聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

著作権の例外と侵害への反撃

経営法務 第50回

経営法務・知財 01020分27秒2026年4月5日公開

「美術館でよく、作品の前にロープが張られているのを見たことがありますよね」。動画はこんなやり取りから始まります。このページでは動画の流れにそって、著作権の例外(私的使用、非営利・無料、プログラム、映り込み、屋外の美術・建築、同一性保持権)と、侵害に対する4つの請求、そして著作権が特許と違って相対的独占権である理由をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

美術館のロープは「見えない結界」

動画は、美術館で作品の前に張られたロープの話から始まります。あのロープを見ると、ここから先は入ってはいけない「見えない結界」のように感じますよね。ところが、特定の条件を満たしたときだけ、そのロープを越えて作品に触れたり写真を撮ったりすることが、法律上許される。そんな場面が、情報や作品の世界には実際にあるのだ、という導入です。

今日のテーマは著作権です。大前提として、正当な理由や権限なしに他人の著作物を使えば、著作権の侵害になります。他人の時間と労力の結晶を、無断で使ってはいけないからです。

ただ、これを四角四面に当てはめると、たとえば家で鼻歌を歌うだけでも作曲者の許可が必要になって、生活できません。そこで、社会を円滑に回すために、特例として利用が許される制限(例外)の規定が用意されています。動画は、その例外を順に紹介し、後半では、ロープを力ずくで突破する侵害への「反撃」を見ていきます。

原則:無断で使えば著作権の侵害私的使用個人・家庭内で使う非営利・無料それでも複製・送信は別プログラムバックアップ・改良・修正映り込み背景に入ってしまった著作物屋外の美術・建築撮影・公衆送信など人格権の例外教育・プログラム・建築の改変
動画が順に紹介する「ロープを越えてよい場面」の地図です。

例外その1:私的使用

代表的な例外が私的使用です。個人的または家庭内で使う場合で、動画の例は、自分で買ったCDの音楽をスマホに取り込んで通勤中に聞く、家族で見るためにテレビ番組を録画する、というものです。

ただし動画は、診断士としてクライアントに助言するときの落とし穴を挙げます。違法にアップロードされたものと知りながらダウンロードする行為は、たとえ私的な利用でも許されません。

使える(私的使用)自分で買ったCDをスマホに取り込む家族で見るためにテレビ番組を録画例外から外れる違法アップロードと知りながらダウンロード一人で見るだけでも言い訳にならない
ポイントは「出どころが違法だと知っていたか」です。

自分の部屋で一人でこっそり見るだけだから、セーフでしょう、という言い訳は通用しないということですね。

そういうことです。元々の出所が違法だと分かっていたら、その時点でアウトなんです。

(補足:動画は対象を限定せずに説明しています。条文では、音楽・映像(録音・録画)の違法ダウンロードの違法化が先にあり、令和2年の改正(令和3年1月1日施行)で、漫画・書籍・論文・プログラムなどへ広がりました(30条1項3号・4号)。ただし、侵害コンテンツと知りながら行う場合に限られ、軽微なものなどは除かれます。刑事罰の対象は、有償で提供されている著作物を継続的・反復して行う場合などに限られます(119条3項)。)

例外その2:非営利・無料でも、何でもありではない

次は、学校や公民館などでの非営利・無料の利用です。聞き手は「非営利で無料なら、基本的に何でもありではないか」と問います。たとえばクライアントが公民館で無料のセミナーを開き、市販のビジネス書を100人分コピーして配ってよいか、という例です。

動画の答えは「NG」

非営利で無料であっても、無断での複製・譲渡・公衆送信は明確に禁止されている、と動画は説明します。理由は市場への影響です。100人がタダで手に入れれば、その本を買う人はいなくなり、本来売れるはずだった市場が消えてしまいます。著作者は収入を失い、次の作品を生み出す意欲も失います。利用の許可は、著作者の生活を脅かさない範囲という絶妙なバランスの上にある、というまとめです。

(補足:動画にない話です。非営利・無料・無報酬の条件で認められるのは、条文上は、公表された著作物の上演・演奏・上映・口述などとされています。コピーの配布まで広がる規定ではないため、動画の結論と合います。)

例外その3:プログラムのバックアップと改良

プログラムについては、業務を止めないための実用性が考慮される、と動画は説明します。必要な限度内で、バックアップを取ったり、システム環境に合わせて改良や修正を加えたりすることは、侵害になりません。サーバーがクラッシュするたびに開発会社へ許可を求めていては、ビジネスのスピードについていけないからです。

(補足:条文では、プログラムの複製物の所有者が、自らそのプログラムをコンピュータで実行するために必要と認められる限度で複製できる(47条の3第1項)、その限度で翻案(改良・修正)もできる(47条の6第1項6号)とされています。海賊版を業務で使う場合は対象外です。動画の「必要な限度内」を、もう少し具体的にしたものです。)

例外その4:映り込み

映り込みとは、写真や動画を撮ったとき、本来の目的ではない著作物が入ってしまうことです。動画の例は、街で動画を撮っていたら、後ろのカフェから流れる音楽や壁のポスターが入ってしまうケースです。正当な範囲内であれば侵害になりません。いちいち全部の許可を取っていたら、誰も街中でカメラを回せなくなるからです。

(補足:動画の「正当な範囲内」という言い方は大づかみです。条文(30条の2)は、撮影・録音などの対象に付随して対象になった著作物が、その作品の中で軽微な構成部分にとどまることを前提に、利益を得る目的の有無・分離の困難さ・作品での役割などから見て正当な範囲内であり、著作権者の利益を不当に害しない場合に、利用を認めています。)

例外その5:屋外にある美術・建築

では、屋外の有名な銅像やデザイン性の高いビルを、パンフレットの表紙にするために、あえてメインで撮影する場合はどうでしょうか。聞き手は「メインの被写体なのだから許可が必要では」と考えます。ところが動画は、これも例外として認められると言います。屋外の場所に恒常的に設置されている美術や建築の著作物は、写真撮影などで複製したり、公衆送信したりできるのです。

屋外に恒常的に置かれた美術・建築利用できる写真撮影などの複製公衆送信(ウェブ掲載)できない販売を目的とする複製(ポストカードにして販売)
背景でもメインでも撮れますが、売り物にするのは別です。

ただし、ここに「例外の例外」があります。販売を目的として複製することなどはできません。自社の紹介に使うのはよくても、銅像の写真をポストカードにしてお土産物屋さんで商品として売るのはダメ、という境界線です。動画は、日常の風景としての利用と、他人のふんどしで相撲を取るようなビジネス利用が、きれいに線引きされていると表現します。

(補足:動画の「販売を目的として複製すること」は、条文では、専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製したり、その複製物を販売したりする場合などとされています。屋外に恒常的に置かれたものでなければ、この例外の対象にはなりません。)

作品を「いじる」ルール:同一性保持権の例外

ここまでは作品をそのまま使う話でした。次は、内容を変える改変のルールです。作者には、作品を勝手にいじられたくないという思いがあります。これを守るのが、著作者人格権に含まれる同一性保持権です。しかし、これも絶対ではなく、著作物の性質上やむを得ないときなどには制限される、と動画は説明します。

場面動画の例理由
教育教科書用に漢字をひらがなに直す教育という目的を果たすため
プログラムバグの修正実用性のため
建築物増築・修繕・模様替え使い続けるため

聞き手は、建築家の立場で「勝手に2階を足されたらショックだ」と言います。講師は、オーナーが増築や雨漏りの修繕をしたいときに「デザインが変わるから直すな」と言われたら、生活もビジネスも破綻すると説明します。

(補足:動画にない話です。建築物の改変について、条文(20条2項2号)は増築・改築・修繕・模様替えを挙げており、改築も含みます。条文では、教科書への掲載に関する用字・用語の変更は「学校教育の目的上やむを得ない」ものとされ、プログラムは「より効果的に実行できるようにするため」などの必要な改変とされています。動画が挙げた「バグの修正」がこれらのどれに当たるかは、資料により説明が異なるようです。また、ここまでの例外には、財産としての著作権の制限と、人格権である同一性保持権の制限が混ざっています。別の権利なので分けて覚えましょう。)

侵害への反撃:海賊版・リーチサイト・アクセス制限

後半は、例外を悪用したり無視したりする侵害への対抗手段です。まず海賊版です。海外で著作者の許諾なく作られた海賊版を、国内で販売・配布する目的で輸入することは、侵害になります。(補足:条文では、侵害とみなされる行為の一つとして定められています。「国内で頒布する目的」がポイントです。)

さらに動画は、使う側にも注意を促します。海賊版を使うだけでも、それが海賊版だと知っていれば侵害になるというのです。例として、怪しいほど安いソフトウェアを、偽物だと知りながら会社のパソコンに入れて使うケースが挙げられます。「自分は売っていない、買っただけ」という言い訳は、悪意があれば通用しません。

(補足:この部分は動画の言い方を確定できませんが、続く例はソフトウェアの話です。条文でも、プログラムの海賊版を業務で使う行為について、入手した時点で海賊版と知っていた場合を侵害とみなす、という形の規定があるとされています。音楽や映像を個人が見聞きするだけの場合まで同じように侵害となる、という意味ではない点に注意してください。)

手口は巧妙化しています。動画が挙げるのは、次の2つです。

  • リーチサイト:海賊版へのリンク情報をまとめたサイト。自分のサーバーにファイルを置いていなくても、リンクを提供する行為は侵害になる。聞き手は、裏路地で「あっちの地下に行けば遊べますよ」と地図を配る案内人にたとえます。
  • アクセスコントロールの回避:視聴を制限する技術を、不正なツールで破る行為。聞き手はこれを「デジタルな金庫の鍵をピッキングするような行為」と言い換えます。

(補足:リーチサイトの規制は令和2年の改正で整えられたとされ、条文では、侵害だと知っているなど一定の要件を満たす場合に限られます。技術的な制限の回避も、どの技術を、どの行為(回避装置の提供か、回避そのものか)で規制するかによって扱いが分かれます。)

侵害されたら使える4つの武器

では、クライアントの著作物が侵害されたとき、どんな手段があるでしょうか。動画は4つの請求を挙げます。

差止め請求いまの侵害をやめさせる損害賠償請求受けた損害の穴埋め不当利得返還請求相手が得た利益に注目名誉回復等措置請求信用の回復(謝罪広告など)
動画が挙げる「4つの武器」です。
  • 差止め請求:今すぐそのサイトを閉鎖しろ、偽物の販売をやめろ、と現在進行中の被害を止める請求。
  • 損害賠償請求:コピーをばらまいたせいで商品が売れず100万円損した、その分を弁償しろという請求。
  • 不当利得返還請求:相手が無断で使っていくら儲けたかに注目し、その利益を返せと求める請求。
  • 名誉回復等措置請求:お金では解決できないブランドの信用を取り戻すため、新聞に謝罪広告を出させるなどの措置。

損害賠償と不当利得返還は、どちらもお金の話に見えます。聞き手が違いを尋ねると、講師は、損害賠償では「偽物がなければ、その分だけ本当に売れていたのか」を厳密に証明するのが難しい場合がある、と説明します。「魅力がなかっただけでは」と反論されれば、悪魔の証明のようになってしまう。そこで、損をした額はさておき、相手の懐に入った不当な利益を直接狙うのが不当利得返還請求だ、という整理です。

(補足:動画にない話です。たとえば侵害者が海賊版を2,000個売り、1個あたり300円の利益を得ていたとすると、2,000×300=600,000円です。著作権法には、侵害者が得た利益の額を権利者の損害額と推定する規定があり、立証の負担を軽くしています。つまり動画の言う「損害の立証が難しい」への手当ては、損害賠償の側にもあります。)

試験の注目点:動画の整理と条文のずれ

  • 動画は、4つの請求を並べています。条文では、差止請求と名誉回復等措置請求は著作権法に書かれ、損害賠償と不当利得返還は民法の一般ルールを基にするとされます。
  • 名誉回復等措置請求は、条文上は著作者人格権などの侵害に対する請求とされています。動画のように「著作権の侵害」の4つ目として並べると、対象がずれて見えます。
  • 動画は不当利得返還を「利益を丸ごと返せ」と説明します。法律上は、権利者の損失と対応する範囲で考えるとされ、儲け全部とは限らないようです。

最後に:なぜ著作権は「相対的」なのか

動画は、著作権の本質を、特許との比較で説明します。動画は、著作権には特許のような要件がなく、相対的独占権だという特徴がある、と説明します。(特許のどのような要件がないのかは、動画の音声からは確定できないため、ここでは具体的な語を挙げません。)

聞き手が思考実験をします。自分が家にこもって完璧なメロディを作った同じ瞬間に、地球の裏側の面識のない人が、一音も違わない同じメロディを作ったらどうなるのか。動画の答えは、模倣や盗作がなければ、それぞれの著作者が著作権を持つです。独占的という言葉と矛盾して聞こえますが、特許と著作権では法律の目的が違います。

特許:絶対的著作権:相対的出願・審査・登録先に出願した人が権利を得る後からは使えない創作と同時に発生模倣・盗作でなければ偶然同じでもそれぞれが権利を持つ
同じメロディが2つ生まれても、両方が守られます。
  • 特許は産業を発展させるためのルール。技術の公開を促すために、権利を与える人を一人に絞る。
  • 著作権は文化を発展させるためのルール。文化とは思想や感情の表現で、自分で苦労して考え、表現を生み出した行為そのものが尊い。だから偶然似てしまっても、誰の真似もしていなければ、それぞれが独立して保護される。

もし偶然の一致まで排除したら、クリエイターは怯えて新しい曲を作れなくなり、「文化が死んでしまう」と動画は言います。冒頭のロープは、人を拒むためだけでなく、安心して創造の海を泳ぐための命綱だった、というオチです。

(補足:動画の説明で、特許を「世界で最初に発明した人に権利を与える」と言う部分は単純化です。日本の特許は、最初に発明した人ではなく、最初に出願した人が権利を得る先願主義とされています。一方、著作権は創作の時点で自然に発生し、登録などの手続きは要らないとされています(無方式主義)。侵害といえるには、一般に、他人の著作物に依拠していることと、似ていることが必要とされます。)

まとめ

著作権の例外と侵害への反撃

  • 原則は無断利用が侵害。ただし、社会を回すために例外(制限)がある。
  • 私的使用は個人・家庭内の利用。ただし違法アップロードと知りながらのダウンロードは対象外。
  • 非営利・無料でも、無断の複製・譲渡・公衆送信は、動画では禁止と説明される。
  • プログラムは必要な限度でバックアップ・改良・修正ができ、映り込みは正当な範囲で侵害にならない。
  • 屋外に恒常的に置かれた美術・建築は撮影・公衆送信ができるが、販売目的の複製は不可。
  • 同一性保持権も、教育(漢字をひらがなに)・プログラム・建築(増築・修繕・模様替え)では制限される。
  • 侵害への反撃は、差止め・損害賠償・不当利得返還・名誉回復等措置の4つ。海賊版の輸入、海賊版と知っての使用、リーチサイト、アクセス制限の回避が挙げられた。
  • 著作権は相対的独占権。模倣・盗作でなければ、偶然同じ内容でもそれぞれが権利を持つ。

例外の数は多いですが、理由(生活の円滑さ、実用性、市場を壊さないこと)と結びつけて、場面ごとに覚えていきましょう。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む