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社会保険労務士試験

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老齢厚生年金の支給繰上げとは?65歳前にもらえる4つの区分と減額率

厚生年金保険法 043 老齢厚生年金 Part1914分35秒2026年9月5日公開

「突然ですけど、年金って65歳にならないともらえないって思ってません?」。動画はこんな問いかけから始まります。実は、条件を満たせば65歳より前に、老齢厚生年金を前倒しで受け取れる制度があります。それが支給繰上げです。このページでは動画の流れにそって、繰上げができる人の条件、生年月日による4つの区分、減額率、請求のルールをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

3行でいうと

  • 60歳以上65歳未満で、被保険者期間があり、国民年金の任意加入被保険者でない人は、65歳前に老齢厚生年金の繰上げ請求ができます。
  • 対象は生まれた年月日と立場で4つの区分に分かれます。減額は、早めた1か月あたり0.4%です。
  • 請求は同時に行うのがルール。繰上げ後、65歳に達するまでは年金額は改定されません。

年金は65歳から?前倒しでもらう「繰上げ」

老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取ります。ただし、60歳台前半で一定の要件を満たしていれば、65歳より前に前倒しで受け取れる制度があります。これが老齢厚生年金の支給繰上げです(厚生年金保険法附則7条の3)。早くお金をもらえるのは魅力ですが、誰でもできるわけではありません。動画のとおり、まずは4つの区分すべてに共通する前提から見ていきましょう。

4つの区分に共通する3つの前提

  • 被保険者期間を有していること
  • 60歳以上65歳未満であること
  • 国民年金の任意加入被保険者ではないこと

任意加入被保険者とは、加入義務がないのに、自分の意思で国民年金に加入している人のことです。繰上げ制度は、その人たちには使えません。

さらに、手続きには期限と条件があります。繰上げの請求は、65歳に達する前に実施機関へ行う必要があります。65歳になったら、もう請求できません。また、請求日の前日の時点で老齢厚生年金の受給資格期間(10年)を満たしていないと、請求そのものができません。

60歳前請求できる期間65歳〜60歳65歳請求は不可請求した月から支給開始(年金額は減額される)65歳の翌月に改定
請求できるのは65歳になる前まで。ギリギリまで迷って65歳になると、もう請求できません。

65歳ギリギリまで迷っていたら、どうなりますか?

65歳に達したら、もう繰上げの請求はできません。請求できるのは65歳になる前までです。また、請求日の前日に受給資格期間を満たしていない場合も、早くもらう権利そのものが発生しません。

生まれた年月日で分かれる4つの区分

共通の前提を満たしたうえで、次の4つのどれかに当てはまる必要があります。

生まれた年月日の基準(〜以後に生まれた人)①男性/2〜4号の女性(公務員・私学教職員)昭和36年4月2日以後②第1号の女性(民間企業の会社員)昭和41年4月2日以後③坑内員・船員(合算して15年以上)昭和41年4月2日以後④特定警察職員等(警察官・消防吏員など)昭和42年4月2日以後重なる人は、③④が優先(①②から除かれる)
生年月日が4つとも違います。重なるときは、後ろの③④に振り分けられます。

① 男性、または第2号〜第4号の厚生年金の女性(昭和36年4月2日以後生まれ)

男性は職業を問わず全員、女性は公務員や私学教職員など第2号〜第4号厚生年金被保険者であった(である)人が対象です。第1号は民間企業の会社員、第2号〜第4号は公務員や私学教職員という整理でしたね。

② 第1号厚生年金の女性(昭和41年4月2日以後生まれ)

民間企業で働いてきた女性は、公務員などの女性より、支給開始年齢の引上げのスケジュールが5年ほど遅れて進んでいます。だから生年月日の基準も、昭和36年ではなく昭和41年になります。試験では「第1号か、それ以外か」で基準が変わると押さえておくと整理しやすいです。

③ 坑内員・船員の期間が合算15年以上(昭和41年4月2日以後生まれ)

坑内員(鉱山などの坑内で働く人)であった期間と船員であった期間は、合算して15年以上あればよいのがポイントです。体力的な負担が大きい仕事なので、独自の基準が設けられています。

④ 特定警察職員等(昭和42年4月2日以後生まれ)

警察官は警部以下、皇宮護衛官は皇宮警部以下、消防吏員は消防司令以下、常勤の消防団員は副団長以下の階級で、引き続き20年以上その職務に就いていた人たちです。危険と隣り合わせの職務なので、独自の基準があります。

①と②に当てはまる人でも、③④に当てはまる人はそちらが優先され、①②からは除かれます。③と④の両方に当てはまる人は、④が優先されて③からは除かれます(条文で③に「次号に掲げる者を除く」とあるためです。動画では③の人が④から除かれるように聞こえますが、条文は逆です)。①〜④は、昭和36年、昭和41年、昭和41年、昭和42年と、だんだん新しくなっているのが特徴です。

もう一つ:支給開始年齢が引き上げられる世代の繰上げ

動画では「発展的な内容」として、報酬比例部分のみの60歳台前半の老齢厚生年金を受けている人のうち、支給開始年齢が段階的に引き上げられる世代の繰上げも紹介されました(附則13条の4)。この人たちも国民年金の任意加入被保険者でないことが条件で、その人ごとに引き上げられた支給開始年齢に達する前に請求します。世代は、男性と第2号〜第4号の女性が昭和28年4月2日〜昭和36年4月1日生まれ、第1号の女性が昭和33年4月2日〜昭和41年4月1日生まれ、特定警察職員等が昭和34年4月2日〜昭和42年4月1日生まれです。①②④のちょうど前の世代にあたる「移行期」の人たちですね。

なお、法律の附則8条の2には、動画で触れていない坑内員・船員の移行期の世代(昭和33年4月2日〜昭和41年4月1日生まれ)も定められています。名前だけ、頭の隅に置いておきましょう。

早くもらうと、年金額は減る

前倒しでもらうと、その分年金額は減ります。繰上げ請求をした人の老齢厚生年金の額は、本来の額から政令で定める額を差し引いた額になります(附則7条の3第4項)。この減額率は、老齢基礎年金の繰上げと同じで、1か月あたり1000分の4(0.4%)です。

  • 1年(12か月)早める:0.4%×12か月=4.8%の減額
  • 5年(60か月)早める:0.4%×60か月=24%の減額(65歳からの額の約4分の3)
減額される割合(65歳からの額に対して)青=1か月0.4%(今の減額率)黄=1か月0.5%(昭和37年4月1日以前生まれ)1年早める(12か月)4.8%6%5年早める(60か月)24%30%
青が今の0.4%、黄が昭和37年4月1日以前生まれの人の0.5%。早めた月数に比例して減ります。

たとえば

月々の年金額が10万円だとして、60か月早めて請求すると、24%減って約7万6,000円になります。この減額は、原則として一生続きます。だから、早めるかどうかは慎重に考えたいところです。

動画にない補足:0.5%だった時期があります

この減額率は、令和4年(2022年)4月に見直されました。それまでは1か月あたり0.5%(5年早めると30%)でしたが、令和4年4月から0.4%になっています(厚生年金保険法施行令6条の3)。ただし、昭和37年4月1日以前に生まれた人は、従来どおり0.5%のままです。令和9年度の試験に向けては、「今の減額率は1か月0.4%」で問題ありませんが、過去問では0.5%と書かれた問題を見ることもあるので、時期の違いを知っておくと安心です。

請求のルール:同時に、セットで

繰上げ請求には、大事なルールが2つあります。

  • 2以上の種別の被保険者期間を持つ人(たとえば会社員期間と公務員期間の両方がある人)は、それぞれの種別に対応する繰上げ請求を同時に行う。
  • 老齢基礎年金の繰上げ請求もできる状況なら、老齢厚生年金の繰上げ請求は、老齢基礎年金の繰上げ請求と同時に行う(附則7条の3第2項)。
請求するなら、同時に(セットで)老齢厚生年金第1号の期間老齢厚生年金第2〜4号の期間+老齢基礎年金(繰上げできる状況なら)
厚生年金の種別ごとの請求も、基礎年金の請求も、バラバラにはできません。

厚生年金だけ先に繰上げて、基礎年金は65歳から普通にもらうことはできませんか?

それはできません。両方繰上げできる状況なら、必ずセットで請求します。会社員期間の分と公務員期間の分も、バラバラのタイミングでは請求できません。

繰上げしたあとの年金額の改定

繰上げ請求をして年金をもらい始めたあとも、被保険者期間があった人(在職して働き続けた人など)が65歳に達したときは、年金額が改定されます。65歳に達した月の前月までの被保険者期間を年金額の計算の基礎にして、65歳に達した月の翌月から改定します(附則7条の3第5項)。

そして、この人が65歳に達していない間は、いわゆる退職時改定の規定は適用されません。つまり、65歳になるまで、年金額の改定は行われません。退職時改定とは、働きながら年金をもらっている人が退職などで被保険者資格を失ったときに、それまでの被保険者期間を反映させて年金額を改定する仕組みのことです。繰上げ受給中は、働き続けても年金額はいったん据え置かれ、65歳になったタイミングでまとめて反映されると考えましょう。

まとめ

  • 繰上げは、60歳以上65歳未満・被保険者期間あり・任意加入被保険者でない人が、65歳に達する前に請求できる制度。
  • 4つの区分は、男性・第2〜4号の女性(昭和36年4月2日以後)、第1号の女性(昭和41年)、坑内員・船員(昭和41年)、特定警察職員等(昭和42年)。重なるときは後ろが優先。
  • 減額率は1か月0.4%(昭和37年4月1日以前生まれは0.5%)。種別ごと・基礎年金とは同時請求。65歳になるまで退職時改定なし、65歳の翌月に改定。

試験ではここに注目

  • 区分ごとの生年月日(昭和36年・41年・41年・42年、いずれも4月2日以後)を区別できるように。第1号かそれ以外かで基準が変わる点が狙われます。
  • 2以上の種別の請求は同時。老齢基礎年金の繰上げ請求もできるときは、同時に請求する。
  • 減額率は1か月あたり1000分の4。12か月で4.8%、60か月で24%と計算できるように。
  • 繰上げ受給者が65歳に達したら、65歳に達した月の翌月から改定。65歳になる前は、退職時改定の規定は適用されない。
  • 受給資格期間を満たしていないと請求できない(請求日の前日で判定)。任意加入被保険者は請求できない。
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