5S活動
事例Ⅲ 第38回
「知識としては知ってるのに、いざ本番でどこで使えばいいか分からない論点、ありませんか」。動画は、こんな問いかけから始まります。5Sの意味は知っているのに、事例Ⅲの答案でどう使えばいいかはあやふや。このページでは、5Sが出てくる二つの場面、与件文から5Sの不足に気づく着眼点、5Sの定義、弱みと改善提案の書き方、目で見る管理との違い、間違えやすいパターンを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知っているのに使えない論点:5S
動画は、講師のこんな問いかけから始まります。「知識としては知ってるのに、いざ本番でどこで使えばいいか分からない論点、ありませんか」。今日はその代表格として、事例Ⅲの5Sを扱う、と続きます。
聞き手は「あ、それめちゃくちゃ心当たりあります」と答えます。5Sが整理・整頓・清掃・清潔・躾であることは知っている。意味はもちろん分かる。でも事例Ⅲの答案でどう使えばいいのかは、正直あやふやだ、という悩みです。
5Sって、整理・整頓・清掃・清潔・躾ですよね。意味はもちろん知ってます。でも事例Ⅲの答案でどう使えばいいのか、正直あやふやです。
そうなんです。5Sは「知ってるのに使えない」の典型なんです。知識として知ってることと、与件文を読んで答案に落とし込むことの間に、けっこう距離があるんですよね。
このページでは、5Sが出てくる場面、与件文から5Sの不足に気づく着眼点、5Sの定義に沿った整理、答案の書き方、目で見る管理との違い、間違えやすいパターン、本番でのチェックポイントの順に、動画の流れにそってまとめます。
5Sが出てくる二つの場面
聞き手が「具体的には、どういう場面で出てくるんですか?」と尋ねると、講師は、大きく二つの場面があると答えます。
一つ目は現状分析です。強み・弱みを整理するときの弱み側で、「5S活動が徹底されていない」という表現そのものが、かなり定番の書き方として出てきます。
あー、それ見たことあります!でもそれって、与件文にそのまま「5Sが徹底されていない」って書いてあるということですか?
そういう直接的な書き方のこともありますが、多くは違います。作業場の描写から、こちらが「これは5Sの弱みだ」と気づいて言語化する場面のほうが多いんです。
二つ目は改善提案です。もっと踏み込んだ改善策、たとえば多品種少量生産への対応や、目で見る管理の導入といった提案をする前提として、まず現場の土台を整えるという意味で、5S活動の徹底が挙げられることが多い、と講師は説明します。つまり5S単体で大きな設問になることは少なく、他の改善策とセットで使われる場面が多い論点です。
なるほど、主役というより、土台なんですね。
そのとおりです。だからこそ、5Sだけで答案を埋めようとすると点数が伸びにくい。まずそこを押さえておいてください。
与件文のどんな記述から5Sに気づくか
次に聞き手が、「実際に与件文を読むとき、どんな記述が出たら5Sだと気づけばいいんですか?」と尋ねます。講師は、いくつかパターンがあるとして、五つの着眼点を挙げていきます。
- 一つ目:「作業場が整理されていない」「通路に物が置かれている」。整理・整頓の不足のサインです。
- 二つ目:「工具や部品の置き場所が決まっていない」「探す時間が発生している」。整頓の不足そのものです。
- 三つ目:「必要な部品が見つからず作業が止まる」。整頓不足が原因で、実際に手待ちが発生している状態です。
- 四つ目:「作業場が汚れている」「清掃が行き届いていない」。清掃・清潔の不足です。
- 五つ目:「ルールが守られていない」「新人への指導が不十分」。躾の不足のサインです。
| 与件文の記述 | 不足のサイン |
|---|---|
| 作業場が整理 | 整理・ |
| 置き場所が | 整頓 |
| 部品が見つからず | 整頓不足で |
| 作業場が汚れている/ | 清掃・ |
| ルールが守られない/ | 躾 |
一つ目のところで、聞き手は「通路に物、危なそうですもんね」と相づちを打っています。二つ目と三つ目を聞いた聞き手は、「探す、止まる、という流れなんですね」と整理しました。
探す、止まる、という流れなんですね。
はい。四つ目は「作業場が汚れている」「清掃が行き届いていない」。これは清掃・清潔の不足です。五つ目は「ルールが守られていない」「新人への指導が不十分」。これは躾の不足のサインです。
五つも着眼点があると、覚えるの大変そうです……。
工具箱のたとえ:一番反応してほしいのは整頓
覚えるのが大変そう、という聞き手に、講師は「ここでたとえ話をしましょう」と、自宅の工具箱を持ち出します。
工具箱のたとえ
ドライバーや六角レンチを、サイズごとに決まった仕切りに、決まった向きで収めておけば、作業中に手を止めて探すことはありません。でも、大小のドライバーがごちゃ混ぜに放り込まれている状態だったらどうなるか。
途中で何度も手が止まりますね。作業を進めているのに、工具を探している間に手順が止まってしまうかもしれません。
まさにそれが、現場で起きていることなんです。整頓ができていないと、部品や工具を探す時間そのものが、生産性を直接下げる原因になる。与件文で一番反応してほしいのは、実はこの「整頓」の不足なんです。
聞き手は「探す時間のムダって、地味だけど効いてくるんですね」と受け止めます。講師の結論は、与件文で「探す」「時間がかかる」という言葉を見かけたら、真っ先に整頓の不足を疑ってください、ということです。
「探す」が出てきたら整頓、って覚えておきます。
そうです。ではこの五つの着眼点を、実際にどう整理すればいいか。5Sの定義に沿って分類していきます。
5Sの定義に沿って分類する
講師は、定義を次のように説明します。整理は、いるものといらないものを分けて、不要なものを捨てること。整頓は、ものを決められた場所に置いて、誰でも分かるようにすること。
清掃は、常にきれいにすることですよね。
そのとおりです。清潔は、整理・整頓・清掃の状態を維持すること。躾は、決められたルールを守ることです。
この五つに、さっき挙げた与件文の記述を当てはめていけば、どの要素が欠けているかが特定できます、と講師は言います。
整理と整頓って、似てるようで判断していることが違うんですね。
そうなんです。整理は「要るか要らないか」を判断すること、整頓は「残したものをどこに置くか」をルール化することです。ここを混同せずに使い分けてください。
| 見る点 | 整理 | 整頓 |
|---|---|---|
| 判断すること | 要るか | 残したものを |
| やること | 不要なものを | 場所を |
では、欠けている要素が分かると何がいいのか。聞き手のこの問いに、講師は「改善提案の的が絞れる」と答えます。
欠けている要素が分かると、何がいいんですか?
改善提案の的が絞れるんです。「整頓が欠けている」と特定できれば、「工具・部品の置き場所を定め、誰でも分かる表示をする」という具体的な提案につながります。ぼんやり「5Sを徹底する」と書くより、ずっと説得力が出ます。
答案の型:弱みとして書く場合
聞き手が「じゃあ実際に答案に書くときは、どういう型にすればいいんですか?」と尋ねます。講師は、弱みとして書く場合と、改善提案として書く場合で型が違う、と答えます。
まず弱みとして書く場合です。「5S活動が徹底されておらず、〜が生じている」という形で、5Sの不足がもたらす具体的な悪影響まで書きます。作業効率の低下や、品質のばらつきといった影響です。
「徹底されていない」で終わらせずに、その先の影響まで書くんですね。悪影響って、たとえばさっきの「手待ち」も使えますか?
使えます。「部品の置き場所が定まらず、探す時間による手待ちが生じている」のように、与件文の記述をそのまま悪影響の具体として使えば、根拠のはっきりした答案になります。そこが加点のポイントです。
答案の型:改善提案として書く場合
次に改善提案として書く場合です。「5S活動を徹底し、〜を実現する」という型に加えて、5Sだけで終わらせず、その上で目で見る管理を導入する、というように次の施策につなげる書き方をすると、提案に厚みが出る、と講師は言います。
5Sで終わらせずに、その先まで書く。さっきの「土台」という話と同じですね。
よく気づきましたね。まさにそこがつながっています。
答案の型は二つ
- 弱み:「5S活動が徹底されておらず、〜が生じている」。作業効率の低下や品質のばらつきなど、悪影響まで書く
- 改善提案:「5S活動を徹底し、〜を実現する」。5Sだけで終わらせず、目で見る管理など次の施策につなげる
5Sと目で見る管理はどう違うか
聞き手が「ちなみに、5Sと目で見る管理って、どう違うんですか?似たような言葉に聞こえます」と尋ねます。講師は「いい質問です」と答えます。
5Sは、現場そのものを整理整頓する活動です。一方、目で見る管理は、状況を可視化して誰もが把握できるようにする仕組みです。5Sは、目で見る管理を機能させるための前提条件、という関係にあります。
| 見る点 | 5S | 目で見る管理 |
|---|---|---|
| 何か | 現場そのものを | 状況を可視化して |
| 関係 | 前提条件 | 5Sの上に乗る |
同じものではなくて、5Sの上に目で見る管理が乗る、という関係なんですね。
そのとおりです。ここを混同して同じ意味で使ってしまうと、答案の論理が一段浅く見えてしまいます。
間違えやすい二つのパターン
聞き手が「他にも間違えやすいポイントってありますか?」と尋ねると、講師は二つ補足します。
一つ目は、5S単独で改善提案を組み立てて、それ以上踏み込まないまま終わらせてしまうパターンです。5Sは基盤を整える施策であり、それ単体では大きな加点効果は見込みにくいので、必ず他の改善策と組み合わせて使ってください、と講師は言います。
5Sだけで答案を埋めてはいけない、ということですね。
はい。
二つ目は、五つの要素を丸暗記するだけで終わってしまって、与件文のどの記述がどれに対応するか、とっさに判別できないパターンです。聞き手は「それ、まさに今の私です……」と漏らします。
大丈夫です。丸暗記ではなく、三つのまとまりで理解しておくと、判別しやすくなります。
三つのまとまり
- 整理・整頓は、モノの扱い
- 清掃・清潔は、環境の維持
- 躾は、ルールの定着
モノ、環境、ルール。三つなら覚えやすいです。
それと、5Sは与件文の中で単独で大きく扱われることは少なくて、JITやカンバン方式のような他の改善キーワードと並んで、さらっと触れられる程度のことも多いんです。だからこそ、出てきたときに見逃さず、かつ、それだけで押し切らないバランス感覚が大事なんです。
さらっと出てくるからこそ、気づけるかどうかが差になる、ということですね。
そのとおりです。
本番でのチェックポイント
最後に講師が、本番でこの論点を使うときのチェックポイントを四つにまとめます。
本番でのチェックポイント
- 一つ、与件文の描写を五つの要素に当てはめて、どこが欠けているか特定すること
- 二つ、弱みとして書くなら、悪影響まで具体的に書くこと
- 三つ、改善提案として書くなら、5Sだけで終わらせず、次の施策につなげること
- 四つ、5Sと目で見る管理を混同せず、前提条件の関係として扱うこと
五つの要素を当てはめる、影響まで書く、次につなげる、混同しない。しっかり整理できました。
この四つを押さえておけば、5Sが出てきたときに、慌てず土台としての役割を答案に落とし込めるはずです。
まとめ
動画の整理
- 5Sは「知ってるのに使えない」論点。出てくる場面は、現状分析の弱みと、改善提案の前提(土台)の二つ
- 与件文の記述(整理されていない、通路に物、置き場所が決まらない、探す時間、部品が見つからず作業が止まる、汚れ、ルール、新人への指導)から、どの要素が欠けているかを特定する。一番反応してほしいのは整頓の不足
- 整理は「要るか要らないか」の判断、整頓は「どこに置くか」のルール化。五つの要素は、モノの扱い・環境の維持・ルールの定着の三つのまとまりで覚える
- 弱みは悪影響まで書く。改善提案は5Sだけで終わらせず、目で見る管理など次の施策につなげる
- 5Sは目で見る管理を機能させるための前提条件。混同すると答案の論理が一段浅く見える
- 5S単独で終わらせない。ただし、さらっと出てくる5Sを見逃さない
動画の最後に、聞き手は「次に事例Ⅲの与件文を読むとき、「整理されていない」の一行で止まらずに、五つの物差しで読んでみます」と話しています。5Sは、与件文の描写から不足に気づき、悪影響まで書き、目で見る管理のような次の施策へつなげる。その土台としての役割を答案に落とし込む論点です。
動画で聞く
続けて読む
- 第33回 工程管理事例Ⅲ 「工程管理がなってない」で終わらせない読み方
- 第34回 生産計画の緩衝機能事例Ⅲ 波及か吸収かを見抜き、物・能力・時間の余裕で答案を組み立てる読み方
- 第35回 流動数曲線で見抜く投入と産出のズレ事例Ⅲ 「仕掛品が多い」で終わらせない視点
- 第36回 生産統制事例Ⅲ 進度・現品・余力で解きほぐす生産統制
- 第37回 5W2HとECRSの原則事例Ⅲ 「効率化する」で終わらせない、なくす順に変える改善の組み立て方
- 第39回 GT・動作改善・目で見る管理事例Ⅲ 3手法をどう選ぶ?改善提案の書き分け方
- 第40回 ジャストインタイムを提案に使う判断と書き方事例Ⅲ 引き取りか、平準化か。改革レベルで語る生産方式の見直し方
- 第41回 需要予測事例Ⅲ 需要予測。欠品と過剰在庫が同時に起きる工場
- 第42回 セル生産方式を提案する判断と書き方事例Ⅲ 分業をやめるか、広げるか。多工程持ちとの分かれ目
- 第43回 製品開発事例Ⅲ 強みを伸ばす型か、体制を直す型か
- 事例ⅢのWebテキスト一覧同じ科目の49本を一覧・検索
- 中小企業診断士 2次の講座トップ科目別プレイリスト・人気の講義・ファイナルペーパー

