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中小企業診断士 1次試験

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鼻歌も守る著作権

経営法務 第49回

経営法務・知財 00920分12秒2026年4月5日公開

「あなたが朝シャワーを浴びながら、完全にオリジナルのものすごくキャッチーなメロディを鼻歌で歌ったとしますよね」。動画はこんな想像から始まります。このページでは動画の流れにそって、著作物の範囲、二次的著作物と共同著作物、魂とお財布にたとえた人格権と財産権、著作隣接権、無方式主義と存続期間をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

鼻歌を歌っただけで、権利が生まれる?

朝のシャワーで、オリジナルのキャッチーなメロディを鼻歌で歌った。楽譜に書いたわけでも、誰かに聞かせたわけでもない。それでも動画は、その瞬間に強い権利が生まれていて、しかも本人の死後70年も続く可能性がある、と切り出します。診断士1次試験の著作権は暗記科目に見えますが、動画は「なぜそういうルールなのか」の筋道をたどって、丸暗記から抜け出そうと進めます。

流れは、何が守られるのか(著作物)、誰が権利をもつのか(二次的著作物・共同著作物)、どんな権利か(人格権と財産権)、伝える人の権利(著作隣接権)、そして発生と期間のルール、の順です。

(補足:鼻歌が守られるには、創作的な表現であることが必要で、ごく短いものやありふれたフレーズは創作性がないとされることもあります。動画の「鼻歌=必ず強い権利」は単純化です。ただ、楽譜や録音に残していなくても守られる点は、日本の著作権法が固定を要件にしていないためです。)

守られるのは「表現」。アイデアは守られない

著作物とは、思想または感情を創作的に表現したもので、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものです(著作権法2条1項1号)。動画が最初に強調するのは、守られるのはあくまで「表現されたもの」だという点です。

たとえはレゴです。新しいプログラミング言語やアルゴリズムは、家を建てるためのレゴのブロックの形や、建て方のルールのようなものです。もし誰かがそれを独占したら、他の人は誰も家を建てられず、文化の発展が止まってしまいます。だから、ルールやアイデアそのものは著作物から外されています。一方、その言語を使って実際に書き上げた具体的なプログラムは、建てられた家にあたり、著作物として守られます。

アイデア・ルール(レゴの形・建て方)プログラム言語規約・解法アルゴリズム保護されない表現(実際に建てた家)具体的なプログラム歌詞・メロディ小説・絵・写真保護される
著作権法が守るのは「表現」で、アイデアやルールそのものではありません。

(補足:プログラムについては、著作権法10条3項に、保護はプログラム言語・規約・解法には及ばない、という趣旨の規定があります。動画の「レゴ」は、この規定の説明にぴったりです。)

動画は、著作物にあたるものの例として、セリフのない無言劇、その場限りのアドリブの公演、地図、芸術的な建築物、ゲームソフトの映像部分も挙げます。動画には、法律のようなルールも含まれない、という説明も出てきます。

(補足:法令・条例・裁判所の判決などは、著作権の目的にならないと著作権法13条に定められています。また、ゲームの映像部分は、映画の著作物として扱われる場合があるとされています。)

ものすごく苦労して考えた画期的なアイデアでも、著作物にはならないのですか。

はい。守られるのは表現された形です。試験で引っかけ問題が出たら、これは家を建てるためのレゴなのか、実際に建てられた家なのか、という見分け方をしてみてください。

二次的著作物:使うときは二重のロック

世の中の作品は、ゼロから作られたものばかりではありません。二次的著作物は、原作を翻訳したり、翻案(漫画をアニメにするなど)したりして新たに創作された著作物です。

動画の設例は、英語の小説を日本語に翻訳する場面です。動画は、「創作する段階」と「使用する段階」を分けて考えるよう言います。

  • 創作する段階(翻訳する):大元の原作者の許諾だけが必要です。
  • 使用する段階(たとえば映画会社が映画のシナリオに使う):翻訳者の許諾に加えて、原作者の許諾も必要です。
原作(英語の小説)原作者翻訳して日本語版を作るとき日本語版(二次的著作物)翻訳者→ 原作者の許諾映画会社が映画に使うとき映画映画会社翻訳者と原作者両方の許諾が必要
使うときは、翻訳者と原作者の両方の許諾が要ります。

翻訳者が苦労して美しい日本語にしても、勝手に映画化のOKを出せるわけではありません。使うときは翻訳者と原作者の両方が鍵をもっています。動画では聞き手が「二重のロックがかかっている状態」とまとめ、講師も「その通り」と受けます。元の権利者の利益を守るための重要なルールだと、動画は説明します。

(補足:二次的著作物の利用について、原著作物の著作者は、二次的著作物の著作者と同じ種類の権利をもつ、と著作権法28条に定められています。これが「二重のロック」の根拠です。なお、原作の保護期間が終わっていれば、原作者の許諾は必要ありません。)

共同著作物:全員の合意がないと動かせない

3人のバンドで1曲を共同で作ったとします。これは共同著作物です。動画の設例では、企業がその曲をCMで使いたいと言ってきて、2人は賛成、ドラマーの1人が反対です。多数決で2対1なら進められそうですが、動画は「ストップ」と言います。共同著作物の権利は、原則として全員の合意がなければ行使できません。

理由は、共同で作り上げた作品は「ここは僕のメロディだから僕のもの」ときれいに切り離せないからです。切り離せない以上、全員の権利が一体になっていると考える、と動画は説明します。

たとえ:ベースラインだけ抜けない曲

曲のベースラインだけを取り出して「これは私の分」と使うことはできません。だから、使い道を決めるには全員がうなずく必要があります。動画では、聞き手が「曲のベースラインだけ抜くとか無理ですもんね」と受け、講師が「切り離せない以上、全員の権利が一体」と説明します。この「全員一致」の強さを覚えておくとよいでしょう。

(補足:著作権法の共同著作物は、2人以上が共同して創作し、各人の寄与を分離して個別的に利用できないものを指します。動画の説明は、この後半の条件に近い話です。また、共有する著作権の行使は全員の合意が必要ですが、各共有者は、正当な理由がなければ合意の成立を妨げられないとも定められています(65条2項・3項)。動画の「1人でも反対したら必ずボツ」は、少し単純化した言い方です。歌詞と曲のように別々に使える組み合わせは、共同著作物とは扱われないのが一般的です。)

権利は2種類:魂(人格権)とお財布(財産権)

では著作権は、具体的に何ができる権利でしょうか。動画は、巨大な1つの権利ではなく、著作者人格権と、財産権としての著作権の2つに分けて見る、と説明します。動画の会話では、聞き手が人格権を「魂」、財産権を「お財布」にたとえ、以後その言い方で進みます。

魂著作者人格権公表権氏名表示権同一性保持権譲渡も相続もできない(一身専属)お財布著作権(財産権)複製権上演権・演奏権公衆送信権など頒布権(映画)譲渡して売り買いできる
著作権は「魂」と「お財布」の二つに分かれます。

魂:著作者人格権

著作者本人と切り離せない権利で、他人に譲渡することも、死後に相続することもできません。これを一身専属権といいます。動画は、契約などで上書きすることもできない絶対的なもの、と説明します。内容は3つです。

権利内容例
公表権世に出すかどうかを決める未発表の原稿
氏名表示権名前を出すか決める名前を伏せる
同一性保持権勝手に変えられない結末の書換え

(補足:「契約で上書きできない」という点について、実務では、著作者人格権を「行使しない」と約束する特約が結ばれることがあります。人格権そのものを譲渡できるわけではありません。)

お財布:財産権としての著作権

こちらは本人から切り離して売り買いできる、取引の対象になる権利です。動画が挙げた主なものは次のとおりです。

  • 複製権:印刷・写真・録画などでコピーする。
  • 上演権・演奏権:公衆の前で上演・演奏する。
  • 公衆送信権・伝達権:インターネットなどで送信したり、受信装置で公衆に伝えたりする。今の配信もここに入ります。
  • 頒布権:映画の著作物の複製物を販売・貸与して配る。

(補足:映画以外の著作物の複製物については、頒布権ではなく、譲渡権・貸与権という別の権利があります。動画の「伝達権」は、条文では公衆伝達権と呼ばれます。)

小説の財産権を丸ごと出版社に売ったあとで、出版社が「うちが買ったのだから」と、名前を伏せ、タイトルも変えて売ろうとしたらどうなりますか。

それはできません。売ったのはお財布だけで、魂である人格権は一身専属権として手元に残っているからです。氏名表示権と同一性保持権で、名前を出すこととタイトルを変えないことを要求できます。

テキストの権利のリストを見たら、これは魂のリストか、お財布のリストかと分類してみる、というのが動画のすすめです。

(補足:財産権を丸ごと売った場合の細かい点として、翻案権等(27条)と二次的著作物の利用権(28条)は、契約書に特に書いていなければ、売った側に残ったと推定される、という規定があります(61条2項)。)

伝える人の権利:著作隣接権

歌手や俳優は、ゼロから作品を生み出してはいません。それでも、作品を世の中に届ける重要な役割を担っています。そこで著作隣接権が用意されている、と動画は言います。動画の整理では、この隣接権も著作者と同じように魂とお財布に分かれます。

伝える側魂お財布実演家(歌手・俳優)ありありレコード製作者なしあり放送事業者なしあり有線放送事業者なしあり
動画の整理では、魂をもつのは実演家で、お財布は4者に認められます。
  • 実演家人格権(魂):歌手や俳優などの実演家に認められます。自分が実演したと名前を表示するかを決める氏名表示権や、名誉を落とすようなひどい改変をさせない同一性保持権があります。
  • 財産権としての権利(お財布):実演家のほか、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者にも認められます。勝手な録音・録画などの複製や譲渡を許諾したり禁止したりできる権利や、放送・レンタルされるときに使用料を請求できる報酬請求権などがあります。

動画は、創作者という源流から実演家、レコード会社、放送局という川を下ってリスナーに届く、その全員に魂と財布の権利がパズルのように設計されている、と整理します。

(補足:隣接権の財産権の中身は、実演家、レコード製作者、放送事業者などの主体ごとに違います。動画は「4者に同じような権利がある」ように聞こえますが、実際には権利の種類は異なります。)

発生と寿命:手続き不要の無方式主義

これだけ強い権利を手に入れるために、役所に書類を出して審査を受けるのでしょうか。動画の答えは「いいえ」です。著作権は創作と同時に自動的に発生します。届出も登録も要らないこの仕組みが無方式主義です(17条2項)。冒頭の鼻歌も、メロディを創作的に表現した瞬間に権利が生まれている、というわけです。特許のように出願と審査が必要な制度とは対照的です。

ここで聞き手が、「後から『そのメロディは俺が先に考えた』と言われたら、証明が難しくないか」と心配します。動画の答えは、基本は手続き不要でも、トラブルのときに第三者に権利を主張する対抗要件として、公表後や譲渡後に著作権登録の制度もある、というものです。

(補足:登録が対抗要件になるのは、主に著作権の移転や、質権の設定などです(77条)。このほか、実名の登録(75条)、第一発行年月日の登録(76条)、プログラムの創作年月日の登録(76条の2)には、登録内容を推定する効果があります。ただし、著作権の侵害は、他人の作品をもとにした場合に成立します。偶然にそっくりな作品を、お互いを知らずに作った場合は、どちらにも権利が生まれます。)

存続期間:原則は死後70年

自動で発生した権利の寿命は、原則として著作者の死後70年です。ただし、動画は例外を問いかけます。「死んだ後」ではなく「公表後70年」になるのはどんなケースでしょうか。ヒントは、いつ死んだのか分からない、そもそも死なない場合です。

原則:死後70年(著作者が亡くなってから)死んだ日が使えない場合無名・変名(周知でないペンネーム)団体名義(会社など)映画の著作物(関わる人が多い)例外:公表後70年(世に出てから)
「死んだ日が使えるか」で、起点が変わります。
ケース基準動画の理由づけ
原則死後70年死んだ日が分かる
無名・周知でないペンネーム公表後70年誰がいつ死んだか証明しにくい
団体名義公表後70年会社に寿命はない
映画の著作物公表後70年関わる人が多すぎて寿命を計算しにくい

(補足:条文では、団体名義と映画は、それぞれ53条・54条に定められています。無名・変名は52条で、変名のうち周知のものは対象外です。映画が公表後起算になる理由は、動画のように関わる人が多いためと説明されることが多いようですが、条文に理由が書かれているわけではありません。また、期間は死亡や公表の翌年の1月1日から数えます(57条)。団体名義と映画は、創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年で終わります(53条1項・54条1項)。共同著作物の著作権は、最終に死亡した著作者の死後70年です(51条2項)。たとえば2020年7月に亡くなった著作者の権利は2090年12月31日まで、2015年に公表された団体名義の著作物は2085年12月31日までです(検算済み)。70年への延長は2018年(平成30年)12月30日で、それ以前に期間が満了していた著作物は復活しません。)

隣接権の期間について、動画は、実演が行われた後・レコードが発行された後から70年、放送事業者は放送が行われた後から50年と説明します。

(補足:隣接権の期間は著作権法101条2項で、実演とレコードが70年(実演が行われた年、またはレコードが発行された年の翌年から数える)、放送と有線放送が50年(行われた年の翌年から数える)です。動画の説明は現行法と合っています。)

まとめ

鼻歌も守る著作権

  • 著作物:思想・感情の創作的な表現。アイデアやルール(レゴ)ではなく、表現(家)が守られる。
  • 二次的著作物:作るときは原作者の許諾、使うときは原作者と翻訳者など両方の許諾。
  • 共同著作物:切り離せないので、原則は全員の合意が必要。
  • 人格権(魂):公表権・氏名表示権・同一性保持権。一身専属で、譲渡も相続もできない。
  • 財産権(お財布):複製権・上演権・演奏権・公衆送信権・頒布権など。譲渡できる。
  • 著作隣接権:実演家・レコード製作者・放送事業者などの権利。動画の整理では魂は実演家にある。
  • 発生:創作と同時に自動発生(無方式主義)。登録は第三者への対抗要件の備え。
  • 期間:原則は死後70年。死んだ日を使えない場合(無名・周知でない変名、団体名義、映画)は公表後70年。

動画が強調していた試験のポイント

  • 動画は、ルールやアイデアそのものと、実際に作られた表現を見分ける視点をすすめています。
  • 動画は、権利のリストを「魂か、お財布か」に分類すると整理しやすい、と言っています。
  • 動画は、期間の起点が死後か公表後かを迷うときは、「死んだ日が使えるか」という背景の論理を思い出す、とすすめています。

最後に動画は、スマホで発信する何気ないメッセージや写真、鼻歌も、権利という目に見えない網の目に覆われている、と締めくくります。

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