クフウヤ聞き流しラボWebテキスト(無料)NEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

原価の分類『意思決定の武器になる原価のモノサシ』

財務・会計 第50回

財務・会計・財務諸表・会計処理 01012分30秒2026年2月10日公開

「試験勉強なんかしてると、本当にたくさんの分類が出てきて、なんでこんなに分ける必要があるんだってこう思っちゃいますよね」。動画はこんな本音から始まります。このページでは動画の流れにそって、集計する範囲、発生した形、製品との関係、計算するタイミングという4つの物差しと、配賦や加工費、標準原価の差異分析までをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

なぜ原価を、こんなに分けるの?

「試験勉強なんかしてると、本当にたくさんの分類が出てきて、なんでこんなに分ける必要があるんだってこう思っちゃいますよね」。動画は、受験生のこんな本音から始まります。聞き手は、その分類が単なる暗記ではなく、ビジネスの現場で意思決定をするための強力な武器になる、という話をしたいと切り出します。

それを受けて講師が持ち出すのが「物差し」のたとえです。原価計算は目的によって使う物差しを変える必要がある。たとえば、ある製品が儲かっているかを知りたいときの物差しと、工場全体の効率を測るときの物差しは、まったく別物だ、という説明です。動画が順に見ていくのは、次の4つの物差しです。

  • 集計する範囲:総原価と製造原価
  • 発生した形:材料費・労務費・経費
  • 製品との関係:直接費と間接費
  • 計算するタイミング:実際原価と標準原価

(補足:動画のタイトルには「意思決定」とありますが、動画が扱うのは分類そのものと、それが判断にどう効くかの例です。意思決定に使う差額原価などの計算には踏み込みません。)

物差し①:どこまで集めるか(製造原価と総原価)

最初の物差しは、集計する範囲です。製造原価は、名前のとおり工場で製品を作るのにかかったコストだけを集めたものです。材料を仕入れ、人が組み立て、機械を動かす。製造現場の中だけで完結する話です。

一方、総原価は、その製品をお客さんの手元に届けるまでにかかったコストまでを含みます。製造原価に、本社の人件費、営業の交通費、広告宣伝費といった販売費及び一般管理費(販管費)を足したものです。

総原価 800千円製造原価 700千円販管費100千円材料費330千円労務費260千円経費110千円本社の人件費営業の交通費広告宣伝費原価に含めない(総原価の外)支払利息などの営業外費用火災の損失などの突発的な特別損失
総原価は製造原価+販管費。営業外費用や特別損失は枠の外です(寸法は見やすさ優先)。

図の数字は設例です(製造原価700千円+販管費100千円=総原価800千円)。ここで、動画が用意した場面を見てみましょう。

あなたが工場の担当だとします。成果を測るのに、社長が決めた広告宣伝費の金額まで含めて評価されたら、たまったものではありませんよね。

いや、俺のせいじゃないと言いたくなりますね。

だから工場は製造原価に責任を持ちます。一方、社長は会社全体の活動に責任を持つので、総原価を見て利益が出ているかを判断するんです。

見る立場によって、見るべきコストの範囲が違う。動画はこれを、この物差しの要点として示します。

動画が「試験対策として絶対抑えておきたい」と挙げた点

製造原価にも総原価にも含まれない費用があります。動画の例は、銀行への支払い利息のような営業外費用と、工場が火災で燃えたような突発的な特別損失です。これらは会社の通常の経営活動とは切り離して考えるので、原価には含めない。動画はこれを「鉄則」と呼びます。

(補足:原価計算の考え方では、こうした原価に入れない項目を「非原価項目」と呼び、動画の例のほかに、異常な原因による損失なども含まれるとされています。細かな整理は資料により異なります。)

物差し②:発生した形(材料費・労務費・経費)

次は、製造原価の中身を、発生した形で分けます。材料費、労務費、経費の3つで、聞き手が「基本中の基本」と言い、講師が受けます。スマホを1台作る例で整理すると、こうなります。

区分中身スマホの例
材料費製品の元になるものの代金ディスプレイの部品
労務費作る人の人件費組み立てる作業員の給料
経費材料費・労務費以外のもの電気代、建物の家賃、減価償却費、機械の修理代、設計図作成の外注費

材料費と労務費は分かりやすい一方、経費の正体はつかみづらい、という話は聞き手が持ち出し、講師が「そうなんですよ」と応じます。講師は、経費は材料費と労務費以外のものだと説明します。

じゃあ経費って何でしょう?工場の電気代とかですかね。

電気代もそうですし、工場の建物の家賃や減価償却費、機械の修理代、設計図の作成を外注した費用も経費に含まれます。

講師は、現代の工場は自動化が進んでいて、この経費の割合がどんどん大きくなっていると話します。だから、経費という「その他大勢」をいかに管理するかが、コスト削減の鍵を握ることもある、という流れです。

物差し③:犯人が分かるか(直接費と間接費)

ここからが本番です。今出てきた材料費・労務費・経費を、まったく別の角度から切り分けるのが直接費と間接費です。原価計算でいちばん重要な分類ではないか、と聞き手が確かめると、講師は「間違いなくそうです」と答えます。個別の製品の損益を正しく把握するための第一歩だから、という理由です。

直接費は、平たく言えば「犯人が特定できる費用」です。1台のスマホにどのディスプレイ部品が使われたか(直接材料費)、誰が何時間組み立てたか(直接労務費)は、現物を追いかけたり作業記録を見たりすれば、1対1で対応づけられます。

これに対して、聞き手は間接費を「共犯者はいるけど誰が主犯かわからない費用」とたとえ、講師も「うまい例えですね」と受けます。スマホの組み立てに使った接着剤(間接材料費)は、どのスマホに何を使ったかをいちいち記録できません。工場全体の照明の電気代(間接経費)も、どのスマホがどれだけ恩恵を受けたかは計算できません。工場全体を見ている人の給料(間接労務費)も、特定のスマホのためだけに働いているわけではないからです。

材料費労務費経費直接費犯人が分かる間接費主犯が不明ディスプレイ部品300千円組立担当者の賃金200千円外注加工賃など50千円接着剤30千円工場全体を見る管理者の給料60千円工場全体の照明の電気代60千円製造間接費 = 30+60+60 = 150千円
材料費・労務費・経費を、犯人が分かるかどうかで切り直したものが直接費と間接費です(金額は動画にない設例)。

(補足:動画の例にはありませんが、外注加工賃のように、特定の製品のために発生したと分かる経費は、経費でも直接費(直接経費)に分けられるとされています。図の「外注加工賃など50千円」はその例で、金額は設例です。)

間接材料費、間接労務費、間接経費を全部まとめたものを製造間接費と呼びます。図の設例では、30+60+60=150千円です。

間接費は「配賦」で割り振る

ここで問題が起きます。個別の製品の正確な原価を知りたいのに、間接費は「どの製品にいくら」が分かりません。そこで会計担当者は、生産量や作業時間などの何らかの基準を使って、間接費を各製品に割り振ります。動画はこれを「無理やり」と表現し、この割り振りを配賦と説明します。

配賦のやり方ひとつで、Aという製品が赤字に見えたり、Bという製品が黒字に見えたりするんです。

うわ、それは怖いですね。つまり、配賦のルールを決める人のさじ加減ひとつで、製品の運命が変わってしまう可能性もある、と。

大いにあるんです。だから経理部と製造部の間で、コストバトルが勃発したりします。

どれほど変わるのか、設例で確かめてみましょう。製品AとBの数字は次のとおりで、製造間接費は120千円です。

項目製品A製品B
売上320千円150千円
直接費200千円80千円
作業時間300時間100時間
生産量100個300個

作業時間で配賦すると、間接費120千円は3:1に分かれ、Aが90千円、Bが30千円です。利益はA=320-200-90=30千円、B=150-80-30=40千円になります。生産量で配賦すると1:3に分かれ、Aが30千円、Bが90千円です。利益はA=320-200-30=90千円、B=150-80-90=-20千円で、Bは赤字に見えます。

作業時間で配賦A300時間:B100時間製品A配賦 90千円利益 30千円製品B配賦 30千円利益 40千円生産量で配賦A100個:B300個製品A配賦 30千円利益 90千円製品B配賦 90千円利益 −20千円赤字に見える2製品の利益合計は、どちらも70千円
基準を変えても会社全体の利益は同じですが、製品ごとの黒字・赤字の見え方は変わります。

どちらの基準でも、2製品の利益合計は70千円で変わりません。変わるのは、製品ごとの見え方だけです。動画は、直接費と間接費の区別、そして間接費の配賦こそが、原価計算のダイナミズムであり難しさでもあると言います。

(補足:配賦基準は、間接費の発生と関係の深いものを選ぶのが基本的な考え方とされています。設例のように作業時間と生産量のどちらが適切かは、間接費の中身によって変わります。)

加工費で「工場の実力」を測る

聞き手は、この流れで加工費という言葉も出てきますね、と尋ねます。講師の説明では、加工費は、材料を製品に加工するのにどれだけコストがかかったかを示す指標です。計算式は、直接労務費、直接経費、そして先ほどの製造間接費の合計。言い換えると、製造原価から直接材料費だけを引いた残りの全部です。

製造原価 700千円直接材料費300加工費 400千円=700-300直接労務費200直接経費50製造間接費150製造間接費150千円の中身間接材料費30+間接労務費60+間接経費60接着剤などの間接材料費も加工費に入る
加工費は、製造原価から直接材料費だけを引いた残りです(寸法は見やすさ優先)。

図の設例では、製造原価700千円から直接材料費300千円を引いた400千円が加工費です。200+50+150=400千円とも一致します。

なぜわざわざそんな計算をするんですか。

工場の付加価値を測るのに、すごく便利なんです。材料の仕入れは変動しますよね。でも加工費を見れば、外部要因である材料費の影響を取り除いた、自分たちがどれだけ効率的にものづくりをできているかが分かります。

(補足:動画の説明を少し補います。製造間接費には接着剤などの間接材料費も入っているので、加工費が取り除くのは直接材料費だけで、材料費の影響をすべて消せるわけではありません。また、加工費に直接経費を含めるかは資料により異なります。「付加価値」も、一般には売上高から外部購入分を引いたものを指すことが多く、加工費と同じものではないとされています。)

物差し④:いつ計算するか(実際原価と標準原価)

最後の物差しは、コストを計算するタイミングです。動画は、ここからは過去を振り返る会計から、未来をコントロールするための会計へと視点が変わる、と説明します。

  • 実際原価:製品を作り終わった後に、実際にかかった費用を全部集計したもの。いわば結果報告書。
  • 標準原価:作る前に決めておく目標値。

目標なんて立てずに、後からかかった分を正直に計算するだけじゃダメなんですか。

いい質問ですね。もし会計の目的が決算書を作ることだけなら、実際原価だけで十分かもしれません。でも会社の目的は、効率を上げて利益を出すことですよね。そのためには結果だけ見ていてもダメなんです。

講師によると、標準原価は科学的な分析に基づいて設定された「こうあるべき理想のコスト」です。これを実際にかかったコストと比較して、その差、つまり差異を分析する。ここに魂があるといいます。動画の数字は、標準原価100円に対して実際は110円かかったというものです。この10円の差異はなぜ生まれたのか。材料を無駄遣いしたのか、作業員のスキルが低くて時間がかかりすぎたのか、そもそも材料の仕入れ値が予想より高かったのか。原因を徹底的に追求する、と動画は話します。

(補足:動画は、決算書を作ることだけなら実際原価だけで十分かもしれない、という言い方をしますが、標準原価計算も、原価差異を適切に処理すれば決算書づくりに使えるとされています。2つは優劣ではなく、使う目的の違いです。)

講師は、以前ある企業で起きた話を紹介します。材料の購買担当が、標準よりかなり安い材料を仕入れてきました。価格差異はプラスになり、担当者はコストを削減したと称賛されます。ところが、その材料は質が悪く、製造ラインで不良品が多発し、作業時間が大幅に増えました。聞き手が、材料費で浮いた分以上に労務費で損をしたのですね、と言い換え、講師が「そういうことです」と応じます。トータルで見ると赤字でした。

実際原価だけを見ていたら、「今月はコストが高いな」で終わっていたでしょう。標準原価と比べて差異分析をしたから、問題の構造が数字ではっきり見えた、というのが動画の主張です。

同じ構図を、動画にない設例(100個の製品ロット)で数字にしてみます。単純にするため、材料の使用量と賃率は標準どおりとします。材料は標準が200kg×50円、実際が200kg×40円。労務は標準が50時間×1,000円、実際が62時間×1,000円です。

項目標準実際
材料費10,000円8,000円
労務費50,000円62,000円
合計60,000円70,000円

材料費は2,000円安く済んだので有利、労務費は12時間ぶん(12,000円)かかりすぎたので不利です。合計では10,000円の不利になります。実際原価の合計70,000円だけを見ると「高かったな」で終わりますが、標準と比べれば、材料費の価格は有利でも、作業時間の増加がそれを上回ったと分かります。

材料費の差異労務費の差異合計+2,000円有利-12,000円不利-10,000円不利
材料費で浮いた2,000円より、労務費で増えた12,000円のほうが大きい設例です(高さは目安)。

(補足:材料の単価の差は価格差異、作業時間の差は能率差異などと呼ばれる、とされています。標準より原価が高くなる方向の差異は、不利差異と呼ばれます。)

動画は、標準原価は単なる目標ではなく、経営の健康診断を行うための重要なツールだとまとめます。

全体像をつなげて、最後の思考実験

動画は終盤に、4つの物差しを整理します。聞き手が、同じコストという数字も、どの物差しで見るかによって、まったく違うストーリーを語り始める、とまとめ、講師が「そうなんです」と応じます。そのうえで、これらの分類はバラバラに暗記するものではなく、すべてつながっている、という話です。

  • 総原価という大きな枠の中に、製造原価がある。
  • 製造原価を分解すると、材料費・労務費・経費になる。
  • それを別の角度から、直接費と間接費に切り分ける。
  • それらの実績を、標準という目標と比べて管理する。

動画は最後に、思考実験を出します。あなたがある製品ラインの責任者になり、製品が赤字というレッテルを貼られたとします。そのときあなたは、まず何を疑いますか。現場の非効率でしょうか。それとも、あなたの製品に押し付けられている間接費の配賦ルールそのものでしょうか。その答えを考えることが、原価の本質を理解する次の一歩になる、と動画は結びます。

まとめ

この回のまとめ

  • 製造原価は工場で製品を作るのにかかったコスト。総原価はそこに販管費を足したもの。設例では700+100=800千円。
  • 支払利息などの営業外費用や、突発的な特別損失は原価に含めない。
  • 製造原価は、発生した形で材料費・労務費・経費に分ける。経費は材料費・労務費以外のもの。
  • 直接費は製品ごとに特定できる費用、間接費は特定できない費用。間接材料費・間接労務費・間接経費をまとめたものが製造間接費。
  • 間接費は配賦基準で各製品に割り振る。設例では、基準を変えても利益合計は70千円のまま、製品Bの利益は40千円から-20千円に変わった。
  • 加工費は、製造原価から直接材料費を引いた残り。設例では700-300=400千円。
  • 実際原価は結果、標準原価は目標。差異を分析して原因を探る。設例の差異は、材料費+2,000円、労務費-12,000円、合計-10,000円。

同じコストの数字も、どの物差しで見るかで意味が変わります。分類を暗記するだけでなく、「この数字は何のために見るのか」を意識しながら、もう一度動画を聞いてみてください。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む