GMROI・交差比率
運営管理 第4回
「GMROIと交差比率は、名前も式も少し違うけれど、一見するとどちらも在庫と利益の関係を見ているだけじゃないの、なんて思ってしまいませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、GMROIと交差比率の式、バイヤーと店員の対比、2つのレバーへの分解、試験の罠をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
同じ「在庫と利益」でも、見ている人が違う
動画は「丸暗記ではなく、現場のストーリーと結びつけて知識を定着させよう」という呼びかけから始まります。取り上げるのは、小売業の営業効率を測る2つの指標、GMROIと交差比率です。どちらも「商品に投じたお金が、どれだけ粗利益になったか」を見るもので、名前も式も似ているため、混ざりがちです。ところが動画によると、決定的な違いは誰の成果を評価しているかにあります。
- GMROI:商品の原価に注目する。仕入れを担当するバイヤーの成績。
- 交差比率:商品の売価に注目する。店頭で売る店員さんの成績。
(補足:動画にない話です。GMROIは Gross Margin Return On Inventory investment の頭文字で、日本語では商品投下資本粗利益率といいます。「バイヤー対店員」は理解のための整理で、式のうえでの違いは分母を原価で数えるか売価で数えるかだけです。)
GMROI:原価で数えた在庫が、粗利益をどれだけ生んだか
GMROIは、商品の原価という観点から、在庫への投資がどれだけ回収できたかを表します。
GMROIの式
GMROI(%)= 売上総利益(粗利益)÷ 平均在庫高(原価)× 100
聞き手が、ここで素朴な疑問を挟みます。
分母は、単なる在庫高ではなく平均在庫高なんですね。決算日や月末の在庫をそのまま使ってはいけないのでしょうか。
小売の在庫は、季節や日によって大きく動くからです。アパレルなら、冬物を大量に入れた直後の10月と、セールで売り払った後の2月では、倉庫の中身がまるで違いますよね。ある1日だけを切り取ると、お店の普段の実力は測れません。
だから期首と期末の在庫を足して2で割るなどして、平均を取るわけですね。一瞬の切り取りではなく、一定期間の平均的な実力を見るためだと。
(補足:平均の取り方は資料で違います。ここでの「期首と期末の平均」のほか、月ごとの在庫を使って12か月+期末の13時点を平均する説明もあり、季節変動が大きいほど細かく取ります。試験では問題文の指示に従ってください。)
Tシャツで計算してみる
動画は、架空のアパレルショップで数値例を作ります。1枚1,000円で仕入れたTシャツを3,000円で売る店です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 原価 | 1枚 1,000円 |
| 売価 | 1枚 3,000円 |
| 粗利益 | 1枚 2,000円(粗利益率 約66.7%) |
| 平均在庫 | 10枚(原価で1万円) |
| 1年間の販売 | 500枚(売上150万円・粗利益100万円) |
GMROIは、粗利益100万円 ÷ 平均在庫高(原価)1万円 = 100倍、百分率にすると10,000%です。「原価1万円の在庫投資が、1年でその100倍の粗利益を生んだ」という意味になります。安く、しかも確実に売れる商品を仕入れてきた成果が、この数字にそのまま出ます。
10,000%って、現実にある数字なのでしょうか。
これは説明用に作った極端な例です。1年に50回転(500枚÷10枚)もする店は、まずありません。英語版Wikipediaには、一般的な小売業のGMROIは3.0(300%)超が目安とありますが、業種で大きく変わります。数字の大きさより、式の組み立てを覚えてください。
覚え方:GMROIのGは「原価」のG
試験で、原価ベースか売価ベースか迷ったときの合言葉が、動画のイチ押しです。GMROIのGは原価のG。ローマ字のGと、原価のGを結びつけます。そして、原価で見るのは仕入れを担当するバイヤーの成績だと一緒に覚えます。
たとえ:バイヤーの成績表
トレンドを見極めて、安い原価で良い商品を引っ張ってくるほど、GMROIは跳ね上がります。世界中を飛び回って安く仕入れる敏腕バイヤーの通信簿、とイメージしてください。
GMROIは2つのレバーに分解できる
GMROIの式(粗利益÷原価在庫)の間に、売上高を挟みます。
GMROIの分解
GMROI = 粗利益÷売上高 × 売上高÷平均在庫高(原価)
= 粗利益率 × 商品投下資本回転率
掛け算にしても、分子と分母の売上高が打ち消し合って、元の式に戻ります。聞き手は「数学のパズルとしては面白いけれど、実務で何の役に立つのか」と意地悪な質問をします。講師の答えは、原因究明の鍵になるからです。お店を動かす2つの巨大なレバーがあります。
- 粗利益率(粗利益÷売上高):1つ売るごとにどれだけ利益を絞り出せるか。利益性のレバー。Tシャツなら1,000円で仕入れて3,000円で売るので高い。
- 商品投下資本回転率(売上高÷平均在庫高(原価)):投下した原価に対して、どれだけ売上が立ったか。商品が棚から売れていく回転スピードのレバー。
GMROIが悪かったとき、式だけ見ても原因は見えません。分解すれば、「利益率は高いのに全然回転していない」のか、「飛ぶように売れるが利益率が薄い」のか、どちらのレバーに問題があるかが一目瞭然になります。単なる算数ではなく、ボトルネックを探す診断ツールです。
ということは、バイヤーは粗利益率が高い商品をただ仕入れればいいわけではないんですね。
その通りです。しっかり回転するように、適正な原価で仕入れる必要があります。そこに戦略的な意味が見えてきます。
交差比率:分母が「売価」に変わる
ここで1つ疑問が出ます。バイヤーが完璧な仕事をして、GMROIが高く、回転も申し分ない。それでもお店全体は赤字ギリギリ、ということはあるのでしょうか。講師の答えは「大いにあります」。どんなに良い商品を安く仕入れても、店の棚からお客さんの手に渡らなければ、利益は確定しないからです。そこで登場するのが交差比率です。
交差比率の式
交差比率(%)= 売上総利益(粗利益)÷ 平均在庫高(売価)× 100
分子はGMROIと同じ粗利益。分母だけが、原価から売価に変わります。
Tシャツで考えます。倉庫に平均10枚、売価は1枚3,000円なので、分母の平均在庫高(売価)は3万円です。GMROIの分母(原価1万円)とは評価額がまるで違います。店頭に値札3,000円で並んでいる商品が、どれだけ実際の売上と利益に結びついたかを見ている、ということです。バイヤーが安く仕入れたかどうかは関係ありません。
(補足:動画は式の説明までで、交差比率の値は出していません。計算すると、粗利益100万円 ÷ 3万円 ≒ 33.3倍、つまり約3,333%です。)
動画は、この2つを2人の人物像で対比させます。世界中を飛び回って安く仕入れるバイヤーと、店頭で笑顔でポップを作り、接客で売り切るカリスマ店員さん。GMROI(バイヤーの成績)が高くても、レイアウトが悪かったり接客が不十分だったりして商品が埃をかぶっていれば、売価ベースの在庫は滞留し、交差比率は下がります。店頭の販売力がそのまま反映されるのが、交差比率です。
つまり、GMROIは高いのに交差比率は低い、という状態が起こりうるんですね。
そういうことです。経営分析の指標は無機質な数字ではなく、会社のどの部門の、誰の活動の結果なのかを映す鏡なんです。
交差比率も2つのレバーに分解できる
交差比率も、売上高を挟んで分解します。
交差比率の分解
交差比率 = 粗利益÷売上高 × 売上高÷平均在庫高(売価)
= 粗利益率 × 商品回転率(売価ベース)
前半の粗利益率(利益性のレバー)はGMROIと同じです。違うのは後半で、売価ベースの在庫がどれだけ売上として回転したかを示します。どちらも「利益率と回転スピードの掛け算」ですが、回転スピードを測る土台が原価(バイヤー目線)なのか、売価(店員目線)なのか。たったそれだけで、数式が語るストーリーが変わります。
試験の罠:原価と売価の両方が与えられる
問題では、平均在庫高(原価)100万円、平均在庫高(売価)150万円のように、両方の数字が与えられることがよくあります。交差比率を聞かれて、あわてて原価の数字を使ってしまう受験生が後を絶ちません。GMROIを聞かれたら原価、交差比率を聞かれたら売価。迷ったら「バイヤーの成績を聞かれているのか、店員さんの成績を聞かれているのか」と自問します。
(補足:動画にない計算例です。粗利益が300万円なら、GMROI = 300万円÷100万円 = 300%、交差比率 = 300万円÷150万円 = 200%。同じ粗利益でも、分母で値が変わります。)
補足:2つの指標をつなぐ式と、資料による定義の違い
(ここは動画にない内容です。)売価値入率(売価に対する値入額の割合)を使うと、2つの指標は次の式で行き来できます。在庫の原価は、売価の(1-売価値入率)倍だからです。
GMROIと交差比率の関係
GMROI = 交差比率 ÷(1-売価値入率)
Tシャツ:値入率66.7%なので、3,333%÷0.333=10,000%。上の100万円・150万円の例:値入率33.3%なので、200%÷0.667=300%。
値入率は仕入れの時点で見込んだ利益の割合で、粗利益率は値引きやロスまで反映した実際の割合です。両者がずれていても、この式は成り立ちます。なお、定義は資料によって少しずつ違います。
| 論点 | このページ | 資料による違い |
|---|---|---|
| 平均在庫 | 期首と期末の平均 | 月次の13時点 |
| 交差比率 | 粗利益率 | 大学の講義資料は、粗利益率 |
| 商品回転率 | 売上高 | 辞書は売上原価 |
試験では、問題文が「売価」「原価」を指定します。まずその指定に従い、式の名前から基準を決めつけないことが大切です。
補足:交差比率で商品を見るときの注意
(動画にない話です。)大学の講義資料では、利益貢献度 = 売上構成比 × 交差比率という式も示されています。また、回転率と粗利益率の高低で商品を分けると、次のような打ち手が見えてきます。
ただし、交差比率が低い商品を、すぐに店から外してよいとは限りません。平成24年の診断士試験・運営管理では、「小売店舗の売場面積は限られているために、交差比率の低い『死に筋』商品を排除することが重要である」という記述が不適切とされています。他の商品と一緒に買われる商品だったり、集客のための「見せ筋」だったりする場合があるためです。
動画の最後の問い:GMROIは高いのに、交差比率が著しく低い店
動画は最後に、診断士として店舗を診断する場面を想像させます。バイヤーの成績(GMROI)は非常に高いのに、店員さんの成績(交差比率)が著しく低い。フロアで何が起きているでしょうか。動画が挙げる例は、次のとおりです。
- 陳列の仕方が悪く、お客さんの目に止まっていない。
- 店員さんの商品知識が足りず、魅力が伝わっていない。
- 仕入れた商品の層が、店に来るお客さんの層とずれている。
(補足:式から見ると、GMROI = 交差比率 ÷(1-売価値入率)なので、GMROIだけが高く見える店は、値入率が高い(安く仕入れて高く売る設定)ぶん、GMROIが押し上げられている、とも読めます。売価ベースの回転が悪くないか、売価の設定が店の客層に合っているかも、見直す手がかりになります。)
まとめ
- GMROI:粗利益÷平均在庫高(原価)。視点は原価で、バイヤーの成績。Gは原価のG。
- 交差比率:粗利益÷平均在庫高(売価)。視点は売価で、店頭・店員さんの成績。
- どちらも粗利益率 × 回転率の掛け算に分解でき、どちらのレバーが悪いかを探せる。違いは回転率を測る基準(原価か売価か)だけ。
- 試験は、原価・売価の両方が与えられる罠に注意。GMROIなら原価、交差比率なら売価を使う。
公式を文字だけで丸暗記するより、「2つのレバー」と「バイヤー対店員」の対比で覚えると、記憶に残りやすくなります。時間のあるときに、もう一度ストーリーを頭の中で思い返してみてください。
動画で聞く
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