デシル分析
事例Ⅱ 第30回
「デシル分析、知識としては知ってるのに、二次の本番でどう使えばいいか分からない」。動画は、こんな論点への戸惑いから始まります。このページでは動画の流れにそって、二次での出方と与件文の着眼点、優良顧客層を決める手順、答案の型、分析で終わらせないための書き方、混同・誤答しやすい点をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識としては知っているのに、本番で使えない
動画は、こんな問いかけから始まります。「デシル分析、知識としては知ってるのに、二次の本番でどう使えばいいか分からない」。聞き手も、「購入金額の多い順に10等分する」ところまでは覚えているのに、それを実際の答案でどう使うのかと聞かれると手が止まる、と言います。
講師は、デシル分析は与件文のごく短い一文から「あ、これ使える」と気づけるかどうかで差がつく論点だと話します。動画は、その気づき方から答案への落とし込みまでを一気に見ていく構成です。このページでは、二次での出方、与件文の着眼点、情報整理の4手順、答案の型、混同・誤答しやすい点の順にまとめます。
二次での出方は大きく3パターン
聞き手の「二次ではどんな出方をするのか」という問いに、講師は大きく3パターンあると答えます。
- 課題の解決策として:「顧客の何割かが売上の大半を占めている」「限られた優良顧客に絞って対応したい」という課題が与件文に書かれていて、その解決策としてデシル分析を提案させる。
- 購買データの活用先として:POSシステムや会員カードのように、すでに購買データを取得できる仕組みが与件文に出てくる。「そのデータをどう活用するか」という設問への答えとして使う。
- 数値を読み取らせる:分析結果の数値そのものが与件文や設問に表として示され、それを読み取らせる。顧客ランクごとの売上構成比のような数値が出てきたら、このパターン。
データを持ってる、っていう記述があったら、それはもう使ってくれというサインなんですね。
そのとおりです。
手法を知ってるだけじゃなくて、数字を読む力も要るってことですね。
そうなんです。
与件文の着眼点は2つの軸
では、与件文のどんな記述が出たらデシル分析だと気づけるのか。講師は着眼点を2つの軸で整理します。
1つ目の軸は「使える状況を示す記述」です。顧客ごとの購入金額や購入履歴を記録しているという記述(先ほどのPOSデータや会員カードもここに入ります)と、顧客層によって購入金額に大きな差があるという記述の2つです。聞き手はこれを、データがあるという前提条件と、顧客ごとにバラつきがあるという状況の2つ、と受け止めました。
2つ目の軸は「分析結果の活用につながる記述」です。売上の大部分を一部の顧客が占めている、つまり上位の顧客層への依存度が高い状況を示す記述。それから、全顧客に一律の販促を行っていて、コストが見合っていないという弱みの記述です。
弱みの記述は、デシル分析の入り口になる
2つ目の軸の最後にある「一律の販促でコストが見合っていない」という弱みについて、聞き手が鋭い指摘をします。
「一律の販促でコストがかさんでいる」って、一見ただの弱みの記述に見えますけど、それがデシル分析を使う入り口にもなるんですね。
そこ、まさに見落としやすいポイントです。
講師によると、「コストが見合っていない」だけを弱みとして拾って終わると、次の一手が浮かびません。「顧客を絞り込めていないからコストが見合っていない」と読み替えられると、デシル分析で優良顧客層を絞り込む、という解答につながります。
なるほど、弱みの記述の裏側に、分析手法を使う理由が隠れてるってことですね。
そのとおりです。
弱みを「弱みだ」と拾うだけで終えず、「なぜそうなっているのか」まで読み替える。これが、与件文の短い一文から「使える」と気づく、ということの中身です。
着眼点を整理する4つの手順
着眼点が分かったら、情報を整理する手順に入ります。講師が挙げる手順は4つです。
| 手順 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 購入履歴データの有無を確認 | 分析の前提条件 |
| 2 | 購入金額の多い順に並べ、10等分 | デシルの発想 |
| 3 | 各ランクの売上高構成比を確認 | 貢献ランクの把握 |
| 4 | 上位ランクを合計して線引き | 優良 |
2つ目の「10等分」について、聞き手が文化祭の模擬店のたとえを出しました。来場者一人ひとりが使った金額を多い順に並べ、上から10人ずつのグループに区切っていくイメージです。
たとえば、文化祭の模擬店をイメージするとわかりやすいですか。来場者一人ひとりが使った金額を多い順に並べて、上から10人ずつのグループに区切っていく、みたいな。
いい例えですね。まさにそれです。100人来場者がいたら、上から10人ずつ、10個のグループに分ける。これがデシル、つまり10等分の考え方です。
3つ目は、グループごとにどれくらい使ってくれたかを見る手順です。文化祭の例で言えば、上位10人のグループだけで模擬店の売上の何割を作っているか、を見る感じだと講師は説明します。
4つ目が優良顧客層の決め方です。一般的には、売上高上位のランクを合計していって、全体の50%から80%を占めるあたりまでの顧客層を、優良顧客層として捉えます。講師の例は、仮に上位30人で売上の7割を作っていたら、その30人が優良顧客層になる、というものです。聞き手は「全体の3割ほどの人数で売上の大半を作っているから、絞り込んで対応する価値がある」とまとめました。
(補足:動画に数値の表はありません。講師の「上位30人で7割」に合わせた、自作の数値例です。100人を10人ずつ10ランクに分け、ランク別の売上構成比が下の表のとおりなら、上位3ランクの累計は35+20+15=70%になります。)
| ランク | 売上構成比 | 累計 |
|---|---|---|
| 1 | 35% | 35% |
| 2 | 20% | 55% |
| 3 | 15% | 70% |
| 4 | 10% | 80% |
| 5 | 7% | 87% |
| 6 | 5% | 92% |
| 7 | 3% | 95% |
| 8 | 2% | 97% |
| 9 | 2% | 99% |
| 10 | 1% | 100% |
10等分したランクを上から足していくと、どこで売上の何割に届くかが段階的に見えてきます。手順3・4で行うのは、まさにこの確認と線引きです。
「50%から80%」という幅をどう使うか
ここで聞き手が、もっともな疑問を出します。50%から80%という範囲に、なぜ幅があるのか。ちょうど50%や、ちょうど80%ではだめなのか、という問いです。
さっきの50%から80%っていう範囲、なんで幅があるんですか。ちょうど50%とか、ちょうど80%じゃダメなんですか。
与件文に出てくる顧客層のボリュームや、事例企業の状況によって、ちょうどいい線引きが変わるからです。
講師の説明では、「上位のごく一部が売上の大半を占めている」という記述が強ければ、より少人数側、つまり50%に近いところで区切る書き方もできます。
逆に、そこまで極端じゃなければ、80%に近いところまで含めて、少し広めに優良顧客層を取る、ということですね。
そのとおりです。与件文の記述の強さに合わせて、幅の中でどこに寄せるかを判断します。
線引きの考え方
- 50%寄り:「上位のごく一部が売上の大半を占める」という記述が強いとき。少人数側で区切る。
- 80%寄り:そこまで極端ではないとき。少し広めに優良顧客層を取る。
与件文にデータの記述があれば、「デシル分析によって優良顧客層を把握できる状況にある」と判断して、その先の販促提案につなげる。ここまでが、動画でいう情報整理の流れです。
答案の型は3段構え
情報整理の次は、答案にするときの型です。講師が示す骨格は、とてもシンプルです。
答案の骨格
「〜という購買データを活かし、デシル分析により購入金額の高い顧客層を把握したうえで、その優良顧客層に対して〜を行うことで、効果的な販売促進を実現する」
最初にデータの根拠、次にデシル分析で優良顧客層を把握、最後に具体的な施策、という3段構えですね。字数が短い設問と長い設問だと、書き方も変わってきますか。
変わります。
講師の書き分けはこうです。字数が短ければ、「デシル分析で優良顧客層を把握し、〜する」と施策まで一文に圧縮します。字数に余裕があれば、根拠になった与件文の記述、たとえば「一律の販促でコストが見合っていない」という弱みまで一言足すと、なぜその施策が必要かの説得力が増します。
短いときは結論だけ、余裕があれば根拠も足す、っていう順番で考えればいいんですね。
そうです。優良顧客層の把握と、その後の施策の2つは絶対に削らず、根拠の記述は字数に応じて足し引きする、というイメージで書いてください。
はい、優先順位が分かると迷わなそうです。
「デシル分析を行う」だけで終わらせない
講師が、ここで一番大事だと強調するのが、「デシル分析を行う」だけで答案を終わらせないことです。分析の結果、優良顧客層を把握できた。その後どんな施策につなげるかまで書いて、初めて設問に答えたことになります。
分析すること自体がゴールになっちゃいそうです。「デシル分析を実施する」で満足して、その先の特典とか優先案内とか、具体的な一手を書き忘れそうな気がします。
まさにそこが受験生がよくつまずくポイントです。分析はあくまで手段で、その先の「優良顧客に何をするか」まで書いて、初めて設問の要求に応えたことになります。
| 答案の書き方 | 評価 |
|---|---|
| 「デシル分析を実施する」で終わる | 施策がなく、設問の要求に応えていない |
| 優良顧客層を把握し、その層への施策まで書く | 設問の要求に応えている |
与件文に、優良顧客向けの特典とか会員ランクの仕組みがあれば、それを絡めて書くとより具体的になりそうですね。
そのとおりです。与件文にある販促の材料と、デシル分析で絞り込んだ優良顧客層を組み合わせて書けると、説得力のある答案になります。
混同・誤答しやすい3つのポイント
最後に、講師が整理した混同・誤答しやすい点が3つあります。
1つ目は、似た響きの別の分析手法との混同です。デシル分析は、購入金額だけを基準にするシンプルな手法です。一方で、直近の購入日や購入頻度など、複数の指標を組み合わせて顧客を評価する手法もあります。
名前も似てますし、どっちも顧客を分析するって意味では近いから、混ざりやすそうですね。
そうなんです。デシル分析は「購入金額のみ」で判定するシンプルな手法だ、という一点だけ、はっきり区別しておいてください。複数指標を組み合わせるタイプの手法は、また別の機会に扱います。
「デシル分析=購入金額の1軸だけ」というのを、まず刷り込んでおきます。
2つ目は、「デシル分析を行う」こと自体が目的化して、分析後の販促施策を書かない誤答です。分析は手段で、目的は優良顧客への効果的な販促だという順番を忘れないでください、と講師は念を押します。聞き手は「さっきの3段構えの型を思い出せば大丈夫そう」と話していました。
3つ目は、「10等分する」という手順だけを丸暗記して、目的を理解していないケースです。10等分するのは、売上構成比を段階的に把握して、優良顧客層の範囲をどこまでにするか特定するためです。聞き手は、段階的に見ていくことで、どこで線を引くかを決めやすくする、という狙いまで理解しておく、と言い直しています。
| 誤り | 正しい理解 |
|---|---|
| 似た手法との混同 | 購入金額のみで判定するシンプルな手法 |
| 分析が目的化 | 分析は手段。目的は優良 |
| 10等分の丸暗記 | 段階的に把握し、優良 |
まとめ
動画の整理
- 二次での出方は3パターン:課題の解決策として/購買データの活用先として/分析結果の数値を読み取らせる
- 与件文の着眼点は2軸:使える状況を示す記述(購入履歴の記録、顧客層による金額の差)と、分析結果の活用につながる記述(上位層への依存度、一律販促でコストが見合わない)
- 整理は4手順:データの有無の確認、10等分の発想、売上高構成比の確認、上位ランクの合計で優良顧客層を決める(一般的には50%から80%)
- 答案は3段構え:購買データの根拠、デシル分析で優良顧客層を把握、具体的な施策。把握と施策は削らず、根拠は字数に応じて足し引きする
- 誤答は3つ:似た手法との混同(デシル分析は購入金額のみ)、分析の目的化、10等分の丸暗記
動画の最後に、講師はこう話します。与件文で購買データの存在と顧客層の売上依存度に気づくこと、10等分して優良顧客層を絞り込む手順を押さえること、そして分析結果を必ず具体的な施策に結びつけて答案にすること。この3つが身につけば、デシル分析はもう怖くありません。与件文のちょっとした一文を見逃さないように、今日の内容を意識して過去問に当たってみてください。
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