顧客関係性の強化
事例Ⅱ 第28回
「事例Ⅱでほんとうによく出てくる論点を扱いたいんですけど、知識としては知ってるはずなんですよね」。動画は、知っているのに本番だと使えていない、という話から始まります。このページでは、顧客関係性の強化の出方、与件文の着眼点、4つの型、解答の組み立て方、混同しやすい誤答、本番での使い方を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知っているのに、本番で使えない論点
動画は、事例Ⅱでほんとうによく出てくる論点を扱います、という切り出しから始まります。講師は「知識としては知ってるはずなんですよね」と言い、聞き手は「知ってるのに本番だと使えてないやつです」と答えます。今回の論点は顧客関係性の強化。既存のお客さんとの関係を深めていく話です。
講師によると、これは新規顧客の獲得とは別の切り口です。二つは似ているようで、まったく別の打ち手だと言います。新規獲得は「まだ取引のない人にどう来てもらうか」、関係強化は「もう取引がある人と、どう深く付き合っていくか」です。
そう言われると当たり前なんですけど、与件文を読んでいるときに「これは関係強化の問題だ」って気づけるかどうかで、本番は差がつく気がします。
そのとおりです。今日はまさにそこ、「二次の現場でどう見抜いて、どう使うか」に絞って話していきます。
このページでは、動画の流れにそって、この論点の出方、与件文の着眼点、頭の中の整理、解答の組み立て方、誤答しやすいポイント、本番での使い方の順にまとめます。
この論点は二次でどう出てくるか
講師が最初に挙げた典型パターンは、与件文の書き方です。事例Ⅱの与件文は、「顧客は〜だが、そのうち一部の顧客は〜」のように、同じお客さんの中でも関係の深さに差がある書き方をされることが多いと言います。その差を埋める、広げるという施策を問われるのが典型パターンです。
もう一つは、与件文のSWOTを見て、新規獲得と関係強化のどちらに軸足を置くべきかを判断させる問題です。こちらも多いとのことです。
それって、どこを見て判断すればいいんですか。
固定客が多いとか、口コミで評判になっているとか、そういう強みの記述があるかどうかです。そういう記述が厚ければ、既存顧客との関係を軸にした提案が求められている可能性が高いんです。
さらにもう一つ、会員カードやポイント制度の導入可否、DMや訪問の頻度といった、具体的なコミュニケーション施策を提案させる設問の根拠としても、この論点は使われます。
| 出方 | 問われること |
|---|---|
| 関係の深さに差がある書き方 | その差を埋める・広げる施策 |
| 与件文のSWOT | 新規獲得と関係強化のどちらに軸足か |
| 具体的なコミュニ | 会員カード・ポイント制度の導入可否、DMや訪問の頻度の根拠 |
それ、私まさに本番で「何を根拠に会員カードを勧めればいいか分からない」ってなったことあります。
それ、今日の話を聞いたらすっきりすると思いますよ。
与件文の着眼点は3パターン
では、与件文のどこを見るのか。講師が挙げた記述は3種類です。
1つ目は、「関係がまだ浅い」ことを示す記述です。一見客が多い、リピート率が低い、顧客との接点が少ない、といった記述を探します。誰が何を買ったかという顧客情報を管理できていない、という弱みの記述もこれにあたります。
それは、関係強化がまだできていない、つまり伸びしろがあるっていうサインですね。
そのとおりです。
2つ目は、「関係を強める資源がすでにある」ことを示す記述です。店主や従業員が顧客と会話している、顔なじみの顧客がいる、といった人的な接点の記述。それから、顧客台帳や会員情報など、接触を続けるための手段がすでにある記述です。
講師は、「口コミで新規客が来ている」という記述も、実は「関係が深い顧客がすでに存在する証拠」だと言います。口コミをするお客さんは、相当その店を気に入っているはずだからです。
へえ、そう考えると、一つの記述からいろんなことが読み取れるんですね。
そうなんです。
3つ目は、「関係強化の具体的な打ち手につながる」記述です。定期的に顧客の元へ出向いている、DMを送っているといった継続的接触の記述。ポイントカードやスタンプカードなど、企業側がすでに持っている仕組みの記述。小売なら、売場や品揃えを頻繁に見直している、という鮮度維持の記述です。
見つけるべき記述の種類が三パターンあるってことですね。関係が浅いサイン、関係を強める資源がすでにあるサイン、そして具体的な打ち手につながるサイン。
整理が早いですね。まさにその三つです。
頭の中の整理:顧客の仕分けと4つの型
この3つのサインを、頭の中でどう整理するか。講師の手順はこうです。まず、与件文中の顧客像を「新規顧客」と「既存顧客」に仕分けます。そのうえで既存顧客については、関係の深さ、つまり一見客に近いのか、支持者に近いのかを意識しながら読みます。
顧客をまず二種類に分けて、既存顧客はさらに深さで見る、と。
そうです。
次に、関係を強める打ち手を4つの型に当てはめて整理します。
- 人的コミュニケーション:会話や接客を通じた関係構築
- 継続的な接触:訪問、DM、メールなど、顧客に定期的に働きかける仕組み
- ロイヤルティプログラム:ポイントやスタンプなど、継続利用を促す仕組み
- 売場・品揃えの鮮度維持:小売の場合に限る。来店のたびに新しい発見がある状態を保つこと
この四つの型、さっきの記述とつながってますよね。人的コミュニケーションなら会話の記述、継続的接触ならDMの記述、ロイヤルティプログラムならポイントカードの記述、売場の鮮度維持なら品揃えの記述。
そのとおりです。
講師は、闇雲に「関係強化しましょう」と書くのではなく、与件文にある事実をこの4つの型に振り分ける作業が本番の作業だと言います。
もう一つ大事なのが、与件文にすでにある資源の使い方です。顧客台帳や接客力の高さなどは、関係強化策の実現可能性を裏付ける根拠として使えます。資源と施策を結びつけて書くと、説得力が上がります。
| 与件文にある資源 | 結びつけて書く施策 |
|---|---|
| 顧客台帳 | 購買履歴を使ってDMを個別化できる |
| 接客力の高い従業員 | 人的コミュニ |
たとえるなら、家にある材料だけで料理を作るような感じですかね。冷蔵庫にあるものを組み合わせれば、ちゃんとおいしい一品になる。
いいたとえですね。まさにそれです。
たとえ:冷蔵庫の中身
与件文にある「冷蔵庫の中身」を活かして施策を組み立てるのが、二次試験の解答の基本姿勢だと講師は言います。冷蔵庫にないものを使った料理は作れません。だから、与件文にない資源を勝手に足してはいけません。
解答の組み立て:強み・対象顧客・打ち手・効果
では、実際にどう解答に落とし込むか。講師が示した型は次のとおりです。
関係強化の施策を答えさせる問題の型
「〜という強み、例えば顧客台帳や接客力を活かし、〜という顧客、つまり既存顧客に対して、継続的な接触やロイヤルティプログラムなどを行うことで、関係を強化し、リピートや口コミによる新規顧客獲得につなげる」
順番は、強み、対象顧客、打ち手、効果です。
あ、私まさに「関係を強化する」って書いて満足しちゃってました。
それ、けっこう多いパターンです。設問が効果を問うている場合、関係強化そのものはあくまで手段であって、目的はその先にあるんです。
講師が挙げた目的は大きく3つです。1つ目はリピート。2つ目は製品開発で、顧客との関係から得た情報を製品開発に活かすということです。3つ目は口コミによる新規顧客獲得です。
リピートと口コミは分かるんですけど、製品開発っていうのは意外でした。
顧客と関係が深くなるほど、その顧客が何を求めているか、どんな不満を持っているかっていう情報が入ってくるようになります。それを次の商品づくりに活かす、っていう発想です。関係強化は接客だけの話じゃなくて、情報の入り口を作ることでもあるんです。
なるほど、関係を深めることで得られる情報そのものが価値になる、ってことですね。
そういうことです。
講師は、この三つのどれに当てはまるかを意識して、解答の最後に書き添えるだけで、設問の要求に応える解答になると言います。
もう一つの注意は、打ち手の書き方です。「顧客とのコミュニケーションを増やす」のような抽象的な書き方だと点が伸びにくいので、誰が・どんな手段で接触しているかという与件文の事実を必ず入れてください、と講師は言います。
抽象的な言葉で終わらせずに、具体的な資源の名前を出す、ってことですね。
そうです。
混同・誤答しやすい3つのポイント
ここからは、混同・誤答しやすいポイントです。講師は3つ挙げます。
1つ目は、新規顧客の獲得策と既存顧客の関係強化策を混同することで、これが一番多いそうです。与件文が既存顧客の記述を厚く書いている場合は、関係強化が主題であることが多い。それに気づかずに、広告やSNS発信のような新規顧客獲得の一般論だけで答えると、与件文の強みを活かせていない解答になります。
それ、最初に話していた「二つは別の打ち手」っていう話につながりますね。
つながります。だからこそ、最初に与件文の強みの記述を見て、どっちに軸足があるかを判断する作業が大事なんです。
2つ目は、ロイヤルティプログラムの導入自体を目的化してしまうことです。ポイントカードやスタンプカードを「導入します」で終わらせてしまう。
それ、施策を答えろって言われたら、施策を書いて終わりにしちゃいそうです。
そうなんですよ。本来の目的はリピートや口コミ、追加購入であって、制度の導入はあくまで手段です。
講師は、解答の因果関係の中に、その先の効果まで明示することが大事だと言います。
3つ目は、関係強化の打ち手を抽象的に書いてしまうことです。「顧客とのコミュニケーションを増やす」のような書き方は、与件文にある具体的な資源に紐づけて、実行可能な打ち手として書くことが大事です。
| 誤答 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 新規獲得と混同 | 広告・SNSなど新規獲得の一般論だけになる | 強みの記述を見て軸足を判断 |
| 導入の目的化 | 「導入します」で終わる | リピート・口コミ・追加購入まで書く |
| 打ち手の抽象化 | 「コミュニ | 与件文の資源に紐づける |
三つとも、共通しているのは「与件文の具体性を無視して、一般論に逃げてしまう」ことな気がします。
いいまとめ方ですね。新規顧客獲得との混同も、目的化も、抽象化も、全部「与件文を読み込まずに、頭の中の一般論だけで書いてしまう」ことから起きるんです。逆に言うと、与件文の記述を拾って四つの型に当てはめて、強み・対象・打ち手・効果の順で書けば、この誤答は避けられます。
本番でどう使うか:最後の整理
動画の終盤、聞き手が「本番でどう使うか、最後に整理してもらえますか」と頼み、講師が手順をまとめます。
講師の最後の整理
- 既存顧客の記述が厚いか、固定客・口コミといった強みの記述があるかをチェックする。あれば、新規獲得より関係強化が軸になっている可能性が高い
- 関係が浅いサイン、関係を強める資源がすでにあるサイン、具体的な打ち手につながるサインの3つを与件文から拾う
- それを人的コミュニケーション、継続的接触、ロイヤルティプログラム、売場の鮮度維持の4つの型に当てはめる
- 強み・対象顧客・打ち手・効果の順で解答を組み立て、必ずリピートや口コミなど先の効果まで書く
- 最後に、新規獲得との混同、施策の目的化、打ち手の抽象化に陥っていないか見直す
まとめ
動画の整理
- 顧客関係性の強化は、既存顧客と深く付き合う話。新規顧客の獲得とは別の打ち手
- 与件文では、関係の深さに差がある書き方や、固定客・口コミなどの強みの記述が手がかりになる
- 拾う記述は3種類:関係が浅いサイン、関係を強める資源がすでにあるサイン、具体的な打ち手につながるサイン
- 打ち手は4つの型(人的コミュニケーション、継続的接触、ロイヤルティプログラム、売場・品揃えの鮮度維持)で整理し、与件文の資源と結びつける
- 解答は強み、対象顧客、打ち手、効果の順。効果はリピート、製品開発、口コミによる新規顧客獲得
- 誤答は3つ:新規獲得との混同、施策の目的化、打ち手の抽象化
動画の最後に、聞き手は「知識として知っているだけじゃなくて、与件文を見てすぐに使える形になった気がします」と話しています。与件文の事実を拾い、型に当てはめ、強み・対象顧客・打ち手・効果の順で、先の効果まで書く。この流れを頭に入れておけば、「これは関係強化の問題だ」と気づいたときに、迷わず答案を組み立てられます。
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