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中小企業診断士 1次試験

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成長会計

経済学・経済政策 第30回

経済学・経済政策・マクロ経済学 01010分38秒2026年3月27日公開

「あの、想像してみて欲しいんですが、全く同じ規模の2つの国があるとしますよね」。動画はこんな思考実験から始まります。このページでは動画の流れにそって、成長会計の式、資本と労働の寄与度、分配率、全要素生産性(TFP)とソロー残差をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

同じ投入なのに、成長が2倍違う?

動画は、こんな思考実験から始まります。「全く同じ規模の2つの国があるとします」。どちらの国も今年、新しく工場を100棟建てて、1万人を雇いました。投入した機械の数も、働いた人数も、まったく同じです。ところが1年後に蓋を開けてみたら、A国はB国の2倍も経済成長していました。

A国B国工場 100棟雇用 1万人工場 100棟雇用 1万人B国の2倍成長基準投入が同じなのに差が出たその中身を分けるのが成長会計
投入が同じでも成長率が違う。この「見えない差」を探るのが成長会計です。

目に見えるリソースの量は同じなのに、なぜこれほどの差が生まれるのか。動画では、この「見えない差の正体」を突き止めることが、経済を分析するうえでの大きな鍵だと説明されます。そして、この謎を解き明かす道具として登場するのが成長会計です。

動画は、成長会計の式にアルファベットやギリシャ文字が並ぶので苦手意識を持つ人が多い、と触れたうえで、「今日のミッションは数式の丸暗記ではなく、数式が語る経済成長のストーリーを論理的に解くこと」だと宣言します。数式は複雑な経済現象をシンプルに表すための便利なツールで、記号の意味と背景の論理さえわかれば怖くない、という立場です。

成長会計とは、成長を3つに分けて見る手法

成長会計とは、一言でいうと、経済成長を3つの要因に分けて把握するための手法です。動画では、なぜわざわざ分けるのかを、こう説明しています。経済成長率という結果だけを見ても、中身が分からないからです。そこで、資本と労働という生産要素、そしてそれ以外の技術進歩の3つに分解します。

このあたりで、聞き手がケーキのたとえを出します。講師も「まさにその通り」と応じています。

たとえ話:ケーキが膨らむ仕組み

  • 資本:オーブンなどの機械。
  • 労働:パティシエの人数や働く時間。
  • 技術進歩:レシピの改良や、新しい焼き方の発見。

機械と人手は目に見える生産要素。レシピの工夫は、目に見えにくい要因です。

さきほどのA国とB国の例に戻ります。聞き手は、「工場の100棟が資本、1万人の雇用が労働で、そこまでは同じ。同じ生産要素を入れたのに差が出たなら、差を生んだのは技術進歩ということか」と整理し、講師も「そういうことになります」と答えます。講師は理由として、工場や人を増やし続けることには限界があるが、画期的な技術の発明や効率化のノウハウといった技術進歩による成長には限界がない、と述べています。

(補足:動画の「限界がない」は、わかりやすくするための単純化です。ここは資料により説明が異なりますが、資本や労働の投入を増やすだけの成長には限りがあり、技術進歩が長い目で見た成長の源泉になる、くらいの言い方にとどめておくのが安全です。)

式を解剖する:左辺は結果、右辺は3つの足し算

ここから数式です。動画の式は、次の形になっています。

ΔY/Y = α × ΔK/K + (1−α) × ΔL/L + ΔA/A

経済成長率 ΔY/Y(全体の結果)=資本の寄与 α × ΔK/K資本ストックの増加率に資本分配率+労働の寄与 (1−α) × ΔL/L労働投入量の増加率に労働分配率+技術進歩の寄与 ΔA/A全要素生産性(TFP)の増加率
左辺が結果、右辺が3つの要因。資本と労働には分配率がかかっています。

左辺のΔY/Yが経済成長率で、全体の結果です。右辺は、3つのパーツの足し算になっています。

記号意味動画での読み方
ΔK/K資本ストックの増加率国全体の工場や機械の総量の増加率
ΔL/L労働投入量の増加率働く時間や人数の増加率
ΔA/A全要素生産性の増加率技術進歩の正体。TFPともいう

(補足:動画ではYの呼び名にはふれていませんが、Yは国の産出量で、一般には実質GDPなどを使います。また、Δ(デルタ)は「変化した量」を表す記号です。)

読み方の順番は、まず左辺の経済成長率が「全体の結果」、次に右辺の資本と労働が「目に見える生産要素による分」、最後のΔA/Aが「それ以外の分」です。結果を、目に見える部分と見えにくい部分に切り分ける式だと考えると、式の形が頭に入りやすくなります。動画は「丸暗記ではなくストーリーを追う」と言っていました。切り分けの意味をつかんでおけば、記号を忘れても式を組み立て直せます。

分配率:量が増えただけでは寄与度にならない

動画で「注意してほしい」と強調されるのが、増加率にそのまま足しているわけではない点です。資本ストックの増加率の前にはα、労働投入量の増加率の前には(1−α)がかけられています。このαが資本分配率、1−αが労働分配率です。

例:α=0.3 のとき資本分配率労働分配率α=0.31−α=0.7足すと必ず1(100%)
2つの分配率を足すとちょうど1。全体を100%として貢献の重みを決めます。

聞き手は、2つを足すとぴったり1になることに気づきます。聞き手は、全体を100%として割合をかけることで、それぞれの本当の貢献度、つまり寄与度が出るのかと言い換えます。講師は「鋭い」「まさにそこがポイント」と認め、単に量が増えただけでなく、分配率をかけることで正確な寄与度が表せる、と説明します。αをかけたものが資本の寄与度、1−αをかけたものが労働の寄与度です。

1−αということは、2つを足すとぴったり1になりますよね。

おお、鋭いですね。その通りです。まさにそこがポイントです。

動画は、分配率の意味を「付加価値をより多く生み出している要素に、より多く分配されると考える」と説明しています。

(補足:これは単純化した説明です。一般のマクロ経済学の教科書では、生産関数がコブ=ダグラス型(規模に関して収穫一定)で、市場が完全競争であるといった前提を置くと、αは資本が受け取る所得の割合と一致するので、寄与度の重みに使える、と整理されることが多いようです。前提の置き方は資料により異なります。)

数値で確かめます。α=0.3 なら、資本ストックが4%増えたときの資本の寄与は 0.3×4=1.2%、労働が1%増えたときの労働の寄与は 0.7×1=0.7%です。同じ量だけ増えても、分配率が大きい要素ほど成長への寄与が大きくなります。

(補足:問題文で、資本分配率ではなく労働分配率が与えられることもあります。1−α が労働分配率なので、労働分配率が0.7なら α=0.3、と読み替えれば同じ計算になります。)

全要素生産性(TFP)は、直接は測れない

式の先頭に残っているΔA/Aが、最初に話した技術進歩の正体です。動画では、これを全要素生産性増加率、英語の頭文字をとってTFPと呼びます。Aは技術の水準で、単なるテクノロジーだけでなく、効率的なマネジメントや目に見えないノウハウ全般を含む、と説明されています。

ここで聞き手が素朴な疑問を出します。

機械の数や働いた時間は数字で数えられますよね。でも技術の水準は、どうやって数字にするんですか。アイデアの数を1つ、2つと数えるわけにもいきませんよね。

素晴らしいツッコミです。実はまさにそこが、この理論の最大の壁なんですよ。

動画では、経済成長と資本ストックと労働は定量的に計測できるが、全要素生産性は定量的に計算できない、とされています。

(補足:「計算できない」というより、データから直接は観測できない量、と考えると正確です。そのため実際には、ほかの量から推計して求めます。動画も「差分から計測するアプローチを取る場合がある」と言っており、次の話につながります。)

逆転の発想:引き算で残ったものがソロー残差

直接計算できないなら、差分から求める。これが動画の言う「逆転の発想」です。式を変形し、全体の経済成長率から、計算できる資本の寄与度と労働の寄与度を引き算します。すると残った部分が全要素生産性増加率になります。

このΔA/Aは残差とも呼ばれます。動画では、全体の成長から説明できる部分を全部引いて残った差分なのでソロー残差だ、と説明されます。設例で確かめましょう(動画の数値ではなく、自作の設例です)。

設例:成長率3%の国

経済成長率が3.0%、資本ストックの増加率が4%、労働投入量の増加率が1%、α=0.3 とします。

  • 資本の寄与:0.3 × 4 = 1.2%
  • 労働の寄与:0.7 × 1 = 0.7%
  • 残差(TFP増加率):3.0 − 1.2 − 0.7 = 1.1%
経済成長率 3.0%▼ 分解する(設例)資本1.2%労働0.7%残差1.1%残差=3.0−1.2−0.7=1.1(%)これを全要素生産性の増加率とみなす
計算できる部分を引いて、残った差を技術進歩などの寄与とみなします。

A国とB国の話にも当てはめてみます。これも自作の設例で、動画では「2倍」としか言われていません。両国とも α=0.4、資本ストックが5%、労働が2%増えたとします。投入による寄与は 0.4×5+0.6×2=3.2%で、両国同じです。B国の成長率が4%なら残差は0.8%、A国の成長率が8%(B国の2倍)なら残差は4.8%です。投入が同じなら、成長率の差はそのまま残差の差になります。

国投入の寄与残差(TFP)
A国(8%成長)3.2%4.8%
B国(4%成長)3.2%0.8%

ここで聞き手が、食事のたとえを出します。3人で食事に行き、レシートで合計額がわかっている。AさんとBさんが食べた分はメニューから正確に計算できる。これが資本と労働の寄与度にあたる。だったら合計額から2人の分を引けば、Cさんがいくら食べたかは、値段を直接見なくてもわかる、という引き算の話です。聞き手はこのたとえで、計算できる要素をすべて引いて残ったものが、説明しきれない技術進歩などの要因だと言い換え、講師も「そうなんです。直接ないなら全体から引けばいい」と応じます。

(補足:残差は、技術進歩だけを純粋に表すとは限りません。分配率の置き方や、データの測り方の誤差なども、残差に混ざるとされています。動画も、技術だけでなくマネジメントやノウハウ全般を含むと言っているとおり、「説明できない部分の合計」と理解しておくのが無難です。)

動画で強調されていた点

  • 動画では、ソローの残差の考え方は試験でも本当によく問われる、と言っています。
  • 式の左辺は経済成長率、右辺は資本・労働・全要素生産性の3つ。
  • 全要素生産性は直接測れないので、全体の成長から資本と労働の寄与度を引いた差分として求める。

聞き手が、引き算の構造さえ理解していればどんな問題にも対応できるはず、とまとめ、講師も同意します。

あなたの仕事に当てはめると

動画の最後は、考えるための問いかけです。この数式の考え方は、国だけでなく、あなた自身の仕事やビジネスにも当てはまるかもしれません。チームの成果のうち、設備やツールといった資本や、時間といった労働で説明できる部分はどれくらいか。聞き手は「残業を増やしたから成果が出た、という部分ですね」と受けます。

そして、成果の全体からそれらを引いて残るもの。目に見えない工夫やチームワーク、つまり、あなたたちだけの全要素生産性(残差)は、どれくらいあるでしょうか。動画は、身の回りの成長をこの視点で見つめ直すと、次の成長のヒントがあるかもしれない、と結んでいます。

まとめ

この回のまとめ

  • 成長会計は、経済成長を資本・労働・技術進歩の3つに分けて把握する手法。
  • 式は ΔY/Y = α×ΔK/K + (1−α)×ΔL/L + ΔA/A。αは資本分配率、1−αは労働分配率で、足すと1。
  • 分配率をかけることで、資本と労働それぞれの寄与度が出る。
  • 全要素生産性(TFP)は直接は測れないので、全体の成長から資本と労働の寄与度を引いた残りとして求める。この残りがソロー残差。
  • 計算の流れは、引き算の構造さえつかめば暗記に頼らなくてよい、というのが動画の立場。

数式が出てくると身構えてしまいますが、中身は「全体から、わかる部分を引いたら、何が残るか」という引き算の話です。設例の数字を自分で動かしてみると、式の意味がぐっと近づきます。たとえば資本の増加率だけを変えて、残差がどう動くかを見てみてください。全体の成長率が同じなら、資本や労働の寄与が大きいほど残差は小さくなります。

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