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個別原価計算と総合原価計算『原価計算の2大手法』

財務・会計 第49回

財務・会計・財務諸表・会計処理 00915分25秒2026年2月10日公開

「この2つの工場、製品1つあたりのコストを一体どうやって把握してるんでしょうか?」。動画は、オーダーメイドの家具工場とペットボトル工場という2つの工場を思い浮かべる、こんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、個別原価計算と総合原価計算の考え方、製造間接費の按分、月末仕掛品と加工進捗度、先入先出法と平均法、正常仕損の処理をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

家具工場とペットボトル工場、1個あたりのコストはどう分かる?

動画は、2つの工場を思い浮かべる問いかけから始まります。片方は、注文どおりに木材を削り出して作る、豪華なオーダーメイドの家具工場。もう片方は、ペットボトルを1日に何万本も作り出す工場です。この2つの工場は、製品1つあたりのコストをどうやって把握しているのでしょうか。

この答えが、個別原価計算と総合原価計算です。動画は、単なる計算方法の違いではなく、生産の哲学の違いにまで踏み込んで見ていく、と言います。聞き手は、この違いがわかると、決算ニュースや身の回りの製品の価格の裏側を考えるときの解像度がぐっと上がりそうだ、と応じます。

  • 個別原価計算:注文ごとの一点物向け。コストを「製造指示書」という箱に集める。
  • 総合原価計算:同じ製品を連続して大量に作る場合向け。1か月の総コストを生産量で割る。
  • 動画の比較の軸:生産形態、計算の単位、計算上の最大の課題の3つ。

個別原価計算:注文ごとの「箱」にコストを入れる

まず家具工場です。個別原価計算は、その名のとおり、個別の製品ごとに原価を集める方法です。たとえば顧客から「このデザインのテーブルを1つ」という注文が入ると、工場はその注文に「製造指示書ナンバー101」のような番号を振ります。そのテーブルを作るためにかかったコストを、No.101の札がついた箱に投げ込んでいくイメージです。

聞き手は、船1隻、特注の機械、建築プロジェクトのように、1件ごとに管理する仕事も同じ考え方だと確認します。講師も「まさにその通り」と答えています。

箱に入るコストは、大きく2種類に分かれます。

種類どんなコストか動画の例
製造直接費特定の製品に直接結びつけられるNo.101のテーブル用の木材、組み立て担当の職人の作業時間分の給料
製造間接費複数の製品のために共通して発生する工場の家賃、水道光熱費、品質を見る監督者の給料、共通の接着剤
製造直接費その箱に直接入る木材の費用職人の作業時間分の給料集計は比較的かんたん製造間接費複数の製品に共通家賃・水道光熱費監督者の給料共通の接着剤No.101 の箱に集計基準で按分して各注文の箱へ
直接費は箱に直接入れ、間接費は基準で割り振ります。

直接費は、レシートを見れば一目でわかる、と聞き手も言います。やっかいなのは間接費のほうです。工場の家賃は、No.101のテーブルだけのものではないからです。

製造間接費をどう分ける?按分の難しさ

今月つくっているテーブルと椅子と棚に、工場の家賃をどう分ければいいのか。ここで聞き手は、割り振り方次第では、利益を多く見せたい製品に費用を少なく割り振る、という都合のいい分け方もできてしまうのではないか、と指摘します。

割り振り方しだいで、利益を多く見せたい製品にコストをあまり回さない、なんてこともできてしまうのでは?

非常に鋭い指摘です。そこが個別原価計算の難しさでもあります。だからこそ、合理的で公平な基準で按分することが求められるんです。

講師が挙げる基準の例は、各製品の製造にかかった直接作業時間や、使った材料費の金額です。その比率に応じて、家賃のような間接費を配分します。基準の選び方ひとつで製品Aの原価が大きく変わり、按分を間違うと、本当は儲かっている製品を儲からないと勘違いして生産をやめたり、価格を高くしすぎて競争力を失ったりする。講師はこれを致命的な経営判断のミスにつながると述べ、聞き手は、単なる計算ルールではなく会社の運命を左右する重要な選択なのだと受けとめます。

(補足:動画は「按分」と呼んでいますが、簿記の教材では、製造間接費を各製品に割り振る手続きを配賦と呼ぶのが一般的です。試験では配賦という言葉も出てきます。)

基準による違いを、動画にない設例で確かめます。ある月の製造間接費が120,000円で、3つの注文の材料費と直接作業時間が次のとおりだったとします。

注文直接作業時間基準材料費基準
No.101 テーブル(材料30,000円・20時間)24,000円36,000円
No.102 椅子(材料10,000円・60時間)72,000円12,000円
No.103 棚(材料60,000円・20時間)24,000円72,000円

合計の作業時間は100時間なので、時間基準なら1時間あたり1,200円です。材料費の合計は100,000円なので、材料費基準なら材料費の120%です。どちらも配賦額の合計は120,000円で、割り振り方が違うだけです。ところが、手間のかかる椅子に着目すると、時間基準では72,000円、材料費基準では12,000円と、6倍も違います。たとえばNo.101の原価は、時間基準なら材料30,000円、職人の給料30,000円(20時間×1,500円の仮定)、間接費24,000円で84,000円になります。

集計した原価は、製品の状態で姿を変える

苦労して集計した原価は、製品が完成するとどうなるのか。動画によると、製品の状態によって原価の呼び名と居場所が変わります。

製造の途中完成・未販売完成・引渡し仕掛品製品売上原価資産貸借対照表資産貸借対照表費用売上と対応
原価の呼び名は、製品の状態によって変わります。
  • 完成して顧客に引き渡した:その期の費用である売上原価になり、売上と対応します。
  • 完成したが、まだ売れていない:製品という勘定科目で、会社の資産として貸借対照表に載ります。
  • 製造の途中(足しかできていないテーブルなど):仕掛品という、これも資産として扱われます。

作りかけのものは、まだ売れるかもわからないので、てっきり費用の一種かと思っていました。

将来、完成して会社に収益をもたらす可能性のあるものだ、という考え方なんです。

個別原価計算のポイントを、動画は3つにまとめます。①製造指示書という箱単位でコストを管理する。②精度は製造間接費をいかに合理的に按分できるかにかかっている。③集計した原価は、製品の状態に応じて売上原価・製品・仕掛品と姿を変える。

総合原価計算:1か月分をバケツに入れて割る

次にペットボトル工場です。1本目のボトルと2本目のボトルの原価を区別しても、意味がありません。ここで登場するのが総合原価計算で、同じ製品を大量に繰り返し作る連続生産で使われます。個々の製品を追いかけることは、早々にあきらめます。

代わりに、1か月の間に工場全体でかかったコストの総額をまず求めます。それを大きなバケツに入れ、1か月に生産した量で割り算して、製品1個あたりの平均単価を出します。57番目のボトルも102番目のボトルも、すべて同じコストだったとみなす、割り切った方法です。

1か月分の総コスト工場全体でかかった総額をバケツに入れる÷ 生産した量製品1個あたりの平均単価57番目も102番目も同じコストとみなす難関:月末にできかけで残る製品(月末仕掛品)をどう扱うか
個々の製品は追いかけず、期間の総額で考えます。

考え方の骨格はシンプルですが、落とし穴があります。最大の難関は、月末にできかけで残っている月末仕掛品の扱いです。すべての製品が月初に作り始めて月末までに完成するなら話は簡単ですが、現実にはベルトコンベアの途中に半分くらい形になったボトルが残ります。この半分できたボトルに、完成品とまったく同じ1か月分の平均コストを割り当てるのは不公平です。

月末仕掛品と加工進捗度:コストは発生のタイミングが違う

そこで動画は、コストの種類によって発生するタイミングが違う、という考え方を持ち出します。

  • 直接材料費(ボトルならプラスチックの原料):多くの場合、工程の最初にすべて投入されると仮定します。投入したら、そのボトルに必要な材料は100%入っているというイメージです。
  • 加工費(成形やラベル貼りの人件費、機械の電気代など):製品が完成に近づくにつれて、じわじわ発生すると考えます。
月末仕掛品 1個の進み具合(動画の想定)直接材料費工程の最初に全部投入=100%加工費進捗度50%ここから先は未発生進捗度の見積もりがずれると、完成品と月末仕掛品への配分もずれる
材料は最初に全部、加工費は少しずつ発生すると考えます。

この加工費の進み具合が加工進捗度です。聞き手は、「このボトルは今体感60%くらい完成してるな」と目分量で決めるわけにはいかないのでは、と疑問を出します。動画の答えは、技術者が工程を分析して客観的な基準を決める、というものです。たとえば「この工程を通過した時点で進捗度50%と見なす」と決めます。月末仕掛品の進捗度が50%なら、加工費も50%分しかかかっていないと考えて計算します。進捗度の見積もりが不正確だと、完成品と仕掛品に配分される原価が歪み、経営判断を誤らせる原因になる、と動画は注意します。

(補足:動画は、割り算の分母を「生産した製品の量」と言いますが、月末仕掛品があるときは、仕掛品を進捗度に応じて完成品の何個分かに直した量を使います。教材では完成品換算量(約当量)と呼ばれます。たとえば300個の月末仕掛品の進捗度が50%なら、加工費の分母では150個分、直接材料費の分母(始点投入)では300個分として数えます。)

月初に仕掛品があるとき:先入先出法と平均法

さらに複雑なのは、月初にも作りかけの仕掛品があるケースです。先月のコストと今月のコストが混ざってしまいます。動画はここで、代表的な2つの方法を紹介します。

先入先出法:月初の分が先に完成月初仕掛品先に完成品へ当月投入分残りの完成品と月末平均法:全部まぜて平均単価月初+当月をまぜる平均単価で配分
先入先出法は区別して、平均法はまぜて計算します。

先入先出法は、スーパーの牛乳売り場のように、先に入ったものから先に出ていく、という考え方です。月初にあった作りかけの分が先に完成したと仮定し、その原価と、当月に新しく作り始めた分の原価をきちんと区別して計算します。平均法はもっと大胆で、月初仕掛品のコストも当月投入のコストも全部まぜて、合計から全体の平均単価を出し、その単価で完成品と月末仕掛品に原価を割り振ります。

動画は、原材料の価格が月によって大きく変動するなら先入先出法のほうが製品原価を正確に反映でき、価格が安定した製品や、そこまで厳密な管理が求められない場合は、計算が簡単な平均法が好まれる、と整理します。

(補足:「今月作った製品には今月の高い、あるいは安い材料費が反映される」という説明は、少し単純化されています。先入先出法でも、完成品には先月から持ち越した月初仕掛品の原価が入ります。当月の単価が反映されるのは、主に月末仕掛品です。次の設例で確かめます。)

動画にない設例です。月初仕掛品200個(進捗度50%、原価は材料費30,000円・加工費10,000円)、当月投入1,000個、完成900個、月末仕掛品300個(進捗度50%)。当月の発生は材料費162,000円、加工費114,950円で、材料は工程の最初に全部投入、仕損はないものとします。原価の合計は316,950円です。

方法完成品原価月末仕掛品原価
平均法251,100円65,850円
先入先出法250,200円66,750円

平均法では、材料費は(30,000+162,000)÷(900+300)=160円、加工費は(10,000+114,950)÷(900+150)=119円で、月末仕掛品は300個×160円+150個×119円です。先入先出法では、当月の単価で月末仕掛品を計算します。材料費は162,000÷1,000=162円、加工費は当月に加工した量が、月初の残り100個分と当月着手分700個、月末150個分を合わせて950個分なので、114,950÷950=121円です。この設例では当月の単価が上がっているため、先入先出法のほうが月末仕掛品が900円高く、完成品が900円低くなります。

正常仕損と度外視法:失敗のコストも折り込む

どんなに優れた工場でも、一定数の不良品は出ます。検査ではじかれた、形のゆがんだペットボトルのコストはどうなるのか。動画は、通常の範囲で発生する不良品を正常仕損と呼び、その処理によく使われる考え方として度外視法を紹介します。

度外視法は、計算上、その不良品は最初から存在しなかったかのように扱います。ただし、作るのにかかったコストは実際に発生しています。そのコストを、その期間に完成した良品と月末に残った仕掛品に上乗せして負担させます。聞き手が言うように、失敗のコストも、成功のための必要経費として良品が吸収する形になります。動画は、正常の範囲の失敗は製造上避けられないコストの一部だ、という捉え方だと説明します。

数字で見ると簡単です(動画にない設例)。1,000個分を投入して原価が90,000円(1個90円)、そのうち100個が正常仕損で売れない、全部が完成か仕損で仕掛品はないとします。仕損を無かったことにすると、良品900個が90,000円を負担するので、1個あたり100円です。仕損100個分のコスト9,000円が、良品1個あたり10円の上乗せになった形です(10円×900個=9,000円)。

(補足:動画は完成品と月末仕掛品に負担させると説明しますが、教材では、仕損が出る時点によっては、完成品だけが負担するとされています。また、動画にはありませんが、天災など異常な原因による仕損(異常仕損)は、正常仕損とは区別され、製品の原価には含めず、損失として処理するのが原則とされています。)

2つの手法を比べる

動画は、最後に2つの手法の重要な違いを3点に絞って整理します。

見る点個別原価計算総合原価計算
生産形態オーダーメイドなどの個別生産同じものを繰り返す連続生産
計算の単位製造指示書ごと期間や工程ごとの総額
最大の課題製造間接費の公平な按分月末仕掛品、特に加工進捗度

動画は、まずは目の前の製品やサービスがどちらの生産形態に近いかを考えるのが第一歩だと言います。そして、算出された原価の情報をもとに、価格設定や作り続けるかどうかといったあらゆる経営判断が行われる点を強調します。

最後の問い:サービス業の原価計算は?

動画の締めくくりは、学習を続ける人への問いかけです。今日の話は、家具やペットボトルのような形のあるものを作る製造業でした。では、コンサルティング会社やソフトウェア開発会社のようなサービス業の「製品」、つまり提供するサービスは、個別原価計算と総合原価計算のどちらかに当てはまるでしょうか。それとも、本当のコストを理解するには、2つの考え方を組み合わせた新しいアプローチが必要なのでしょうか。動画は答えを出さず、この問いを頭の片隅に置くと、ビジネスの見え方が変わるかもしれない、と投げかけて終わります。

まとめ

動画の流れのまとめ

  • 個別原価計算は、注文ごとの一点物向け。製造指示書の箱に、製造直接費を直接入れ、製造間接費は合理的な基準で按分する。
  • 集計した原価は、売上原価(引渡し済み)、製品(完成・未販売)、仕掛品(製造途中)と姿を変える。製品と仕掛品は資産。
  • 総合原価計算は、同じ製品を連続して作る場合向け。1か月の総コストを量で割り、平均単価を出す。
  • 難関は月末仕掛品。直接材料費は工程の最初に全部投入、加工費は加工進捗度に応じて発生すると考える。
  • 月初仕掛品があるときは、先入先出法(区別して計算)と平均法(まぜて平均)がある。
  • 通常の範囲の不良品(正常仕損)は、度外視法で、良品などに上乗せして負担させる。

動画の説明は、2つの手法の骨格をつかみやすく絞ってあります。補足で見たように、配賦という用語や、完成品換算量、仕損の発生点による違いまでは扱っていません。まずは、一点物か連続生産か、という出発点から、それぞれの最大の課題をたどれるようにしておきましょう。

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