聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

オプション取引の基本『コールとプットの仕組み』

財務・会計 第2回

財務・会計・ポートフォリオ・デリバティブ 0016分40秒2026年2月21日公開

「将来の価格変動リスクに備えるための金融手法。買う権利とか売る権利を売買するって、一体どういうことなのか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、コールとプットの仕組み、損益の形、インザマネーなどの呼び方、ヨーロピアンとアメリカンの違いをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

為替の変動に、権利で備える

動画の入り口は、将来の価格変動リスクに備える金融手法です。「買う権利」「売る権利」を売買するとは、いったいどういうことなのか。中小企業診断士試験でも重要なテーマとして、動画はオプション取引を取り上げます。特に、為替レートが動く輸出入ビジネスでは、この仕組みの理解が欠かせないと紹介されます。

オプションとは、将来の決まった時期に、あらかじめ決めた価格で、ある資産を買ったり売ったりできる権利のことです(日本取引所グループの用語集の定義にそった説明)。権利を持つ人は、使っても使わなくてもかまいません。この回は、基本の2種類であるコールオプション(買う権利)とプットオプション(売る権利)、そして権利をいつ使えるかの違いを学びます。

まず、この後に出てくる言葉を並べておきます。

  • オプションプレミアム:権利を手に入れるために支払う代金(手数料のようなもの)。動画の例では1ドルあたり1円。
  • 権利行使価格:権利を使うときに売買する、あらかじめ決めた価格。動画の例では130円。
  • 満期日:権利の期限となる日。

(補足:動画では語られていませんが、為替予約との違いも押さえておきましょう。為替予約は必ずその値段で取引しますが、オプションは「取引してもしなくてもよい」のが特徴です。その自由の代わりに、プレミアムを払います。)

コールオプション:買う権利を買う

動画の設例は、将来ドルで決済しなければならない輸入業者です。今のレートで1ドルを130円で買える権利を、プレミアム1円で購入したとします。130円が権利行使価格です。

満期日に円安が進んで、市場のレートが1ドル135円になったら、どうなりますか。

権利を使えば130円で調達できます。市場より5円も安く買えるわけです。

プレミアムの1円を差し引いても、1ドルあたり4円の得ですね。

その通りです。この状態をインザマネーといいます。

では逆に、円高が進んで127円になったらどうでしょう。権利を使うとかえって損なので、使いません。市場で127円のままドルを調達すればよいのです。権利を放棄しても、失うのは最初に払ったプレミアムの1円だけです。この状態がアウトオブザマネーです。

ここがオプションの大きな特徴だと、動画は強調します。損失を限定しつつ、利益を追求できるのです。輸入業者が将来の円安リスクをヘッジ(回避)するための典型例です。

円損益120125130135140-4+4+8満期の市場レート(円/ドル)行使価格130135円で +4127円で −1損失はプレミアム1円まで
コールの買い手の損益図。左は横ばい、行使価格を超えると右上がり。

動画では、コールの損益図が「右肩上がり」になるのはこのためだと説明されています。130円までは損失が1円のまま横ばいで、そこから先は円安が進むほど利益が増えていきます。損益図に慣れておくと、問題文の図を読むのが楽になります。

満期の市場レート権利を使う?1ドルの損益
135円(円安)使う(130円で買う)5円得−1円=+4円
130円どちらでも同じ−1円
127円(円高)使わない−1円(プレミアムのみ)

インザマネー、アットザマネー、アウトオブザマネー

動画は、市場価格と権利行使価格の位置関係に3つの呼び名があると整理します。

行使価格130円の場合(市場レートとの位置関係)コールオプション(買う権利)アウト・オブ・ザ・マネーレート130円未満(127円など)イン・ザ・マネーレート130円超(135円など)ちょうど130円=アット・ザ・マネープットオプション(売る権利)イン・ザ・マネーレート130円未満(125円など)アウト・オブ・ザ・マネーレート130円超(135円など)(ここではプレミアムは考えない定義)
コールとプットで、イン・ザ・マネーとアウト・オブ・ザ・マネーは逆になります。
  • インザマネー(ITM):権利を行使すると利益が出る状態。コールなら市場価格が行使価格より高いとき、プットなら低いとき。
  • アウトオブザマネー(OTM):権利を行使すると損失になる状態。コールなら市場価格が行使価格より低いとき、プットなら高いとき。
  • アットザマネー(ATM):市場価格と権利行使価格が同じ状態。動画の例では、市場も130円のとき。

市場価格と権利行使価格が同じ130円のときは、何と言うんですか。

それがアットザマネーです。動画では「ちょうど損益が分岐する点」と説明されています。

(注記:この「損益が分岐する点」は、プレミアムを考えない言い方です。プレミアムの1円まで含めた損益の分かれ目は、コールなら130円+1円=131円、プットなら130円−1円=129円になります。130円ちょうどだと、プレミアム分の1円だけ損をします。同様に、インザマネーでも、市場価格が行使価格をわずかに超えただけなら、プレミアムを引くと赤字のことがあります。インザマネー/アウトオブザマネーは「行使すると得か損か」の呼び方で、最終的な損益ではありません。日本取引所グループの資料でも、ATMは「行使価格と原資産価格が一致する状態」とされつつ、国債先物オプションの解説では、実務では最も近い行使価格を指して呼ぶことも少なくなく、金融商品により定義が異なるとされています。)

試験の注目点(動画の整理にそって)

  • コールもプットも、買い手の損失はプレミアムに限られる。
  • インザマネー/アウトオブザマネーはコールとプットで条件が逆になる。
  • 動画では、イン/アウトの区別は「権利を行使すると得か損か」で語られている。

プットオプション:売る権利を買う

プットオプションは、特定の資産を、あらかじめ決めた価格で売ることができる権利です。動画では輸出業者が使う例として説明されます。輸出業者は、将来受け取るドルが円高で値下がりするリスクを抱えているからです。

設例は、権利行使価格130円、プレミアム1円で、1ドルを130円で売る権利を買ったとします。

満期に円高が進んで125円になったら、130円で売れる権利を使うのが有利ですね。

そうです。これがプットのインザマネーです。市場より5円高く売れるので、プレミアムを引いても4円の利益になります。

では円安が進んで135円なら。

アウトオブザマネーです。権利は使わず市場で135円で売ります。損失はプレミアムの1円だけです。

円損益120125130135140-4+4+8満期の市場レート(円/ドル)行使価格130125円で +4135円で −1損失は1円まで
プットの買い手の損益図。右は横ばい、行使価格を下回ると左上がり。

動画では、プットの損益図が「カタカナの形」にたとえられる、と紹介されています。文字に頼らず、図で形そのものを覚えておくのが確実です。コールが右上がり、プットは左上がりです。

聞き手は「プットは輸出、と覚える手もありますよね」と挟み、講師も「それも有効です」と答えます。動画の覚え方として、「プット=輸出(円高リスクに備える)」「コール=輸入(円安リスクに備える)」とセットにしておくと便利です。

満期の市場レート権利を使う?1ドルの損益
125円(円高)使う(130円で売る)5円得−1円=+4円
130円どちらでも同じ−1円
135円(円安)使わない−1円(プレミアムのみ)

数字は動画のとおりに検算できます。コールは135−130−1=4円、プットは130−125−1=4円です。

コールプット
権利の中身買う権利売る権利
動画の主な利用者輸入業者輸出業者
備える相手円安リスク円高リスク
得になる方向市場レートが上がる市場レートが下がる
買い手の最大損失プレミアムプレミアム

ヨーロピアンとアメリカン:いつ使えるか

もう一つの区別が、権利を行使できるタイミングです。

ヨーロピアンタイプ行使できるのは満期日だけ開始満期日ここだけアメリカンタイプ満期日までのあいだ、いつでも行使できる開始満期日この帯のどこでも行使できる
権利を使える「時期」の違いです。
  • ヨーロピアンタイプ:満期日にだけ権利行使できる。
  • アメリカンタイプ:満期日までの期間中、いつでも権利行使できる。

これは日本取引所グループの用語集の定義とも一致します。動画では、行使の自由度が高いので「アメリカンのほうが自由」と覚えると分かりやすい、と整理されています。

(補足:日本取引所グループの国債先物オプションの解説では、国債先物オプションはアメリカンタイプですが、実際には満期前に行使することはほとんどなく、事実上ヨーロピアンタイプとして扱う実務家もいる、とされています。)

売る側から見ると? 動画の最後の問い

動画の最後は、考えてみる問いかけで終わります。ここまでは損失がプレミアムに限られる買い手の視点でした。では、オプションを売る側はどんな損益になるのでしょうか。動画は答えを示さないので、ここで補足しておきます。

円損益120125130135140-4+4+8満期の市場レート(円/ドル)買い手売り手売り手の利益はプレミアム1円まで
売り手の損益図は、買い手の図を上下逆にしたものです。

(補足:動画にない話です。売り手は、買い手の反対側のポジションなので、損益図は買い手の図を上下逆にしたものになります。買い手の損失はプレミアムまでですが、売り手は、日本取引所グループ掲載の資料にあるとおり「どこまでも損をする可能性」があります。設例でコールの売り手を考えると、レートが140円になった場合、受け取ったプレミアムを引いても1−10=−9円で、レートが上がるほど損失が増え続けます。一方、売り手の利益はプレミアムの1円が上限です。)

買い手は損が限られて、売り手は損が大きくなりうる。売り手はなぜ引き受けるんですか。

その代わり、プレミアムを必ず受け取れるからです。売り手は、買い手が権利を使わなければ、そのプレミアムが丸ごと利益になります。

まとめ

  • オプションは、将来の決まった時期に、決めた価格で買う/売る権利。権利の対価がプレミアム。
  • コールは買う権利で輸入業者向け。プットは売る権利で輸出業者向け(動画の整理)。
  • 買い手の損失はプレミアムに限られ、利益は有利な方向に広がる。
  • インザマネーは行使すると得、アウトオブザマネーは行使すると損。コールとプットで条件は逆。
  • 損益分岐はコールが行使価格+プレミアム、プットが行使価格−プレミアム(動画の例では131円と129円)。
  • ヨーロピアンは満期日のみ、アメリカンはいつでも行使できる。
  • オプションの売り手は、買い手と上下逆の損益になる。コールの売り手の損失には上限がない。

動画は、これらの仕組みを単なる試験知識ではなく、企業が為替変動というコントロールできないリスクにどう向き合うかを理解する材料だと結びます。オプションは「未来の価格に対する保険」のようなもの、というたとえも紹介されます。保険料にあたるのがプレミアムだと思えば、イメージしやすいでしょう。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む