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中小企業診断士 1次試験

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権利を潰し自社を守る知財の武器

経営法務 第48回

経営法務・知財 00818分20秒2026年4月5日公開

「あなたが数億円の開発費をかけて画期的な新製品を完成させたとします」。動画は、1年半前の個人ブログが原因で特許が無効になってしまう、こんな怖い設例から始まります。このページでは動画の流れにそって、特許異議申立てと無効審判の違い、新規性喪失の例外、過失の推定と損害額の推定、そして秘密意匠をめぐる最後の問いをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

3年かけた新製品が、1年半前のブログで「無効」に?

動画は、こんな怖い設例から始まります。数億円の開発費を3年がかりでかけて、画期的な新製品を完成させた。発売すると市場は大熱狂。ところが翌週には、競合他社がそっくり同じ製品を売り出した。怒って訴えようとすると、裁判所から「あなたの特許は無効です。1年半前に個人のブログでこの技術のヒントを書いてしまったからです」と告げられる、という話です。

動画は「良い製品を作れば勝てる、というのは半分しか合っていない。残りの半分は知的財産権というゲームのルールをどれだけ知っているかにかかっている」と語ります。ルールを知らずにビジネスをするのは、手札を全員に見せながらポーカーをするようなもの、というたとえです。そこで動画は、ルールを攻めと守りの道具として使うための3つのミッションに挑みます。

① 邪魔な他人の権利を潰す特許異議申立て・無効審判② うっかり公開から発明を守る新規性喪失の例外③ 侵害されたとき損害を示して戦う過失の推定・損害額の推定
動画は、知的財産権を「攻め」と「守り」の道具として3つの場面で見ていきます。

どの制度にも「なぜそう設計されたのか」という意図があり、そこをつかむと暗記がぐっと楽になる。これが動画の一貫した姿勢です。このページも、その順番にそって進めます。

ミッション1:邪魔な権利を潰す2つの制度

新事業を始めようとしたら、競合がすでに邪魔な特許や商標を登録していた。そんなときに相手の権利をひっくり返す手段として、動画は異議申立てと無効審判を挙げます。名前は似ていますが、動画は「決定的に違う」と言います。分かれ目は目的です。

  • 異議申立て:権利の早期の安定化が目的。
  • 無効審判:紛争の解決そのものが目的。

異議申立ては「権利が出たてのクーリングオフ」

聞き手は、異議申立てを「買い物の直後にやっぱりおかしいと返品できるクーリングオフ」にたとえ、講師も「非常に良い例え」と応じます。権利が世に出た直後の、まだほやほやの時期だけに許された制度だからです。

動画の説明を整理すると、次のとおりです。

  • 対象は、特許法と商標法に規定された特許と商標登録のみ。
  • 期間は短く、特許は特許掲載公報の発行の日から6か月以内(特許法113条)、商標は商標掲載公報の発行の日から2か月以内(商標法43条の2)。
  • 申し立てられるのは誰でも。審査も人間がするので誤りはある。権利が確定して市場に影響しすぎる前に、広く世間の目に委ねて「ちょっと待った」と言えるようにしている。
  • 理由は、新規性がない・進歩性がないといった、法律に列挙された理由(動画は公益的な理由と説明)。

つまり、通りすがりの人でも言える代わりに、理由は「これはもう世の中にあった技術じゃないか」のような、社会全体の利益に反する場合に限られるんですね。

その通りです。期間内に限って、誰でも文句が言えるのが異議申立てです。

項目異議申立て無効審判目的早期の安定化紛争の解決対象特許と商標登録のみ特許・実用新案意匠・商標期間特許:6か月商標:2か月原則いつでも商標は除斥あり請求人誰でも特許・商標は利害関係人理由法定の理由(特許は新規性等)冒認出願なども理由にできる
動画の説明にそって整理した比較です(請求人の細部は本文の補足を参照)。

無効審判は「本格的に権利を消し去る」手段

もう一方の無効審判は、クーリングオフのような生ぬるいものではなく、すでに成立している権利を根本から消し去る本格的な手段だと動画は説明します。他人の特許、実用新案登録、意匠登録、商標登録に対して申し立てることができ、認められると初めからなかったものとして無効になります。

期間は、動画によれば、商標権の設定登録日から5年を経過した場合(除斥期間)を除いて、基本的にいつでも申し立てできます。「いつでも」だけに、権利者が毎日びくびくしないよう、特許と商標登録では原則として利害関係人だけが請求できる、という仕組みになっています。利害関係人とは、たとえばその特許のせいで自社の製品が差し止められそうな人、実際にビジネス上で対立している人のことです。聞き手はこれを「当事者同士のガチのバトル手段」と言い換えています。

ところが動画は、実用新案登録と意匠登録については、利害関係人でなくても誰でも無効審判を請求できると説明します(冒認出願などを理由にする場合の例外は、下の補足を参照)。理由は実用新案で説明されています。実用新案は、特許のような厳格な実体審査をせず、手続きの要件を満たせば早く登録されます。審査が軽い分、あとから無効になりうる権利がたくさん出回るので、社会全体のチェックで正当性を保つ、という考え方です。

理由の範囲も異議申立てとは違います。公益的な理由以外でも戦えます。たとえば、権利を持たない人が勝手に出願した冒認出願や、共同で開発したのに勝手に出願した共同出願違反の疑いがある場合です。「誰が本当の権利者なのか」という深刻な争いも解決できる。だから「紛争の解決」なのだ、と動画はまとめます。

補足(動画の説明の確認と訂正)

  • 除斥期間は商標だけ:「5年で除斥」は商標の無効審判の話です。特許などの無効審判は、権利が消えたあとでも請求できるとされています。また商標でも、不正競争の目的で取得した場合などは5年を過ぎても請求できるとされています。
  • 異議申立ては意匠・実用新案にはない:動画の「特許と商標登録のみ」は正しい説明です。意匠登録や実用新案登録には、異議申立ての制度はありません。
  • 異議申立ての理由:動画は公益的理由に限ると説明します。特許異議申立ての理由は特許法113条に列挙されたもの(新規性・進歩性など)で、冒認出願や共同出願違反は含まれず、無効審判で争います。商標登録異議は商標法43条の2で、第4条第1項の各号などを理由にできます。他人の氏名を含む商標(8号)や先に登録された他人の商標(11号)などの私益寄りの理由も含まれるため、商標では「公益的理由のみ」とは言い切れません。冒認にあたる出願(46条1項4号)や後発的な理由は、商標でも無効審判の側です。
  • 請求人の範囲:特許無効審判と商標の無効審判は利害関係人に限られます(特許法123条2項、商標法46条2項)。実用新案登録無効審判と意匠登録無効審判は「何人も」請求できます(実用新案法37条2項、意匠法48条2項)。ただし、冒認出願や共同出願違反を理由にする場合は、特許・実用新案・意匠のいずれも、その権利を受ける権利を有する者に限られます。動画の「誰でも」は、この例外には触れていません。
  • 無効の効果:無効が確定すると、原則として最初から権利がなかったものとされます。ただし、あとから無効理由が生じた場合などは例外があるとされています。

ミッション2:うっかり公開から発明を守る

他人の権利を「新規性がない」と攻撃できるということは、自分が権利を取るときも新規性を守らなければならない、ということです。動画は、新規性があるとは「公然と知られていない・公然と実施されていない・刊行物に載っていない」ことが大前提だと説明します。刊行物やインターネットで公衆が利用できる状態になった、つまり頒布・公表された発明は、新規性を失います。冒頭の設例のブログは、まさにこれにあたります。

とはいえ、投資家向けのピッチイベントで未出願の技術を熱く語ってしまった、研究者が学会でフライング発表してしまった、というのは現実によくある話です。厳格に言えばアウトですが、救済として新規性喪失の例外があります。自分で公表して新規性を失っても、その日から1年以内に出願すれば、例外の適用を受けられます。

ただし、手続きは簡単ではありません。動画の説明では、次の2つが必要です。

  • 特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願と同時に、例外の適用を受けたい旨を記載した書面を出す。
  • 出願から30日以内に、公表などの事実を証明する書類を出す。
自分で公表してしまう(発表・ブログなど)公表から1年以内に出願する出願と同時に「例外を受けたい」旨の書面出願から30日以内に証明の書類本人の意に反する公表(盗用・無断公開)はこの書面と証明書類が不要
動画の説明にそった流れです。原則の1年を過ぎると救済されません。30日の証明書は、責めに帰することができない理由があれば後から出せる例外もあります(特許法30条4項)。

30日以内はシビアじゃないですか。法務部の確認をとったり、当時の発表資料をかき集めたりしていたら、1か月くらいすぐ経ってしまいます。わざと難しくしていませんか。

おっしゃる通り、意図的に厳しくしています。特許制度の根幹は、誰よりも早く新しいものを生み出した人に独占権を与えることです。例外をだらだら認めたら、誰も出願を急がなくなり、制度の秩序が崩れます。

動画はこれを「原則はアウトだけど、厳格な手続きを踏む覚悟があるなら特別に許してやる、という強い引き締め」と表現します。例外はあくまで例外、というわけです。

ただし、手続きが不要になるケースもあります。本人の意に反して新規性を失った場合です。産業スパイに情報を盗まれた、共同研究者が無断で公開した、といった場合には、例外を受けたい旨の書面も、事実を証明する書類も要りません。自分のうっかりには厳しく、悪意ある第三者の被害にあった場合は手続きなしで救済する、という対比です。

そこで動画の結論は、最強の防衛策は「誰かに話す前に出願を済ませること」だというものです。

補足(動画の設例と条件の整理)

  • 冒頭の設例:ブログに書いたのは1年半前でした。例外の期間は1年ですから、設例の特許が無効とされたのは、期間を過ぎていたからだと整理できます。ただし、これは動画が直接そう説明したわけではなく、このページでの整理です。
  • 期間は1年:新規性喪失の例外の期間は、特許法30条で1年です(平成30年改正で6か月から延長)。実用新案は実用新案法11条1項、意匠は意匠法4条で同様に定められています。
  • 商標は対象外:商標には新規性という登録要件がないため、この例外の対象になるのは特許・実用新案・意匠です。動画も3つを並べて説明しています。

ミッション3:侵害されたときに戦う

厳しい条件をクリアして強い権利を手に入れても、ビジネスは甘くありません。誰かにまねされたら、当然、損害賠償を請求したくなります。ところが、相手を訴えるのは実はとても大変です。

過失の推定:知らなかったは通用しない

一般の不法行為に基づく損害賠償請求では、請求する側が、相手の侵害が故意または過失によって行われたこと、つまりわざとやったのか不注意だったのかを自分で示さなければなりません。「うちの特許を知っていてわざとまねしただろう」と言っても、相手が「知りませんでした」と言えば、相手の頭の中を証明するのは現実的にほぼ無理です。

そこで、知的財産権には強いルールがあります。動画によれば、特許権、意匠権、商標権が侵害された場合は、反証がない限り、侵害した側に過失があったものと推定されます。これを過失の推定と呼びます。

ふつうの不法行為請求する側が相手の故意・過失を自分で証明する特許権・意匠権・商標権侵害した側に過失があったと推定される例外:秘密意匠は推定されない(公報で公開されず、調べようがないため)
推定は「覆せない」ものではなく、反証できれば別です。

普通の裁判なら、こちらが相手の不注意を証明して回らないといけないのに、知財の世界ではまねした時点で「お前の方に過失があった」と最初から法律が味方してくれるんですね。なぜこんな特別扱いが認められるんですか。

動画の説明では、国の厳しい審査を経て、公報にも掲載されているからです。ビジネスをするなら調べるのが当然で、知らなかったという言い訳は原則として通用しません。

例外は1つだけ。意匠権の中の秘密意匠です。秘密意匠は、デザインを秘密にしておく制度で、公開されていません。相手が調べようがないので、「知らなくて当然」という言い分が通るから、過失の推定から除かれます。

動画は、この推定の意義を次のように語ります。企業は大きな時間とコストをかけて開発します。まねされたときに相手の過失を証明できず損害賠償も取れないなら、誰も新しいものを生み出そうとしません。この強力な盾があるから、企業は安心して投資できるのです。

補足(条文との対応)

  • 実用新案権は入っていません:動画も挙げているのは特許権、意匠権、商標権です。実用新案権には、過失の推定の規定はないとされています(無審査で登録される制度のためと説明されます)。
  • 推定は反証できる:推定されるのは過失であって、相手が反証すれば覆ります。聞き手の「100%悪い」という言い方は、たとえ話として受け取ってください。

損害額の推定:ライセンス料相当額

もう1つの難所は金額です。知的財産は目に見えないので、まねされたせいで売上がいくら減ったかを正確に計算するのは大変です。そこで動画によれば、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、不正競争防止法上の権利の侵害で賠償を請求できる場合には、それぞれ法律に損害額の算定・推定の方法が定められています。

実務的に大切なのが、損害賠償の請求額にライセンス料に相当する金額を含められる点です。「正規にライセンス契約をしていたら、毎月これくらい使用料を払っていたはずだ。最低限その分は払え」と言えるわけです。売上の減少を完璧に証明できなくても、ライセンス料なら客観的な相場から出しやすい、と動画は説明します。

イメージをつかむための設例を作ってみます(動画にはない、このページの設例です)。侵害品が2,000個売られ、自社の商品が1個売れれば1,500円の利益が出るとします。売れなかった分の利益は、2,000個 × 1,500円 = 300万円です。一方、侵害品の売上が4,000万円で、業界のライセンス料率が5%なら、ライセンス料相当額は 4,000万円 × 5% = 200万円です。

売れなかった分の利益例)2,000個 × 1個あたり利益1,500円 = 300万円侵害者が得た利益の額(損害額と推定される)ライセンス料に相当する金額例)売上4,000万円 × 料率5% = 200万円数値は説明用に作った設例です
損害額の立証を助けるルールがいくつか用意されています。

補足(数字の読み方)

  • 上の金額は、考え方を示すための作り物の数字です。実際の算定は、事案ごとの事情で変わります。
  • 「ライセンス料相当額」は、動画が「最低限その分は」と紹介した考え方です。実際にいくらになるかは裁判所の判断によります。

最後の問い:秘密にするか、公開するか

動画の締めくくりは、受講者への問いかけです。意匠権の中で、秘密意匠だけは過失の推定から除かれる。公開しないから、相手の過失を問うのが難しくなるためでした。これは裏を返せば、ビジネスの究極のジレンマになります。

  • 競合にデザインのヒントを絶対に与えないために、秘密を選ぶ。
  • 世界に公開するリスクを背負う代わりに、まねされたとき相手の過失を強力に推定できる盾を手に入れる。

動画では、これは法務部だけの仕事ではなく経営戦略そのものだと語られ、「あなたが革新的なプロダクトを生み出したら、どちらを選びますか」と問いかけます。どちらを選ぶにしても、今日学んだ知識が決断を支える、という結びです。

まとめ

この動画の3つのミッション

  • 他人の権利を潰す:異議申立ては早期の安定化が目的で、特許と商標登録のみ、期間は特許6か月・商標2か月、誰でも申し立てられ、理由は法律に列挙されたもの(動画は公益的な理由と説明)。無効審判は紛争の解決が目的で、原則いつでも申し立てられ(商標には除斥期間)、冒認出願などの争いも解決できる。
  • うっかり公開から守る:新規性喪失の例外は、公表から1年以内の出願が前提。出願と同時に書面、出願から30日以内に証明書類。本人の意に反する場合は書面も証明も不要。
  • 戦う:特許権・意匠権・商標権は侵害者の過失が推定される(秘密意匠は除く)。損害額には算定・推定の規定があり、ライセンス料相当額も請求に含められる。

3つとも、「手続きや条件がややこしい」ではなく、「なぜそう設計されたのか」で覚えるのが動画のすすめです。早期の安定化と紛争の解決、例外は厳しく、知らなかったは通用しない。この4つの意図を頭に置いておけば、細かい条件も思い出しやすくなります。

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