クフウヤ聞き流しラボWebテキスト(無料)NEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

マンデル・フレミングモデルの政策効果

経済学・経済政策 第53回

経済学・経済政策・国際経済学 00614分59秒2026年3月29日公開

「政府が景気を良くしようと何兆円もの税金を公共事業に注いだのに、経済への効果が真のゼロになってしまう。そんな信じられない現象が、ある条件のもとでは数学的に証明されてしまうんです」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、完全資本移動のもとでの変動相場と固定相場、財政政策と金融政策の4つのシナリオをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

何兆円も使った公共事業が、効果ゼロになる?

「政府が景気を良くしようと何兆円もの税金を公共事業に注いだのに、経済への効果が真のゼロになってしまう。そんな信じられない現象が、ある条件のもとでは数学的に証明されてしまうんです」。動画は、こんな驚きの問いかけから始まります。今回の主役は、IS-LM分析に国際収支のBP曲線を加えた分析、いわゆるマンデル・フレミングモデルです。

動画によると、試験で最もよく問われる核心部分は、完全資本移動を前提にしたとき、財政政策と金融政策がそれぞれ効果を持つのか持たないのか、という一点です。ただし結論だけを丸暗記すると、本番で「あれ、どっちだっけ」と頭が真っ白になりがちです。そこで動画は、暗記を捨てて、原因から結果へとつながる「経済のドミノ倒し」を追いかけます。

まず舞台設定です。動画では、日本と米国の取引だけを考え、国内の通貨を円、海外の通貨をドルとします。そして国境を越えた資金の移動に何の制限もない完全資本移動の世界を想定します。この設定のもとで、お金の流れを追跡していきます。

Y(国民所得)i(利子率)BP曲線i*ISLM
完全資本移動のBP曲線は、世界の利子率の高さで水平になり、IS・LMとその上の1点で交わります(動画の言葉ではなく標準的な描き方)。

(補足:動画にはグラフの説明はありません。完全資本移動のとき、BP曲線は世界の利子率の高さで水平になる、というのが標準的な描き方です。国内の利子率が世界より高ければ資金が流れ込み、低ければ流れ出るので、国内の利子率は世界の水準にそろおうとします。以下のドミノ倒しは、その途中経過を言葉で追ったものと考えると整理しやすくなります。)

なお、動画が分けて考えるのは次の2軸です。

  • 為替相場制度:変動相場か、固定相場か。
  • 政策:拡張的な財政政策か、拡張的な金融政策か。

つまり4つのシナリオを順に見ていくことになります。

変動相場で財政政策:アクセルを踏むと窓が開く

最初は、為替が市場の需要と供給で自由に動く変動相場です。政府が新幹線をどんどん通すような大型の公共事業を行い、拡張的な財政政策をとったとします。

変動相場・拡張的財政政策IS右シフト → 均衡国民所得 Y から Y1 へ増加利子率 i が上昇海外から資金流入 → 円が買われて円高輸出減・輸入増 → IS が左へ戻る為替の動きが止まるまで続き IS は元の位置へ結果:財政政策の効果なし
変動相場では、為替が財政政策の効果を打ち消します。

流れをことばで追うと、次のとおりです。

  • 政府支出が増えてIS曲線が右にシフトし、均衡国民所得がYからY1に増えます。
  • 所得が増えると、同時に利子率が上昇します。
  • 世界の投資家は少しでも高い利回りを求めているので、金利の高い日本の金融商品を買おうとして、海外から資金が流入します。
  • ドルを売って円を買う動きが強まり、円が買われて円高になります。
  • 円高で日本の製品は海外で割高になり輸出が減り、安い海外製品が入ってきて輸入が増えます。
  • その結果、せっかく右に動いたISが左にシフトし、所得はY1からY2へ減り始めます。

この動きは、為替の波が落ち着くまで、つまりISが完全に元の位置に戻るまで続きます。動画は、何兆円もの効果が完全に打ち消され、財政政策の効果はなくなると結論づけます。

なんだか切ないですね。アクセルを踏んでお金を使ったのに、そのせいで利子率が上がって円高になって、輸出産業がブレーキを踏まされるなんて。部屋を温めようと暖房を入れた途端に、窓が自動で全開になるようなものですね。

非常に的確なたとえですね。為替という窓が開いている限り、財政政策の熱はすべて外に逃げてしまうわけです。

変動相場で金融政策:円安が追い風になる

では、同じ変動相場で中央銀行が動いたらどうなるでしょうか。今度は拡張的な金融政策で、市場に出回るお金の量を増やします。

変動相場・拡張的金融政策LM右シフト → 均衡国民所得 Y から Y1 へ増加利子率 i が低下海外へ資金流出 → 円が売られて円安輸出増・輸入減 → IS が右へシフト(Y1 から Y2 へ)結果:金融政策の効果あり
変動相場では、為替が金融政策の効果を後押しします。

ここまでは財政政策と似ていますが、決定的に違うのは利子率が低下することです。流れは次のとおりです。

  • マネーサプライが増えてLM曲線が右にシフトし、均衡国民所得がYからY1に増えます。
  • お金があふれて利子率が下がるので、日本は魅力が薄いと見なされ、投資家は金利の高い米国へ資金を移します。つまり海外へ資金が流出します。
  • 円を売ってドルを買う動きが強まり、円安になります。
  • 円安で日本の製品は海外で安く売れ、輸出が増えて輸入が減るので、IS曲線が右にシフトします。
  • 所得はY1からY2へ、さらに増加します。

金融政策で最初に所得が増え、そこから引き起こされた円安が、ISをもう一段押し上げます。聞き手は、これをアクセルを踏んだら円安という強力なターボエンジンが作動するようなもの、と言い換え、講師も同意します。動画は金融政策は効果ありと結論づけ、為替の動きが財政政策にはマイナス、金融政策には追い風になる、という対比を強調しています。

動画のたとえ(聞き手の言い換えを含む)

変動相場で財政政策は、暖房を入れた途端に窓が全開になる状態(聞き手のたとえ)。金融政策は、アクセルに加えてターボエンジンが作動する状態(聞き手の言い換え)です。為替の動きがどちらに働くかを思い出す手がかりになります。

(補足:動画の流れでは、LMがシフトした直後に利子率が下がり、その後に為替を通じてISが動く、という順で語られています。これは、調整の道筋を追うためのストーリーです。完全資本移動の最終的な均衡では、国内の利子率は世界の利子率にそろった水準に落ち着きます。結論の「効果あり・なし」は、最終的な所得がどうなるかで見ます。)

固定相場で財政政策:為替介入が追い風になる

聞き手が、ここからが本題だと言い、動画は固定相場へ進みます。もし為替レートを絶対に動かしてはいけない固定相場だったらどうなるでしょうか。動画では、たとえば1ドル100円の水準から決して動かさない世界を想定します。その力技を担うのが中央銀行で、市場の波に逆らって自ら円とドルを売買する為替介入を余儀なくされます。動画はこれを、固定相場を分析する上での最大の鍵だとしています。

まず政府が拡張的な財政政策を行った場合です。

固定相場・拡張的財政政策IS右シフト → Y 増加、利子率 i 上昇資金流入 → 円高圧力中央銀行が円売りドル買いの為替介入マネーサプライ増加 → LM が右へシフト(Y1 から Y2 へ)結果:財政政策の効果あり
固定相場では、為替介入が財政政策を後押しします。
  • IS曲線が右にシフトし、所得が増えて利子率が上昇します。
  • 高い利子を求めて海外から資金が流入し、円が買われるので円高圧力がかかります。
  • しかし円高になってはいけないので、中央銀行は市場に円を供給して価値の上昇を抑えます。具体的には、手持ちの円を売ってドルを買う円売りドル買いの介入を行います。
  • 市場に円がばらまかれるのでマネーサプライが増加し、LM曲線が右にシフトします。
  • 所得はY1からY2へ、さらに増加します。

円高を防ぐために円をばらまいた行動が、意図せず追加の金融緩和と同じ効果を生んだ、というわけです。聞き手は、政府の財政政策に中央銀行の為替介入というガソリンが注がれる、と言い換え、講師も「その見立ての通りです」と応じます。変動相場のときは為替のせいで台無しになった財政政策が、固定相場では中央銀行の介入を巻き込んで相乗効果を生み、効果ありになります。

固定相場で金融政策:自分で自分の効果を消す

最後に、固定相場のまま中央銀行が拡張的な金融政策を行った場合です。

固定相場・拡張的金融政策LM右シフト → Y 増加、利子率 i 低下資金流出 → 円安圧力中央銀行が円買いドル売りの為替介入マネーサプライ減少 → LM が元の位置へ結果:金融政策の効果なし
固定相場では、為替介入が金融政策の効果を打ち消します。
  • マネーサプライが増えてLM曲線が右にシフトし、所得が増えて利子率が低下します。
  • 資金が海外へ流出し、円が売られるので円安圧力がかかります。
  • 円安を防ぐには、売られている円を買い支えなければなりません。中央銀行は円買いドル売りの介入を行い、市場から円を吸い取ります。
  • マネーサプライが減少するので、右に動かしたLM曲線が左へシフトし、所得はY1からYへ戻ります。
  • 最終的にLM曲線は元の位置に戻ります。

中央銀行は景気を良くしようとお金を増やしたのに、そのせいで起きた為替の動きを抑えるために、自分でそのお金を回収しなければなりません。講師は、小麦粉(マネーサプライ)を足したそばから慌ててすくい出していて、ケーキの大きさが全く変わらない状態にたとえ、聞き手は、アクセルをベタ踏みしながらサイドブレーキを全力で引いている状態だと言い換えます。動画は金融政策の効果はなくなると結論づけます。

中央銀行は最初にお金を増やしたのに、為替の変動を抑えるために自分でそのお金を解消しなきゃいけないなんて、ちょっと悲惨すぎませんか。

とても皮肉な構造ですよね。固定相場のルールのもとでは、中央銀行は為替の維持という至上命題に縛られて、自らの意思で金融政策をコントロールする独立性を完全に失ってしまうんです。

(補足:ここでの為替介入は、増減したマネーサプライをそのまま放置する、つまり不胎化しない介入を前提にしていると読めます。動画はこの前提を明言していません。また、固定相場で中央銀行が金融政策の独立性を失うという話は、「自由な資本移動」「為替相場の安定」「金融政策の独立性」の3つを同時には実現できないという、国際金融のトリレンマとして紹介されることがあります。これも動画には出てきない言い方です。)

補足:数値例で確かめる

(補足:ここは動画にはない、確認用の設例です。単位は省略し、次のように置きます。計算は検算済みです。)

  • 消費 C=0.6Y(消費性向0.6)、純輸出は為替の影響を除くと 40-0.1Y
  • IS:Y=0.6Y+180+政府支出G-20i+純輸出、最初は G=100
  • LM:マネーサプライ=0.5Y-10i、世界の利子率 i*=2
  • 最初の均衡は Y=560(マネーサプライは260)

これに、4つのシナリオを当てはめます。完全資本移動なので、どの場合も最終的に i=2です。

場合変化最終的な所得Y
変動相場・G を50増やすLM は動かない560のまま(変化なし)
変動相場・マネーサプライを30増やすLM が右へ620(60増加)
固定相場・G を50増やす介入でマネー50増加660(100増加)
固定相場・マネーサプライを30増やす介入で元に戻る560のまま(変化なし)

変動相場で財政政策を50増やしても、Yが560のままなら、消費や投資は変わらないので、純輸出(為替の影響込み)が50減って、ちょうど打ち消している計算になります。固定相場で財政政策を行うと、IS曲線上で所得は660になり、それを支えるためにマネーサプライが50増えます。数字で見ると、動画のドミノの意味がよくわかります。

結論の整理:表と、暗記しないコツ

動画の結論を、完全資本移動を前提に表にまとめると次のとおりです。

相場制度財政政策金融政策
変動相場効果なし効果あり
固定相場効果あり効果なし

動画は、この「変動相場では金融政策が効き、固定相場では財政政策が効く」という対称性が、今日の最大の結論だとします。ただし、試験本番に向けて最も強調したいのは、この文字列を丸暗記しないことです。本番のプレッシャーの中では、単なる記憶は簡単に裏切ります。

動画が勧める解き方

動画では、問題を前にして焦ったら、深呼吸をして「いま利子率は上がっているか、下がっているか」と自分に問いかけるよう勧めています。そこから、資金の動き、円高・円安の圧力、そして輸出入が動くのか、中央銀行の介入が強制されるのか、とドミノを1段ずつたどるのだと説明されています。

つまり、見る順番は次の3ステップです。

  • 財政政策なら利子率が上がり、金融政策なら利子率が下がる。
  • 資金が流入するか流出するかを考え、円高圧力か円安圧力かを決める。
  • 変動相場なら輸出入の変化で、固定相場なら中央銀行の介入によるマネーサプライの変化で、IS・LMがどう動くかを見る。

現実の円安とモデルを重ねてみる

動画の最後には、宿題のような問いかけがあります。いまの日本は変動相場制です。そして近年、歴史的な円安が連日ニュースになっています。今日学んだ理論の通りなら、変動相場での円安は輸出を押し上げ、日本経済に強力な追い風を吹かせるはずです。しかし、そのような効果が今の日本経済に本当に起きているでしょうか。動画は、現実の経済はモデル通りには動かず、複雑な要因が絡み合っていると述べ、次に日銀の金融政策のニュースを見たときに、今日のドミノ倒しを現実に当てはめて、何が違うのかを想像してみるよう勧めています。

(補足:動画は、モデルと現実が食い違う理由を具体的には挙げていません。マンデル・フレミングモデルは、資金移動が完全で、物価が動かないなど、かなり単純化した前提で作られたモデルです。完全資本移動でなければ、結果は同じにならないとされています。どの要因がどの程度影響するかは、資料により異なります。試験では、まず前提つきの結論を確実に押さえることが大切です。)

まとめ

この動画のまとめ(動画の説明にそって)

  • 舞台設定は、日本と米国の2国、円とドル、そして完全資本移動。
  • 変動相場・財政政策:IS右へ → 利子率上昇 → 資金流入 → 円高 → 輸出減・輸入増 → IS が元に戻り、効果なし。
  • 変動相場・金融政策:LM右へ → 利子率低下 → 資金流出 → 円安 → 輸出増・輸入減 → IS もさらに右へ。効果あり。
  • 固定相場・財政政策:IS右へ → 円高圧力 → 円売りドル買い介入 → マネーサプライ増加で LM も右へ。効果あり。
  • 固定相場・金融政策:LM右へ → 円安圧力 → 円買いドル売り介入 → マネーサプライ減少で LM が元に戻る。効果なし。
  • 結論は丸暗記せず、まず利子率は上がったか下がったかから、資金の動きと為替・介入の流れをたどる。

以上が、マンデル・フレミングモデルの政策効果です。結論の表を覚えるだけでなく、動画のように「原因があって結果がある」という道筋を一度自分で描いておくと、本番でも落ち着いて解けるはずです。ぜひ動画を何度か聞き直して、ドミノ倒しを頭の中で再生してみてください。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む