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中小企業診断士 1次試験

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コア技術を隠してOEMで勝つ逆転発想の競争戦略

企業経営理論 第8回

企業経営理論・経営戦略 00811分16秒2026年5月5日公開

「今回徹底的に解剖していくテーマは、企業がいかに自社の技術やノウハウを武器にし、守り、そして外部と連携していくか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、知財戦略、コア技術戦略、OEMの3つの柱と、委託側・受託側のそれぞれのメリット・デメリットをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

守る・活かす・連携する:技術をめぐる3つの柱

動画の冒頭で語られるのは、企業が自社の技術やノウハウをどう武器にし、どう守り、どう外部と連携していくか、というテーマです。ビジネスの現場ではまさに企業の生命線にあたる部分で、診断士試験の「企業経営理論」でも、戦略の一分野として取り上げられます。

動画は次の3つの柱を順に見ていきます。

  • 知財戦略:自社の知的財産を守り、他社の模倣を防ぐ。
  • コア技術戦略:守り抜いた技術を、さまざまな製品に使って攻める。
  • OEM:製造を外部に任せる(任される)という外部連携のかたち。

つまり「守り」「攻め」「連携」の三段構えです。順番に、動画の会話を追いながら整理していきます。

知財戦略:特許を「取らない」という選択

知財戦略とは、企業が持つ知的財産を守って、他社に真似されないようにするための戦略です。動画が注目するのは、製品の性質や、その製品を出す市場の動向に応じて、特許を出すか、あえて出さないかを判断するところ。ここに特許戦略の奥深さがある、と説明されます。

ちょっと待ってください。特許を出さないという選択肢があるんですか。取れるなら絶対に取っておいたほうが、法的に守られていいんじゃないんですか。

おっしゃるとおり、特許を取れば、その知的財産は法律で強力に保護されます。ただ、そこにジレンマがあります。同時に、特許の内容が世間に公開されてしまうんです。

なるほど。強力なバリアを張る代わりに、設計図を世界中にばらしてしまうようなものなんですね。

完璧なたとえです。しかも法律で守られる期間には限りがありますし、公開された設計図をもとに、法律の網の目をくぐる似た製品を作ってくるライバルも出てきます。

たとえば、設計図を見て「この素材を別のものに替えれば、特許に触れずに同じ働きの製品が作れる」と考える競合が現れる、ということです。そこで、情報公開のリスクを避けるために、あえて特許を取らない道を選ぶ企業も多いのです。

特許を取る(権利化)特許を取らない(秘匿)法律で強力に守られる社内で厳重に管理する出願から1年6か月で公開技術の中身は外に出ない守れる期間は出願から20年守れるのは秘密の間だけ似た製品を作られる恐れ管理が破れると守れない
特許は「強い盾と引き換えに設計図を公開」、秘匿は「公開しない代わりに管理がすべて」です。

では、特許を取らずにどう守るのか。動画の答えは、企業秘密として、ノウハウを社内で厳重に管理することです。老舗の「門外不出の秘伝のタレ」のように、レシピを金庫の奥にしまい、絶対に外に出さない。これを動画は秘伝のタレ戦略と呼びます。

(補足:動画にない話です。特許の「公開」の時期を正確にいうと、特許法64条により、特許庁は出願の日から1年6か月を経過したときに出願公開をします。特許が認められる前でも、出願の中身が公報に載って公開される点が大事です。また、特許権の存続期間は、同法67条1項で出願の日から20年とされています。動画の「守られる期間には限りがある」は、このことを指しています。)

ここまでの対比を、表にまとめます。

観点特許を取る特許を取らない(秘匿)
守る仕組み特許権(法律で独占できる)企業秘密としての管理(社内ルール・契約)
技術の中身出願公開で世間に公開される外に出さない
守れる期間出願から20年秘密が保たれている間
主なリスク公開された設計図をもとに、似た製品を作られる管理が破れて漏れると守れない

(補足:動画にない話です。特許庁の資料でも、技術によっては権利化を選ばず、ノウハウとして秘匿する選択ができるとされています。他社に使わせる「オープン」と、自社で独占する「クローズ」を、うまく組み合わせることが大切だという考え方です。)

秘伝のタレを守る:委託するときは仕事を分けて渡す

自社の中だけで作っているうちは、秘匿でも通用します。では、ビジネスが大きくなって、外部の企業に業務を委託するときはどうするのでしょうか。動画によると、技術情報の全体像が相手に渡らないよう、業務範囲をあえて細分化して発注するという緻密な工夫が行われることがあります。

つまり、A社にはタレの甘みの部分だけ、B社には辛みの部分だけを作ってもらう、という感じですか。

そうです。そうすれば、A社もB社も、最終的な秘伝のタレの全貌は分からない状態になります。

それぞれ断片的な作業しかしていないから、仮に情報が漏れても、大きなダメージにはならないんですね。

はい。情報を分割することで、情報流出のリスクを抑えているんです。

自社(全体像を知っている)甘みだけ発注辛みだけ発注A社甘みの部分だけB社辛みの部分だけ全体のレシピは不明全体のレシピは不明秘伝のタレの全貌は自社だけが知る(一社から漏れても被害は断片的)
仕事を分けて渡すと、一社が知る情報は断片だけになります。

(補足:動画にない話です。秘匿で守るといっても、何でも「秘密」と言えば保護されるわけではありません。不正競争防止法2条6項は、営業秘密を「秘密として管理されている」「事業活動に有用な技術上・営業上の情報」で「公然と知られていないもの」と定義しています。経済産業省の指針は、この秘密管理性・有用性・非公知性の三つがそろって初めて、法の保護を受けられるとしています。取引先や業務委託先に情報を渡す場合も、秘密保持契約を結ぶなど、秘密として扱っていることを明らかにする措置が考えられます。)

(補足:動画にない話です。秘匿の弱点は、他社が同じ技術を独自に開発して特許を取るかもしれないことです。そうしたときの備えとして、特許法79条は、他社の特許出願の時点で、すでにその発明の事業をしている人(事業の準備をしている人を含む)に、事業の範囲内で使い続けられる権利(先使用権)を認めています。)

コア技術戦略:一つの強みをいろんな製品に使い倒す

守り抜いた技術を、今度はどう活かすか。ここからが2本目の柱、コア技術戦略です。まず「コア技術」の定義を、動画の会話でたしかめましょう。

コア技術という言葉の定義から教えてもらえますか。

コア技術と呼ばれるには、2つの条件を満たす必要があります。1つ目は、他者に対する技術的な独自性が高いこと。2つ目は、多様な分野に応用できる汎用性を持つことです。この2つがそろって、はじめてコア技術と呼びます。

1つの超一流のエンジンを作れたら、スポーツカーにも船にも、さらには発電機にも乗せてしまうようなイメージですね。

そのイメージのとおりです。その圧倒的な強みを使って、他社製品と効率よく差別化を図っていくんです。

コア技術(超一流のエンジン)スポーツカー船発電機一つの武器をいろんな製品で使い倒す条件1他者に対する技術的な独自性条件2多様な分野に使える汎用性
独自性だけでなく、いろいろな分野に使えてはじめて「コア技術」と呼べます。

ただ他者が真似できない素晴らしい技術、というだけでは、まだコア技術とは言えません。いろいろな分野に応用できることが鍵です。このコア技術を、さまざまな製品に適用していく戦略がコア技術戦略です。莫大な開発費をかけて一つの技術を作っても、いろいろな製品で利益を出せるので、効率がよく、企業の成長を加速させる強力なエンジンのような戦略だと動画は説明します。

(補足:コア技術の言い方は、資料により少しずつ異なります。動画の「独自性+汎用性」の2条件は、他社と差別化でき、複数の製品・市場に展開できる技術、という一般的な説明とも重なります。なお、似た考え方に、プラハラードとハメルが1990年にハーバード・ビジネス・レビュー誌の論文『The Core Competence of the Corporation』で示したコア・コンピタンスがあります。こちらは技術にかぎらず、企業の中核的な能力を指す概念です。)

OEMとは:作る会社と名前を出す会社が違う

コア技術を使って自社でどんどん製品を展開していく道がある一方で、まったく違うアプローチを取る企業もあります。それが3本目の柱、OEMです。

日常でもたまに聞く言葉ですけど、正確にはどういう意味なんでしょうか。

OEMは Original Equipment Manufacturing(または Manufacturer)の略で、相手先ブランドによる生産という意味です。

つまり、作っている会社と、パッケージに名前が書いてある会社が違う、ということですよね。

そのとおりです。スーパーのプライベートブランドが分かりやすい例ですね。中身は別の専門の工場が作っている、という仕組みです。

委託側自社ブランドの名前で販売する受託側専門の工場として実際に生産する依頼納入作っている会社と、パッケージに名前がある会社が違う=相手先ブランドによる生産委託側の悩み技術力が社内にたまりにくい受託側の悩み特定の委託元に依存しやすい
OEMは、ブランドの持ち主と作り手が別々になる仕組みです。

(補足:動画にない話です。似た言葉にODMがあります。ジェトロの説明では、OEMは委託者が詳細設計や図面まで受託者に渡して生産を任せるのに対し、ODMは製品の設計から受託者が行います。どちらも、委託者のブランドで販売する点は同じです。)

委託側(発注する側)のメリットとデメリット

OEMには、発注する側(委託側)と実際に作る側(受託側)の双方に、それぞれメリットとデメリットがあります。動画は「非常に複雑なトレードオフ」と表現しました。まず委託側から見ていきます。

最大の利点は、自ら生産設備を持たないことで固定費を抑えられる点です。自分たちで工場を建てたり、高い機械を買ったりしなくて済みます。さらに、市場の変動に合わせて生産数量を調整しやすい。売れ行きがよければ工場にたくさん発注し、売れなくなれば発注を減らせるので、身軽で機動力が高いのです。

一方の課題は、製造プロセスを外部に頼ることで、社内に技術力が蓄積されにくいことです。自分たちで手を動かして作っていないので、いざというとき、ものづくりのノウハウが自社に残っていません。長期的には企業の技術的な足腰を弱めるリスクがあり、動画はこれを「技術の空洞化という代償」と表現します。

便利な分、技術の空洞化という代償を払っているんですね。

そうなんです。委託側は、身軽さと引き換えに、自社の技術という土台がやせていくリスクを抱えます。

(補足:動画にない話です。ジェトロの説明でも、委託者の注意点として、受託者が渡された製造技術や品質管理、生産ノウハウを吸収し、将来は委託者の競合になる可能性が挙げられています。技術を渡しすぎない工夫は、ここでも大切です。)

受託側(実際に作る側)のメリットとデメリット

では、実際に作る側の受託側にはどんな利点があるのでしょうか。動画は3つを挙げます。

  • 継続的な生産による収益の安定化:大口の注文がコンスタントに来れば、工場の稼働が安定する。
  • 他者製品の製造を通じた生産ノウハウの獲得:よその会社の厳しい基準で作ることで、自分たちの技術レベルも上がる。
  • 設備の有効活用:空いている機械やラインを遊ばせておくより、他社製品を作って稼働させたほうがよい。

受託側にも、深刻な課題があります。1つ目は、特定の委託元への依存度が高まること。ずっと下請けばかりやっていると、自社独自のブランド育成が遅れ、自分たちの名前で売るチャンスがなくなります。2つ目は、委託元の業績に自社の収益が振り回されること。発注元の売れ行きが不振になれば、急に注文を打ち切られて一気に苦しくなります。3つ目は、価格交渉で不利な立場になりやすいことです。単価を下げろと言われても、依存しているので逆らいにくくなります。

単価を下げろと言われても、そのお客さんに依存しているから逆らえない、ということですね。

そうなんです。受託側にとっても合理的な選択ではあるのですが、こうした課題と隣り合わせです。

ここまでの内容を、委託側・受託側で整理すると次のとおりです。

メリットデメリット
委託側固定費を抑えられる(自前の設備が不要)
市場の変動に合わせて生産数量を調整しやすい(機動力)
社内に技術力が蓄積されにくい(技術の空洞化)
受託側継続生産で収益が安定する
他社製品の製造を通じて生産ノウハウを獲得できる
設備を有効活用できる
特定の委託元への依存で、自社ブランド育成が遅れる
委託元の業績に収益が左右される
価格交渉で不利になりやすい

覚え方のコツ

委託側のデメリットは「技術の空洞化」、受託側のデメリットは「依存」が軸です。どちらの側の話かを取り違えないよう、「発注する側が失うのは技術、作る側が失うのは自由」と覚えるとよいでしょう。

まとめ:何を守り、何を手放すか

動画は、お互いにコストやリソースの面で「おいしい」部分がある一方で、委託側は技術の空洞化におびえ、受託側は下請け体質から脱却する難しさに苦しむ、非常にシビアなトレードオフだと整理しました。持ちつ持たれつの関係が、ぎりぎりのバランスの上に成り立っているのです。

  • 知財戦略:特許を取れば法的に守れるが内容は公開される。あえて取らず、ノウハウを秘匿する選択もある。委託するときは業務範囲を細分化して全体像を渡さない。
  • コア技術戦略:他者に対する独自性と多分野への汎用性を備えた技術を、さまざまな製品に適用して差別化と効率的な成長を図る。
  • OEM:相手先ブランドによる生産。委託側は固定費の抑制と機動力が利点だが技術の空洞化が課題。受託側は収益安定・ノウハウ獲得・設備活用が利点だが、依存と価格交渉の不利が課題。

あなたの組織にとって、絶対に外へ出してはいけない「秘伝のタレ」、つまり真のコア技術は何でしょうか。そして、リスクを取ってでも外部のOEMに任せるべきものは何でしょうか。

すべてを自前でやろうとすれば立ちゆかなくなり、すべてを外部に頼れば強みが消えてしまう。何を死守して何を手放すか、その決断が企業の未来を分けるんですね。

はい。その決断こそが経営の醍醐味であり、いちばん難しいところだと思います。

身の回りの製品を見たとき、その裏にある戦略の輪郭を探ってみる。動画はそんな呼びかけで締めくくられます。守る技術と手放す仕事の線引きを、ご自身の仕事に当てはめて考えてみてください。

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