顧客識別マーケティング
事例Ⅱ 第32回
「顧客識別マーケティングって聞いたことありますよね」。動画は、講師のこんな問いかけから始まります。意味は分かっていても、二次の与件文でどう見抜き、どう解答に使うかとなると迷う人が多い。優良顧客を大事にする、だけで終わらせると取りこぼすものがある、という話です。このページでは、動画の流れにそって、与件文の着眼点、データの有無と三段階の整理、答案の型、誤答しやすいポイント、本番での使い方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「優良顧客を大事にする」だけで終わらせない
動画は、講師が聞き手に「顧客識別マーケティングって聞いたことありますよね」と尋ねるところから始まります。聞き手の答えは、「お客さんを一律に扱わないで、ランク分けするみたいな話ですよね」。意味は分かっている、という状態です。
ところが講師は、二次試験の与件文の中でこれをどう見抜き、どう解答に使うかとなると、迷う人が多いと言います。聞き手も「それ、まさに私です」と認めます。知識としては「優良顧客を大事にしましょう」という話に見えてしまい、それ以上どう掘り下げればいいのか分からない、というのです。
知識としては「優良顧客を大事にしましょう」ってだけの話に見えちゃって、それ以上どう掘り下げればいいのか分からないんですよね。
実は「優良顧客を大事にする」だけで終わらせると、この論点の一番おいしいところを取りこぼしちゃうんです。今日はそこを一緒に見ていきましょう。
このページでは、動画の流れにそって次の順にまとめます。
- 事例Ⅱの与件文や設問で、この論点がどう出てくるか
- 与件文のどこを見て気づくか(探す記述は三つ)
- 整理の仕方(データの有無の確認と、データがある場合の三段階)
- 答案の型と、「識別して終わり」にしない理由
- 混同・誤答しやすい三つのポイントと、似た言葉との違い
- 本番での使い方(五つの確認)
講師が一貫して言うのは、「顧客を識別する」で終わらせず、識別したあとにどう対応を変えるか、層ごとの施策の差まで書く、という一点です。これが今日の軸になります。
事例Ⅱでどう出てくるか
まず、この論点が二次試験でどう出てくるかです。講師によると、事例Ⅱの与件文は「一部の顧客が売上の大半を占めている」「顧客ごとに来店の頻度や購入金額の差が大きい」といった書き方をされることが多いそうです。
あー、それ読んだ記憶あります。常連さんが何度も出てくる書き方とか。
そうです。同じ顧客が繰り返し登場する記述も、実はヒントなんですよ。
設問の側では、会員カードやポイントカードの活用方法を問う設問でも、この考え方が根拠になることが多い、と講師は言います。
会員カードの設問って、「導入しましょう」で終わらせがちな気がするんですけど、それだと足りないってことですか。
まさにそこが今日のポイントの一つです。あとで詳しく話しますね。
もう一つ大事なのは、限られた経営資源をどこに集中投下すべきか、という事例Ⅱ全体の考え方と結びつくことです。人も金も情報も限られている中小企業が、全顧客に同じだけ手をかけるのは非効率です。だから優良な層に絞って手厚くする、という発想が土台にあります。
なるほど、事例Ⅱ全体の「強みを機会にぶつける」っていう考え方の、顧客版みたいなイメージですね。
そのとおりです。
与件文の着眼点:探す記述は三つ
次は、与件文のどこを見てこの論点だと気づけばいいかです。講師が挙げた、探すべき記述は大きく三つあります。
- 購買実績に差があることを示す記述:購入頻度や購入金額に幅がある書き方、常連客・優良顧客の存在をうかがわせる書き方。
- 識別に使えるデータがすでにあることを示す記述:会員カードやポイントカードで購買履歴を記録している、顧客データベースや顧客台帳を持っている、という記述。事例Ⅱの強みとしてよく出てきます。
- 識別の結果を使った販促の余地を示す記述:全顧客に一律の販促(チラシ配布など)を行っていてコストに見合っていない、顧客ごとの違いを踏まえた提案ができていない、という弱みの記述。
同じお客さんが繰り返し来店・購入している、みたいな記述ですね。
そうです。
あ、顧客台帳って強みの記述としてよく見る気がします。
いいところに気づきましたね。まさにそれです。
一律にお金をかけてるけど効果が薄い、っていう弱みが書いてあったら、それは識別マーケティングを提案する伏線だってことですね。
そういうことです。
三つが揃って出てくるとは限りません。講師は、この三種類のどれかが目に入ったら、この論点を疑ってほしいと言います。
整理の仕方:まずデータの有無を確認する
記述を見つけたあとの整理です。聞き手は「ばらばらに拾っただけだと答案にまとめにくい気がします」と尋ねます。講師が一番最初にやることとして挙げたのは、与件文に顧客を識別できるデータがあるかどうかの確認です。
データがなければ、いきなり識別マーケティングを提案するのは早すぎます。その場合は、まずデータを蓄積する仕組み、たとえば会員カードの発行を提案する必要があります。
あ、それ意外でした。てっきり識別マーケティングって、いきなり「優良顧客に手厚くしましょう」って書けばいいのかと思ってました。
そこがまさに落とし穴なんです。データがなければ、優良顧客が誰かも分からないですから。順番を飛ばして書くと、根拠のない提案になってしまいます。
データがなければ、仕組みの提案が先
優良顧客が誰かも分からない状態で「優良顧客に手厚く」と書くと、根拠のない提案になります。まずデータを蓄積する仕組みから提案します。
データがある場合は、三段階で整理します。
| 段階 | やること |
|---|---|
| ① 把握 | 顧客層別の売上構成比を見て、どの層が売上に貢献しているかを把握する |
| ② 特定 | 優良顧客層を特定する |
| ③ 設計 | 層ごとに異なる販促を設計する(優良顧客には手厚い特典、そうでない層には来店促進策) |
構成比を見て、優良層を特定して、層ごとに施策を変える。この三段階が骨組みなんですね。
そうです。
この構成比を数値で捉える具体的なやり方として、講師はデシル分析、RFM分析、FRAT分析といった手法の名前を挙げます。ただし動画では、全体の手順と目的に絞って話すとして、それぞれの細かいやり方は別の機会に扱うと断っています。今は「そういう物差しを使って顧客を数値で見る」というイメージだけ持っておけば大丈夫、とのことです。
答案の型:識別で終わらせず、対応の差まで書く
三段階を踏まえて、答案にどう落とし込むか。聞き手の問いに、講師は型を示します。「顧客台帳や購買履歴データという強みを活かし、購買実績に応じて顧客を層別化し、優良顧客層には特典や限定案内などを提供して関係を強化する一方、それ以外の層には来店を促す施策を行うことで、限られた経営資源を効果的に配分する」という流れです。
強み、層別化、優良層への施策、それ以外の層への施策、そして資源配分の効果、っていう順番ですね。
そうです。ここで一番大事なのが、「顧客を識別する」で終わらせないことです。識別した後にどう対応を変えるか、層ごとの施策の差まで書く。ここまで書けて初めて、実戦的な答案になります。
あ、私まさに「識別しましょう、以上」で止まっちゃうタイプです。
それ、けっこう多いパターンです。
答案の骨組み(講師の型)
- 強み:顧客台帳や購買履歴データ
- 層別化:購買実績に応じて顧客を分ける
- 優良顧客層には、特典や限定案内などで関係を強化
- それ以外の層には、来店を促す施策
- 効果:限られた経営資源を効果的に配分する
行きつけのカフェで考える
「識別して終わりにしない」というイメージを、講師は行きつけのカフェにたとえます。常連さんには、レジで何も言わなくても季節のドリンクのことをそっと教えてくれる。逆に初めて来た人には、店の入り口でメニューの説明をしっかりしてくれる。
あー、確かに。同じお店でも、お客さんによって声のかけ方が違いますね。
そうなんです。それって、店員さんが頭の中で「この人は常連、この人は初めて」って識別して、対応を変えているからなんですよ。
講師はこう続けます。識別マーケティングも同じで、識別すること自体がゴールなのではなく、識別した結果に応じて対応を変えるところまでがワンセットです。聞き手も「識別で終わらせずに、対応の差までセットで答えるってことですね」とまとめています。
混同・誤答しやすい三つのポイント
その流れで、講師は混同・誤答しやすいポイントを三つ挙げます。
一つ目は、顧客識別マーケティングと、単なる会員カードの導入提案を同一視することです。会員カードはあくまでデータを集める手段の一つにすぎません。識別マーケティングの本質は「識別した結果に応じて対応を変える」ことにあります。
会員カードを「作りましょう」で終わらせちゃうと、識別マーケティングとしては半分しか答えてないってことですね。
そのとおりです。会員カードで集めたデータを使って、その後どう層別に対応を変えるかまで書いて、初めて識別マーケティングの答案になります。
二つ目は、優良顧客層だけに注目して、それ以外の顧客層への対応を書き忘れることです。切り捨てるのか、底上げを図るのか、そこまで考えて書く必要があります。優良顧客には特典で関係を強化する一方、それ以外の層にも来店を促す施策を用意する。両方の層への対応を答案に入れることが大事です。
それ以外の層って、
そうです。
優良層だけ
なりやすいです。
三つ目は、デシル分析やRFM分析、FRAT分析といった分析手法の名前だけを書いて、それを使って何をするのかを説明しないことです。名前を知っているとつい書きたくなる、と聞き手も共感します。しかし大事なのは、その分析を使って層別化し、その後どう対応を変えるかという中身の方で、手法名を書くこと自体が目的ではありません。
手法名は、あくまで層別化のための道具の一つであって、答案の主役はその先の対応の差、ってことですね。
そういうことです。
| 誤り | 足りないこと |
|---|---|
| 会員カード導入の提案だけ | データを使って、層別に対応を変えるところ |
| 優良顧客層だけに注目 | それ以外の層への対応 |
| 分析手法名だけを書く | それを使って何をするか(層別化と対応の差) |
似た言葉との違い:市場を区切る考え方
講師は、似たような言葉として、市場全体をいくつかのグループに区切る考え方もあると触れ、あれとの違いも意識しておくといい、と言います。聞き手が整理した違いは次のとおりです。
市場全体をこれから狙う相手として区切るのと、すでに来てくれているお客さんを買い方の実績で見分けるのとでは、対象にしている顧客の範囲が違いますよね。
いいところに気づきました。まさにそこです。
講師の説明では、市場を区切る話は、まだ取引のない見込み客も含めて、これから誰を狙うかという話が中心になりやすい。これに対して顧客識別マーケティングは、すでに取引実績のある既存顧客を、実際の購買データにもとづいて見分けるという点が特徴です。対象と、使う材料が違います。
なるほど、混同しやすいですけど、範囲がずれると答案の方向もずれちゃいそうですね。
そのとおりです。だからこそ「識別して終わり」じゃなくて、その先の対応の差まで意識して答案を組み立ててほしいんです。
答案を書いたあとの見直し
- 会員カード導入の提案だけで終わっていないか
- 優良層だけでなく、それ以外の層への対応も入っているか
- 分析手法の名前だけでなく、それを使って何をするかが書かれているか
まとめ:本番での使い方、五つの確認
最後に講師は、今日の内容を本番でどう使うかを五つに整理します。聞き手も一つずつ「一つ目、三種類の記述のチェックですね」と受けていました。
動画の整理
- 与件文で三種類の記述をチェックする:購買実績の差を示す記述、識別に使えるデータの記述、一律の販促がコストに見合っていないという記述
- 識別に使えるデータが与件文にあるかを確認する。なければ、まずデータを蓄積する仕組みの提案が先
- データがある場合は、構成比の把握、優良顧客層の特定、層別の販促設計という三段階で情報を整理する
- 答案は、強み、層別化、優良層への施策、それ以外の層への施策、資源配分の効果の順に組み立て、「識別する」で終わらせずに対応の差まで書く
- 書いたあとに、会員カード導入との混同、優良層だけへの偏り、分析手法名だけの記述、この三つの誤答パターンに陥っていないか見直す
講師は、この五つを頭に入れておけば、与件文の中で「これは顧客識別マーケティングの問題だ」と気づいたときに、対応の差までちゃんと書ける答案が組み立てられるはずだと言います。聞き手は最後に「知識として知ってるだけじゃなくて、与件文を見てすぐに使える形になった気がします」と話していました。識別で止まらず、対応の差まで書く。この一点を持って本番に臨みましょう。
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