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行政書士試験

法令科目を、会話でほぐす。

憲法、行政法、民法を中心に、行政書士試験の論点を2人の掛け合いで解説します。

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取消しと撤回は誰ができる?処分庁と上級行政庁の違いを比較表で整理

行政法 03411分29秒2026年8月22日公開

取消しと撤回、この2つは何が違うのでしょうか。どちらも行政行為の効力をなくすという点は同じで、そこから先が曖昧になりやすい論点です。動画は、取消しと撤回を左右に並べた表を、4つの観点で上から順に埋めていく形で進みます。このページでは、「取消しと撤回の違い」を、誰ができるか(処分庁と上級行政庁)、原因、効果、法律の根拠の順にまとめました。「取消し 撤回 違い」で調べている人も、まず動画を聞いてから、ここで表を確認するのがおすすめです。

3行でいうと

  • 取消しと撤回の違いは、原因・主体・効果の3つの観点で整理できます。共通点は、どちらも行政行為の効力をなくすことです。
  • 誰ができるかは、取消しが処分庁と上級行政庁、撤回が処分庁のみです(通説)。
  • 原因は「最初からの瑕疵」か「あとからの事情変化」か、効果は「遡って無効」か「将来に向かって無効」か。法律の根拠は、どちらも不要です。

取消しと撤回の違いは?まず全体像から

「取消しと撤回の違い」は、行政法で必ずといってよいほど出てくる論点です。どちらも、いったん行われた行政行為の効力をなくす点は同じなので、結果だけを見るとそっくりに見えます。そのため試験では、「いま話しているのは取消しなのか、撤回なのか」を取り違えさせる問題がよく作られます。

動画では、左に取消し、右に撤回を並べ、上から順にマスを埋めていくイメージで進みます。このページも同じ順番です。先に、2つの言葉を確認しておきましょう。

  • 取消しとは:行政行為が成立した当初から瑕疵(欠陥)があったことを原因として、その効力をなくすこと。
  • 撤回とは:成立したときは適法だった行政行為について、あとの事情の変化を原因として、その効力をなくすこと。

前の回では、相手方に利益を与える行政行為の取消しや撤回には制限がかかること、撤回に法律の根拠は不要であることを見てきました。今回はその続きとして、まず「誰が行うことができるか」から入ります。

取消しと撤回は誰ができる?処分庁と上級行政庁

行政法では、これを「なしうる者」と呼びます。文字どおり、それを行うことができる者、つまり権限を持っている行政庁は誰か、という論点です。ここで出てくる行政庁は2つです。

  • 処分庁:その処分を実際に行った行政庁のこと。窓口でいえば、その許可を出した役所そのものです。
  • 上級行政庁:その処分庁の上に立つ行政庁のこと。行政の組織は上下の階層になっていて、その上の階層にあたる行政庁です。

通説によれば、取消しは、処分庁だけでなく上級行政庁もできます。これに対して撤回は、処分庁のみが行うことができ、上級行政庁はできません。取消しとは逆になるので、比べると差がくっきり出ます。

上級行政庁処分庁上下の階層取消し:できる撤回:できない取消し:できる撤回:できる取消し=誤りを正す → 上司も直せる撤回=事情の判断 → 中身を知る処分庁が決める
取消しは処分庁と上級行政庁の両方、撤回は処分庁だけ。理由づけとセットで覚えます。

どうして上の役所まで取り消せるんですか?

行政組織の上下関係を通じて、誤りのある行政行為を正す権限が上級機関にも認められる、という考え方に基づいています。取消しは、そもそも間違っていたものを正す作業です。会社でいえば、部下が作った書類に誤りがあれば、上司も直せるという感覚に近いですね。

では撤回は、なぜ処分庁だけなのでしょう。

撤回は、間違いを直す話ではないからです。もともと適法に成立していた行政行為を、その後の事情の変化を踏まえて、将来に向けて効力を失わせる行為ですよね。その行政行為の内容をいちばんよく把握しているのは、実際に処分をした処分庁です。だから処分庁自身の判断に委ねるべきだ、と考えます。

理由づけまで押さえておくと、丸暗記より圧倒的に忘れにくくなります。

取消しと撤回の違いを比較表で整理

ここまでの内容と、このあと説明する3つの観点を、1枚の表にまとめます。この表を白紙から書けるようになれば、取消しと撤回の問題はもう落としません。

観点取消し撤回
原因成立した当初からの瑕疵成立後の事情の変化(成立時は適法)
主体(なしうる者)処分庁と上級行政庁処分庁のみ
効果遡って無効
はじめから無かったことに
将来に向かって無効
それまでの効力は維持
法律の根拠不要不要
決め手の言葉「遡及して」「はじめから」「将来に向かって」「以後」

共通点は、行政行為の効力を消滅させるという一点です。だからこそ混同しやすいのですが、原因・主体・効果の3つの観点ではっきり区別できます。そして法律の根拠の行だけは、両方とも「不要」で同じです。ここが引っかけどころになります。

原因と効果はつながっている

表の「原因」と「効果」の行は、つなげて見ると覚えやすくなります。取消しの原因は、成立した当初からの瑕疵でした。問題があったのが最初の時点なら、効力をなくすのも最初の時点から、つまり遡って無効になる、と考えると自然です。

撤回のほうは、問題が生じたのは成立したあと、事情が変わった時点です。問題が生じたのが後の時点なら、効力をなくすのもそこから先、つまり将来に向かって無効になります。

取消し遡って無効処分の成立最初から瑕疵今撤回将来に向かって無効それまでは有効処分の成立(適法)事情が変化
取消しは過去に向かう左向きの矢印、撤回は未来に向かう右向きの矢印で覚えます。

撤回は、それまでの効力は維持したまま、今後の効力だけを失わせます。撤回されるまでの間にその行政行為に基づいて生じていた効力は、そのまま有効なものとして扱われます。取消しなら過去の分まで巻き戻り、撤回なら過去はそのまま。この2つは正反対です。取消しが強い効果を持つからこそ、相手方に利益を与える行政行為では制限がかかるわけですね。

矢印と言葉で覚える

取消しは過去に向かう左向きの矢印、撤回は未来に向かう右向きの矢印で覚えます。問題文に「遡及して」「はじめから」とあれば取消しの列、「将来に向かって」「以後」とあれば撤回の列です。時間の向きを表す言葉が決め手になります。

法律の根拠は?どちらも不要

表の最後の行、法律の根拠です。取消し・撤回のいずれについても、法律に明文の根拠規定がなくても行うことができるとされています。どちらも、法律による行政の原理からの当然の帰結と位置づけられているからです。

法律による行政の原理とは、行政の活動は法律に従わなければならない、という考え方でした。だとすると、法律に反する行政行為を正すことも、法律に照らして維持できなくなった行政行為をやめることも、その原理の中に当然含まれていると考えられます。わざわざ別に条文を用意しなくても、原理から出てくるということです。

原因も主体も効果も違うのに、法律の根拠の行だけは同じなんですね。

そうなんです。ここだけ両方とも「不要」です。取消しだけ不要、撤回だけ不要と覚えてしまうと崩れるので、理由づけとセットで覚えておきましょう。

試験での見分け方:問題が起きたのは処分の前か後か

事例問題では、時系列がわざと分かりにくく書かれていることがあります。読むときは、いつ処分がされ、いつ問題が起きたのか、時間の順番に線を引くつもりで整理してください。処分の時点ですでにおかしかったなら取消し、あとからおかしくなったなら撤回です。この一行が分かるだけで、事例問題の半分は解けるようになります。

問題が生じたのは、いつ?処分のときからダメ処分のあとでダメに取消しさかのぼって無効処分庁+上級行政庁撤回将来に向かって無効処分庁のみ
処分の前からの問題か、あとからの問題か。時間の順番に線を引いて判断します。

主体の行も、見分けの手がかりになります。表の主体の欄に上級行政庁が入っていたら取消しの列、処分庁だけなら撤回の列です。

試験ではここに注目

  • 「上級行政庁も撤回することができる」は誤り。撤回ができるのは処分庁のみです。
  • 「上級行政庁も取り消すことができる」は、正しい記述になり得ます。取消しの話か撤回の話かで、答えがひっくり返ります。
  • 時間の向きを表す言葉に反応する。「遡及して」「はじめから」は取消し、「将来に向かって」「以後」は撤回です。
  • 法律の根拠は、取消し・撤回のどちらも不要。ここは共通点です。

補足:動画に出てこない2点

※ここは動画にない補足です。①今回の取消しは、行政庁が自ら行う取消し(職権取消し)です。審査請求の裁決で処分が取り消される場合(行政不服審査法46条1項)や、取消訴訟で処分が取り消される場合(行政事件訴訟法3条2項)は、別の仕組み(争訟取消し)として区別されます。②撤回に明文の根拠が要らないことについては、法律に撤回の定めがなくても、指定医師の指定の撤回ができるとした判例があります(最判昭和63年6月17日)。

まとめ

  • なしうる者:取消しは処分庁と上級行政庁、撤回は処分庁のみ。上級行政庁は撤回できない(通説)。
  • 原因:取消しは当初からの瑕疵、撤回はその後の事情変化。
  • 効果:取消しは遡って無効、撤回は将来に向かって無効。
  • 法律の根拠:どちらも不要(法律による行政の原理の帰結)。
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