で、大きな威力を発揮します。

製品別レイアウトのメリット

  • 効率が圧倒的:物が後ろに戻ったり横道にそれたりせず、最短距離を進むだけなので、運搬のむだがゼロに近い。
  • 仕掛品がほとんど出ない:流れがスムーズなので、工程の間で滞留することがまず起きない。
  • 生産リードタイムが劇的に短くなる。
  • 管理が楽:ラインに材料を100個入れれば、しばらくして最後尾から完成品が100個出てくる。進捗管理がとても単純。

(補足:「100個入れれば100個出る」は、不良やロスがない前提の説明です。実際の工場では歩留まりが100%とは限りません。また「仕掛品がほとんど出ない」も、各工程の作業時間がそろっているときの話です。工程の速さに差があると、速い工程の前後で待ちや滞留が出ます。この調整は、動画の別の回で扱うラインバランシングの話です。)

製品別レイアウトのデメリット

高い効率は、機能別レイアウトと逆に、柔軟性を完全に犠牲にして成り立っています。聞き手の言うとおり、サンドイッチのラインに「急にスープが飲みたい」と言われても、「無理です」としか言えません。

  • 変動に対応できない:製品の種類を変えるには、ライン全体の設備を入れ替える大工事になり、まず不可能。生産量を変えるのも苦手で、注文が半分になったからといってラインの半分の人を帰すわけにもいかない。
  • 1か所の故障でライン全体が止まる:チーズをのせる機械が壊れたら、ラインは全部止まる。これが製品別レイアウトの致命的な弱点。

動画は、ここでラインの能力を決めるボトルネックにも触れます。全体の生産能力は、ラインの中でいちばん仕事が遅い工程で決まります。つまりラインは、ボトルネックと故障に強く依存する、もろいシステムでもある、という整理です。

(補足:言葉をはっきり分けておくと、「いちばん遅い工程=ボトルネック」はラインの速さを決める話、「どの工程でも故障したら止まる」は止まりやすさの話です。JIS Z 8141 はボトルネックを、能力所要量が利用可能能力を上回っている工程・設備・機能・部門と定義しています。故障するのはボトルネックの工程とは限らない点に注意しましょう。)

補足の例題:ボトルネックで出来高を計算する

動画に数値例はありませんが、ボトルネックの考え方は計算で確かめると頭に入ります。ここは動画にない補足の例題です。工程A・B・Cが一列に並び、作業時間がそれぞれ30秒・50秒・40秒だとします(工程間の待ちや移動はないものと仮定します)。

工程A30秒(稼働率60%)工程B50秒(稼働率100%)工程C40秒(稼働率80%)いちばん遅い工程=ボトルネック出来高 = 3,600秒 ÷ 50秒 = 72個/時間
ラインの速さは、いちばん遅い工程で決まります(補足の例題)。
  • ラインの速さを決めるのは、いちばん遅い工程B(50秒)。1個できるのに50秒かかるので、1時間(3,600秒)の出来高は 3,600 ÷ 50 = 72個。
  • 各工程の稼働率は、自分の作業時間 ÷ 50秒。工程Aは30÷50=60%、工程Bは100%、工程Cは40÷50=80%。
  • 速い工程Aをどれだけ速くしても、出来高は変わらない。伸ばすなら、ボトルネックの工程Bを速くする。

2つの基本形を比べる:試験での覚え方

動画は、試験対策として覚えるべきなのは、このトレードオフの関係だと強調します。「多種少量生産」という言葉を見たら機能別レイアウト(厨房)を、「少種多量生産」なら製品別レイアウト(ライン)を、まず頭の中で結びつけます。丸暗記ではなく、厨房とラインのたとえからメリット・デメリットを自分で導けるようにしておくのがコツです。

見る点機能別(厨房)製品別(ライン)
向く生産多種少量少種多量
配置同じ機能の設備を集める工程の順に一直線
柔軟性高い低い(変動に弱い)
物の流れ複雑で運搬が長い最短でむだが少ない
リードタイム長くなりがち短い
仕掛品増えやすい少ない
設備稼働率高い(設備を製品に縛らない)(動画では触れず)
故障したとき(動画では触れず)ライン全体が止まる
管理複雑(生産管理が重要)単純

試験の注目点

柔軟性か、効率性か、という軸で考えると整理できます。機能別はジョブショップ型、製品別はフローショップ型とも呼ばれます(JIS Z 8141 でも、加工品の流れの区分として「フロー型、ジョブショップ型など」が挙がっています)。

補足:名前の揺れと、動画に出てこない2つの型

レイアウトの名前と分類は、資料によって少しずつ揺れます。動画に出てこない型もあるので、ここで整理しておきます(動画にない内容です)。

よく見る名前別名・同じ型ひとこと
機能別レイアウト工程別、ジョブショップ型同じ機能を集める。厨房型
製品別レイアウトライン型、フローショップ型工程順に並べる。流れ作業
固定式レイアウト定置式、据え置き型製品を動かさず、人と設備が来る
グループ別レイアウトセル型類似の製品群ごとに設備をまとめる
  • 固定式(定置式)は、船・航空機・建設現場のような大型で動かしにくい製品が対象で、製品を動かさず、人や設備を製品のところへ運びます。
  • グループ別は、似た製品群ごとに必要な設備をひとまとめにして配置する方法で、グループテクノロジー(GT)の考え方に基づきます。JIS Z 8141 では、グループテクノロジーを「多種類の部品を形状・寸法・素材・工程などの類似性で分類し、多種少量生産に大量生産的効果を与える管理手法」としています。
  • 「工程別」の使い方に注意:多くの資料は工程別=機能別ですが、「工程別(ライン)レイアウト」と、製品別に近い意味で書く解説もあります。同じ名前でも意味が違う場合があるので、問題文の説明(同じ機能を集めるのか、工程順に並べるのか)で判断しましょう。
  • 「定置式」の使い方にも注意:セル生産の説明では、作業者が定位置で1人で組み立てる形を「定置式」と呼ぶことがあります。大型品を動かさない固定式レイアウトとは別の使い方です。

(補足:JIS Z 8141:2001 の用語集には、機能別・工程別・製品別・固定式・グループ別の各レイアウトを定義した項目は見当たりません。この分類は規格ではなく、教科書や解説の慣用です。東京大学の講義資料のように、「機能別」と「製品別」の間に「半流れ式」を置く分類もあります。日本能率協会・中小機構の資料や、現行の JIS Z 8141:2022 の本文は、今回確認できませんでした。)

いいとこ取りを考える:中量生産とハイブリッド

動画の最後は、ここまでの話を一歩ひろげる問いかけです。いまの話は、カスタムメイドのレストランと超大量生産のファストフードという、極端なモデルでした。でも世の中の多くの製造業は、そこそこの種類の製品を、そこそこの量だけ作る中量生産の領域で戦っています。

それなら、厨房の柔軟性とラインの効率性、両方のいいとこ取りはできないでしょうか。

それこそが、現代の生産管理の大きなテーマなんです。たとえば、広くてごちゃごちゃした厨房の一角に、特定の料理だけを作る小さな専用ラインを作ってみる。サラダバーのような小さな流れですね。

厨房全体は機能別のままで、その中に製品別の要素を取り入れるわけですね。

そうです。もう1つは、1つの製品を作るのに必要な、種類の違う機械を一式まとめて、小さな製造セルにする考え方です。1つの製品を、そのセルの中だけで完結させます。

多種少量機能別レイアウトジョブショップ型中種中量グループ別レイアウトセル型など少種多量製品別レイアウトフローショップ型柔軟性を重視効率を重視
品種と量で、向くレイアウトが変わります。中間はグループ別(セル)が受け持ちます。

これは、機能別のあちこち移動するむだと、製品別の1種類しか作れない不便の、両方を解決しようとする試みです。このように両者の長所を組み合わせたハイブリッド型のレイアウトが、実はたくさん考案されている、というところで動画は終わります。セル生産の中身は、別の回(セル生産方式)で詳しく扱いました。

(補足:品種と量で整理すると、少品種多量は製品別、中品種中量はグループ別、多品種少量は機能別または自己完結型の生産、という対応で説明されることがあります。これは PQ 分析(製品の種類と生産量の関係を見る手法)の別の回で扱った内容です。教科書オープン資料でも、自動車工場で組立ラインは製品別、塗装はバッチ型とするような「混ぜて使う」例が紹介されています。)

まとめ

  • レイアウトの選択は、柔軟性と効率性のトレードオフ。
  • 機能別(工程別)レイアウト:同じ機能の設備を集める厨房型。多種少量向き。柔軟で稼働率が高い反面、運搬が複雑でリードタイムが長く、仕掛品がたまりキャッシュフローを圧迫する。管理に生産管理の力が要る。
  • 製品別(ライン別)レイアウト:工程順に一直線に並べるライン型(フローショップ型)。少種多量向き。運搬のむだが少なく効率的で管理も楽な反面、変動に弱く、1か所の故障でラインが止まる。ラインの速さは最も遅い工程(ボトルネック)で決まる。
  • 中量生産では、両者のいいとこ取りをするグループ別(セル)などのハイブリッド型が使われる。
  • 名前の対応(機能別=工程別=ジョブショップ型、製品別=ライン型=フローショップ型)は資料で揺れるので、意味(同じ機能を集めるか、工程順に並べるか)で判断する。
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