市場細分化
事例Ⅱ 第33回
「市場細分化って、1次で散々やったから、もう説明はいらないですよね」。動画は、この講師の投げかけから始まります。知識はあるのに、二次の与件文を読んでいるとき、どこでその知識を使えばいいのか分からない。このページでは動画の流れにそって、論点の出方、お客さんの記述を仕分ける3つの物差し、新旧の見比べと共食い、答案の型、共食いへの対策、誤答しやすい点、本番のチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識はあるのに、本番で気づけない
動画は、講師の「市場細分化って、1次で散々やったから、もう説明はいらないですよね」という投げかけから始まります。聞き手は、人口統計的な変数や心理的な変数といった言葉は全部言えると答えます。それでも二次の与件文を読んでいるとき、どこでその知識を使えばいいのかが、いまだにピンとこないといいます。
それ、すごくよく聞く悩みです。知識はあるのに、本番で「あ、ここだ」って気づけない。
まさにそれです。与件文にお客さんの話がいろいろ出てくるんですけど、それをどう整理すればいいのか、手が止まっちゃうんです。
講師は、今日はそこを一緒に埋めていく、与件文のどの一文が出たら反応するか、という着眼点の話だと言います。このページでは動画の流れにそって、順にまとめます。
この論点の出方:答案の土台になるとき、主役になるとき
講師はまず、どういう聞かれ方をするのかから話します。単独で変数そのものを答えさせる問題として、真正面から聞かれることは、実はそんなに多くないそうです。聞き手は「てっきり定義そのものを問われるのかと」と驚きます。
多いのは、新しい商品やサービスの企画を提案する設問や、既存のお客さんの層を見直す設問の中で、「誰に向けた提案か」を答案の中で示す材料として使うパターンです。聞き手はこれを、単独の主役というより答案の土台のイメージだと受け止めます。
もう一つあります。与件文に、新しい商品を出したのに売れ行きが悪い、既存のお客さんの反応が薄い、といった記述があるときです。講師によると、その裏には、切り分け方を間違えたリスクが潜んでいることがあります。
それって、新しい商品が、前からある商品のお客さんを取っちゃってる、みたいなことですか。
そうです。そうなると、この論点は答案の材料というより、変数の選び方そのものが問われる主役に変わります。
単なる背景知識で終わらないパターンもある、ということですね。
動画が挙げた出方
- 新商品・サービスの企画や既存顧客の見直しの設問で、「誰に向けた提案か」を示す答案の土台になる
- 売れ行きの悪い新商品や反応の薄い既存客の記述があるとき、変数の選び方そのものが問われる主役になる
お客さんの記述は3つの物差しに仕分ける
では与件文のどこを見ればこの論点だと気づけるのか。講師は、お客さんに関する記述は大きく3種類に仕分けられると言います。聞き手が「年齢や性別で切る話と、価値観やライフスタイルで切る話と、地域で切る話ですよね」と先に挙げ、講師が「そうです」と受けました。
講師のたとえは、友達にプレゼントを選ぶ場面です。年齢や性別で選ぶこともあれば、その子の趣味や好みで選ぶこともあり、住んでいる場所の気候で選ぶこともあります。聞き手は、実家が雪国の友達には防寒グッズを、アウトドア好きの友達にはキャンプ用品を選ぶと答えました。講師は、それがそのまま3つの物差しだと言います。
物差し1は、年齢や性別、家族構成、世帯人数のような「生まれたときから決まっている特徴」と、学歴や所得や職業のような「本人の努力の結果で得た特徴」。この二つがまとまって一つ目の物差しです。聞き手はこれを、客観的に測れる属性だと言い換えました。
物差し2は、価値観やライフスタイル、こだわりや嗜好のような主観的なものです。与件文にアンケートやヒアリングをした形跡が書いてあると、この物差しのサインになります。聞き手は「数字だけじゃ分からない、『なぜ買うか』の部分ですね」と受けています。
物差し3は、商圏や地域、都市の規模、気候のような、どこにいるかという物差しです。
| 物差し | 例 | 性質 |
|---|---|---|
| 1 | 年齢・性別・家族構成・世帯人数・学歴・所得・職業 | 客観的に測れる属性 |
| 2 | 価値観・ライフ | 主観的なもの |
| 3 | 商圏・地域・都市の規模・気候 | どこにいるか |
正解を1つ選ぶのではなく、新旧で物差しを見比べる
聞き手は、3つは分かるけれど、悩むのは、どれが正解かというより、与件文にいくつも混ざって出てくるときだと言います。講師は、そこが今日一番伝えたいところだと答えます。実は、正解を1つ選ぶ問題ではありません。大事なのは、新しい商品と前からある商品とで、使っている物差しが同じか違うかを見比べることです。聞き手は「え、そこまで見るんですか」と驚きます。
講師の例です。新しい商品の与件文の記述が年齢や性別で語られていて、前からある商品は価値観で語られていたら、それは黄信号です。物差しがずれているのに気づかないと、実は同じお客さんを両方の商品で取り合っている、ということが起きます。
実は私、そこを読み飛ばしてました。3つの物差しに仕分けることだけ意識して、新旧を見比べるところまで頭が回ってなかったです。
それ、本当によくあるパターンです。
講師が示した整理の手順は2段階です。
- お客さんに関する記述を、3つの物差しのどれに当たるかに仕分ける。
- 前からある商品と新しい商品、あるいは既存のお客さんと新しいお客さんとで、使っている物差しが同じか違うかを確認する。ここが今日の核心です。ずれていたら、狙っているつもりのお客さん層が実は重なっていて、共食いのリスクが潜んでいる可能性があります。
聞き手は、1段階目の仕分けまでは今までやっていたと話しています。動画が強調するのは、その次の2段階目です。
共食いはこう起きる
共食い、ってそのまま自社同士でお客さんを取り合っちゃうってことですよね。
そうです。
講師が挙げた例は、こんなお店です。こだわりの強い常連さん向けに、少し値の張る商品を出していたお店が、若い人にもっと買ってほしくて、年齢だけを基準にした手頃な新商品を出しました。聞き手は「あ、それ、危ない気がします」と反応します。
年齢で切った新商品のお客さんの中に、元々こだわりで通っていた常連さんの一部が含まれていたら、どうなるか。講師によると、常連さんが新商品の方に流れて、既存商品の売上がむしろ落ちる、ということが起きえます。聞き手は「新しい商品を出したのに、全体としては伸びない、ということですね」とまとめ、講師は「はい」と答えます。
講師はもう一つ、なぜその物差しで切り分けるべきなのか、理由も与件文から拾っておくと答案の説得力が上がると言います。お客さんのニーズの違いが、その物差しで説明できるという根拠です。聞き手は「物差しを選んだ理由まで書くんですね」と受けました。
背景には、同じ商品でも欲しい理由は人によってバラバラ、という前提があります。だからこそ切り分けて、一人一人のニーズに近づけていく。その切り分けがなぜ妥当かという根拠は、答案の説得力に直結する、というのが講師の説明です。
物差しのずれが生まれる3つの原因
聞き手は「どうしてそんな物差しのずれが生まれちゃうんですか」と尋ねます。講師が挙げた原因は大きく3つです。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 1つ目 | 新商品が「誰が買うか」をあまり深く考えずに作られている |
| 2つ目 | 「誰が買うか」の企業側の理解そのものが間違っている |
| 3つ目 | 商品ごとの価値の違いと、価格の差のバランスが釣り合っていない |
三つ目、ちょっとイメージが湧かないです。
例えば、既存商品とそこまで価値が変わらないのに、値段だけ大きく下げた新商品を出したら、こだわりの薄いお客さんはそちらに流れますよね。価値の差と価格の差が釣り合っていないと、物差しで切り分けたつもりでも、結局お客さんが移動してしまうんです。
なるほど、物差し自体は合っていても、価格の設計で共食いが起きることもあるんですね。
答案への落とし込み:基準・層・提案
実際の答案への落とし込みです。講師によると、切り分けの軸を答えさせる問題には型があります。「顧客を、こういう基準で捉え、こういう層に対して、こういう提案をする」という組み立てです。聞き手はこれを「基準・層・提案の3点セット」と整理しました。
ここで講師が一つ注意します。答案に、人口統計的な変数や心理的な変数といった言葉を、そのままカタカナや専門用語で書きたくならないか、という点です。聞き手は「書きたくなります。1次で覚えた言葉だから、使った方が点数もらえそうな気がして」と認めます。
そこ、実は逆効果になりやすいんです。採点者に伝わるのは、変数の名前じゃなくて、その変数が示すお客さん像なので、与件文の言葉、年齢層とか、価値観とか、地域とか、そういう具体的な言葉に置き換えて書く方が実戦的です。
たしかに、「心理的な変数の顧客」より、「健康志向の顧客」の方が、何を指しているか一発で伝わります。
もう一つの型が、共食いのリスクを指摘する問題です。「新製品はこういう基準で切り分けているが、既存製品はこういう基準であり、実際には対象顧客が重なるため、こういう対策が必要である」という組み立てになります。
共食いへの対策は4つの引き出し
聞き手が「対策の部分は、何を書けばいいんですか」と尋ねると、講師は、これは一つに絞らない方がいいと答えます。引き出しとして4つ挙げました。
- テストマーケティング:全面的に導入する前に、購買者層が想定通りかを確かめる。
- 事前の顧客調査:アンケートなどで、事前にニーズやベネフィットを把握する。
- 価格の工夫:価値の差に見合った値段の差をつける。
- チャネルの分離:既存商品とは別のチャネルや、地域を絞って売る。
値下げだけじゃなくていいんですね。
そうです、そこは次の混同しやすいポイントでもう少し話します。
誤答しやすい4つのポイント
講師は誤答しやすいポイントを4つに整理します。
| 誤答しやすい点 | 動画の説明 |
|---|---|
| 細分化と狙う層の混同 | 細分化は切り分ける軸の話。狙う層や位置づけは別の工程 |
| 客観と主観の取り違え | 「高齢者向け」は客観、「健康志向」は主観 |
| 新旧のずれの見落とし | 共食いのリスクを見落とす |
| 対策が値下げだけ | 複数の引き出しを答案で示せると強い |
1つ目は、市場細分化の物差しの話と、どのお客さん層を狙うかを決める話を混同することです。聞き手は「それ、私もよくごっちゃになります」と言います。講師によると、細分化はあくまで「切り分ける軸」の話で、どのセグメントを狙うか、どう位置づけるかは別の工程の役割です。今日は物差しそのものに焦点を当てていて、狙い方や絞り込み方には踏み込んでいません。聞き手は、切り分けるところまでが今日の範囲で、そこから先の「誰を狙うか」は別の論点として扱う線引きだと整理しました。
2つ目は、客観的に測れる属性の物差しと、主観的な価値観の物差しを取り違えることです。講師は「高齢者向け」は前者、「健康志向」は後者という区別を意識しておくといいと言います。聞き手は、年齢や所得は数字で測れるけれど、価値観は数字で測れないのが分かれ目だと受け止めました。
3つ目は、新旧の商品で物差しが違うことに気づかず、共食いのリスクを見落とすパターンです。講師は、放置すると新しい商品を出しても全体としては売上が伸びず、資源の限られた中小企業にとっては深刻な損失になると言います。聞き手は「新製品を出したこと自体が裏目に出ちゃうんですね」と返します。
4つ目は、共食いへの対策として、値段を下げることしか思いつかないパターンです。価格だけでなく、チャネルを分ける、地域を分ける、事前の調査やテスト販売で確かめる、といった複数の引き出しがあることを、答案の中でも示せると強い、と講師は言います。
今日、私が本番で手が止まっていた理由、分かった気がします。物差しを仕分けるところで満足しちゃって、新旧を見比べるところまで行けてなかったんです。
それが分かっただけでも、今日は大きな収穫です。
本番で使う4つのチェックポイント
講師は最後に、本番で使うときのチェックポイントを4つにまとめます。
動画のチェックポイント4つ
- お客さんに関する記述を見たら、客観的な物差し(年齢・所得)か、主観的な物差し(価値観・ライフスタイル)か、地域の物差しか、まず仕分ける。
- 新しい商品と前からある商品、あるいは新規のお客さんと既存のお客さんとで、使っている物差しが同じか違うか、必ず見比べる。
- 答案では物差しの名前をそのまま書かず、与件文の言葉に具体的に置き換える。
- 共食いを指摘したら、対策は値下げだけに絞らず、事前調査やテスト販売、チャネルの分離まで引き出しを広げる。
この4つ、次に与件文を読むときに、意識してみます。
知識はもう十分持っているので、あとは与件文のどこで気づくか、その練習を積むだけです。
まとめ
動画の整理
- 市場細分化は、単独で聞かれるより、答案の土台として使われることが多い。売れ行きの悪い新商品などの記述があれば、変数の選び方が問われる主役にもなる
- お客さんの記述は3つの物差し(客観的な属性・主観的な価値観・どこにいるか)に仕分ける
- 核心は、新旧の商品や新旧のお客さんで物差しが同じか違うかを見比べること。ずれていたら共食いのリスクがある
- 答案は「基準・層・提案」の型。物差しの名前ではなく、与件文の言葉に置き換えて書く
- 共食いの対策はテストマーケティング・事前の顧客調査・価格の工夫・チャネルの分離など、複数の引き出しを示す
動画の最後に、講師は「知識はもう十分持っているので、あとは与件文のどこで気づくか、その練習を積むだけです」と話しています。物差しの仕分けで終わらず、新旧を見比べて、ずれていないかを確かめる。与件文を読むときの着眼点は、そこにあります。
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