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キャッシュフロー計算書の基本『なぜ最高益でも倒産?』

財務・会計 第6回

財務・会計・キャッシュフロー 00414分21秒2026年2月14日公開

「損益計算書の上では過去最高の利益、株価も順調。でも、ある日突然、資金が尽きて倒産。そんな話を聞いたことはありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、キャッシュフロー計算書の3つの区分、現金及び現金同等物、営業CFの間接法、投資CFのボックス図、運転資本と黒字倒産の関係をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

損益計算書は過去最高益なのに、倒産する?

「損益計算書(PL)の上では過去最高の利益、株価も順調。でも、ある日突然、資金が尽きて倒産。そんな話を聞いたことはありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。いわゆる黒字倒産です。利益が出ているのに、なぜお金が足りなくなるのか。動画はこれを「会計で最も面白いミステリー」と呼び、謎を解く道具としてキャッシュフロー計算書(CF計算書)を取り上げます。

動画のたとえでは、CF計算書は「企業の現金の動きだけを追いかける探偵」です。利益という「約束」ではなく、現金という「事実」がどう動いたかを克明に記録した捜査報告書、というわけです。

帳簿の上の数字と、会社に実際にあるお金。そのあいだに、どんなギャップがあるんでしょう?

それを現金の動きだけで読み解くのが、キャッシュフロー計算書です。企業の活動を、営業・投資・財務の3つの現場に分けて捜査していきます。

日本政策金融公庫の資金繰りのQ&Aも、「利益=資金ではない」ことを出発点にしています。理由の一つは、掛けで売って掛けで仕入れる取引や在庫があるせいで、利益の発生と現金の出入りにズレが生じることです。このズレの正体は、あとの「運転資本」のところで見ていきます。

営業・投資・財務、3つの現場

営業CF本業の成績表売って、仕入・経費を払って現金をいくら稼いだか投資CF将来への種まき工場・機械・有価証券を買う(-)・売る(+)財務CF資金の調達と返済借入・社債・株式(+)返済・配当(-)
現金の動きだけを、3つの現場に分けて追いかけます。

3つの区分は、会計の基準で次のように決まっています。営業CFは営業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動と財務活動以外の取引。投資CFは固定資産の取得と売却、現金同等物に含まれない短期投資の取得と売却など。財務CFは資金の調達と返済です。動画の説明も、おおむねこれに沿っています。

営業CF:本業の成績表

商品やサービスを売り、仕入代金や経費を払って、最終的に本業でどれだけ現金を稼げたか。動画は、ここがプラスなら企業が自力で現金を生み出せている証拠で、いわば生命線だと言います。逆にマイナスなら、本業をやるほど現金が減る状態です。動画はその原因として、売っても代金を回収できていないこと、不良在庫を抱えすぎていることを挙げ、「黒字倒産の容疑者リストの筆頭」と呼びます。

投資CF:将来への種まき

工場を建てる、機械を買う、他社に投資する。そうした動きの現金の出入りです。動画では、成長企業は積極的にお金を使うのでマイナスになることが多く、それは悪いことではなく「健全な成長の証」と説明されます。営業CFのプラスの範囲内で投資CFがマイナスになっているのが理想的で、稼いだ分で将来に種をまいている状態だ、という見方です。逆に、投資CFがずっとプラスで資産を売り続けているなら、事業を縮小しているサインかもしれない、と動画は話します。

財務CF:足りない分の調達、余った分の返し方

銀行から借りる、社債や株式を発行して集める、これらはプラス。借金を返す、配当金を払う、これらはマイナスです。動画は、営業CFがしっかりプラスで借金を着実に返している(財務CFがマイナス)なら優良企業だと言います。逆に、本業が赤字なのに借入れを続けて補っている(財務CFがプラス)状態は心配だ、と話します。

動画のまとめは、「3つのCFのプラスとマイナスの組み合わせを見るだけで、その企業の置かれた状況、いわば物語が読めてくる」というものです。

営業CF投資CF財務CF動画での読み方
+--稼いで投資し、借入れも返している
-―+本業の赤字を借入れで補っているかも
++(続く)―資産を売って縮小しているかも

(補足:この組み合わせの読み方は、動画で示された分析上の目安です。会計基準に書かれた決まりではなく、試験でも「必ずこう読む」と決まっているわけではありません。たとえば、財務CFのプラスが成長投資のための資金調達である場合もあります。実際は個々の企業の事情と合わせて判断します。)

この計算書でいう「現金」とは

聞き手が、素朴な疑問を挟みます。この計算書の「現金」は、財布やレジの中の現金だけではないですよね、と。講師は、会計の世界で現金というときは現金及び現金同等物を指すと答えます。

基準での定義

  • 現金:手許現金と、要求払預金(当座預金・普通預金・通知預金など)。なお、2023年11月公表の企業会計基準第32号の改正で、特定の電子決済手段(資金決済法上のいわゆるステーブルコイン)も現金に加わりました(補足。試験で問われるかは未確認です)。
  • 現金同等物:容易に換金でき、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資。例として、取得日から満期日または償還日までが3か月以内の定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託が挙げられています。

動画は、現金は「いつでもペナルティなしで引き出せる預金」、現金同等物は「買った日から満期まで3か月以内の定期預金や、大企業が発行するコマーシャル・ペーパーなど、ほぼ現金と誰もが認めるもの」と説明します。

(補足:動画の単純化の訂正です。コマーシャル・ペーパー(CP)を「大企業が発行するもの」とする限定は、基準には書かれていません。基準で見るのは発行者の規模ではなく、取得日から3か月以内で、換金しやすく価値の変動が小さいかどうかです。また、定期預金が現金同等物になるのは「取得日から満期日までが3か月以内」のものです。満期が3か月を超える定期預金は、一般に現金同等物ではなく、投資CFで扱う短期投資になります。)

営業CFの間接法:アリバイ崩しの3ステップ

聞き手が「試験でも一番重要で、一番ややこしい」と切り出し、営業CFの間接法に進みます。営業CFの表示方法は、基準で2つの方法のどちらかとされています。主要な取引ごとに総額で示す直接法と、税金等調整前当期純利益(個別の計算書では税引前当期純利益)に、非資金損益項目や資産・負債の増減などを加減して示す間接法です。なお、聞き手は「多くの企業が採用しているのは間接法」と述べますが、採用割合は今回確認していません。

間接法は、PLの税引前当期純利益という「最終報告」から出発し、現金の動きと関係のないものを1つずつ修正します。動画はこれを、探偵が容疑者のアリバイを1つずつ崩す作業にたとえます。

ステップ1:現金が出ていない費用を足し戻す

代表選手は減価償却費です。PLでは費用として利益から引かれていますが、昔買った機械の価値を帳簿上で減らしているだけで、今年工場からお金が出ていったわけではありません。そこで利益に足し戻します。動画は同じ理屈で、将来の貸し倒れに備える貸倒引当金が増えた分も、現金が出ていかないので足し戻す、と説明します。

ステップ2:本業と関係ない損益を取り除く

税引前当期純利益には、預金の利息のような営業外収益や、固定資産を売って得た特別利益が含まれています。本業の力ではないので、引いて取り除きます。逆に、借入金の利息のような営業外費用や、災害による損失のような特別損失は、足し戻します。

(補足:動画の単純化の訂正です。1つめ。動画は借入金の利息を「営業費用」と言っていますが、営業利益より下に出てくるのは営業外費用です(字幕のとおりなら「営業費用」で、営業外費用の言い間違いと見て直しました)。2つめ。固定資産売却益を引くのは、売却で得た現金(売却収入)が投資CFに入るためです。3つめ。基準の標準様式では、利息の受取額・支払額や損害賠償金の支払額は、小計の下で改めて加減します。利息の区分は、営業CFに含める方法と、投資CF・財務CFに含める方法を会社が選べます。つまり、ステップ2で取り除いた現金の動きも、営業CFの中に戻ってくることがあります。災害による保険金収入や損害賠償金の支払は、基準の注解で営業CFに入る例とされています。)

ステップ3:運転資本の増減を調整する

動画は、ここを「CF計算書の最大の謎であり面白さ」と言い、黒字倒産の罠が隠れている最重要ポイントとして説明します。

  • 売上債権(売掛金など)の増加:PLでは売上として利益を押し上げますが、まだ現金は1円も入っていません。利益から引きます。
  • 棚卸資産(在庫)の増加:現金が倉庫で商品の山に姿を変えた状態です。手元の現金は減るので、引きます。
  • 仕入債務(買掛金)の増加:仕入れたが、代金はまだ払っていません。支払うべき現金を手元に置けているので、足します。
BSの左側(資産)売掛金・在庫BSの右側(負債)買掛金増えるとキャッシュは減る(-)増えるとキャッシュは残る(+)減ったときは、どちらも向きが逆になります
資産が増えるとマイナス、負債が増えるとプラス。

売上が絶好調なのに、CF計算書ではマイナス調整になる。それが売上債権の増加ですね。

そうです。売れた分は売掛金に変わっただけで、現金はまだ入ってきていません。だから利益から「この分はまだ現金じゃない」と引くわけです。

売上が伸びるほど売掛金も在庫も増えがちだから、PLはピカピカでも、裏では現金がどんどん消えていく。それが倒産の正体か。

動画の覚え方はシンプルです。貸借対照表の左側(資産)である売掛金や在庫が増えるとキャッシュのマイナス、右側(負債)である買掛金が増えるとキャッシュのプラス。この感覚をつかめば、間接法は怖くない、と話します。

ここまでを、数字で確かめてみましょう。次の設例は、この記事用に作った数値例です。単位は百万円で、利息や法人税等は考えないことにします。

税引前当期純利益(PL)500減価償却費を足し戻す+100売上債権の増加を引く-400棚卸資産の増加を引く-200仕入債務の増加を足す+50営業CF(小計)50
利益500でも、営業CFは50。差を生むのは運転資本の増加です(単位:百万円)。
項目金額理由
税引前当期純利益500PLの出発点
減価償却費+100現金が出ない費用
売上債権の増加-400掛けで売っただけ
棚卸資産の増加-200在庫に変わった
仕入債務の増加+50支払いを待ってもらった
営業CF(小計)50利益の1/10

利益は500ありますが、営業CFは50しかありません。この差を、売上債権や在庫の増加が食っています。もし投資や返済でさらに現金が出ていくなら、簡単に手元の現金が足りなくなります。

間接法の加減の向き(基準の標準様式)

  • 足す:減価償却費、貸倒引当金の増加額、支払利息、損害賠償損失、棚卸資産の減少額。
  • 引く:受取利息及び受取配当金、有形固定資産売却益、売上債権の増加額、仕入債務の減少額。
  • 売上債権・棚卸資産は増えると引く(減ると足す)。仕入債務は増えると足す(減ると引く)。

投資CFと財務CFは、そのまま集計

動画は、この2つは営業CFに比べて直接的だと言います。投資CFは、工場や機械、有価証券を買えば支出(マイナス)、売れば収入(プラス)を、そのまま集計するだけ。財務CFも、銀行から借りたり社債を発行したりして調達すればプラス、借金を返したり配当金を払ったりすればマイナスです。基準でも、投資CFと財務CFは主要な取引ごとに総額で表示するとされています。

配当金の支払は、基準の注解で財務活動の例にあげられています。

試験のテクニック:ボックス図

問題によっては、古い機械を売った収入が直接書かれていないことがあります。その代わりに、機械の期首残高、期末の帳簿価額、当期の減価償却費などが示されます。そこで動画が勧めるのがボックス図です。箱の左側に期首残高と当期の増加分(取得額)、右側に当期の減少分(売却や減価償却費)と期末残高を書き込むと、左右の合計は必ず一致します。分からない項目が1つだけなら、パズルのように解けます。

左(増える側)右(減る側+期末)期首残高800当期の取得300減価償却費150売却した分の簿価?期末残高700合計 1,100合計 1,100?= 800+300-150-700 = 250
分からない項目が1つだけなら、左右を合わせて求められます(単位:百万円)。

(補足:動画の単純化の訂正です。ボックス図の右側に入るのは「売却した資産の帳簿価額」であって、売却で受け取った金額ではありません。売却収入は、帳簿価額に売却益を足すか、売却損を引いて求めます。上の図なら、売却した分の簿価は250です。売却益が40なら売却収入は290、売却損が30なら220です。売却益や売却損は、間接法では営業CFで調整し、売却収入は投資CFに入る、という分担になります。)

運転資本:黒字倒産の真犯人

聞き手が、会計でよく出てくる運転資本を持ち出します。動画では、これをCFのミステリーを解く最後の鍵と呼び、計算式は売上債権+棚卸資産-仕入債務と説明されます。企業が日々の商売を回すために、一時的に必要になるお金、つまり仕入れて売れて現金で回収されるまでのタイムラグを埋めるつなぎ資金です。

(補足:日本政策金融公庫の資金繰りQ&Aも、同じ式を「運転資金=売上債権+在庫-仕入債務」として示しています。ただし、「運転資本」を流動資産-流動負債の意味で使う資料もあるため、試験では問題文の定義に従ってください。)

運転資本が増えるのは、どんな状況でしょうか。動画は2つのケースを挙げます。売上は伸びているのに回収が追いつかず、売掛金が膨らむケース。商品が思ったように売れず、在庫が積み上がるケース。どちらも手元の現金を圧迫します。

利益という約束が、運転資本に食われる

PL上では利益が出ているのに、その利益が現金になる前に、売掛金や在庫(運転資本)の増加に全部食われてしまう。すると、仕入先への支払いや給料の支払いができなくなる。動画はこれを「黒字倒産の真犯人」と呼びます。利益の数字だけを見ていては、この現金不足の罠に気づけません。

だからこそ、CF計算書が重要だと動画は結びます。PLが示す利益の量だけでなく、その利益がきちんと現金に裏付けられているか、つまり利益の質を見抜けること。それがこの計算書の最大の価値です。

運転資本の増加は営業CFのマイナス要因になります。次の設例も、この記事用に作った数値例です(単位は百万円)。

項目前期当期
売上債権300420
棚卸資産200280
仕入債務250300
運転資本250400

運転資本は150増えました。売上債権の増加(-120)と棚卸資産の増加(-80)が営業CFを減らし、仕入債務の増加(+50)が営業CFを増やすので、差し引き営業CFは150減ります。運転資本が増えれば、その分だけ営業CFは減る、という関係です。

考えてみよう:急成長企業が突然、資金繰りに行き詰まる

動画の最後に、実践的な問いが出されます。「売上が急拡大している成長企業が、利益も順調に出ているのに、突然資金繰りの危機に陥ることがある。今日の話を踏まえると、その背後にはどのようなキャッシュフロー上の問題が隠されていると考えられるか」。動画は答えを示さず、自分で組み立ててみてほしい、と呼びかけています。

この記事で見てきた材料で考えるなら、手がかりは次の3つです。営業CFが利益よりずっと小さくなっていないか。その差を作っているのが、売上債権や棚卸資産の増加(運転資本の増加)ではないか。不足を借入れなどの財務CFで補い続けていないか。数字で考えると、先ほどの「利益500、営業CF50」の設例が、そのまま一つの答えの形になります。

まとめ

この回のまとめ

  • 黒字倒産は、利益が出ているのに現金が足りなくなる状態。利益と現金のズレは、売上債権・在庫・仕入債務が生む。
  • CF計算書は営業・投資・財務の3区分。資金の範囲は現金及び現金同等物で、現金同等物は取得日から3か月以内の短期投資などが例。
  • 営業CFは直接法・間接法のどちらかで表示。間接法は税引前(税金等調整前)当期純利益から、非資金費用・営業外/特別損益・運転資本の増減を調整する。
  • 売上債権・棚卸資産の増加は引く、仕入債務の増加は足す。減価償却費は足し戻す。
  • 投資CF・財務CFは取引をそのまま集計。機械の売却収入が書かれていないときは、ボックス図で売却した分の簿価を求め、売却損益を加減する(補足)。
  • 運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)の増加は、現金を圧迫する。CF計算書で利益の質を確かめる。

動画の締めくくりは、「知識から本当の知恵に変わる」という言葉でした。利益と現金の動きは同じではない。その感覚を持って、もう一度動画を聞いてみてください。

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