顧客生涯価値
事例Ⅱ 第31回
「今日は『顧客生涯価値』を、二次の答案でどう使うか、一緒に整理していきましょう」。動画はこんな呼びかけから始まります。用語は知っているのに、答案のどこで使えばいいのか分からない。このページでは、与件文のどこを見たら使う場面だと気づけるか、2つの施策の書き分け、答案の型と字数配分、購入単価との混同などの誤答パターン、本番のチェックポイントを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
用語は分かるのに、答案のどこで使うか分からない
動画は、講師の「今日は『顧客生涯価値』を、二次の答案でどう使うか、一緒に整理していきましょう」という呼びかけから始まります。聞き手は「あ、それ知ってます。でも正直、二次の答案でどこに使えばいいのか、いまいちピンと来てないんですよね」と答えます。
講師は、顧客生涯価値を「一人の顧客が生涯にわたってもたらす価値」と説明したうえで、知識としては知っているのに、与件文のどこを見たらそれを使う場面だと気づけるか、そこで詰まる人が多いと言います。聞き手も、用語は分かるのにいざ答案を書く段になって「あれ、これ使う場面だったのか」と後から気づくことがある、と同じ悩みを話します。
動画は、その気づき方と使い方を、実際の思考の流れに沿って見ていきます。このページも同じ順に進みます。
- 二次ではどんな聞かれ方をするか
- なぜ既存顧客側で押し切る答案になるのか
- 使うサインになる与件文の記述
- 価値を高める2つの施策と、美容室のたとえ
- 答案の型と字数配分
- よくある誤答パターンと、本番のチェックポイント
用語は分かるのに、答案を書く段になって「あれ、これ使う場面だったのか」って後から気づくことがあるんです。
知識としては知っているのに、与件文のどこを見たらそれを使う場面だと気づけるか、そこで詰まる人が多いんです。
二次ではどんな聞かれ方をするか
講師が「一番多い」と言うのは、新規顧客の獲得と、既存顧客との関係強化、どちらに力を入れるべきかを問う設問です。そこで「なぜ既存顧客を重視すべきか」の根拠として、この考え方を使います。
なるほど、単独で「顧客生涯価値とは何か」って聞かれるわけじゃないんですね。
そうです。あとは会員制度やポイント制度を導入する効果を説明させる設問でも出てきます。
制度を入れると何が変わるかというと、顧客ごとの価値に応じた対応ができるようになる。講師は、この説明の軸にもこの考え方を使うのだと言います。
単独の主役というより、既存顧客重視の方針を裏付ける「根拠」として使う感じなんですね。
その理解で合ってます。だからこそ、与件文のどこがその根拠になるかを見抜く目が大事になってきます。
なぜ既存顧客側で押し切る答案になるのか
聞き手は、新規顧客を取るべきか、既存顧客との関係を強めるべきかは、方向性としてはどちらも間違いではなさそうなのに、なぜ既存顧客側で押し切る答案が求められることが多いのか、と尋ねます。
講師の答えは、与件文が「新規顧客の獲得コストが高い」「競合が多い」と書いている以上、その事例企業にとって新規獲得は分の悪い戦い方だ、というメッセージだから、というものです。だったら、すでに関係がある既存顧客の生涯にわたる取引額を伸ばすほうが、同じ経営資源でも効率よく成果につながる。この対比が、既存顧客重視を選ぶ理由づけの軸になります。
| 見る点 | 新規顧客の獲得 | 既存顧客の取引額 |
|---|---|---|
| 与件文の記述 | 獲得コストが高い・競合が多い | すでに関係がある |
| 事例企業にとって | 分の悪い戦い方 | 同じ経営資源で効率よく成果 |
なるほど、「新規は分が悪い、だから既存を伸ばす」っていう比較そのものが答案の骨になるんですね。
そうです。単に「既存顧客が大事です」で終わらせず、なぜ今この事例企業にとって既存顧客側が有利なのか、その比較を答案に持ち込めるかどうかが差になります。
与件文のどんな記述がサインか
聞き手が次に聞いたのは、与件文のどんな記述が出たら、この考え方を使うサインなのか、という点です。講師は、大きく2種類あると答えます。
1つ目は「リピーターが多い」「長年通っている顧客がいる」という記述です。これは、一時的な売上ではなく、長期の取引額で顧客の価値を捉えるべき状況を示しています。
あー、常連さんが多いお店の話とかでよく出てきそうですね。
もう1つが「新規顧客の獲得コストが高い」とか「競合が多くて新規獲得が難しい」という記述です。
2つ目のサインが出てきたら、既存顧客との関係を長期化させることの重要性が上がっている場面だと読めます。
逆に言うと、新規獲得が苦しいっていうネガティブな記述が、既存顧客重視の根拠になるってことですか。
そうなんです。与件文の弱みに見える記述が、実は方針の根拠に化けるパターンなんですよね。ここに気づけるかどうかで差がつきます。
それ、私まさに読み飛ばしてました。新規獲得が大変そうだな、くらいにしか捉えてなくて。
ここまでが、方針の根拠になる記述です。講師は、これに加えて打ち手につながる記述もあると言います。「顧客の購買履歴やデータを蓄積している」という記述と、「常連客の好みを覚えている」「個別に提案している」という記述の2つです。
聞き手が「この2つの記述、何が違うんですか」と聞くと、講師は与件文情報の整理の順番を説明します。まず「顧客の価値」に関わる記述を、単発の売上ではなく、期間全体でどれだけ取引があったか、今後も続きそうか、という視点で読み直します。そのうえで、価値を高める2つの施策のどちらが状況に合うかを判断する、という流れです。
価値を高める2つの施策
聞き手が「その2つの施策って、さっきの購買履歴とか個別対応の話につながるんですか」と確かめると、講師は「そうです」と答え、2つを次のように説明します。
顧客ごとにデータがあって優良顧客を絞り込めそうなら、顧客の持つ価値に応じて対応を変える施策、顧客識別マーケティングを使います。一方、個別の顧客の好みや要望を把握できる規模・関係性があるなら、一人一人に合わせて個別にアプローチする施策、ワントゥワン・マーケティングと呼ばれる考え方を使います。
| 施策 | 使う場面 | やること |
|---|---|---|
| 顧客識別 | 顧客ごとのデータで優良顧客を絞り込めそう | 顧客の価値に応じて対応を変える |
| ワン | 好みや要望を把握できる規模・関係性がある | 一人一人に合わせて個別にアプローチ |
その2つ、粒度が違うってことですか。
その通りです。前者の顧客識別マーケティングは顧客をランク分けして対応を変える施策、後者のワントゥワン・マーケティングは一人一人に合わせて個別対応する施策。
講師はこの違いを、データで顧客を絞り込む段階の話なのか、絞り込んだ先で個別に接客する段階の話なのか、という違いだと整理します。
ランク分けは、データがあってこそ
聞き手は、顧客をランク分けするとは具体的にどうやるのか、と尋ねます。講師によると、購買データが与件文にあるなら、購入金額や購入回数を基準に顧客を並べて、上位から順にランク分けする、という分析の考え方があります。
具体的なやり方はいくつか種類がありますが、動画は、今日は生涯価値の考え方が主役なので、その中身は別の回で扱うとしています。ここでは「そういう分析でランク分けができる」という発想だけ押さえておけば十分です。与件文にそういうデータ蓄積の記述があれば、それを根拠にランク分けの発想を答案に持ち込めます。
あ、データがあるからこそ、ランク分けできるってことなんですね。データが無いのに「ランク分けします」だけ書いても浮いちゃいそうです。
そうなんです。与件文にデータ蓄積の記述があるかどうかが、この施策を使えるかどうかの分かれ目になります。
美容室でたとえる2段階
聞き手が「行きつけの美容室でたとえるとどうなりますか」と聞くと、講師は「いいたとえですね」と受けて、次のように説明します。
美容室のたとえ
- 来店頻度や来店してからの年数のデータを見て「この人は上位のお客さんだ」と絞り込むのが、顧客識別マーケティング。
- 担当の美容師さんが「前回と同じ髪型がいいですよね」と覚えていて対応するのが、ワントゥワン・マーケティング。
あー、絞り込みと、絞り込んだあとの個別対応で、2段階なんですね。段階が違うのに、同じ話として一緒くたにしちゃいそうです。
そうなんです。だからこそ、答案でもこの2段階を意識して書き分けることが大事になります。
答案への落とし込み:型
聞き手が「実際の答案にはどう落とし込めばいいんですか」と聞くと、講師は型を示します。
答案の型
「新規獲得より、〜という強みを活かして、既存顧客の生涯にわたる取引額を高めることを優先すべきである。具体的には〜を行う」
- 〜の前半:与件文の強みを入れる。例はリピーターの多さや、顧客データの蓄積。
- 後半の施策:顧客の価値に応じた対応か、個別対応かを当てはめる。
「顧客生涯価値」って言葉だけ書いて終わっちゃダメなんですか。
それだと点数が伸びにくいんです。なぜそれを重視すべきか、新規獲得コストの高さとか、与件文の強みとの整合性とか、理由まで書くのが実戦的です。言葉を置くだけじゃなく、その言葉を使う理由までセットにするイメージですね。
用語を置くだけじゃなくて、根拠と一緒に組み立てる、ってことですね。
字数配分の感覚
講師は字数配分を、方針の一文に半分弱、理由づけに残りの半分弱、施策の具体化に少し、という感覚だと説明します。理由づけを削りすぎると、なぜその施策なのかが伝わらない答案になってしまう、というのがその理由です。
施策名を書くことに気を取られて、理由づけの分量が削られがちになりそうです。
そうなんです。字数が厳しいときほど、施策名より理由づけを優先して残す、という判断をしてください。
誤答パターン①:生涯価値を「1回の購入単価」と混同する
ここまで聞いた聞き手が「逆に気をつけるべきところってありますか」と尋ねると、講師は「いい質問ですね」と言って、実際によく見る誤答パターンに入ります。
講師が「一番多い誤答」とするのが、生涯価値を「1回の購入単価」と混同することです。
あ、それ、私やりがちです。「顧客単価が高い」って与件文に書いてあると、つい生涯価値の話だと思っちゃって。
そこなんですよね。生涯価値は、期間全体、つまり生涯を通じた取引額や利益の合計です。一方、購入単価は1回の買い物でいくら使うか、という一時点の数字。
| 見る点 | 購入単価 | 顧客生涯価値 |
|---|---|---|
| 何の数字か | 1回の買い物でいくら使うか | 生涯を通じた取引額や利益の合計 |
| 数字の性質 | 一時点の数字 | 期間全体の数字 |
| 与件文の手がかり | 「単価」の記述 | リピート・期間・継続性 |
講師は、1回あたりの金額が高くても、その顧客がすぐ離れてしまえば生涯価値は低いままだと言います。
逆に、1回あたりは少額でも、何年も通い続けてくれれば、合計では大きな価値になる、ってことですか。
まさにそうです。だから与件文で「単価」の話が出てきても、それだけで生涯価値の設問だと決めつけない。リピート、期間、継続性、こういう時間軸の記述があって初めて生涯価値の話になります。
書いたのに点が伸びなかった理由、これで分かった気がします。単価の話をそのまま生涯価値の話として書いていました。
そこを分けて書けるようになるだけで、答案の説得力はかなり変わってきますよ。
誤答パターン②③:2つの施策の同一視と、理由のない施策名
講師が挙げるもう1つの誤答パターンは、さきほどの2つの施策を同じものとして扱ってしまうことです。
顧客の価値に応じて対応を変える施策と、一人一人に合わせて個別対応する施策、さっき出てきた粒度の違いですね。
そうです。この違いを答案で曖昧にすると、採点者から見て理解が浅いと受け取られかねません。データで絞り込む話をしているのか、絞り込んだあとの個別対応の話をしているのか、意識して書き分けてください。
もう1つは、聞き手が「さっき出ましたね」と思い出した、施策名だけ書いて理由を書かないというパターンです。
あと、施策名だけ書いて理由を書かない、っていうのもさっき出ましたね。
それも典型的な減点パターンです。施策名を書いて終わらせず、なぜその施策が与件文の状況に合うのかまで、必ずセットで書いてください。
| 誤答 | 講師の指摘 | 書き方 |
|---|---|---|
| 単価との混同 | 単価の話をそのまま生涯価値として書いてしまう | 時間軸の記述を確認して書き分ける |
| 2施策の同一視 | 理解が浅いと受け取られかねない | 絞り込みと個別対応を書き分ける |
| 施策名だけ | 典型的な減点パターン | 与件文の状況に合う理由までセットで書く |
本番のチェックポイント3つ
聞き手が最後に、本番で使うときのチェックポイントをまとめてほしいと頼みます。講師は3つに整理します。
本番のチェックポイント
- 1つ目:与件文にリピーターの多さや新規獲得コストの高さが出てきたら、既存顧客重視の根拠として使えないか疑うこと。
- 2つ目:データで絞り込む施策と、個別に対応する施策、どちらが与件文の状況に合うかを見極めること。
- 3つ目:生涯価値は期間全体の話であって、1回の単価の話とは別だと、答案の中でも意識して書き分けること。
単価と生涯価値、時間軸で分けて考えればいいんですね。今日でだいぶ整理できました。
与件文の中の根拠を見つける目を、これで少し鍛えられたと思います。次の設問を解くときも、この視点を思い出してみてください。
まとめ
動画の整理
- 二次では、新規獲得か既存顧客との関係強化かを問う設問や、会員制度・ポイント制度の効果を説明させる設問で、「根拠」として使う
- 与件文が新規獲得コストの高さや競合の多さを書いていたら、新規は分の悪い戦い方、だから既存顧客の生涯にわたる取引額を伸ばす、という比較を答案の骨にする
- サインは、リピーターが多い・長年通っている顧客がいる、新規獲得コストが高い・競合が多い。打ち手につながるのは、購買履歴やデータの蓄積と、好みを覚えている・個別に提案しているという記述
- 施策は2つ。データで絞り込み価値に応じて対応を変える顧客識別マーケティングと、一人一人に個別対応するワントゥワン・マーケティング。段階が違うので書き分ける
- 答案の型は「新規獲得より、〜という強みを活かして、既存顧客の生涯にわたる取引額を高めることを優先すべきである。具体的には〜を行う」。理由づけを削らない
- 誤答は、単価との混同、2つの施策の同一視、施策名だけで理由を書かないこと
動画の締めくくりで、講師は与件文の中の根拠を見つける目を鍛えることを挙げ、次の設問を解くときもこの視点を思い出してほしいと話します。「顧客生涯価値」という言葉を置くだけで終わらせず、与件文のどの記述が根拠なのかを探し、理由とセットで書く。単価の話は時間軸の記述があるかで見分ける。この流れを持って次の設問に向かいましょう。
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