5W2HとECRSの原則
事例Ⅲ 第37回
「改善提案って、得意なつもりで実は一番点が伸びないんです。書いても『効率化します』で終わっちゃって」。動画は、事例Ⅲの改善提案の設問をめぐる、こんな聞き手の悩みから始まります。このページでは動画の流れにそって、与件文の非効率のサイン、5W2Hによる状況の洗い出し、ECRSの当て方、答案の書き方、混同しやすい論点をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「効率化します」で終わってしまう答案
動画は、事例Ⅲで出る改善提案の設問を扱います。講師は「よく出るテーマ」だと切り出し、聞き手は「得意なつもりで実は一番点が伸びないやつです」と打ち明けます。書いても「効率化します」で終わってしまうからです。講師によると、知識はあるのに、本番では「効率化する」「改善する」だけで筆が止まるのは、本当に多いパターンです。
聞き手は、5W2HもECRSも意味自体は知っていると言います。それでも、与件文を読んだ瞬間に、どこでどう使えばいいのか分からなくなる。そこで動画は、定義の確認ではなく、使いどころだけに絞って整理していく、と方針を決めます。
実は前に書いた答案、「業務プロセスを見直し効率化を図る」って一文だけで、何を見直すのかがどこにも書いてなかったんです。あとで採点基準を見て、そこが丸々点にならないと知って愕然としました。
それ、典型的なパターンです。今日整理する流れをたどれば、その“何を”の部分が自然と埋まるようになりますよ。
「何を見直すのか」がどこにも書かれていない一文は、点にならない。このページでは、その「何を」を埋める流れを、動画の順に追っていきます。
- 設問の出方と、採点者が見ているところ
- 与件文に出てくる非効率のサイン5つ
- 5W2Hで状況を洗い出す
- ECRSの4つの視点を、E→C→R→Sの順に当てる
- 答案の型(状況・ECRSの視点・効果)
- 混同しやすい論点
設問の出方と、採点者が見ているところ
講師はまず、この論点がどう出るかを確認します。事例Ⅲでは「生産性を高める改善策を助言せよ」「効率化のための施策を述べよ」のように、改善策そのものを書かせる設問が、ほぼ毎回どこかで出ます。聞き手の言葉でいえば、「〜せよ」系で改善策を求められるものです。
ここで単に「効率化する」とだけ書いても、加点されにくい。講師によれば、採点者が見ているのは、与件文の非効率な状況をどう分析して、どう改善案に落とし込んだかというプロセスの方です。
結論だけじゃなくて、そこに至る道筋まで見せろってことですね。
そうです。その道筋を作る道具が、状況を洗い出す5W2Hと、変え方を考えるECRSの原則。この2つはセットで使われることが多いですね。
なるほど、5W2Hで“何が起きているか”を特定して、ECRSで“どう変えるか”を考える、という役割分担なんですね。
以降は、与件文のサインに気づく、5W2Hで状況を特定する、ECRSで変え方を考える、という順に進みます。
与件文の非効率のサイン5つ
では、与件文にどんな一文が出てきたら、この2つを使うのか。講師は聞き手にこう尋ね、聞き手が答える形で進みます。
うーん……「同じ確認を何度もしている」みたいな記述だと反応できそうです。
正解です。「二重チェックが発生している」「同じ確認を複数回行っている」は、重複作業のサインですね。
あ、あと「担当者間を頻繁に行き来している」みたいな記述もありますよね。私、そこ読み飛ばしてました……。
それは移動・運搬のムダのサインです。
講師は、「移動が多い」という記述に出会ったときの区別を添えます。工程間や担当者間をまたぐ移動ならECRSを使う場面です。一方、一人の作業員が手を伸ばす・持ち替えるといった動作レベルの話なら、また別の改善の引き出しを使う場面になってきます。今日は、工程や担当者をまたぐ移動から押さえていく、と講師は言います。
講師はさらに2つのサインを挙げます。「担当者ごとにやり方が違う」「熟練者の勘に頼っている」は標準化不足のサイン。「なぜその作業をしているか分からない」「昔からの慣習で続けている」は、そもそも不要な作業かもしれないというサインです。
「工程の順番が固定的で、手待ちが発生している」は、順序を入れ替える余地がある、ということですよね。
その通りです。この5つのサインに反応できるかどうかが、まず最初の関門ですね。
| 与件文の記述 | 読み取るサイン |
|---|---|
| 二重チェックが発生している/同じ確認を複数回行っている | 重複作業 |
| 担当者間を頻繁に行き来している | 移動・運搬のムダ |
| 担当者ごとにやり方が違う/熟練者の勘に頼っている | 標準化不足 |
| なぜその作業をしているか分からない/昔からの慣習で続けている | そもそも不要な作業かもしれない |
| 工程の順番が固定的で、手待ちが発生している | 順序を入れ替える余地 |
表のうち、重複作業と移動・運搬のムダと順序の入れ替えは、聞き手が自分から挙げたサインです。標準化不足と不要な作業は、講師が「他にも」として加えました。聞き手が挙げたものにも、講師が「正解です」「その通りです」と確認しています。
5W2Hで状況を洗い出す
サインに気づいたあと、どう整理すればいいのか。聞き手の問いに、講師は「ここで5W2Hの出番です」と答えます。なぜ・何を・どこで・いつ・誰が・どのように・どれくらい。この観点で非効率な作業の記述を書き出して、状況を具体的に特定する、という使い方です。
与件文の一文を、この7つの軸でバラして読み直すイメージですか。
そうです。例えば引っ越しの荷造りで、何をどの順番で詰めるか決まっておらず時間がかかっているとしたら、誰が・どこで・どの順番でやっているかを一つずつ書き出しますよね。あれと同じ発想です。
あ、それなら分かります。
動画のたとえ:引っ越しの荷造り
- 状況:何をどの順番で詰めるか決まっておらず、時間がかかっている
- 5W2H:誰が・どこで・どの順番でやっているかを、一つずつ書き出す
- 与件文の非効率な記述も、同じ要領で書き出して状況を特定する
ECRSの4つの視点を、E→C→R→Sの順に当てる
状況を洗い出したら、次はそれをどう変えるかです。講師は、特定した状況ひとつひとつにECRSの4つの視点を当てていく、と説明します。
- E・エリミネート:なくせないか
- C・コンバイン:一緒にできないか
- R・リアレンジ:順序を変えられないか
- S・シンプリファイ:単純化できないか
検討するのは、この順番です。さきほどの荷造りのたとえに、4つの視点を当てるとこうなります。
さっきの荷造りの例だと、まず「その梱包作業自体、本当にいるのか」を疑うのが最初なんですね。
そうです。例えば同じ荷物を包んでからさらに緩衝材でもう一度包む工程が二重になっているなら、まずそこをなくせないか考える。次に、荷造りをしながら並行してラベル貼りを一緒にできないか考える。それでも解決しなければ荷造りの順番を変える。最後に、梱包の仕方そのものを簡単な手順に変える、という流れです。
| 視点 | 荷造りでの検討 |
|---|---|
| E | 二重になっている包む工程を、なくせないか |
| C | 荷造りと並行して、ラベル貼りを一緒にできないか |
| R | それでも解決しなければ、荷造りの順番を変える |
| S | 梱包の仕方そのものを、簡単な手順に変える |
いきなり単純化を考えるんじゃなくて、まず「なくせないか」から入るのが大事なんですね。
そうです。この順番で検討すると、一番効果の大きい「そもそもやめられるものはやめる」という選択肢を、漏れなく最初に検討できるんです。
二重チェックのサインで、実際に一巡してみる
ここで聞き手が、さっきの「二重チェック」のサインを、この流れで実際にやってみたいと言い出します。聞き手が設けた記述は、次のとおりです。
さっきの「二重チェック」のサインを、実際にこの流れでやってみたいです。例えば「各工程の完成品を担当者が目視で確認し、出荷前にも別の担当者が再度確認している」という記述があったとします。
いいですね。まず5W2Hで、誰が・どこで・何を確認しているかを書き出します。ここでは、各工程の担当者と出荷前の担当者が、同じ完成品を別々のタイミングで重複して確認している、という状況が特定できます。
そのうえでECRSを当てるとしたら、まずEから、この二重の確認自体をなくせないかを考えるんですね。
そうです。両方の確認項目が本当に重複しているなら、出荷前の確認に統一して各工程での確認を省く、あるいは逆に各工程の確認を徹底して出荷前の確認を省く、という形でなくせないかをまず検討します。それで解決しなければ、次にCで確認作業自体を一緒にできないか、という順に進みます。
| 手順 | この例での検討 |
|---|---|
| 5W2H | 各工程の担当者と出荷前の担当者が、同じ完成品を別々のタイミングで重複して確認している |
| E | 出荷前の確認に統一して各工程の確認を省く。または逆に、各工程の確認を徹底して出荷前の確認を省く |
| C | Eで解決しなければ、確認作業自体を一緒にできないか |
最初から「確認方法を簡素化する」というSの発想に飛びつきがちですけど、その前にE・Cを検討する余地がないか確かめるのが大事なんですね。
そうです。この順番を意識するだけで、答案の説得力がだいぶ変わってきますよ。
答案の書き方:状況・ECRSの視点・効果
整理できたあと、答案にはどう書けばいいのか。講師が示した型は、「〜という状況に対し、〜をなくす・一緒にする・順序を変える・単純化することで、〜を実現する」という組み立てです。
与件文の根拠と、ECRSのどれを使うかと、その効果。この3点セットですね。
そうです。ここで注意してほしいのが、ECRSの4つを全部無理に使う必要はないということ。与件文の状況に一番合う視点を選んで、具体的に書く方が評価されます。
抽象的に「ECRSの視点で改善する」とだけ書いても評価されにくい、ということですよね。
その通りです。必ず与件文の具体的な状況、何をどう変えるのかまで踏み込んで書くこと。ここが一番の得点ポイントです。
聞き手は、さきほどの二重チェックの例で、実際に一文を書いてみます。
聞き手が書いた一文
「各工程担当者と出荷前担当者による完成品確認が重複している状況に対し、出荷前の確認に統一することで、確認工数の削減と検品スピードの向上を実現する」
さっきの二重チェックの例だと、こんな一文になりますか。
まさにそういう形です。状況・ECRSの視点・効果の3つが1文の中に入っているので、「効率化します」だけの答案とは説得力がまったく違いますよね。
動画の中で、避けたい書き方や注意点として出てきたものを並べておきます。
| 書き方 | 動画での扱い |
|---|---|
| 「効率化する」「改善する」だけ | 加点されにくい |
| 「業務プロセスを見直し効率化を図る」だけ | 何を見直すのかが書かれず、点にならない |
| 「ECRSの視点で改善する」だけ | 抽象的で、評価されにくい |
| ECRSの4つを全部無理に使う | 必要はない。与件文の状況に一番合う視点を選んで、具体的に書く方が評価される |
混同しやすい論点
聞き手は、似た論点との混同にどんなパターンがあるのかを尋ねます。講師が最初に挙げるのは、ECRSとIE(インダストリアル・エンジニアリング)全体の混同です。ECRSはIEが持つ改善視点のひとつであって、標準時間の設定や動作分析、工程分析といったIE全体の話とは範囲が違います。
あ、私、ECRSイコールIEの全部だと思ってました……。
よくある誤解です。ECRSはあくまでIEが持つ改善視点の一部、というのが正確な位置づけですね。
2つ目は、5W2Hとなぜなぜ分析(5回のなぜ)の混同です。
どちらも「なぜ」を使うから紛らわしいですね。
そうなんです。でも役割が違って、5W2Hは状況を“整理”するためのツール、なぜなぜ分析は原因を“掘り下げる”ためのツールなんです。整理なのか深掘りなのか、この違いを意識してください。
聞き手は、ECRSは順番自体に意味があったはずだと確認します。
あと、ECRSって順番自体に意味があるんでしたよね。
そうです。E→C→R→Sの順で効果が大きい傾向があるので、思いついた順にバラバラに使うより、この順番を意識して検討する方が、与件文の状況に合った改善案を選びやすくなります。
| 混同 | 違い |
|---|---|
| ECRSとIE全体 | ECRSはIEが持つ改善視点の一部 |
| 5W2Hとなぜなぜ分析 | 整理するツールか、掘り下げるツールか |
| ECRSの検討順 | E→C→R→Sの順で効果が大きい傾向 |
まとめ
動画の整理
- 改善策を書かせる設問では、採点者は状況をどう分析し、どう改善案に落とし込んだかというプロセスを見る
- 5W2Hは状況を洗い出すツール、ECRSは変え方を考えるツール。この2つはセットで使われることが多い
- 与件文のサインは5つ:重複作業、移動・運搬のムダ、標準化不足、そもそも不要な作業かもしれない記述、順序を入れ替える余地
- 5W2Hで状況を具体的に特定し、ECRSをE→C→R→Sの順に当てる。まず「なくせないか」から入る
- 答案は「状況」「ECRSのどれを使うか」「効果」の3点セットで書く。4つ全部を使う必要はなく、状況に一番合う視点を具体的に書く
- 混同に注意:ECRSはIE全体ではなく改善視点の一部、5W2Hは整理でなぜなぜ分析は深掘り
動画の最後で、聞き手は、今日の話を次のようにまとめます。与件文の非効率のサインに気づいたら、5W2Hで状況を洗い出して、ECRSをE→C→R→Sの順で当てはめる。講師は、答案を「状況」「ECRSのどれを使うか」「効果」の3点セットで書くだけで、「効率化します」で終わっていた答案から一段上に行ける、と答えます。
次に改善提案の設問を見たら、まず与件文の中でどのサインが光っているか探してみます。
いいですね。その視点で読むだけで、与件文の見え方がきっと変わってくるはずです。
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