聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

なぜ優秀な人ほど早く辞めるのか

企業経営理論 第40回

企業経営理論・人的資源管理 00814分35秒2026年5月5日公開

「何百万円もの採用費をかけて、しかも半年間もかけて、ようやく優秀な人材を獲得したとしますよね。それなのに、たった3か月後に『思っていた仕事と違いました』と言って辞められてしまう」。動画はこんな場面から始まります。このページでは動画の流れにそって、雇用管理の3つのフェーズ、採用、配置・異動、退職を、制度の背景にある理由とあわせてまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

何百万円かけた採用でも、3か月で辞められる

動画は、こんな場面から始まります。何百万円もの採用費をかけて、半年もかけて、ようやく優秀な人材を獲得した。企業としては一番ほっとする瞬間です。ところが、たった3か月後に「思っていた仕事と違いました」と言って辞められてしまう。想像しただけで胃が痛くなるシナリオです。

しかも、これに似た悲劇は、ビジネスの現場で日々起きています。この悲劇を防いで、組織を長期的に機能させるための仕組みが雇用管理です。動画は、人のライフサイクルをどう設計するかは単なる事務手続きではなく、ビジネスの生存を左右する、ダイナミックな経営戦略だと言います。

診断士の1次試験の勉強としては、用語を丸暗記するのではなく、「なぜその制度が生まれたのか」「その制度がどんな痛みを解決しようとしているのか」という背景の心理まで理解すれば、知識は自然と定着する、という立場です。

雇用管理の全体像:3つの歯車

雇用管理のプロセスは、大きく3つのフェーズに分かれます。まず人を組織に加える採用。次に、入った人の能力を生かして処遇を変える配置・異動。そして最後に、組織から去る退職です。動画はこれを「3つの歯車」と呼び、どう噛み合っているかを順に見ていきます。

① 採用(入口)要員計画から、新卒・中途、正規・非正規まで② 配置・異動(成長の線)能力を生かして処遇を変え、やる気を保つ③ 退職(出口)定年、継続雇用、早期退職、新陳代謝3つはバラバラの制度ではなく、つながった戦略
採用、配置・異動、退職の3つを、ひと続きの流れとして見ます。

採用:誰を、どうやって迎えるか

採用を始めるには、まず要員計画を立てて、人を集める必要があります。ここで企業は大きな選択を迫られます。誰を、どうやって集めるのか。新卒でいくのか、中途でいくのか、という選択です。

新卒採用と中途採用

新卒採用中途採用
最大の強みまだ他社のやり方に染まっていない(白紙の状態)すでに社会人としての基礎や専門スキルを持ち、即戦力として活躍が期待できる
組織への効果自社の組織文化をスムーズに継承でき、愛社精神も育てやすい自社にない新しい知識や経験を、外部から直接取り込める
コストと時間何年も先を見据えて幹部を育てる、長期的な投資研修にかかるコストや時間を、大きく削減できる

料理人にたとえると

新卒は、ゼロから自分たちの色に染めていく人材です。一方、中途採用は、ずっと同じメンバーで料理を作ってきたレストランに、突然、全く違う国のスパイスの知識を持ったシェフを連れてくるようなものです。一気に組織の幅が広がります。

採用の切り口:職種別か、総合職か

採用には、もうひとつ切り口があります。特定の職種に絞って採用する職種別採用にするのか、いろいろな部署を経験する総合職として採用するのか、です。こうした選択も、要員計画の重要な一部だと動画は言います。

ミスマッチを防ぐ:インターンシップとRJP

とくに新卒の場合、入社してから「3か月でやめちゃう」ようなミスマッチが、企業にとって一番怖いところです。これを防ぐ手段として、動画は2つ挙げます。

  • インターンシップ:就業体験です。実際の仕事に触れてもらい、入社前に仕事のイメージをつかんでもらいます。
  • RJP:事前の情報開示です。企業の良い面だけをアピールするのではなく、あえて悪い情報もありのままに提供します。

RJPは、一見すると逆効果に思えます。悪い情報を伝えたら、応募者が減ってしまいそうだからです。ここで聞き手は、恋愛や人間関係にたとえます。自分をよく見せようと無理に背伸びしても、あとで現実を知ったときにひどく幻滅されてしまう。だったら最初から自分の欠点や厳しい現実を見せておくほうが、本当の意味でお互いを分かり合えて、ミスマッチを防げるのではないか、というわけです。講師も、この例えはRJPの心理的なメカニズムを完璧に捉えていると認めます。

良い面だけ伝えるRJP:ありのまま期待がふくらむ期待が現実的になる入社後に現実を知る納得した人が入社幻滅して早期退職定着率が高まる志望者が一時的に減るリスクを負ってでも、ミスマッチを防ぐ
最初に現実を見せるのがRJP。入社後の「思っていたのと違う」を先につぶします。

企業は、悪い情報を出して志望者が減ってしまうのが怖くないんですか?

企業側は、早期に退職されることの経済的・時間的な損失の大きさを痛感しています。だから、志望者が一時的に減るリスクを負ってでも、ネガティブな実態を共有するんです。

「思っていたのと違う」という言い訳を、最初からつぶしておくわけですね。

そうです。厳しい現実に納得した人材だけが残るので、入社後の定着率が高まる、というのが動画の説明です。

(補足:動画にない話です。RJPは Realistic Job Preview の略で、日本語では「現実的職務予告」などと訳されます。この言葉を広めたのは、ワナウス(J. P. Wanous)の1973年の論文(電話会社の新入社員を対象にした実験)だとされています。ただし、その後の研究のまとめでは、RJPの効果は、期待が現実的になる、組織を正直だと感じる、といった面で「小さめから中程度」と報告されています。動画の「定着率が劇的に高まる」は、効果を強めに言った表現と考えて、試験では「入社前の期待を現実的にして、ミスマッチを減らす手法」と覚えておけば十分です。)

(補足:動画にない話です。インターンシップは、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省合意で、2025年卒の学生から、一定の要件を満たすものについては、企業が得た学生の情報を採用活動に使えるようになりました。「就業体験」の位置づけは、以前より採用と近くなっています。詳しい類型や要件は資料により説明が分かれるので、ここでは概要にとどめます。)

正規雇用と非正規雇用

採用の形としては、正規雇用と非正規雇用の使い分けもあります。企業側からみた非正規雇用のメリットは、とても分かりやすいと動画は言います。

工場の生産ラインで考える

注文が殺到している繁忙期には人を増やして、閑散期には減らす。本来なら毎月固定で出ていく人件費を、状況に合わせてコントロールできる変動費に変えられる、ということです。経営の数字だけを見れば、リスクを抑える極めて合理的な手段です。

ところが、ここで現場の人間心理を見落とすと痛い目を見ます。同じ職場で、すぐ隣で全く同じ仕事をして汗を流しているのに、一方は手厚いボーナスを受け取り、自分には何もない。そんな待遇の差を毎日目の当たりにしたら、モラール(士気)は下がってしまいます。いくら人件費を削れても、現場のモチベーションが崩壊したら本末転倒です。

さらに、短期的な雇用関係で人が入れ替わっていくと、企業の中に知識や技能が蓄積していきません。コストを削減する代わりに、競争力の源泉であるノウハウが失われていく、という長期的なリスクがあります。そのデメリットを埋めるために、優秀な非正規社員を正規社員に登用する道筋を用意している企業もあります。

メリットデメリット
非正規雇用繁忙期と閑散期に合わせて人数を調整でき、人件費を変動費にできる待遇差による士気の低下。入れ替わりが多いと、知識や技能(ノウハウ)が蓄積しない
対策優秀な非正規社員の正規社員化

(補足:動画にない話です。待遇差については、法律にも定めがあります。パートタイム・有期雇用労働法の第8条は、短時間・有期雇用の労働者について、基本給や賞与などの待遇のそれぞれに、通常の労働者との間で「不合理と認められる相違を設けてはならない」と定めています。職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情を考えて判断されるので、待遇の差がすぐに違法になるわけではありません。また、労働契約法第18条により、同じ使用者との有期労働契約が通算5年を超えた労働者が申し込めば、期間の定めのない契約に転換できます。これを無期転換ルールといいます。令和8年4月1日時点の条文を、e-Govで確認しました。)

試験の注目点:採用

  • 新卒=染まっていない・文化の継承・愛社精神・長期投資。中途=即戦力・研修コストの削減・外部の新しい知識。強みを取り違えないこと。
  • ミスマッチ対策は、インターンシップ(就業体験)とRJP(良い面も悪い面もありのままに伝える)。RJPは「良い面だけを強調して、期待を高めて採用する手法」ではありません。
  • 非正規雇用のメリットは人件費の変動費化、デメリットは士気の低下とノウハウの蓄積が進まないこと。

配置・異動:採用は点、配置・異動は線

RJPなどで期待値をコントロールして、無事に優秀な人材を採用できたとします。でも、ここからが本当の勝負です。採用が「点」だとしたら、配置や異動は、人材の成長という「線」を描く作業だと動画は言います。入社した人が退屈したり、モチベーションを失ったりして辞めてしまわないように、組織内でどう動かすか。この配置・異動のフェーズが、きわめて重要になります。

そのために企業は、従業員のモチベーションを保ち、退職を防止するための4つの施策を打ちます。

ジョブローテーション定期的に業務を変える全体を見る幹部を育てる社内公募ポストを公開して希望者を募るCDP長期的な視点でキャリア開発を支援複線型人事複数のコースを設け専門性の道も用意自分でキャリアを選べるというコントロール感が、退職防止になる
4つの施策に共通するのは、会社が決めつけず、選択肢を見せることです。
施策中身
ジョブローテーション定期的に業務(部署)を変える
社内公募ポストを社内に公開して、希望者を募る
CDP(キャリア開発制度)長期的な視点で、従業員のキャリアの形成を支援する
複線型人事複数のコースを設ける

ジョブローテーションは無駄なのか

聞き手は、ここで少し意地悪な疑問を挟みます。せっかく1つの部署で3年がんばって、ようやくスペシャリストになりかけている人を、まったく違う部署に異動させる。作業効率の面から見ると、ものすごく無駄が多くないですか、という疑問です。

短期的にみれば、おっしゃるとおり生産性は一時的に落ちます。でも、時間軸を10年単位に伸ばして、組織全体を見てください。

企業が長期的に成長するには、自分の部署の利益しか考えない人ばかりでは困ります。他部署の苦労や、会社全体の仕組みを肌で理解している人が必要です。

全体を俯瞰できる人がいないと、部門間の対立が起きてしまうわけですね。

そうです。様々な部署を経験させて、組織全体の最適化を考えられる将来の幹部を育てる。これがジョブローテーションの最大の狙いである教育効果です。

目先の効率を犠牲にしてでも、将来のリーダーを育てるための投資だ、と動画はまとめます。

複線型人事:優秀なプログラマーを課長にしない

では、複線型人事は、どんな痛みを解決する制度でしょうか。動画は、こう説明します。伝統的な企業では、給料を上げるには管理職になるしか道がありませんでした。そこで、コードを書くことには圧倒的な才能があるけれど、部下のマネジメントや人間関係の調整は大の苦手、という天才的なプログラマーを想像してみてください。

天才プログラマーを課長にしてしまうと

この人を無理やり課長にしてしまうと、優秀なプログラマーを1人失うと同時に、無能なマネージャーを1人誕生させることになります。本人も不幸だし、部下も不幸です。

そこで複線型人事が機能します。全国社員や地域限定社員といった区分のほかに、管理職にならなくても専門性を極められる、別の昇進ルートを用意するのです。好きな仕事に没頭しながら給料も上げられるので、辞めずに活躍し続けてくれます。

(補足:動画にない話です。複線型人事は、一般には「管理職コース」と「専門職コース」のように、役割の違いでコースを分ける仕組みと説明されます。動画が挙げた全国社員・地域限定社員のような区分は、資料によっては別の名前(コース別の雇用管理、限定正社員など)で整理されることがあり、呼び方は資料により異なります。)

(補足:動画にない話です。社内公募と似た制度に、社内FA制度があります。社内公募は部署側が人材を募る「求人型」、社内FAは従業員が自分を売り込む「求職型」と説明されます。)

選択肢を見せることが、退職防止になる

社内公募やCDPも、同じ考え方に立っています。企業側から「あなたは一生この仕事をしてください」と押し付けるのではありません。「うちの会社にはこういう道もあるし、挑戦する機会もあるよ」と、多様な選択肢を示します。自分でキャリアを選べるというコントロール感が、結果的に強力な退職防止になる、というのが動画の説明です。

試験の注目点:配置・異動

  • 4つの施策は、ジョブローテーション、社内公募、CDP、複線型人事。名前と中身を結びつけておきます。
  • ジョブローテーションの最大の狙いは、短期的な効率ではなく、全体を見渡せる幹部を育てる教育効果。
  • 複線型人事は、管理職にならなくても専門性で評価・処遇される道を用意する制度。「伏線」ではなく「複線」(複数の線)。

退職:出口の管理が、組織の悩みの種になる

配置・異動でモチベーションを高めて人材を引き止めてきても、組織という生き物である以上、いつかは必ず退職という出口に向き合います。近年は、この出口の管理が企業にとって、時限爆弾のような強いプレッシャーになっている、と動画は言います。今、経営陣の頭を最も悩ませているのは、定年退職と、それに絡む法律への対応です。

高年齢者雇用安定法:60歳、65歳、70歳

ここで登場するのが、高年齢者雇用安定法です。動画の説明を順に整理します。

  • 定年は原則60歳以上と定められています。
  • さらに、65歳までの雇用を確保するためのルールがあります。継続して勤務させる勤務延長や、一度退職させて再び雇う再雇用といった継続雇用制度です。
  • 継続雇用制度を導入しない場合は、定年そのものを65歳以上にしなければなりません。
  • 2021年からは、70歳までの雇用確保が努力義務として追加されました。
60歳:定年の下限65歳まで:雇用確保措置(義務)70歳まで:就業確保措置(努力義務・2021年〜)法律の要請高齢者の雇用を確保経営の課題若返りと人件費の抑制早期退職者優遇制度(選択定年制)役職定年制度(役職から外れる)
法律の要請と経営の課題に挟まれた企業が、苦肉の策として使う2つの制度です。

(補足:動画の説明を、条文で確認して補います。令和8年4月1日現在の高年齢者雇用安定法で、条文はe-Govにより確認しました。)

  • 第8条:定年を定める場合、その年齢は60歳を下回ることができません。ただし、高年齢者が従事することが困難な業務として厚生労働省令で定める業務に就く労働者は例外です。
  • 第9条:定年を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、次の3つの措置のうちいずれかを講じなければなりません(義務)。①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止。動画は「継続雇用制度を導入しない場合は定年を65歳以上に」と説明しますが、③の定年の廃止も選べます。
  • 第10条の2:65歳から70歳までの就業を確保するため、事業主は次のいずれかの措置を講ずるよう努めなければなりません(努力義務)。①70歳までの定年の引上げ、②65歳以上継続雇用制度の導入、③定年の廃止、④創業支援等措置(業務委託契約を結ぶ、または社会貢献事業に従事できるようにする)。動画は「70歳までの雇用確保」と説明しますが、④のように雇用によらない措置も認められています。④を使うには、過半数の労働組合(なければ過半数代表者)の同意が必要です。
  • 継続雇用制度の対象は、原則として希望者全員です。かつては労使協定で対象者を限定する経過措置がありましたが、令和7年(2025年)3月31日で終了しています。

ベテランを生かすメリットと、組織の機能不全

ここで聞き手は、鋭い疑問を出します。ベテランの熟練した技術や経験を、継続して生かせるのは、確かにメリットです。でも、これを裏返すと、組織の機能不全を引き起こしかねない恐ろしいジレンマをはらんでいないか、というのです。

50代や60代の層がずっと同じポストに居続けると、下の世代の優秀な若手が昇進できません。組織の新陳代謝が完全に止まってしまいます。さらに、年齢とともに上がってきた人件費が、高いまま固定されてしまいます。企業としては身動きが取れなくなります。

法律によって高齢者を雇い続けなければならない、義務的な要請。もう一方は、組織を若返らせて人件費を抑えたいという、シビアな経営課題です。

企業は、この2つのプレッシャーに挟まれているんですね。

そうです。だからこそ企業は、生き残るために苦肉の策を生み出しました。

苦肉の策その1:早期退職者優遇制度(選択定年)

ひとつは、早期の退職を自発的に促すための早期退職者優遇制度です。選択定年とも呼ばれます。要するに、退職金を上乗せするから、少し早めに席を譲ってくれませんか、という仕組みです。

(補足:動画にない話です。資料では、選択定年制は、定年より前に退職する人の退職金を優遇する常設の制度として説明され、早期退職優遇制度とほぼ同じ意味で使われることがあります。経営再建などで募集のたびに条件を決めて行う「早期希望退職」とは、区別して説明する資料があります。使い分けは資料により異なります。)

苦肉の策その2:役職定年制度

もうひとつは、組織の血の巡りを強制的によくするための役職定年制度です。一定の年齢に達すると、自動的に管理職などの役職から外れる制度です。動画は、次の2つのパターンがあると言います。

  • 一定の年齢で一律に外れるパターン。
  • 役職別に年齢を設定するパターン(部長は何歳まで、課長は何歳まで)。

聞き手は、現場で運用するのは相当しんどいはずだと指摘します。昨日までバリバリの部長だった人に、「明日から役職を外れてください。若手に席を空けるためです」と通告するのですから。講師は、この生々しい人間ドラマこそが、雇用管理の最も難しい部分だと言います。法律の枠組みを守りながら、なんとか組織の硬直化を避け、若い世代に希望を持たせようとする経営陣の必死のバランス取りが、こうした制度の背景にあります。

(補足:動画にない話です。役職定年後は、一般社員や主任などの職務に変わって、給与が下がる例が多いと説明されます。役職定年は定年(雇用の終わり)ではなく、役職の終わりです。「定年」という名前でも、会社を辞めるわけではない点に注意しましょう。)

試験の注目点:退職

  • 高年齢者雇用安定法:定年は60歳を下回れない(義務)。65歳までは雇用確保措置(義務)。70歳までは就業確保措置(努力義務、2021年4月から)。
  • 65歳までの措置は、定年の引上げ・継続雇用制度・定年の廃止のいずれか。継続雇用制度は勤務延長と再雇用を含む。
  • 背景は、高齢者の雇用確保と組織の新陳代謝・人件費のジレンマ。苦肉の策が、早期退職者優遇制度(選択定年)と役職定年制度。
  • 選択定年は「早期の退職に退職金を上乗せして促す」制度、役職定年は「役職から外れる」制度。混同しないこと。

3つのフェーズは、つながっている

ここまで、雇用管理の全体像を追ってきました。動画は、最後にこうまとめます。

フェーズ主な制度と、解決する痛み
採用新卒・中途、インターンシップ、RJP、非正規。入社後のミスマッチ、人件費と士気のバランス。
配置・異動ジョブローテーション、社内公募、CDP、複線型人事。やる気の低下による退職、幹部の育成。
退職継続雇用、選択定年、役職定年。高齢者の雇用確保と、新陳代謝・人件費のジレンマ。

どんな人をどう迎えるかという入口の採用。ジョブローテーションや複線型人事などで、いかにモチベーションを維持して引き止めるかという配置・異動。最後に、ベテランの処遇と組織の新陳代謝という強烈なジレンマに向き合う退職。この3つのフェーズは、単なる独立した制度ではなく、いかに密接に絡み合って、企業の生き残りをかけた戦略として機能しているか。その構造と背景の理由を理解することが、知識を確固たるものにする秘訣だ、と動画は言います。

最後の問い:出口の現実まで、採用面接で伝えるべきか

動画は最後に、思考実験の課題を出します。RJPとして、悪い情報を最初からありのままに伝えることが、結果的にミスマッチを防ぎ、強い信頼関係を生むと学びました。では企業は、採用面接という最初の入口の段階で、次のような出口の現実までありのままに伝えるべきでしょうか。

  • うちの会社には役職定年制度があり、強制的に役職を外されるかもしれません。
  • 組織の新陳代謝の厳しさゆえに、将来、選択定年で早期退職を求められる現実があります。

それとも、そんなリアルすぎる現実は、従業員のやる気をそぐだけの無意味な行為なのでしょうか。動画は、この問いに答えを示さず、「ぜひあなたなりの結論を導き出してみてください」と呼びかけて終わります。

正解はひとつではありません。考えるときの手がかりとしては、RJPの狙いが「入社前の期待を現実に近づけて、入社後のミスマッチを減らすこと」だった点に立ち返ることです。そのうえで、伝えることのメリット(納得して入社した人が残る、信頼関係が生まれる)と、デメリット(志望者が減る、やる気をそぐ)を並べて、自分の考えを言葉にしてみましょう。

中小企業の現場では、人事制度が十分に整っていない会社も少なくありません。経営者に助言するとき、「なぜその制度があるのか」という背景の理解は、そのまま説得力になります。試験対策としては、まず3つのフェーズと、各フェーズの4つの施策や制度を取り違えないこと。そして、高年齢者雇用安定法の60歳・65歳・70歳の区別を、正確に押さえておきましょう。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む